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20.カミングアウト

 榊首相と面談をする日となった。


 榊首相に時間ができたところで僕に電話が来ることになっている。連絡が来たら榊首相の意識に入って、その場所へ新奈と飛ぶのだ。


「ピピピッ、ピピピッ!」

「はい。九十九です」

「榊ですが・・・」

「榊首相。翼です。お忙しいところをありがとうございます」


「私は今、首相官邸の執務室に居ます。ここには今、私と側近の秘書二名だけです」

「では、そちらへ飛びます」

「どうぞ。お待ちしています」


「新奈、首相官邸だってさ」

「え?首相官邸に行くの?大丈夫?」

「別に問題ないさ。行くよ!」

「シュンッ!」


「おぉ!」

 僕らが急に現れたので秘書の男性二人が驚いて一歩後退あとずさった。


「榊首相。お久しぶりです」

「ご無沙汰しています。お二人の結婚式以来になりますかな?さぁ、そちらへお掛けください」

「ありがとうございます」

 秘書が珈琲を出してくれた。特に美味しそうな香りでもない。普通の珈琲だ。


「ところで翼君、一年どこへ行かれていたのですかな?」

「はい。異次元空間移動装置を完成させたもので・・・千五百年前の世界へ行っていました」

「せ、千五百年前の世界へ?それは本当ですか?」

「はい。天照さまの始めの世界です。そして父と八人の女神のルーツに会ってきました」


「天照さまの始めの世界・・・千五百年前とは弥生時代ということですか?」

「そうです。その初めの八人の女神には、五人姉妹が居たのです」

「五人姉妹・・・」

「はい。その五人姉妹の内、四人が現代に転生しており、私の妻となりました」


「妻が四人?うん?結婚式の時は三人でしたよね?」

「えぇ、こちらの神代重工の社長令嬢の新奈、それに一ノ瀬電機の社長令嬢の望と元九十九家電の社長令嬢の結衣です。そして今回、神星に在る国の王女が四人目の妻となったのです」


「神星の王女・・・が四人目なのですね。それはおめでとうございます!」

「ありがとうございます。それで今日伺ったのは、私と四人の女神の存在を世界に公表しようと思うのです」

「翼君も表に出られると?」


「はい。父が地球に降臨してから二十年が経ちました。父は地球の人間たちの行いを見守るというスタンスです。ですが二十年経っても世界はひとつになっていません」

「はい。残念なことですが・・・」


「警告は与えましたが、神がその存在を示しただけでは改革はこれ以上進まないと思うのです。私や新奈たちは地球で生きて行きます。このまま何もしない訳には行かないのです」

「何か行動を起こされるのですね?」

「はい。まずは国営放送を通じて、神の子の存在を公表します」


「なるほど。まずは存在を明かすのですね。そして次は?」

「四人姉妹が新奈と一緒に歌手デビューし、その歌う姿を世界中のテレビで放映します」

「ほう・・・歌を・・・そしてどうするのです?」


「世界の国々を、特にまだ新平和条約に調印していない国を巡り、困っていることがあればお手伝いします」

「神の存在をアピールする。ということですね?」

「そうです。国民には歌で親しみを持ってもらい、政権には問題解決の手助けで恩を売るということです」


「なるほど・・・戦争や制裁の様な力尽ちからずくではなく、神の方から手を差し伸べるのですね」

「はい。つきましては榊首相から国営放送にお話を通して頂き、カミングアウトの番組を作って頂きたいのです」

「それは翼君が国民に向けて一方的に話をされるのですか?」

「いいえ、できればアナウンサーの方との対話方式にしたいのです」


「そのシナリオは翼君の方で用意されるのですね?」

「はい。こちらの意図しない質問にはお答えできないので」

「そうでしょうな。分かりました。早速、話を通しましょう。放送日はいつ頃を予定されていますか?」

「早ければ早い程良いです」


「分かりました。では、準備ができましたら翼君にご連絡差し上げます」

「榊首相、お忙しいのにありがとうございます」

「いいえ、世界のために尽力頂いているのですから、私たちにできることならば、何でもさせて頂きます。今後も何なりとご相談ください」


「ありがとう御座います。今後の連絡は徹を経由して取らせて頂きます。では、今日はこれで失礼致します」

「かしこまりました」

「シュンッ!」




 その後、国営放送のニュース番組を担当するプロデューサーと連絡を取り、シナリオを作っていった。


 神との対談は全世界へ生放送される。司会進行は国営放送所属のベテランアナウンサーの男女一人ずつと決まった。


 全て、こちらで質問と回答を決めようと思ったが、報道側として是非に聞きたいことはあるのではないかと思い、三つだけ質問を受け付けてみた。


 すると三つに厳選された質問がメールで届いた。その質問は、神が人間を粛正することはあるのか?地球の人口は減り続ける恐れがあるが、それについて神に考えがあるのか?神はいつまで地球に居るのか?だった。まぁ、これならば全て答えられるものだな。


 お父さんとお母さんに回答について相談し、シナリオをまとめていった。

放送局からの質問で、人口減に対する考えについてはお父さんたちと議論した。


「お父さま、この人口問題の質問なのですが、これにはどう答えましょうか?」

「これはどんな仕事でも、どれ程多く稼いでも、税率を調整して手取り収入を同じにしていることの弊害を言っているのだろうね」

「人間って過剰に保護すると人生の目標を失い易いのではないかしら?」


「お義母さま。それはどういうことなのですか?」

「新奈、ハングリー精神って聞いたことあるでしょう?収入が豊かでない家庭に生まれると、お金のために勉強や仕事を人一倍頑張ってかせごうと張り切るのよ」


「でも、今の状態は生活を保障している様なものね。しかも大きく稼いでも税金で取られてしまうから、仕事へのモチベーションも削がれてしまうのよ」


「あぁ、そうですね。芸能界も稼げないならやっていられないって、凄く減ってしまったわ」

「弁護士もそうよ。でもね。そういう専門性のある仕事というのは元々、それを純粋にやりたい人が一定数居るものだから、お金目当ての人が居なくなって丁度良いのだけれどね」

「そうなのです。本当に歌やお芝居が好きな人だけになって業界の雰囲気は良くなっていると思います」


「人間って、仕事とか収入など、人生に大きな目標があると結婚や出産にも前向きになるものなんだ。反対に目標や夢が無いと結婚や出産を考えなくなって少子化に拍車がかかる。そう言いたいのではないかな?」


「そうね。私の様に家族を失った人間は家族を取り戻したい、家族が欲しいって願うけど、当たり前の様に家族が居て生活にも困っていなければ、結婚や子育てはリスクと受け止められるかも知れないのですね」


「結衣。残念ながらそうなのだよ。それで少子化が進み、人口が減ることをどう思うのかと聞かれているのだと思うんだ」

「それに対してどう答えるのが良いのでしょう?」


「まず、人口は減っても良いし、減るべきだね」

 お父さんは悪い顔をするでもなく平然と言った。

「え?減ってしまって良いのですか?」

「望、人間は増え過ぎたんだ。今のままでは地球は人間全てをまかなえないよね。それで地球環境は破壊されたのだから、ある程度は間引かれないといけないかもね」

「間引かれる?ちょっと怖いわ」


「別に殺す訳ではないよ。質問にもあったけど神は人間を粛清したりはしない。ただ、自然減というものを待てば良いんだ。さっきの話の様に全ての人が、人生に目標が無ければ結婚も子作りもしないという訳ではないし、逆に生活や社会保障が安定したら、出生率は上がるという数字だってあるのだからね」


「あぁ、そうですよね!本当に出生率が落ちたなら、子供の数に応じて税率を調整して収入を増やす政策だって取れるのですものね」

「そうだね。社会活動に必要な人口が維持できれば良いんだ。増え続ける方が問題なんだよ」

「それって、増え続けたら神星へ移住を募るのも良いかも知れませんね」


「あぁ、翼、そうだね。それも良いかも知れないね」

「そうね。グースベリー王国はまだまだ人口が少ないから受入は可能よ。ただし、面接は厳しいけれどね」


「アネモネ。移住者ひとり一人を面接する気なの?」

「だって変な人は私の国へ入れたくないじゃない?」

「まぁ、そうね。でも地球の文明を知っている人間が神星の国で生きていけるのかしら?」

「スローライフが好きな人には良いんじゃない?」


「そうだね。アネモネ。僕もスローライフを送りたい人だから地球より神星の方が断然、合っているよ」

「お父さまはお医者さまだったのですよね?医療が進んでいない神星で、手術もできずに命を落とす人を見て、もどかしくならないのですか?」


「初めはそうだったね。でも、その辺も考え方次第かな。人の命は尊いものだけど、過剰に考えると死んではいけない。死なせてはいけないになってしまうよね。でも、そこまで考えなくて良いのではないかな?」

「それも自然に任せる・・・のですね?」


「そうだね。神星の人間も増え過ぎてはいけないからね。自然に任せて調整されるくらいで丁度良いのだと思うよ」

「では、やはり地球の人口は多過ぎるのですね?」

「それは間違いないね。でも各国で自給自足して無駄を出さず、環境も守れているなら人口を減らす必要はないんだ」


「では、そこも自然に調整されることが望ましいのですね」

「アネモネは賢いね」

「お父さま。驚いていらっしゃるのですか?」

「ごめんね。少しね」

「私、今は色々勉強もしているし、やることも沢山あるのですから・・・」

「ふふっ。アネモネは美しい女神なだけではないんだね」


「お父さま。私は美しいですか?お父さまに魅了は効いていないですよね?」

「そうだね。そんな気にはならないから効いていないと思うよ」

「それなら嬉しいです!」

 アネモネは嬉しそうに笑った。その笑顔は本当に美しく、僕は見惚みとれてしまった。


「お父さま。最後の質問ですが、いつまで地球に居るのか?についてはどう答えましょうか?」

「それは、翼の子孫が続く限りだと言えば良いのでは?あぁ、そうだ蓮も出してしまえば良いよ」

「え?蓮も公に顔を出すのですか?」

「その方が、学校に行くことになった時にやりやすいのではないかな?」


「僕や葉留は、神の子であることを隠して学校へ行きました。初めから公表して受け入れてくれる学校がありますかね?」

「それは分からないけど・・・私の予想では引く手数多あまたになると思うけど?」

「そうよ、翼。今は学校も数が激減しているのよ。神の子に来て欲しいってことになるのではないかしら?」

「そうなのかな?」


「あ!新奈。女神だと公表したら、大学で大変なことになってしまうのでは?」

「そう言えばそうだわ!どうしましょう?」

「もう、教室に瞬間移動してしまうしかないだろうね」

「あぁ、そうね。授業が始まると同時に直接教室へ飛んで、終わったら消えてしまえば、追い掛け回されることもないわね」


「でも、女神が大学の講義を受けているのって、なんだか不思議ね」

「確かにそうだね。大学の学祭でも歌うかい?」

「そんなことしたら、パニックになっちゃうわよ!」

「やっぱり駄目か」

「翼ったら、そんな楽しそうな顔しちゃって!」


 そして、カミングアウト番組のシナリオは完成した。




 国営放送で番組を放送する日となった。放送局には事前に入らず、打ち合わせもしない。なるべく素の表情をさらさない様にするためだ。


 今日の司会と質問者をしてくれるアナウンサーの顔はテレビで観て分かっているから、意識に入り込んでスタジオへ瞬間移動する段取りだ。


 月の都で新奈とテレビを観ていると、その番組が始まった。

司会のアナウンサーが真剣な表情で話し始める。


「皆さま、こんばんは。今日は特別番組をお送り致します。この放送は世界各国に生中継されております」

「今日の特別番組では、世界的に有名なアーティスト、新奈さんが世界に向けてお話があるそうなのです」


「あの・・・それで新奈さんはどこに?」

「はい。その振りを頂いたら、ご登場となります!」


「シュンッ!」


「うわ!」

「新奈さん!そ、それにこちらの男性は?」


「こんばんは!皆さん。新奈です」

「い、今、一体どこから現れたのですか?」

「はい。今、瞬間移動して、ここへ飛んで来ました!」

「瞬間移動!?」


「ま、まぁ、立ち話もなんですから、どうぞ、こちらへお掛けください」

「ありがとうございます!」

 僕と新奈はセットの中のソファに掛けた。僕らの前にアナウンサーの二人が座った。僕と新奈の顔が大きく映し出される。


「新奈さん、今日は重大な発表をされると伺っているのですが?」

「はい。実は私、皆さんにお話ししていなかったことがあるのです」

「ま、まさか・・・お隣にいらっしゃる男性は・・・」


「はい。紹介します。私の旦那さまで、神さまの息子、天照 翼さまです」

「初めまして。天照 翼です」


「え?あ、あの天照さまのご子息さま・・・なのですか?」

「そ、それにあの・・・今、旦那さまと?」


「はい。実は三年前に結婚していたのです」

「三年前?それは・・・高校生の時?ですか?」

「はい。高校を卒業した直後に結婚式を挙げました」

「それはどこで?」


「はい。月の都です」

「月の都?あの東京湾の上空に浮かんでいる神さまのお城ですか?」

「はい。今はあそこに住んでいます」

「月の都にお住まいなのですか!」


「そ、そして・・・天照さまの息子さま・・・翼さまですね?いつから地球に?」

「はい。父が地球に来た時に一緒に来ました」

「え?ではもうずっと月の都で暮らしていたのですか?」

「そうです。そして東京の高校に通っていました。そこで新奈とクラスメイトになったのです」


「え?新奈さんの高校?有名な進学校ですよね?」

「えぇ、そうですね。そこではあと二人、妻となる女性と出会いました」

「え?翼さまには三人の妻がいらっしゃるのですか?」

「いえ、妻は今、四人居ります」

「その内、三人がその高校で出会った女性なのですね?」

「そうです」


「もう一人の奥さまは?」

「それは神星に在る王国の王女です」

「では、月の都には住んでいないのですか?」

「はい。そうですね。定期的に地球へ来ていますけれど」


「今日の新奈さんの報告はそれだけではないのですよね?」

「はい。実は私、女神だったのです」

「え?翼さまだけでなく、新奈さんも神さまなのですか?」


「それについては私からお答えしましょう。私の父である天照には千五百年前に五人の娘が居たのです。私の妻四人はその時の五人姉妹の内、四人の生まれ変わりなのです」


「その一人が新奈です。そして父が、現世に転生した娘たちに再び出会い、触れたことにより、千五百年前の記憶と神の能力を取り戻したのです」


「それで女神さまとなったのですね?では、今のご両親は神代重工の社長夫妻なのは間違いないのですね?」

「はい。高校生までは確かに日本人の両親から生まれた普通の人間でした」

「女神さまとなった今、どんなお力を授かったのですか?」


「それは翼と同じです。念話ができ相手の心を読むことができます。他には念動力や瞬間移動、空中浮遊などもできます」


「もしかして、原子力発電所を太陽の軌道まで吹き飛ばすこともできるのですか?」

「はい。できます」


「そうですか・・・それで女神になった今、今後の活動はどうされるのでしょうか?」

「アーティスト活動は続けます。私の千五百年前の姉妹も一緒に活動しようと思っているのです」

「女神さま四姉妹で!どの様なアーティスト活動をされるご予定ですか?」

「そうですね。世界中を回り、人々が困っていることで、私たちに解決できることがあればお手伝いしたいと思っています」


「世界中を巡るご予定なのですね?それはやはり、あの月の都で移動されるのですか?」

「基本的にはそうです。瞬間移動することも多いと思いますが」

「瞬間移動はどこまで飛べるのですか?」

「地球上のどこへでも行けます。先程はテレビを観ていてここへ飛んだのですから」


「え?テレビで観た映像の場所にも飛べるのですか?」

「はい。自分の知っている人ならば、その人がどこに居ようと、その人の意識に入り込んで目の前へ飛ぶこともできます」

「そ、それでは神さまからは逃げられないのですね?」


「それはちょっと怖い言い方ですね。別に人を追い詰めたりなんてしませんよ」

「そうですよね。女神さまなのですものね。大変、失礼致しました!」

「良いのです」


「翼さま。これからは神さまが我々人間に働き掛けるということでしょうか?」

「そうですね。父が二十年前に地球に降臨し、人間に地球の危機を伝え、皆さんの行いを見定めると言いました。ですが、二十年経って如何いかがでしょうか?」


「日本はかなり改革が進んでいると思います。ですが世界に目を向けますと変わっていない国も御座いますね・・・」

「えぇ、人間は未だ、ひとつになれていないのです。まだ身勝手な行いをし、地球の環境を破壊し続けている国がある様です」


「神さまはそういう人間を粛清されますか?」

「いいえ。神は人を粛清しません。ですが正しい道へと導きたいとは考えています」

「今回、私たち四姉妹が世界を巡り、皆さんのお手伝いをしたいと思います」


「どんなお手伝いが考えられますか?」

「例えば、原子力発電ですね。めたいが廃炉の費用や年数、核廃棄物の問題もあるでしょう。それらは私たちの力で排除ができます」

「また、核兵器や大量破壊兵器もです。処分に困るならば、私たちが処分して差し上げます」

「それは素晴らしいですね!」


「それでは、今後は神さまのお力をお借りして、世界で改革が進むのかも知れませんね」

「改革と言えば、日本や新平和条約を結んだ国々では、収入の平等のために税制改革が行われました。その弊害としまして、モチベーションの低下や目標を見失う人たちが問題となっています。それが結婚願望や出生率の低下を招いているとの話も出ています」


「このままでは人口が減少していくと専門家が警笛を鳴らしているのですが、神さまはどうお考えなのでしょうか?」

「まず地球全体としては、人口は減るべきです。人間が増え過ぎ、欲望のままに富を貪った結果、環境を破壊したのは明白です。人間は一度滅びても仕方がない。そう考えて保険の世界を創ったのですから・・・」


「ですが、私もこの地球で新奈や妻たちと子を儲け、生活していくのです。地球の人間が滅びても良いとは思っておりません。例えば、日本ならば環境を壊さずに自給自足で生きて行ける人数ならば人口を減らす必要はありません。大切なのは人間の数ではなく暮らし方なのです」


「また、格差是正により仕事へのモチベーションが落ちているとの指摘がありますが、お金や地位への欲だけで仕事を選ぶのではなく、各々おのおのがやりたい事を仕事として頂きたいと思います」


 僕に続いて新奈も笑顔で発言する。


「お金以外にも人は生きる喜びを知っているはずです。結婚もそうだし、子を産み育てることも、趣味に打ち込むこともそうです。自分なりの生き甲斐を見つけて人生を楽しんで欲しいですね」


「我々、アーティストやテレビ関係者は積極的にそういった趣味や生き甲斐になるものを紹介していくべきだと思います」


「なるほど!やはり神さまは私たち人間を見放した訳ではないのですね?」

「勿論です。見放すどころか助けようとしているのです。反重力装置を開発したのは、神代重工ではありません。翼が創ったものなのです。それだけではありません。オービタルリングもこれから建造する、低軌道エレベーターも全て翼が設計したものです」


「え!?あれらのものは全て翼さま一人で創ったものなのですか?」

「今は、地磁気の発生装置も開発中なのです」

「地磁気の発生装置?それはどういうものなのですか?」


「地球の地磁気は弱まって行っています。また、いつ地磁気の逆転現象が起こるのか分かりません。そのどちらも地球の生物が死滅する恐れのあるリスクです。そのリスクのための保険です」

「それが完成すれば地磁気が弱まっても、逆転現象が起きても、我々人間は生きて行けるのですね?」

「そうです」


「あ、あの・・・神さまはいつまで地球で我々を守って頂けるのですか?」

「私の家族が子孫を残し、生き続ける限りは地球に居りますよ」

「ほ、本当ですか!あぁ・・・何てありがたいこと・・・」

「皆さん。お聞きになりましたでしょうか?我々、地球人は危機を脱しようとしているのです。そしてその手伝いを神さまがしてくれていたのです」


「神さま!ありがとうございます!」

「いいえ、まだ人間はひとつになり切れておりません。これからですよ」

「はい。世界の皆さん、お聞きになったでしょうか?皆さん、お一人、お一人の行動が大切です。どうか地球環境を守り、美しい地球を取り戻しましょう!」


「翼さま、新奈さま、今日は誠にありがとうございました」

「では、皆さん。これからもよろしくお願いします」

「シュンッ!」


 国営放送でのカミングアウトは、まずまず上手くいったのではないかな。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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