23.PV撮影
月の都から動力の無い小型船に乗り、四人はまずネモフィラ王国へ飛んだ。
お父さんの案内で次々にお母さま方ご推薦の場所を巡って行くのだ。
「シュンッ!」
「うわぁ!凄いですね!」
「いつ見ても美しいわ!」
「うわぁ!素敵!こんなに美しい景色を見るのは初めてです!」
「あぁ・・・空の青とネモフィラの青。それにアネモネのストロベリーブロンドの髪色が素晴らしく調和するね・・・」
「ちょっと・・・翼?大丈夫?」
「え?お父さま。何か?」
「これは相当、魅了されているな・・・」
「それで?どう撮影するのかしら?」
「お母さま。私が一番美しい画角を探します。見つけたら翼に撮影準備をしてもらって、録音された伴奏を携帯端末から流しながら歌います」
「そうね。どこから見るのが一番美しいかしらね」
「それなら私たちがいつも座る特等席の位置があるよ。ほら、あちらとあちらの二か所に見える木々があるだろう?あれが額縁の両側の縁になる様にすれば、絵画の様に空の青、ネモフィラの青と木々の緑が美しく調和するんだ」
僕らはお父さんが宙を浮いて移動する後について飛んだ。
「ほら、この辺だよ。どうかな?」
「まぁ!素晴らしいです」
「うん。良いと思う!」
「では、カメラをセットしてアネモネの立ち位置を決めましょう」
アネモネは宙に浮かんでネモフィラの花の上を低空飛行しながら遠ざかって行った。
僕はカメラに映るアネモネを確認しながら立ち位置を指示した。
「うん。その辺で良いよ。始めようか。こちらは録画を始めるからアネモネのタイミングで始めてくれて良いよ」
「分かったわ」
「では、録画を始めるよ。3、2、1!」
アネモネは携帯端末に触れ伴奏を再生した。この場の歌声は録音されないが、先日録音した歌と口の動きをシンクロさせるために音楽を流し、実際に歌うのだ。だからアネモネは今日、撮影場所毎に同じ歌を通しで歌うこととなる。
この場での撮影は、このまま額縁の背景から動かさないので、カメラを固定して歌うアネモネを見守った。
『翼、アネモネの歌って素敵ね!』
『はい。舞依お母さま。アネモネは前世でシンガーソングライターだったので今回作った歌も素晴らしいのですが、歌声も美しいですね』
『まぁ!べた惚れなのね・・・』
『はい。それはまぁ・・・』
アネモネは歌っている間、ずっとカメラのレンズを見つめ続けている。自分でも意識して魅了の能力を解放しているのだ。それだけではない。ドレスや宝石が陽の光を浴びて輝いている。特にティアラが眩い輝きを放ち、美しさを倍増させていた。
歌を歌い終わるとアネモネは優しくやわらかな笑顔で微笑んだ。
「カット!」
「アネモネ。良かったよ」
「シュンッ!」
アネモネは瞬間移動して僕に抱きついてきた。
「翼!どうだった?」
「うん。とっても良かったよ」
「そう?嬉しい!」
「まぁまぁ!お熱いこと・・・」
舞依お母さまは、抱き合いキスをする僕らを横目で見ながら微笑んだ。それを見ていたお父さんが舞依お母さまを抱き寄せてキスをしていた。相変わらず仲睦まじい様だ。
「さぁ、次の撮影場所へ行きましょうか?」
「そうだね」
次はビオラ王国のジャカランダ並木だ。
「シュンッ!」
「わぁ!ここも素敵!」
「桜みたいに美しいね!」
ここでも一番美しく見える画角を探した。
「翼、ここは並木になっているから、一点から撮り続けるのではなく私が宙を飛びながら流れる様な映像にするのが良いのではないかしら?」
「あぁ、それは良いね。並木の端から撮り始めて、アネモネに追い付いたらカメラをターンさせて、そこからはアネモネも宙を飛んでジャカランダの花の横をゆっくりと飛びながら歌うんだ」
「えぇ、良いわね。ではまず動きを決めましょうか」
僕はカメラに映る映像をチェックしながらアネモネをファインダーの中に追い続けた。
三回程リハーサルを繰り返し、きちんとアネモネを追える様になったのを確認して本番を迎えた。
アネモネは僕が念話でスタートの合図を送ると伴奏をスタートさせた。僕はまず、ジャカランダの並木の全景を撮り、すぐに飛びながら低い位置からアネモネに迫っていく。
アネモネが歌い出し、アネモネを画面中央に捉えると、そこからアネモネが宙に浮く。
ジャカランダの花の高さへ昇ると、そこから流れる様に移動していく。
アネモネのストロベリーブロンドのウエーブした髪が風に流れる。その向こうにはジャカランダの紫色の花が連なっている。何て美しい情景なのだろう。僕は撮影しながらその美しさに酔いしれた。これも魅了されているせいなのだろうか?
確かに真直ぐにアネモネの顔を撮るより、こうして飛びながら少し斜めから撮ると、アネモネが流し目で見つめている様になり、更に魅力的に映るのだ。
僕は欲情する気持ちを何とか抑えながら、何とか最後まで撮影することができた。
「カット!」
撮影を止めると、またしてもアネモネが瞬間移動して僕に抱きついてきた。
「アネモネ。僕もう、耐えられないよ・・・」
「ごめんなさい。全力で魅了の能力を解放しているから・・・でも、ここで撮影を中断してセックスを始めたら止められなくなるでしょう?」
「うん。それはそうだと思う・・・」
「大変だけど、何とか我慢してね」
「う、うん。頑張るよ・・・」
「翼、大変だね。流石に私にも少し、伝わって来るものがあるよ」
「まぁ!月夜見さま!」
「舞依。大丈夫だよ。でもあれだけ能力を解放されてしまうとね・・・」
「私で我慢して!」
そう言って、舞依お母さまはお父さんを抱きしめてキスをした。そんなのを見せつけられたら、もっと我慢できなくなってしまうじゃないか!
アネモネの魅了って・・・本当に凄いんだな・・・
次は水の国、プルメリア王国だ。まずは王都の上空に出現すると、南部の海辺の街へ向かった。そこは空から見ると湿原の様に低い大地と幾重にも重なる川と入り江が現れた。
どこまでも碧い海、緑を湛えた入り江、光り輝く川の水面。全てが輝いていた。
「ここはこの上空からの景色も素晴らしいし、これから向かう白い砂浜も美しいんだ」
「そうですね。これだけ美しい景色を映像に入れないのは勿体ないですね」
「別々に一曲ずつ撮っておきましょう。ここはもうここから撮るのが一番ね」
「え?ここで?どうやって撮るんだい?」
「そうね。この船の屋根に立って撮るか、宙に浮かんだままでも良いのでは?」
「あぁ、それならあそこの山の山頂からでもきれいに見えるのではないかな?」
「行ってみましょうか」
「シュンッ!」
山の山頂へ瞬間移動してみると、お父さんが言った通り湿原と海が見渡せた。
「あぁ、ここは素晴らしいわ!」
「うん。ではここで撮影を始めよう」
山頂から湿原を見下ろす景色を背景として、アネモネは歌い始めた。
僕はそれをカメラに収めると、四人で次の砂浜へと移動した。そこにはプルメリアの花が咲き乱れていた。
「紗良と来たビーチだよ。ここも美しいだろう?」
「そうですね。白い砂浜が真っ直ぐにどこまでも続いているのですね」
「ここも初めは地上からプルメリアの花を入れて、そして途中で空から砂浜の全景を撮って、海岸線を飛びながら流れていくのが良いわね」
「分かった、一度、リハーサルしてから本番を撮ろう」
海の次は山だ。桜お母さまお薦めのペンタス王国の高原にやって来た。
「あれ?この景色って日本で見たことがある様な気がしますね」
「あ!ここって長野県の上高地みたいなのよ!」
「アネモネは行ったことがあるのかい?」
「えぇ、あるわ。私、前世の歌手活動の時、プロモーションビデオを撮るのに上高地へ行ったの。ここは上高地にそっくりだわ」
「その時はどんなシチュエーションで撮ったんだい?」
「ここにも川があるわよね。あの川岸から雪を頂く山を望む様な画角で撮ったわ」
「うん。やはり、それが美しいのだろうね」
「それだけでは単調でしょうから、やはり空撮は入れた方が良いわ」
「うん。では動きをリハーサルしてみよう」
川岸から清流と高山植物を織り交ぜながら撮り始め、そこから宙に浮かんで、雪を頂いた高山をバックに飛んだ。
「うん。とても良い映像が撮れたと思うよ」
「さぁ、次へ行きましょう」
「アネモネ、そんなに続けて歌って疲れないかい?」
「えぇ、本気で歌っていないから大丈夫よ」
次は舞依お母さまの母国、アスチルベ王国へ飛んだ。ここには国花のアスチルベの広大な畑があるそうだ。
「シュンッ!」
「これは!」
「凄いわ!」
「綺麗でしょう?ここはアスチルベでもピンクのものを植えているの。私の髪色に合わせているのよ。他の場所ではお姉さま達のために赤や白の花畑もあるの」
「あぁ、舞依お母さまは王女だったのですものね」
「えぇ、これならアネモネの髪色とも同じだから、とても良いでしょう?」
「はい。舞依お母さま。とても素敵な場所ですね」
「ここはどうやって撮ろうかしら?」
「そうだね・・・うん。ここはとても広大だから、アネモネは中心に立って歌うんだ。僕が宙に浮いて三百六十度回転しながらアネモネを撮るよ」
「それは面白いわね!周囲も緑が多いし、こんなに開けた場所はそうは無いものね」
「よし、では始めようか!」
僕とアネモネで宙を飛び、アスチルベ畑の真ん中へ入った。お父さんと舞依お母さまは、小型船に乗って上空へ昇って空中で静止した。
中途半端な位置に居ると三百六十度回転して撮っている時にバックに入ってしまうからだ。
始めは遠くから撮り始め、段々と近付いて行き、ゆっくりと回り始める。二回転くらい回ったところでアネモネにバストアップまで近付くと、アネモネが両手を差し出し僕と両手を繋いでいる様にして回って行った。
そこからゆっくりと空中へ浮かんで行き、僕が少し高い位置になってアネモネとアスチルベ畑を見下ろす様に撮影した。
撮影を終えてアスチルベ畑の端に二人で舞い降りると、僕はアネモネを抱き締めながらアスチルベの花を見つめた。
「翼・・・少し、その辺に座って休憩しましょうか?」
「うん。お父さま達は?」
「上を見て?さっきから降りてこないわ。きっと仲良くしているのでしょう?」
「あぁ、舞依お母さまの故郷だものね」
「じゃぁ、僕たちも・・・」
「駄目よ翼。止められなくなっちゃうでしょう?」
「う、うん・・・そうだね・・・って、それ作戦でしょ?」
「あら?分かっちゃった?」
「今夜、に期待しているんだね?」
「だって、これだけ焦らしているんですもの。期待してしまうわ!」
アネモネは悪戯っ子の様に微笑んだ。あぁもう!・・・増々燃え上がってしまうよ・・・
すると、漸く小型船がゆっくりと降りて来た。
「やぁ、ごめん。待たせちゃったかな?」
舞依お母さまは真っ赤な顔をしていた。これは熱い時間を過ごしていた様だ・・・
「お父さま、あと何か所あるのですか?」
「二か所だね。次はカンパニュラ王国の海岸へ行こうか」
「あぁ、月の都ですね」
「そうだよ。さぁ、乗って。飛ぶよ」
「シュンッ!」
「まぁ!素敵!月の都から流れ落ちる瀧が水飛沫に変わって、虹を創り出しているのね!それにその向こうの二つの月が幻想的で美しいわ!」
「そうだね。でもここからだと近過ぎて見上げる感じになってしまうね」
「翼、それならあそこの岬の上から撮るのはどうかしら?」
僕らは岬の崖の上へ瞬間移動した。
「シュンッ!」
「あぁ、ここなら月の都とかなり離れているから、神宮と月の都までの途中の岩と鳥居も入るし、月との距離感も丁度良いね」
「本当に素敵ね!陽菜が感動したのが分かるわ!」
「僕もこの景色は大好きなんだよ」
「ここは動き難いかな?」
「えぇ、私は崖の先端に立つわね。翼はあまり動かずに、ズームを使って私と月の都、それと二つの月の距離感が分かる様に前後に動かして撮ってくれるかしら?」
「うん。やってみるよ」
アネモネは伴奏の再生を始め歌った。
僕はカメラの画面を見ながら、アネモネのアップから徐々に引いて行き、月の都から流れ落ちる瀧と輝きながら舞う水飛沫、そして虹を捉えた。
そこから更に画面を引いて二つの月を画面に収めた。ゆっくりと回転する月がアネモネの歌とリンクしている様に見える。とても幻想的な画になったと思う。
「さて、最後の場所へ行こうか?」
「最後はどこでしょう?」
「イベリス王国の光るクラゲの居る湖だよ」
「シュンッ!」
「あら?ここは?」
「ここはイベリス王城だよ」
イベリス王城の庭園に出現した様だ。お父さんに念話で連絡を受けていた月菜お姉さまとエミリアノ王子、それに王のアルベルトさまと王妃の春月伯母さまが出迎えてくれた。
「お父さま!お久しぶりです」
「月菜。久しぶりだね」
「お父さま、こちらはエドワール、五歳になりました。こちらはリリアーヌ三歳です」
「そうか。エドワール。リリアーヌ。こんにちは」
「お爺さま?」
「そうだよ。良い子だね、エドワール」
エドワールは月菜と同じ、プラチナシルバーの髪に青い瞳、リリアーヌはエミリアノに似て、ブロンドの髪に青い瞳だ。二人とも可愛らしく挨拶をした。
「あぁ、春月も」
「まぁ!お兄さま!相変わらずお美しい!それにあなたが翼なのね。素敵な男性ね。それと・・・あら?そちらは?」
「こちらは陽翔の妻のアネモネ グースベリー王女ですよ」
「まぁ!グースベリーの王女さま。何てお美しい!」
「初めまして。アネモネ グースベリーです」
「突然、訪れて申し訳ない。光るクラゲの居る湖を撮影したいのだけど、暗くなるまでまだ時間があるものだから寄らせてもらったんだ」
「どうぞ。歓迎いたします!夕食をご用意しましたので、どうぞこちらへ」
「ありがとう。助かるよ」
皆で食堂へ移動して、少し早い夕食が始まった。僕らは一日飛び回っていたから良い休憩となった。
「月夜見さま、クラゲの居る湖で何をするのですか?」
「うん。翼は地球環境を救うための試みに携わっているんだよ」
「はい。アネモネが歌っているところをビデオカメラに収めて、地球の人々に見せるのです」
「歌を聞かせるのね?そう言えば、翼がカラオケの装置を造って送ってくれたのよね?」
「そうですね。春月。翼はもの作りの天才なのですよ」
「素晴らしいわ。それで何故、アネモネ王女が歌を?」
「アネモネの前世は地球で歌手をしていたのです。それで歌を作ってもらったのです」
「まぁ!歌手?歌うことを仕事にしていたのね?」
「えぇ、歌うだけでなく、歌を作ることもしていました」
「それは素晴らしいわ。是非、聞いてみたいわね」
「構いませんよ。後でお聞かせしますね」
「まぁ!嬉しい!」
皆で夕食を頂いてからサロンへ移り、お茶を頂きながらアネモネの歌を聴くこととなった。アネモネは携帯端末の伴奏を再生し、歌い始めた。
アルベルト王、エミリアノは勿論のこと、サロンに居た全ての人がアネモネに魅了され、女性たちは皆、涙を流しながら聞き惚れていた。
『お父さま。あまり長居しますと、皆がアネモネに魅了されてしまいますね』
『そうだね。そろそろ湖へ行こうか』
『はい。そうですね』
「春月。私たちはそろそろ撮影に向かいます」
「あら、もう?」
「えぇ、今日は朝から出回っていますので・・・」
「あぁ、それは大変!引き留めてはいけませんね」
「また、寄らせてもらいます」
「はい。是非、お越しください。幸子お姉さまにもよろしくお伝えください」
「分かりました」
僕たちは小型船に乗り、瞬間移動はせずに空を飛んで湖の周囲を回った。
「さて、どこから撮るのが美しく見えるかな?」
「イベリス城を背景にするのが良いのでは?」
「あぁ、ではこちら側だね」
お父さんが船を動かし、湖の向こうにイベリス城が見える位置に止まった。
「ここは良いですね。湖畔に立つと湖面がクラゲの光で照らされ、ほのかに明るいのです。その向こうのお城も窓に暖かな灯りが映っている様が美しいですね」
「そうだね。幻想的な雰囲気で良いね」
アネモネは湖畔の湖面から少しだけ高くなっている場所に立ち、歌い始めた。
途中から宙に浮かび、湖の上に出て空中から光るクラゲをバックに撮り、イベリス城を大きく撮ったりもした。
一通り撮り終え月の都へ帰ることとなった。明日も予備日として押さえてある。
明日は朝から今日撮った映像を確認し、問題があれば撮り直しに出掛けることとなる。
「シュンッ!」
「ただいま!」
「月夜見さま。お帰りなさい。遅くまで大変でしたね」
「うん。でもイベリスで時間が空いてしまったから、春月のところで早目の夕食を頂いたんだよ」
「まぁ!それでは、エドワールとリリアーヌに会って頂けたのですね?」
「うん。幸子。とても良い子たちだったよ」
「それは良かったわ」
「翼、アネモネ。大変だったわね。疲れたでしょう?」
「琴葉お母さま。大丈夫です」
「明日はどうするの?」
「朝から映像を確認して問題があれば撮り直しに行きます」
「今日はもう休ませて頂きますね」
「そうね。早く休むと良いわ」
「はい。おやすみなさい」
そう言うとアネモネは僕の手を引いて部屋へ足早に移動した。
「あぁ、もう我慢できない!」
「私もよ!」
僕はアネモネを抱きしめてキスをした。アネモネは僕の服を次々に脱がしていく。
あっという間に丸裸にすると、自分のドレスは脱ぎ方があるのか、自分でさっさと脱いでいった。
アネモネは僕を抱きしめたまま風呂へ瞬間移動し、シャワーを浴びながらキスを続けた。
「翼、今日の私、どうだった?」
「うん。とても素敵だった。カメラで君を追っている間、ずっとドキドキしていたよ」
「ホント?」
「うん。アネモネは本当に美しい・・・君が欲しくて堪らなかった」
「あぁ・・・翼・・・嬉しい・・・私もよ。今日一日、ずっと翼に見つめられていたから・・・もうベッドへ行きましょう?」
「うん」
「シュンッ!」
碌に身体を拭くこともせず、ふたりは抱き合ったままベッドへ飛んだ。
「最初は翼に好きな様にして欲しいわ」
「うん。アネモネ。今、魅了の能力を使っているかい?」
「いいえ。でも今日はずっと使っていたからカメラ越しでも翼には効いてしまっていると思うわ」
「そうだよね・・・もう止まらないよ」
「来て!」
先に主導権をもらい、僕はアネモネを抱いた・・・
朝、目を覚ますと、アネモネは僕の顔を撫でながら微笑み見つめていた。
「アネモネ・・・おはよう」
「おはよう。あなた・・・」
僕はアネモネにキスをした。
「昨夜は満足した?」
「うん。とっても。アネモネは?」
「えぇ、私も満足したわ」
「なんだか千五百年前と比べると、とても理性的になったのかな?」
「そうね。千五百年前は原始人みたいなものだったのよ」
「え?でも僕は現代人のままなんだけど?」
「ふふっ、翼は私の魅了に飲まれて操られていた様なものよ」
「羽月は自分で魅了の力に気付いていたの?」
「それが神の能力だとは知らなかったわ。でも男でも女でも相手がそうなることは知っていたわ」
「ふぅ、僕はしてやられていたんだね」
「でも、気持ち良かったでしょう?」
「う、うん」
「もう一回する?」
「うん。する」
そして僕らはもう一度、セックスをしてから朝食の席へ向かった。
朝食後にサロンへ集まると、モニターに撮影した映像を映して確認した。
「どこも美しいわ。それにしても撮り方が上手いわ。翼はこういうことも得意なの?」
「陽菜お母さま。ほとんどアネモネの指示通りに撮っているのです。あと、景色の美しい角度はお父さまのお薦めを聞いています」
「まぁ!アネモネは多才なのね!」
「お義母さま。前世で歌手だった時にこういうことは沢山やりましたから」
「やってきたとは言え才能も必要だと思うわ」
「ありがとうございます」
「これなら撮り直しは必要なさそうだね」
「そうですね。お父さま。僕もこれで良いと思います」
「どうする。すぐに地球へ送ろうか?」
「いえ、今日は予備日で他に予定はありませんから、アネモネと少し出掛けて来たいのですが」
「うん。分かったよ。では戻ったら送るから声を掛けておくれ」
「はい。お父さま」
『翼、どこか行きたいところがあるのですか?』
『アネモネが行きたいところへ行きたいな』
『え?今日は一日、ふたりで過ごせるのですか?』
『うん。だって予備日だから』
『嬉しい!それならプルメリア王国のビーチへ行きたいわ!』
『やっぱり!僕もそう思っていたんだ!』
「シュンッ!」
「うわぁ!素敵!ビーチにふたりだけなのね!」
「昨日一日頑張ったご褒美だよ」
「ありがとう!翼!大好き!」
そして、ふたりは一日中ビーチで愛し合った・・・
お読みいただきまして、ありがとうございました!