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22.レコーディング

 天ヶ瀬芸能事務所で打ち合わせをした後、歌の練習が始まった。


 葉留がピアノで伴奏し、四人で歌う。コーラスやソロパートを繰り返し練習した。一週間後には事務所からオーケストラと新奈のバンドが演奏した四曲の録音データが届いた。


 発声練習はヴォイストレーニングを受けた経験から新奈が先生となり、望と結衣を訓練していった。


 その様子を僕は蓮を抱いて、毎日一緒に見守った。

「望も結衣も初めより随分と声がでる様になったね」

「そうね。やはりこの身体は普通とは何か違うのかしら」

「二人とも賢いから、私のアドバイスですぐにできる様になっちゃうのよ」

「えぇ、そうね。二人とも、もうプロと言って良いレベルだと思うわ」


「そうかしら?自分では分からないけど・・・」

「結衣。大丈夫だよ。僕は初めから聞いていたからね」

「お母さま。お歌、上手です!」

「まぁ!蓮。ありがとう!」

 結衣は蓮を抱きしめて頬ずりした。蓮は嬉しそうに笑っていた。


 その後の話し合いでピアノは葉留が担当することになった。ピアノの伴奏だけで歌うケースもあるからだ。そのため、葉留も揃いのドレスを作ることとなった。レコーディングの日まで、皆、懸命に練習を重ねていった。




 プロジェクトは低軌道エレベーターの建造に入った。僕の正体をカミングアウトしてしまったので、神代重工での会議にはもう偽名を使ったり、音声だけで会議に出席する必要がなくなった。


 今日からは僕と新奈と望、それに結衣は普通に会議室での会議に出席することとなった。

鳳城ほうじょうさん・・・ではなかったのですね・・・」

 会議に入り着席すると、技術者の一人が僕の顔を見て思わずつぶやいた。


「皆さんに隠していたことをお詫びします。ですが、これからはオープンにできますし、こうして直接お話しできることを僕は嬉しく思っています」

「そうですね。我々としても、これが神のおこしたプロジェクトであることを公然と話せますので、これまで以上に協力を得られることでしょう」


「それでは会議を始めましょうか・・・今日はプロジェクトの最後となる低軌道エレベーターの着工プロセスの確認です」

「あ、あの・・・すみません。プロジェクトはこれが最後ではありません」


「あ!そうだ!テレビで地磁気の発生装置のことをお話しされていましたね」

「はい。それがあるのです。今、設計中ですが、この低軌道エレベーターが完成する頃には着工できる様、間に合わせるつもりです」


「そ、それと・・・あの、ここにいらっしゃる皆さんは、皆、翼さまの奥さまなのですか?」

「あぁ、そうでしたね。皆さんにはきちんとご紹介しないといけませんね。テレビでお話しした通り、こちらの三人は私の妻です。新奈と望のことは顔も含めてご存じでしょう。もう一人、そちらは元九十九家電の社長令嬢だった、九十九 結衣です」

「おぉ!あの九十九家電の・・・」


「皆さん、初めまして。今までは翼の秘書として、この一年、会議に代理出席しておりました。九十九 結衣で御座います。今後とも、よろしくお願いいたします」

「おぉ!め、女神さま・・・」


 出席者の目がハート型になっている気がした。これはアネモネをここに連れて来ることは絶対にできないな・・・


 建造計画をおさらいし、スケジュール確認が終わったところで質問タイムとなった。

「翼さま。この低軌道エレベーターが完成してからのことなのですが、オービタルリングとの接続部分にあるステーションには展望室や居住スペースもあります。これはどの様な運用をお考えなのでしょうか?」


「それは観光です。宇宙旅行ですよ」

「え?宇宙旅行?一般人がこのステーションへ上がれるのですか?」

「はい。そうです。そこから地球の美しさを実際に見てもらえば、地球環境のことを考えない訳にはいかなくなると思いませんか?」


「はい。必ずそう思うことでしょう・・・でも、展望ツアーに行ける人数を考えますと、希望者が殺到した場合、生きている内に行けるかどうか・・・」

「あぁ、そのステーションへ行くツアーだけだとそうなってしまいますね。今後、あの巨大輸送船の大きさで観光船も作りますよ。そうですね。一度に四万とか五万人乗れる船を」


「五万人?な、何故そんな大きな船を?」

「地球はいつどうなるか分からないのですよ?ノアの箱舟も必要なのではありませんか?」

「え?でも神は、保険の星を用意されているのですよね?」

「それを用意されたのは天照さまです。私はこの地球の居住者です。人類全体を考えるより先に地球で今現在暮らしている人々の命を考えたいのです」


「おぉ・・・翼さまは私たちの命をお考えくださっているのですか?」

「勿論です。だから、オービタルリングと低軌道エレベーター、それに地磁気を発生させる装置を造るのです。そして万一の備えとして地球脱出と宇宙観光を併用できる大型船を建造しようと思うのです」


「宇宙旅行は抽選方式が良いでしょうか?」

「あ!それ、プロモーションに使えますね!宇宙ステーションや大型宇宙船のCG映像を作って「新平和条約を結んだ国の国民は宇宙旅行へ行ける!」ってアピールするCMを作るのです」

「あぁ、それは良いね」

「ところで低軌道エレベーターにはどこから乗れるのかしら?」


「あぁ、望は知らなかったね。低軌道エレベーターの地球側は東京湾に降ろすんだよ」

「東京湾に?あら?あれって赤道上に降ろすものなのではなかったかしら?」

「おや、そんな知識があったんだね。そうだよ。普通は赤道上へ降ろすんだ。でも、僕が設計したものはエレベーターの支柱にも反重力装置を組み込んで制御するからどこにでも降ろせるんだよ」


「そうなのね」

「他国からの攻撃などを考えると日本に降ろすのが一番安全だからね」

「流石、翼ね。良く考えられているわ」


「あら?では、宇宙ステーションで仕事をする人も必要になるのね?」

「そうだね。宇宙観光船のキャビンアテンダントも必要だね」

「その仕事に就くのは大変な倍率になりそうね」


「あ。それって、専門の学科で勉強してもらわないといけないね。今から教育プログラムと人材募集の要件を作らないといけないね」

「それって昔の航空会社が適任なのでは?」

「そうだね。キャビンアテンダントの部分はそうなるね」

「パイロットは要らないの?」

「うん。地上からの遠隔操作と自動航行だからね」


「翼君、航空会社なら私の伝手つてで声掛けできますよ」

「神代社長。ありがとうございます。是非、お声掛けをお願いします」

「宇宙ステーション勤務は、やはり神代重工の社員になるでしょうか?」

「そうですね。ステーションを建造した会社がたずさわるのが良いでしょう。基本構造が分かっていて構造物の維持や管理も行いますからね」


「では、そちらの会議を新たに入れなければいけませんね。プロジェクトメンバーが決まりましたらお知らせ致します」

「神代社長、よろしくお願いいたします」

「では、皆さん、失礼致します」


「シュンッ!」


「おぉーっ!消えた!本当に神さまと女神さまなんだ!」

「社長!ご令嬢が女神さまになられるなんて!おめでとうございます!」

「既にご結婚されていたのですね!おめでとうございます!」

「あぁ、そうだった。君たちには話せなくてな・・・すまない」


「とんでもない!神さまや女神さまとこうして一緒に仕事ができるなんて!こんな幸せなことは御座いません!」

「それにしても、女神さまとは美しいお方なのですね!」

「今日のお三方以外にもうお一人いらっしゃるのでしょう?」

「どれ程、美しいのでしょうね?」


「さぁさぁ、皆、低軌道エレベーターの建造に取り掛かってくれ!」

「はい!」




 レコーディングの日がやって来た。既に衣装のドレスはできていて新奈が月の都へ転送してくれていた。


 ドレスはAラインとプリンセスラインの中間くらいになる様にパニエで調整されている。スカートの裾は長めだが、長く引きずり過ぎない程度に抑えられている。袖はベルスリープと呼ばれる肘から袖口に向かって広がっているタイプだ。派手に踊らない分、腕の動きで美しく見せるのだそうだ。


 胸元はあまり派手に開いてはいないが、ギリギリ胸の谷間に掛かるくらい開いている。だが、ネックレスの宝石の大きさに目が行くだろうから問題ないだろう。その他、胸回りや肩、袖口の刺繍が凝っていて美しかった。


 靴は五人の身長を合わせるため、ヒールの高さが調整され、全員百八十五センチメートルに見える様になっている。


 五人はドレスを着てアクセサリーを身に着けた。アクセサリーの宝石はアネモネがルビー、新奈と葉留がサファイア、望と結衣はダイアモンドを選んだ。


「まぁ!何て美しい!素晴らしいわ。これはどう見ても女神さまね!」

「お義母さま。ありがとうございます」

「本当に美しいね・・・驚いてしまって、あまり言葉が浮かばないよ」

「翼、ありがとう!」


「お母さま。天使みたいです!」

「まぁ!蓮。私が天使なの?」

「お母さま、飛んでみてください!」

「え?こんな感じかしら?」

 結衣は蓮に言われるがまま、その場で浮かび上がってふわふわと宙をただよった。


「やっぱり天使です!」

「そうだね。天使みたいだ。とっても綺麗で可愛い!」

「まぁ!翼までそんな・・・」

 結衣は真っ赤な顔になった。本当に可愛い。


「さぁ、おふざけはそれくらいにして、そろそろスタジオへ飛びますよ」

「はい。わかったわ。新奈」


 そして待ち合わせの時間になり、天ヶ瀬芸能事務所の第一スタジオへ直接飛んだ。


「シュンッ!」

「おぉーっ!」

 スタジオに居たスタッフ全員が驚きと感動の声を上げた。


「め、女神さま・・・なんてお美しい・・・」

「あぁ・・・素晴らしい・・・」

 全てのスタッフと演奏者たちが目を丸くし、五人の美しさに絶句した。そして、アネモネと目が合うだけで次々と魅了され恋に落ちる。


「新奈!」

「みんな!久しぶりね!」

「新奈・・・女神さまだったのね?」

「えぇ、隠していてごめんなさい」

「そんなこといいの。話せることではないもの。それにしても本当に美しいわ!」


「ありがとう。皆に紹介するわ。私の旦那さまの翼よ。それに四姉妹の望、結衣、そしてアネモネ。あとピアノ担当の葉留。翼の妹なの。それに結衣の息子の蓮よ」

「皆さん、いつも新奈がお世話になっています。翼です。よろしく」


「い、いえ、こちらこそ!あの、私はリーダーでギター担当の千枝美ちえみです。あと、こちらから、ベースの千早ちはや、ドラムのはるか、キーボードの百合花ゆりかです」

「よろしくお願いいたします!」

 新奈のバンドメンバーが四人並んで深々と頭を下げた。


「皆さん、今回の伴奏なのだけど、新奈のソロ曲以外はオーケストラの演奏となっているわ。ピアノは翼さまの妹の葉留さまに担当して頂きます」

「えぇ、分かりました」


 第一スタジオは一番大きなスタジオだ。オーケストラが入る大きなメインブースとグランドピアノだけが入るピアノブース、それにバンドの入るブースも分かれている。


 女神四人はヴォーカルブースへ入り、葉留はピアノブースへ入った。僕と蓮、美歌社長と元社長の天ケ瀬さんは、ミキシングブースに入って皆を見守る。


「既にバンドメンバーもオーケストラも十分に音合わせはできているから直ぐに始められるわ」

「そう。それならどんどん録ってしまいましょう!葉留は大丈夫かしら?」

「えぇ、問題ないわ」

「ふふっ、天舞音お姉ちゃんらしいわね・・・分かったわ。では、皆さん、始めましょう!」


 まずは、アネモネのソロ曲、次に新奈のソロ曲、そしてグループ曲を次々に録音していった。


 驚いたのはアネモネと新奈の集中力だ。まさに神懸かみがかっていた。当たり前なのかも知れないが、感情の乗せ方がプロのそれだった。演奏の方も神の力に乗せられているかの様にノーミスで心の入った素晴らしい演奏だった。


 四曲一気に録音すると、アネモネが美歌社長に聞いた。

「美歌、どうする?これで良いと思うのだけど、一応、Take2テイクツー録っとく?」

「いえ、大丈夫よ。素晴らしかったわ。でも、録音の方を確認したいから、一度皆で聞きましょうか?」

「えぇ、そうね」

 そして録音された四曲を続けて流し、全員で聞いた。


 最後は四人で歌うグループ曲「永遠の約束」だ。


 今夜も月が昇る

 夕陽に染まった赤い空

 ゆっくりとしずめるように

 陽が沈みまたたき始めた星を隠していきながら

 輝く星は消えてしまったの

 今は見えないけれどそこにいる

 今夜は月が主役なだけ

 

 共に過ごした日々

 沈む夕陽を見送った浜辺

 美しい月を出迎えたあの山

 宵闇よいやみの空見上げ 輝く星を数えたあの夜

 あなたは消えてしまったの

 今は逢えないけれどそこにいる

 いつかきっと迎えにくる

 

 なんど別れが来ようとも

 なんど生まれ変わっても

 心に刻まれたあなたの笑顔 その温もり

 忘れることはないでしょう


 なんど陽が沈んでも

 なんど月が昇っても

 共に生きた記憶 優しい眼差まなざ

 愛は永遠とわに続くでしょう


 わたしがどこに居ようとも

 どうか探し出して

 どうか見つけて


 いつでもいつまでも待っている

 どうか探し出して

 どうか見つけて


 どれだけ時が流れても

 どれだけ時代が代わっても

 時を超えふたたび逢えるその日まで




 演奏が終わると、そこに居た全員が立ち上がり、涙を流しながら拍手した。

「素晴らしい!」

「うん。問題ないな。どの曲も素晴らしいよ。感動して涙が止まらない・・・」

 天ケ瀬さんがハンカチで涙をぬぐいながら笑顔になった。


 そして美歌社長はメインブースとバンドの居るブース、葉留のピアノブースにあるスピーカーを通じて皆に声を掛けた。

「皆さん、出来はどうかしら?」


 すると演奏者全員が立ち上がり、大きな拍手を送った。皆、涙を流していた。

葉留だけは笑顔でこちらに手を振っていた。


『アネモネ、お姉ちゃんたち、皆、素晴らしかったわ!』

『葉留あなたの演奏も素晴らしかったわ。流石ね!』

 葉留とアネモネはお互いを褒め合った。


「うん。良い様ね。皆さん、お疲れさまでした!ありがとう!」

「美歌、ありがとう。素晴らしい出来になったわね」

「アネモネさまが創った歌は勿論、女神さまたちの歌唱力も素晴らしかったのです。感動致しました!」


「あとは、プロモーションビデオね」

「ビデオなのですけれど、撮影場所は折角美しくなった日本や世界各地の美しい自然を背景にするのが良いと思うのです」

「えぇ、それと私のソロ曲だけは神星で撮りませんか?」

「あぁ、あのふたつの月と月の都を入れた景色とか、アスチルベや他の国々にも美しい自然は沢山ありますからね」


「でも、撮影隊を神星には連れて行けませんね。誰が撮影するのですか?」

「それならば、ビデオカメラをお貸ししますよ。今のカメラはとても性能が良いので、特別な技術がなくても撮れますよ」

「それなら、私と翼で神星へ行って撮って来ましょう」

「うん。分かった」


「では、地球の方はこちらで曲のイメージに合う景色を厳選して撮影準備を進めます。カメラは直ぐにご用意致しますので、ご都合の良い時に撮影して頂ければと思います」

「分かりました」

 僕は技術スタッフからビデオカメラと予備バッテリーと充電器、それにデジタル記録カードを数枚預かり、簡単に使い方のレクチャーを受けた。




 数日後、アネモネが神星へ帰るタイミングで、お父さんとアネモネと三人で神星へ飛んだ。


 アネモネは一度、グースベリー王城へ戻り、翌日に僕とお父さんと舞依お母さまの四人で神星の景色の良い場所を巡ることとなった。


 アスチルベ王国の月の都のサロンで、お母さま方と一緒に珈琲を飲みながら談笑していた。

「翼、景色の良いところって話だけど、何か所くらい必要かな?」

「お父さま、そうですね・・・六か所から八か所は欲しいでしょうか?今の季節では如何ですか?」

「琴葉、ネモフィラの丘は今、どうかな?」

「あぁ、まだ花は終わっていないと思いますよ」


「うん。それならビオラ王国のジャカランダの並木も良い時期のはずだね」

「イベリスの光るクラゲの湖も幻想的で美しいわ!」

「あぁ、花音、そうだね。あれは入れるべきだね」

「月夜見さま!カンパニュラ王国の浜辺から見た月の都も是非!」


「陽菜。そうだね。月の都の向こうに二つの月が浮かぶ様は美しいよね」

「はい。プロポーズの言葉を思い出します!」

「まぁ!羨ましい!」

「ふふっ。本当に素敵な思い出なのです・・・」

 陽菜お母さまは、乙女の様に胸の前に両手を組んで微笑んだ。見た目はそのまま乙女なのだけど・・・


「そうね。それならプルメリア王国の海岸も美しいですよね?」

「あぁ、そう言えばふたりで行ったね。紗良はあの砂浜がお気に入りなんだね?」

「はい。素敵な思い出ですから・・・」


「私はペンタス王国の高原を推します」

「ペンタスの高原か・・・確かに美しいところだったね、桜」

「はい。また行きたいです」

「うん。是非、また一緒に行こうね」


「お父さま、何だかお父さまとお母さま達の思い出の場所巡りみたいになっていませんか?」

「え?あ。ま、まぁ・・・そうかも知れないけど、風光明媚ふうこうめいびな場所であることは確かだよ」


「それならば良いのですけど。お母さま方のお薦めですものね?」

「えぇ、そうよ。本当に美しい景色なのよ」

「分かりました」


 それから、お父さまとそれらの場所を巡る順番を決めていった。明日にはそれらの場所でアネモネがソロ曲を歌っている様子を素晴らしい景色を背景にして録画して行くのだ。




 翌朝、アネモネが月の都のサロンに瞬間移動して来た。

「シュンッ!」

 当然だが女神の衣装を着ている。


「まぁ!アネモネ。何て美しいの!」

「お母さま、ありがとうございます」

「舞依と並んでいると姉妹みたいだね」

「確かに、髪と瞳の色も一緒ですしね・・・」


「翼、違うよ。色気・・・かな・・・」

「あれ?お父さまにはアネモネの魅了が効くのですか?」

「いいや、効かないよ」

「翼、月夜見さまはね。この髪の色が好きなのよ」


「あぁ、それ、聞いたことがあります。舞依お母さまに桜お母さま、詩織お母さまもそうですものね」

「翼も好きなの?」

「僕は髪色にこだわりはありません。ただ、アネモネには魅了されてしまうのですが」

「あら、そうなの?」


「アネモネ。月夜見さまは魅了しないでね?」

「お母さま。私にとってお父さまは、記憶にある千五百年前のお父さまと顔も姿もそのまま同じなのですから、その様な気にはなりません」


「あぁ、そうね。千五百年前の月夜見さまは、どんな方だったの?」

「そうですね・・・基本的には優しい人なのですが、時代が時代なのであまり関わらなかった分、少し怖い印象もありましたね」


「妻たちには優しかったでしょう?仲が良かったのではないかしら?」

「それは、翼にセックスの仕方を教わってからは、お母さま達ととても仲良くなりましたね。それから子も多く生まれる様になったのです」

「翼が教えたのか!どうやって?」


「あぁ、それは僕が巫女とセックスするところを隣の部屋から透視して見ていてもらったのです」

「そうしないとやり方を知らなかったということかい?」


「えぇ、キスを知らなかったし、セックスは挿入するだけと思っていたそうです」

「あぁ、全員、天照さまから生み出されたから教わっていないのだね?」

「はい。そうなのです。だから息子たちも、巫女たちに酷い扱いをしていたのです。それで僕が女性の扱い方を教えたのです」


「翼はその千五百年前の世界で何人の子を授けたのですか?」

「始めの一年で五百人くらい、その後も一年に一度十五日間ずつ訪れて、その度に私たち姉妹と巫女に子を授けたので、最終的には千人近い子を授けていますね」

「千人!翼、凄いな!」


「た、い、いえ・・・凄いわ!」

「舞依お母さま。今、種馬って言いそうになりましたね?」

「そ、そんなことないわ・・・た、た・・・大変なことね。って・・・」

「まぁ、良いのです。事実としては種馬の様なことをしているのですから」


「あ。翼、生まれてくる子って、色素の薄い子が多かったんじゃないかな?」

「あぁ、お父さま。そうなのです。巫女たちは一見、黒髪の娘が多い様に見えたのですが、生まれた子は、プラチナシルバー、ブロンド、ストロベリーブロンド、赤毛、ブルネットの子が多く、黒髪の子は数える程でしたね」

「まぁ、それは仕方がないね。天照さまから直接生まれた子は色素が薄い。翼も瑞希が天照さまから直接生まれているからね」


「そういうことなのですね。それで神星の人間は有色人種が少ないのですね」

「その様だね。それにしても神星に白人が多いのも、言語が日本語なのも、味噌や醤油が伝わっていたのも、全て翼がルーツだったのだね」

「ねぇ、それなら神星の国々の名前が全て花の名前なのも翼が関わっているの?」


「はい。神星に移り住んで、私たちが国を創ることになったのですが、国の名前をどうしようと相談した時に翼が花の名前にして、地球からその花をそれぞれの国へ持ち込んで象徴にしようって提案してくれて、それを実現したのです」


「そうなんだ。それは僕にとってまだ先に起こることだけど、でも僕は現在の神星の国名を全て知っているから、それを相談されたらそうするのが当たり前だよね」

「結局、全ては翼が創り上げた星みたいなものね」

「そんなこと考えてもみませんでした!驚きましたね!」


 全く驚きだ!まさか自分が神星を創る手助けをしていたなんて!

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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