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13.別れの時

 千五百年前の世界に来てから一年が経過した。


 この朝は羽月と朝までセックスを続け、朝食後に自室でうたた寝をしていた。

すると巫女たちが大慌てで部屋へ走って来て、僕を叩き起こした。


「翼さま!大変です!起きてください!」

「うーん。何だい?僕、眠いんだけど・・・」

「充電器が届いたそうです」


「ふーん。充電器がね・・・って、えーっ!充電器が?」

「はい。充電器だと天照さまがおっしゃっていたそうで御座います。それは庭に現れたそうです」


 僕は飛び起きて庭へ走った。すると既に月夜見さまや子たちが揃っていた。

「あぁ、翼殿。遅いではないか」

「あ、すみません。つい居眠りを・・・それで充電器とは?」

「うむ。突然、そこにある銀色の箱が現れたそうだ」

「あ。これですか!」


 確かに銀色の箱状のものだ。電気コードに見える線が二本出ているところを見ると、どうやら充電器で合っている様だ。でもこれは地球で作られたものではなさそうだ。恐らくは天照さまがイノベーターに作らせたものなのだろう。


 早速、小型船の異次元空間移動装置に充電器を繋ぎ、充電を開始した。後は放っておくだけで今日中に充電は完了するだろう。


「翼さま。その作業はいつまで掛かるのですか?」

 月代が不安そうな顔で聞いてきた。

「作業自体は午後には終わると思います」

「え?では今日の午後に帰ってしまわれるのですか?」


「そ、それは・・・」

 僕としても急に帰れることになってしまい、どうして良いのか分からなくなってしまった。そこへ天照さまが現れた。


「翼、充電器が届いたのですね?」

「はい。そうなのです。今、充電を始めたところです」

「それで、いつ帰るのですか?」

「はい。今、それを聞かれて僕としても困っていたところです」


「そうですね。今夜から五日間、一晩ずつ娘たちと過ごしてから帰れば良いでしょう」

「あぁ、そうですね・・・それが良いですかね・・・分かりました」

「娘たちよ、一晩ずつですが、翼との別れを惜しむがよい」

「は、はい・・・天照さま。お慈悲を賜り、感謝申し上げます」

 璃月が代表で礼を述べた。その顔は既に悲壮感に溢れていた。


 他の娘たちも、そして巫女たちも悲しみに包まれ、既に涙を流している巫女も多く居た。

「翼殿、其方そなたのこの一年の功績に感謝し、今夜から毎晩、うたげもよおすこととしよう」

「はい。月夜見さま、ありがとうございます」


「昨日は羽月と夜を共にしました。今夜は月花とですね」

「はい。翼さま。今夜で最後なのですね・・・」

 月花は息子の希月きづきを抱きながら悲しそうな顔を向けた。


 璃月、月代と光月も皆、一人ずつ子を生み、それぞれの子を抱いている。とうとう羽月は妊娠せずにこの日を迎えてしまった。


 日中は巫女たちのところを回って、一人ずつ抱きしめ自分の子を抱いた。五百人近くに授けたので、一日で百人は顔合わせしないといけない。巫女たちは口々に感謝を伝えてくれ、一人ずつキスをした。皆、泣いていた。


 夕食は宴となり、多くの料理が並べられ酒を飲んだ。

「翼殿、これまで数多くの子を娘のみならず、巫女たちにも授けて頂き、感謝します」

「子だけではありません。新しく話し易い言葉や文字も教えて頂きました。感謝いたします」


 月夜見さまと天満月さまより、感謝を頂いた。でも、その言葉は頭に残らず、僕はぼんやりしていた。突然、帰ることとなり頭の整理が追い付かないのだ。


 帰れることになり嬉しい自分と璃月たち五人姉妹や巫女たち、それに自分の子供たちを置いて行く悲しみに暮れる自分が居て、どちらにも気持ちを持って行けずにただ、ぼんやりしてしまうのだ。


 宴席では勧められるままに酒を飲み、感情の無い笑顔で話していた。そんな僕を見て娘たちは更に悲しい顔になっていた。


 宴会は終わり僕は風呂に入ると月花の部屋へ行った。

「月花。今夜で最後だね」

「そんな・・・寂しいことを言わないでください」

「ごめんね・・・」

 月花は生後一か月の息子の希月きづきを抱いて涙を流していた。


「月花。君と希月を残して帰ることを許して欲しい・・・」

「翼さま。それは初めから分かっていたことです。仕方のないことです」


 月花は、希月をそっと寝台に寝かせると僕に抱きついてきた。僕は月花を優しく受け止め抱きしめた。


「月花は芯の強い人だね・・・僕の方が耐えられないかも知れないよ」

「そんな・・・私も必死に耐えているのです。でも・・・希月が居るからでしょうか・・・何とかやっていけると思います」


「ありがとう。月花。君にそんな言葉を言わせてしまうなんて・・・ごめんね」

「翼さま。今夜は一晩中、抱きしめていてくださいませんか?」

「勿論だよ。希月もね」


 僕は一晩中、月花とセックスし、希月に授乳する姿を眺めて過ごした。

夜が明ける頃、ようやく、ふたりは眠りに着いた。




 翌晩は月代と過ごした。月代は僕が部屋に入った瞬間から泣いていた。

「月代、そんなに泣かないで・・・僕も悲しくなってしまうよ」

「ごめんなさい・・・でも、これで最後なんだと思うと・・・」


「ごめんね。月代と優月ゆづきを置いて帰ってしまうなんてね・・・酷い父親だね」

「謝らないでください。初めから分かっていたことなのですから・・・割り切れない私が悪いのです」


「月代は悪くないよ。せめて今夜はずっと月代を抱きしめていたいな」

「う、うぅ・・・」

 月代は僕の腕の中で泣き出してしまった。僕は月代を抱きしめて背中を擦りキスをした。


「私は・・・私は将来、あなたと共に暮らせる日が来るのですよね?」

「うん。そうだよ。未来の君の名は結衣。息子は蓮だよ」

「あ!でも、未来でも私は一年間、あなたを失うのですね・・・」

「あぁ・・・そういうことでもあるね」


「やはり、翼さまは帰るべきなのですね・・・未来の私や子のためにも」

「月代、本当にすまない・・・」

「辛いのは私だけではないのですから・・・でも・・・うぅ・・・う、う」

「月代・・・そんなに僕のことを?」


「はい・・・愛しています・・・心から・・・・心から・・・」

「月代・・・そんなこと言われたら・・・僕だって・・・う、うぅ・・・」

 ふたりは抱き合って泣いた。泣いて泣いて、泣き疲れて眠りに着いた。




 光月との夜だ。息子の秋月あきづきを抱きながら光月と話し込んでいた。

光月は未来で僕の妻にはならない。誰に転生しているかも分からない。だから、これで本当に最後になってしまうのだ。


「翼さま。やっと帰れることになって良かったですね」

「え?う、うん。それはそうなんだけど・・・」

「私たちのことが気になるのですね?」

「それはそうさ。秋月のことだって・・・気になるし、心配だよ」


「嬉しいです。翼さまはいつもそうして私たちのことを考えてくださいます」

「当然だよ。皆、愛しているから・・・」

「私もです・・・ですから翼さまには帰って頂きたいのです」


「光月は大丈夫なのかい?」

「駄目だと言ったら残ってくださるのですか?」

 光月は下から覗き込むように上目使いで僕を見た。

「そ、それは・・・」


「ごめんなさい。意地悪なことを言いました。そんなこと言いません。私は翼さまに感謝しているのです。私たちは翼さまに沢山のことを教えて頂き、沢山の愛を頂きました。これ以上望んだらばちが当たります」

「そんな・・・光月・・・」


 光月の言葉を聞いて僕の瞳からは涙がこぼれた。


「翼さま・・・私のために涙を・・・流してくださるのですね・・・」

 そう言った光月の瞳からも涙が一筋流れた。

「光月!」

「翼さま・・・」


 ふたりは抱き合い静かに涙を流した。


「何だろう?光月とは落ち着いて話せるし、凄く安心するんだ」

「嬉しいわ。私もこうして翼さまを抱いていると落ち着くし、幸せを感じるのです」

「あぁ・・・これで最後になってしまうなんて・・・」


「翼さま、泣かないで・・・あなたさまが残してくれた命が新しい世界を支えていくのです。そしてあなたさまが待つ未来へ命を繋いでいくのですから。後は私たちにお任せください」

「光月・・・ありがとう・・・」


 僕は嬉しくて涙が止まらなくなった。光月を愛おしく感じ、抱きしめてはキスをし、キスをしては互いを抱きしめ合った。




 帰る日まで残り二日となった。僕は昼間に五人姉妹と巫女を可能な限り連れて、海へ飛んだ。砂浜にはざっと四百人くらいの巫女が居た。


 屋敷に居たのでは僕に話し掛けることもできないので砂浜へやって来たのだ。

人数が多いから一人ひとりと話をすることはできないけれど、十人ずつくらいのグループ毎に話をしていった。


 皆、笑顔だった。僕に感謝の気持ちを伝えてくれたり、子供の顔を見せてくれた。

お腹が大きくなって来ている巫女は胎児の検診をして、へその緒が首に絡まっていたり逆子になっている場合はその場で正しい位置に直しておいた。


 子供は五人姉妹の子は皆、プラチナシルバーの髪に青い瞳なのだが、巫女たちは基本、日本人だ。ほとんどが黒髪か茶色で、たまに赤毛に近い黒髪の娘が居た。その子供たちは、僕の髪色に薄められたのか、茶色や赤毛が目立ち、中にはストロベリーブロンドの子も居た。


 どうやら、神星の人たちは僕や蒼月あつきたち三兄弟の髪色によって、始まりから黒髪が少なくなってしまった様だ。


 新しく生まれた子と、今現在お腹の中に居る子を足せば千人近い。子を作りたくないと言っていた巫女も僕の噂話を聞いて気が変わったのか、僕がお相手ならばと妊娠を希望した巫女が何十人か居た。結局、ほとんどの巫女が子を授かったのだ。


 そしてほとんどの子が同学年となる。この十五年後には、その子たちが子を成し、倍々に増えていくのだろう。




 その夜、璃月の部屋で過ごした。璃月は僕が部屋に入る前から泣いていた様だ。


「璃月・・・悲しいね」

「翼さま・・・本当に・・・本当にこれで最後なのですか?」

「うん・・・ごめんね、璃月・・・僕も辛いんだ・・・」

「あ。ごめんなさい・・・私・・・きちんとお別れしないといけないって・・・思っていたのに・・・う、うぅ・・・う、う」


 璃月は颯月そうげつを抱きしめ、うずくまる様にして泣いていた。

僕は二人を包む様に抱きしめ、璃月の背中をさすった。


「璃月。慰めにはならないだろうけれど、君は未来でまた僕と共に生きることができるんだよ」

「はい。そうでしたね。分っていたのに・・・私・・・ごめんなさい」

「いいんだ。僕も悲しいから・・・気持ちは同じだよ」

「翼さま・・・」


「お願いです。今夜は沢山、愛してください」

「分かった。忘れられない夜にしようね」

「はい」


 璃月、月花、月代、光月は同じ週に出産し、その一か月後から経過を診て、何回かセックスをしている。


「あぁ・・・凄い・・・颯月を授かる前と全然違う・・・凄く感じる・・・」

「そうだね。前よりも敏感になったみたいだね」


 璃月は羽月の様に妖艶ようえんになり悦びに浸った。僕もそんな璃月に溺れ、深く、何度も求めた。


「翼さま・・・今までで一番素敵です。私・・・今夜のこと、きっと忘れないでしょう・・・」

「僕もだよ。璃月とのこの夜のこと、絶対に忘れないよ」

「最後の夜がこんなに素敵な時間になるなんて・・・嬉しいです」

「璃月、愛しているよ・・・」

「私もです。翼さま。愛しております」


 朝方までふたりは愛し合い、抱きしめ合ったまま眠りに落ちた。




 そして最後の夜となった。宴会は盛大なものとなり酒をどんどん勧められた。最後の晩餐の時だけは・・・そう思ったのか、皆、笑顔に包まれていた。


「翼殿、今宵、最後の晩餐となるのだな」

「はい。月夜見さま。この一年間、大変お世話になり感謝申し上げます」

「なに、感謝を申すのはこちらだよ。娘や巫女たちに多くの子を授け、話し易い言葉を教え、味噌や醤油も作ってくれた」


「お役に立てたのならば本望ほんもうです」

「うむ。十分以上の働きであったよ。それに私たちの夜の営みも変わったしな・・・」

 その言葉を受けて、月夜見さまの奥さま方が妖艶な笑顔をこちらに向けた。


 奥さま方の後ろには、生後一か月の子たちを巫女が抱いて立ち並んでいる。


「翼殿は元の世界へ戻ったら何をするのだ?」

「私はこの星の自然を元に戻す試みを進めております。その仕事に戻るのです」

「何?この星の自然は変わってしまうのか?」

「はい。人が増え過ぎた結果、人は自然を壊してしまうのです」


「自然が壊れるとどうなるのかな?」

「はい。人も動物も生きられなくなり絶滅します」

「絶滅?人間が皆死ぬのか?」

「はい。そうです。人間だけではなく動物も魚も植物も。生きとし生けるもの全てです」

「な、なんと!」

 月夜見さまや奥さま方、子供たちも皆、驚愕の表情となった。


「では、人間は増えない方が良いのか?」

「いえ、ある程度の人数が居ないと人間は滅んでしまいます。ですが、増え過ぎてはいけないのです。何事も均衡きんこうを保つことが大切なのです。多過ぎても少な過ぎてもいけないのです」

「難しいのだな・・・」

「はい。とても・・・」


「しかし今、この時代では、人間を増やすことだけ考えて頂ければと思います」

「そうか、今はまだ増やして良いのだな?」

「はい。何代か後では、親子や兄弟で子を成すことは避けて頂きたいですが」

「うむ。分かった。未来では多くのことが明らかになっておるのだな」

「はい。人間は学ぶ生き物ですから・・・」


「そうか、翼殿。子だけでなく多くの知識を与えてくれたこと。感謝する」

「とんでも御座いません。お役に立てて光栄です」




 宴会が終わると羽月が念話を送って来た。

『翼さま。早く来て!』

『うん。今、行くよ』

「シュンッ!」


「翼さま!」

 羽月の部屋へ出現した途端、既に裸になっている羽月が抱きついてきた。

「羽月・・・」

「一緒にお風呂に入りましょう」

「うん」


「今夜は巫女は居ないのだね?」

「えぇ、最後の夜だもの。翼さまを独り占めするのです」

 そう言って羽月は妖艶ようえんな顔で微笑んだ。その瞳で僕は悩殺されてしまう。


「何だか今夜の羽月は一段と魅力的だね・・・」

「そうでしょう?私、今夜、身籠ると思うわ・・・」

「え?排卵しているの?」


 僕はお風呂の中で羽月の卵管を透視した。すると本当に排卵していた。なんて偶然なのだろう?今まで妊娠していなかったのに、この最後の晩に排卵しているなんて・・・


「羽月、本当に卵が出来ているよ。これだと今夜、君は子を授かるかも知れないね」

「本当ですか?嬉しい!」

「でも、僕は明日帰ってしまうから、羽月の子に会えないのだけど・・・」

「では、名前だけ付けてくださいませ!」


「名前を?男の子か女の子か分からないのに?」

「男の子です。きっと・・・」

「あぁ、まぁ、そうかも知れないね。そうだな・・・それなら・・・名前は・・・月翔つきとにしよう」

「月翔!・・・つきと・・・良い名前です!気に入りました!」

「それは良かった」


 話しながらも羽月は僕に襲い掛かってくる。そこからはいつもの様に終わりのない激しいセックスが朝まで延々と続いた。


 朝方になり羽月を抱きしめて話をしていた。

「羽月、もう何度果てたか分からないよ」

「そうね。とても満足したわ」

「明日から僕が居なくなってどうするんだい?」

「うーん。巫女とするわ」


「そうか、そうだね・・・それなら大丈夫かな?」

「大丈夫な訳・・・ないわ。翼以上の殿方なんて居ないのだから・・・」

「うん。ごめんね・・・」

「謝らないで・・・翼が悪い訳ではないわ。それに・・・」


「それに?」

「私ね、未来でまた翼に逢えると思うの」

「未来で?」

「そう、未来で・・・そんな気がするのよ・・・」


 アネモネの直感か・・・僕は転生の話をしていないのに分かるのか・・・でもアネモネとは結婚できないのだけどな・・・これは言えないな・・・


「うん。逢えると良いね」

「また逢ったら、沢山セックスしましょうね?」

「ふふっ、そうだね・・・」

 僕は心の中で「それはあり得ないな」と思いながら無責任に返事を返した。




 そして、元の時代へ帰る朝となった。僕はここに来る時に着ていたYシャツを着てスラックスを履いた。ウエストは少し緩くなっていた。


 僕たちは朝食を済ませると月夜見さまや奥さま方、それに璃月たちと、一人ひとり話をして別れを惜しんだ。


 璃月たちは皆、大粒の涙を流し、最後は僕に五人がしがみついた。

「娘たちよ。それでは翼殿が帰れないではないか」

「す、すみません・・・だって・・・」

 璃月は大泣きしながら答えた。


 その時、天照さまが屋敷の奥からゆっくりと歩いて来た。

「翼、帰るのですね?」

「あ、はい。天照さま。お世話になりました」

「一年間のお役目、ご苦労さまでした。役目を見事に果たしてくれましたね」

「はい。ありがとうございます」


「翼、今後は定期的にここへ来ると良いでしょう」

「え?」

 そこに居た全員が動きを止め、声を上げて驚いた。娘たちは何が何だか分からないといった顔でキョトンとしていた。


「え?また来ても良いのですか?」

 僕はそう聞き返しながら、既に笑顔になっていた。


「勿論です。翼の子も居るのだし、娘たちにもっと子を授けて欲しいのですよ」

「えーっ!本当に来て良いのですね?」

「えぇ、充電器もあるのですから、いつでも来て帰ることができるのですからね」


「ただし、この時代とは別の時代の過去や未来へ行くのは止めておきなさい」

「それは何故ですか?」

「飛んだ先に其方と同一人物が居た場合、後から現れた者がその時代に干渉し、未来を変えてしまうとどちらかが消滅するからです」

「あ。なるほど・・・」


「私がこの時代に飛んだ時、それまでの私は消滅しました」

「そう・・・なのですね・・・わ、分かりました」

 そうか、僕は大変なものを作ってしまったのだな・・・


「翼、でも神星には自由に行き来できるでしょう」

「それは許して頂けるのですね?」

「えぇ、許されます。この時代に来るのは一年に一度とするのが良いでしょう」

「一年に一度?」


「そうです。そうすれば十分な数の子を授けることができますからね」

「え?僕は今後も子を授けに来るのですか?」

「嫌ですか?そんなことはないですよね?」

「あ。ま、まぁ・・・それは・・・そうですね」


「翼さま。また一年後に来てくださるのですね?」

「月代。そうだね。一年、待っていてくれるかな?」

「勿論です。もう逢えないと思っていたのですから・・・一年くらい待てます!」

「翼さま!嬉しいです。私も待っています!」


 月代と月花はそう言って泣き崩れた。璃月や羽月、光月はもう大泣きしている。

その姿を見て僕も涙がでてきた。


「また、皆と逢えるのですね・・・子供たちの成長も見守ることができる・・・良かった」

「そうか。翼殿。また来てもらえるのだな?」

「はい。月夜見さま。まずは一年後にまた来させて頂きます」

「うむ。待って居るぞ」


「はい。では帰ります。皆、一年後に!」

「翼さま。お待ちしております」


 僕は小型船に乗り込んだ。すると天照さまが隣の席に転移してきた。

「シュンッ!」

「わ!天照さま!」

「私が座標を入力しましょう。神星の月夜見の月の都へ飛ぶ様にします」

「神星の月の都へ?」

「えぇ、そこで皆が待っていますよ」


「え?皆が僕の帰りを分かっていて、待ってくれているのですか?」

「そうです。皆が充電器を送り、その六日後に翼が帰って来ることを知っているからです」

「あぁ、そうか。望たちは記憶を取り戻しているのですからね」

「さぁ、入力できました」


「シュンッ!」

 天照さまは屋敷の縁側へと転移した。


「さぁ、翼、お帰りなさい」

「はい。では皆さん、さようなら!また一年後に参ります!」

「翼さま!お達者で!」


「シュイーン!」

 船の周囲に青い光の粒が舞い船は消えた。

「シュンッ!」


 そうして翼のお役目は完了し現代へと帰って行った。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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