25.布教活動
北京市の西側に干上がった川と湖があった。空は晴れているが霞んでいる。
僕たちはその近くの公園の上空に居る。
船の翼の上に出ると人々から見える位置まで船をゆっくりと降ろしていった。
公園は見渡す限り、人の海になっていた。
『凄い人ね。流石に緊張してしまうわ!』
『もう、人と思わない方が良いのではないかしら?』
『そうね。単なる景色だと認識しましょうか』
『さて、それでは話を始めようか』
『はい。お願いします』
僕は四人の女神の間に立つと、警戒モードで周囲を見渡した。真正面のヘリコプターはテレビ局らしい。大きなカメラがこちらを向いている。
軍のヘリは少し遠くから監視している様だ。近くの建物の屋上にも人がびっしりと埋め尽くされていた。僕は念話で全世界に向けてスピーチを始めた。
『皆さま。私は天照 翼。こちらは四人の女神たちです。私たちは今、中国の北京に来ております。水不足の解消を依頼されたからです』
『うぉー!』
民たちが喜びの雄叫びをあげた。
『中国は新平和条約を批准されておりません。この大陸は雨が降らなくなる程に環境が破壊されています。それでも化石燃料や人間の手に負えない原子力を使い続ける・・・それは何故でしょうか?』
『他の国から侵略されるとお考えですか?他国は皆、自分の国の環境を回復させ、守ることに必死です。他国に手を伸ばす余裕のある国はありません』
『新平和条約を結んだ国では、全ての人が平等になります。どんな仕事をしていても、老若男女問わず、皆、同じ収入となるのです。富を築いた方はそれを手放せませんか?権力を失うのが怖いのでしょうか?』
『他の国を見てください。日本では首相と農民の収入は同じです。初めは戸惑いもありました。不平不満を言う者も居りましたよ。でも今は、皆、自分が本当にやりたい仕事に就き充実した日々を過ごしています。皆さんにもできる筈です』
『それとも、日本を創った神。天照は信用できませんか?私たちは宗教を改宗せよとは申しません。言葉も文化も今までと同じで良いのです』
『新平和条約でお願いしていることは、化石燃料と原子力を使用しない。自国で必要なだけの食料を作り、無駄を出さない。輸出入は他国との助け合いの分だけに限定する。他国を侵略しない、脅かさない。人間は平等でなければならない。以上です』
『必ずしも民主主義になる必要はないのです。資本主義も終わりました。皆、地球環境を守り、後世に繋げていく社会を作るのです』
『世界の人々は、今一度、考えなければなりません。まだ地球環境の回復は十分ではないのです。皆さまの子供や孫たちがこの地球で生きて行くために今、やらなければならないことがあるのです』
『私からの皆さまへのお願いは以上です。これより、女神たちが皆さまの心を癒す歌をお届けします』
僕は数歩下がると、音響設備を船の翼の上へ出現させた。
「シュンッ!」
大きなスピーカーとアンプ、それに音楽の再生装置だ。
まずは四人でのグループ曲、そして新奈のソロ曲、二曲目のグループ曲、最後にアネモネのソロ曲と四曲連続で披露した。
グループ曲やノリの良い新奈の曲の時は、歌に乗って踊りだす人も見受けられたが、アネモネの歌が始まると静まり返り、皆、うっとりと聞き入っていた。
中国では新平和条約を結んだ国との関係が途絶しているため、日本からのテレビ放送は放映されていない。お父さんの二十年前の地球降臨の時の声しか聞いていないのだ。
だから僕らを初めて見る人も多いのだ。それでも、直接僕の声が自国の言葉で頭の中に聞こえてくるので、皆、素直に聞いてくれた様だし、魅了のお陰もあるのだろう。皆、十分に感動してくれた様だ。
『皆さま。今日は私たちの話と歌を聴いてくれたことを感謝致します。お礼としましてこの地に雨を降らせましょう』
『うぉー!』
皆、笑顔になりこちらへ向けて手を振っている。拍手をしている人も大勢居る。
『さぁ、雨を降らせようか。皆は雨が降って来たら、念動力で雨が僕らに降り掛からない様にしてくれるかな』
『はい。分かりました』
僕は空に向かい両手を広げた。本当は必要ないのだが、下から見上げている人々に分かり易いようにポーズを付けたのだ。
東の海から大量の水蒸気が巻き上がるイメージで、高気圧を無理矢理押しのけて超広範囲に雨雲を生成していった。それは地球の自転を無視し、雨雲は東から西へと流れて行った。
天津市から北京市と海側から順に大雨が降り始めた。民たちは空を見上げ大粒の雨を身体で受け止めた。家や建物の軒下へ逃げる者や、口を開けて雨粒を飲もうとする者も居た。雨水は清潔ではないから直接飲まない方が良いのだがな・・・
雨雲は更に西へと進み、中国の半分程度が一気に雨雲に覆われた。大雨とはいえ、完全に干上がってしまった土地が多く、湖や川に水が満たされるにはかなり長い時間雨を降らせ続けなければならない。
僕たちは船に戻ると月の都へと瞬間移動した。
「皆、ご苦労さま。素敵な歌をありがとう」
「翼も素晴らしいスピーチだったわ。きっと人々の心に響いたことでしょう」
「アネモネ。そうだと良いのだけどね」
「翼、雨はあとどれくらい降らせるのかしら?」
「三日間は降らせるよ。湖やダム、溜池を水で満たし、山にも十分に水を蓄えないとすぐに乾燥してしまうからね。さて、この雨はこのまま降らせておいて、僕らは西側へ移動しようか」
そして北京を後にして成都市へ飛んだ。
成都市にあるパンダの研究施設のある公園の上空で静止した。
数時間待っているとどこからともなく人が大勢押し寄せて来た。ヘリコプターも飛び交っている。人で身動きが取れないくらい集まったところで船を出し、民衆から見える高さまで降りると船の翼の上へ出た。
ここでは、さっき僕がスピーチをしたのを皆、聞いていた筈なので、僕は話さず女神たちを紹介し、歌を披露した。民は感動し涙を流して喜んでいた。
歌の披露の後で雨を降らす。今度は南シナ海から香港や広州市を経て中国の西側半分に雨を降らせた。それは三日間続いた。
中国に天照さまの息子が現れ、民を救うために中国全土で雨を降らせたニュースは世界を巡った。
それから中国各地では、民衆による新平和条約の批准を政府に求める集会やデモが全土で散発的に起こった。
次の訪問地を聞いて僕は憂鬱になった。それは中東地域だった。ひとつの国ではなく、連合としてお伺いがあるとのことだ。その地域で新平和条約に批准していない国々が集まり、話し合いを持ちたいというリクエストだった。まぁ、呼び出しだな・・・
僕は、その話し合いの一部始終を世界に公開するのならば受けると伝えたところ、了承されたのだ。
新平和条約を批准せず、態度を明らかにしてこなかった地域の国々だ。
イスラム教の中でも色が濃く、原油の産油国も多い。
この地域の天照への不満は明らかだ。突然、化石燃料の使用を否定し、産油国の意思は無視され、勝手に世界規模の改革が進められた。そう思っているのだろう。
勿論、初めから相談されれば援助の手を差し伸べる用意はあったのだが、敵対視され対話を拒絶されたため、結果として取り残されてしまったのだ。経緯を考えれば致し方ない面もある。
それはそうだ。異国の神が突然降臨し改革を叫ばれたところで、ああそうですかと乗れるものではないのは理解できる。しかも国連の会議では原油の産油国に対し、非産油国からの援助の話もまとまらなかったのだから・・・
話し合いの場所は、アラブ首長国連邦のドバイにある、八百二十八メートルの超高層ビル。ブルジュ・ハリファだ。月の都をブルジュ・ハリファの直上へ瞬間移動させた。
「あ!あれが人工島ですね!?きれい!ヤシの木のデザインになっているのですね!」
望が少しはしゃぎ気味に声を上げた。
「これらは全て原油輸出の利益で作られたものだね」
「でも、原油の産油国でこの様な気候であれば、それに頼り切るのは仕方のないことですよね・・・」
「アネモネ。一方から見ればそれも確かなことだね」
アネモネは常に中立な立場で冷静な考え方ができる様だ。
「生まれた環境によって考え方も価値観も異なるのです。どこかの国や一方的な見方で善悪を決めることは危険なことです」
あぁ、そうか。常に他人から奇異な目で見られてきたアネモネには、普通とか中立との差に悩まされてきた経験があるのかも知れないな。
「そうだね。曇りなき眼で見て、判断しなければならないね」
「お願いします」
「善処します」
アネモネは僕の手を握って微笑んだ。
今回は僕だけが会議に出席することとした。女神たちはイスラム教徒にとっては、見た目で問題があるかも知れないからだ。
船には皆で乗り、ブルジュ・ハリファの横、地上三十メートル程の高さへ降り、停止させた。
地上には多くの警備兵が立ち並んでいるのが見えた。その向こうには周辺を埋め尽くす人が口々に何かを叫んでいる。
僕はひとりで翼の上に立ち、地上へ向かってゆっくりと空中を浮遊しながら降りて行った。地上へ向かうにつれて民衆の声が聞こえ始めた。僕らに期待する声と、恨みを叫ぶ声が交錯している。表情も笑顔の者と怒りの顔をした者が居るのだ。
地上に降りると身分の高そうな男性が近寄って来た。
「天照さま。ようこそお越しくださいました。私はアラブ首長国連邦副大統領のラドワーンで御座います」
「初めまして。天照 翼です。この度はお招き頂き、感謝いたします」
僕はアラビア語で話した。
「アラビア語が話せるのですか!」
「はい。話せますよ。心も読めますけれど・・・」
「さ、左様で御座いますか・・・お、恐れ入ります。で、では会議場へご案内差し上げます」
心が読めると聞いてビビった様だ。少し震えているのが見て取れる。
エレベーターに乗ると超高速度で上昇し始めた。あっという間に百二十二階へ到着し、ドアが開いた。そこは普段レストランのフロアの様だ。大きな窓の外にはペルシャ湾を一望できた。
レストランに足を踏み入れ部屋の中を見渡すと、沢山のテレビカメラの向こうに会議場としての席が設けられていた。席はコの字型に並べられ、既に各国の首脳たちが着席していた。
僕は壇上の一人用の席に案内され席に着いた。
「天照さま。ようこそお越しくださいました。私はアラブ首長国連邦大統領のイルハームです」
そして各国の代表が一人ずつ挨拶していった。一様に表情は硬い。誰一人として笑顔は無かった。まぁ、予想はしていたから驚きはしないが。
「皆さま、初めまして。私は天照 翼です。皆さんからお話があるとのことで伺いました」
「天照さま。我々は困っているのです。どうかお助け下さい」
「困っている?どんなことでしょうか?」
「ここに居る指導者たちの国々では化石燃料の輸出が主な産業なのです。ですが、二十年前から世界は化石燃料の使用を大きく制限しました。その上、西側諸国が中心となって、我々を排除したのです」
「仕方なく、我々はアラブ諸国で手を取り合い、少ない食料を融通し合ってやって来ました。ですがそれももう限界なのです。先日、天照さまは我々と同じ様に西側諸国と隔絶した中国に対して手を差し伸べられました。私共にも手を差し伸べて頂ければと」
「ふむ・・・前提としてなのですが、西側諸国はあなたがたを排除したつもりはないと思いますが?初めに主導したのは日本です。それは天照が始めに日本を創ったから、その日本で環境改善のプロジェクトを立ち上げたのです」
「それを世界に向けて発信したのは日本です。あなた方から見れば、日本は西側なのかも知れませんが、日本政府は全ての国に対して新平和条約の批准を呼び掛けた筈ですよ?」
僕の話を聞いて一層難しい顔をしたイルハーム大統領は声を押し殺しながら答えた。
「呼び掛けとしてはそうです。しかしながら、いきなり化石燃料の使用を禁止し、天照さまの提供される電気を利用しろと言われても、我々には他に売るものがないので御座います。それでは、賛成のしようが御座いません」
「まだ、ご理解頂けていない様ですね。全ての国へお願いしていることは環境の回復です。そのためには各国で自給自足し、経済発展を望まず、格差を是正し全ての人間が平等な暮らしができる様にして頂くというものです」
「既に新平和条約を結んだ国の中で、例えばアフリカの砂漠地帯や南米の貧しい国々では他国へ売るものなどありませんよ?ですが彼らはどうしたら良いか相談して来ました」
「そして彼らには、電気や移動手段だけでなく、砂漠地帯では大気から水を創り出す装置、海沿いの地域では海水を真水にろ過する装置、そして水を循環させる農業プラントなど、技術も提供しました。そして、今や自給自足が出来つつあるのですよ」
「そのことを知らない訳ではないですよね?あなた方は何故、これ程に苦しくなるまで相談して来なかったのですか?」
「そ、それは・・・我々の国教と相容れないものがあるから・・・で御座います」
「イスラムのことですか・・・その教えと相容れないこととは?男女平等ですか?」
「それもありますが・・・そもそも、他国の宗教・・・神を受け入れることは難しいのです」
「あぁ・・・そういうことですか?中国でもお話ししましたが、天照をあなた方の神と受け入れて頂く必要はないのですよ?」
「私はあくまでも地球の環境を守りたいだけなのです。このまま、化石燃料を使い続けていれば確実に人類は滅亡します。だから我々は異世界に保険の星を創ったのですから」
「最悪、地球人が滅亡しても良いのです。人類が滅亡してから地球の環境をリセットし、保険の星から人類を移住させれば良いのですからね。あなた方の神は滅びの道を進むことを良しとしているのですか?もしかして、その様な予言を?」
「と、とんでも御座いません!我々の神はその様なことは申しませんし、予言にも御座いません」
「いや、ちょっと待って頂きたい!我々の神は地球の民を亡ぼしたりしません。それを喧伝されているのは、天照殿ではないのですかな?」
「ほう?では、あなた方は地球温暖化でオゾン層が破壊されたのも、北極と南極の氷が解けて海面が上昇しているのも天照のせいだとおっしゃるのですか?」
「い、いえ、そこまでは申しておりません。でも、すぐにどうこうと言う問題ではないのではありませんか?」
「では、あなた方は、このままでも地球の人類が滅びることはないと考えておいでですか?」
「い、いえ、それは我々も危機としては感じております」
「ふむ。では何故、環境改善に協力しようとしないのですか?宗教のことをおっしゃるなら、イスラム教徒は既に全人類の三分の一以上に達しているではないですか。既にあなた達以外のイスラム教徒たちは新平和条約を批准されているのですよ?」
「いや、それらのイスラム教徒たちは我々とは違うのです」
「うん?彼らを邪教徒だとおっしゃるのですか?」
「いえ、解釈の違いです」
「ふむ・・・解釈の違いですか・・・それならばあなた達も解釈を少しだけ変えてみたら如何ですか?」
「それが出来れば苦労はしません・・・」
「それでは自分たちは何もせず、化石燃料を使い続け、他国にそれを買え、使えと訴え、電気や足りない食料は輸入させろ。そうおっしゃるのですかな?」
「いえ、必要ないならば化石燃料は買って頂かなくても良いのです。しかし、電気や食料は不足しているのです」
「それだけならば、新平和条約を批准し、農業プラント技術を得れば良いではありませんか?他国では環境を守るために食料の輸出をせず、自給自足を目指しているのです。あなた方に売る食料はどの国も作っていませんよ」
「で、ですが神の教えが・・・」
「それは本当に教義なのですか?化石燃料で大きな富を得た指導者たるあなた方がその富を手放したくないだけなのではありませんか?それとも男女平等がそれ程までに許せないのですか?」
「むむ・・・」
「ここからも目の良い人ならばオービタルリングが見えるでしょう。あれの建設費用と維持費は莫大です。そしてこれから提供される、農業プラントや交通システムもです。それらの支払いを一括でお願いしたら、あなた達の国の全財産が無くなりますよ?それを全てリース料として未来永劫、電気代として支払って頂くのです」
「それを継続するためには一部の人間だけが富を得続けることはできないのです。これからは国の指導者も宗教団体も一般市民も同じ立場になるのです」
「宗教を盾にして、それができないと言い張り現状変更を拒み続け、その間に国民が食べることに困ることが続けば民は他国へ逃げ出すでしょう。そして国は保てなくなるのでしょうね」
「そ、そんな・・・我々は見捨てられるのですか?」
「私はあなた方の神ではない。のではなかったですか?どちらにしても私はあなた方を見捨てるなどしたくはありません。できることならば、砂漠地帯を緑化していくお手伝いをしたいとも思っていますよ」
「富や兵器を手放せず、男女平等が許せず、それを神のせいにしているだけなのではありませんか?私にはいつでも手を差し伸べる用意があります。決めるのはあなた方です。お返事を待っていますよ」
「シュンッ!」
僕はこれ以上話し合っても平行線だと判断し、相手が激高する前に引き上げることとした。
「あ。翼!戻って来たのね・・・やっぱり話し合いは平行線だった様ね」
「そうだね。本音が見えないから腹の探り合いみたいになってしまって、埒が明かなかったんだ。相手を怒らせる前に一旦引いて様子を見ようと思ってね」
「そうね。少し頭を冷やして頂かないと・・・」
「では、皆さんへ向けて歌って差し上げましょうか?」
「うん。アネモネ。そうだね。民には響くものがあるかも知れないからね」
「えぇ、歌いましょう」
早速、船の翼の上に出ると音響設備を出現させ民衆に声を掛けた。
『皆さん、私は天照 翼。そしてこちらは四人の女神たちです。今から女神たちがあなた達を癒すため、歌を披露いたします』
「うぉー!」
民衆は頭の中に直接響く声に興奮した様だ。
そして女神たちの歌が始まった。民衆は静まり返り、歌声を頭の中で直接聞いた。
皆、地面に跪いて女神たちを見上げた。
笑顔で見つめる者、涙を流す者、熱狂して踊りだす者も居た。
その様子はヘリコプターやドローンのカメラで撮影され世界中に放送された。
最後のアネモネの歌になり、失神する者が出始めた。バタバタと倒れていく。ちょっと心配になってくる。四曲の歌が終わり、ゆっくりと船を上昇させ月の都へと戻った。
それから新平和条約を批准していない中東の国々を巡って、歌を披露する慰問の旅となった。乾燥地帯やオアシスを中心に雨も降らした。
一か月後、中東地域の新平和条約を批准していない国々では、次々と国民たちがデモやストライキに打って出た。平和条約を批准しない政府を非難し、受け入れないならば他国へ移住すると迫ったのだ。
また、国を出ようと国境へ並ぶ長い車列もできた。やはり、デモの参加者の大半は女性と三十代以下の若者だった。
そして数か月後には各国政府が態度を軟化させ、新平和条約を批准するに至った。
イランやシリアなど核兵器を保有していると疑われた国には査察が入り、核兵器、原子力発電所、核研究施設の全てが太陽の軌道へ転移され処分された。これで核兵器や原子力発電所などを保有する国は中国と北朝鮮だけとなった。
これにより新たな問題が起こった。中国、北朝鮮が孤立してしまったのだ。
今まで中国は莫大な経費を支払って中東からタンカーで原油を輸入し続けていたが、その道を閉ざされてしまったのだ。
「翼、中国の動向には十分に注意するのだよ」
「はい。お父さま。軍の動きなどはオービタルリングにある監視システムで二十四時間監視していますし、あらゆる艦船、航空機、ミサイル、核兵器の位置も把握しています」
「それと、そろそろ天照さまがお生まれになるんだ。翼が作った異次元空間移動装置も翼に返すそうだから、来週には神星に来てくれるかな?」
「あぁ、天照さまはもう、千五百年前の世界へ行かれるのですね」
「その様だよ。でも翼はいつでも会いに行けるね」
「でも、今度生まれて来る天照さまも同じ記憶を引き継いでいらっしゃるのですよね?」
「うん。そうだね。だからどちらも同じ天照さまなのだけどね」
「なんだか不思議ですね・・・」
そして異次元空間移動装置を返して頂くため、神星へ行くこととなった。
お読みいただきまして、ありがとうございました!