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9.ホームシック

 千五百年前の世界に来て半年が経った。


 璃月りづき月花つきか月代つきしろ光月みづきは妊娠六か月目に入った。羽月だけまだ妊娠していない。そして、四人の子は皆、男の子であることが分かっている。


 巫女たちも計画的に妊娠し、全体の半数の五百人程が妊娠した。僕の部屋の巫女は半数が妊娠しており、仕事の役割を分けている。


 僕の部屋に居る時は寝台や椅子で自由に楽にしている様に言ってあり、彼女たちは言葉の勉強をしながらリラックスして妊娠生活を送っている。


 巫女たちも含めて、言葉はかなり話せる様になった。日常会話は、もうほとんど現代の日本語で会話ができる様になった。

「佐那、ちょっとこちらを向いて座って」

「はい。翼さま」


 僕は佐那のお腹の子を診察する。

「うん、順調に育っているね。大丈夫だよ」

「はい。嬉しいです。翼さま」


「今日は妊娠している巫女たちを連れて海へ散歩に行こうか」

「また海へ行くのですか!」

「うん。散歩は赤ちゃんの発育に良いからね」

「嬉しい!」


 僕の部屋の妊婦六人を小型船に乗せて海へ出掛けた。

週に一度は午後にこうして外出し、軽い運動をさせている。砂浜を皆で散歩するのだ。


 娘たちは毎回、貝殻を拾い集めている。生まれて来る子にお守りやアクセサリーを作るのだそうだ。皆、交代で僕と手を繋いで歩き、僕と過ごす時間が幸せだと言ってくれている。

勿論、僕の部屋の巫女だけでなく、他の巫女も妊婦は順番で連れて来ている。


 それから醤油と味噌作りのためにちょくちょく調理場に行っていたのだが、言葉も教えているうちに皆と親しくなり、子作りをせがまれて応じる様になった。

まぁ、せがまれたと言っても直接言われた訳ではなくて、目がそう訴えていて、それに気付いた僕が彼女たちの心を読んだ結果だ。


 調理場の向こうに彼女たちの部屋があり、そこで一人ずつお相手をしていったのだ。もう既に五十人は妊娠させている。醤油と味噌はもうすぐ完成する。今は、醤油と味噌を使った料理のレシピを書き貯めているところだ。


 そう言えば、月夜見さまの奥さま方も八人全員が妊娠された。男の子ばかり八人だ。


 それなのに羽月はまだ、妊娠することを拒否している。それより問題なのは毎日僕を求めて来ることだ。そしてそれを拒否できない僕。僕は本当に駄目だ。羽月にメロメロなのだ。どうして羽月とはそうなるのだろう。


 兎に角、魅力的なのだ。羽月に見つめられるともう、その気になってしまう。例えば廊下ですれ違って目が合っただけで、その場で抱き合ってしまい、ベッドへ瞬間移動してしまう。


 羽月の部屋では、巫女が何人居ようとお構いなしでセックスを始めてしまうし、巫女も参加して来てしまう。


 既に羽月の部屋の巫女は全て僕が妊娠させてしまい、今は他の部屋の巫女と入れ替わっている。


 羽月は入れ替わった巫女とも平気でセックスする。巫女も何故か羽月には魅了されてしまうみたいで、当たり前の様に毎日している。本当に自由というか、性の女神みたいだ・・・そんな女神は居なかったか・・・あ!居た!アフロディーテだ!


 でも、ギリシア神話は物語だったっけ?でも紀元前の話だから羽月がアフロディーテの生まれ変わりでもおかしくはないよね。こじつけかな・・・


「羽月、僕と君が毎日セックスしているのって、姉妹たちは知っているの?」

「知らないと思いますよ」

「巫女が話したりしないかな?」

「巫女は、私たち神に話し掛けてはならないのです」


「そうなの?僕には話し掛けてくることもあるけど?」

「それは翼さまが、あまりにもお優しく巫女に接するからです」

「そういうものなのかな・・・」


「他の姉妹に私たちが毎日セックスしていることを知られたくないのですか?」

「いや・・・ちょっと恥ずかしい・・・かな」

「それはそうですよね。絶対に言いません」

「ありがとう」


「言いませんから毎日してください!」

「うん。僕は羽月に見つめられるだけでしたくなってしまうんだ・・・」

「本当?嬉しい!今日もいつもの様に抱いて!」

「あ、また?でも・・・うん」


 もう、何度目か分からなくなってしまうよ・・・何だか、アネモネがどんな娘なのか、心配になって来てしまうな。確か、陽翔はると兄さまとの結婚式の時は普通だったよね。


 でも、璃月と月花、それに月代は何となくだけど、望と新奈、結衣に似ている気がするんだよな・・・そうするとアネモネも・・・それは不味まずいよね・・・


 しかも、望、新奈、結衣とアネモネは、この時代の記憶が戻っているんだよな・・・アネモネは僕をどういう目で見るのだろう・・・うーん。やっぱり不味い。でももう止められないし・・・どうしよう。


 そう言えば、光月は誰に転生しているのだろうか・・・これから現れるのだろうか?

「翼さま!他のこと考えているでしょう?」

「あ。ごめん」

「私のことだけを見て!」

「はい」

「ふふっ、可愛い」


 もうすっかり羽月に手玉に取られてしまっている・・・僕は何をやっているのだろうか。


 それでも子作りは続けなければならない。午前中は基本、言葉の勉強だ。屋敷のあちこちを巡り、巫女を集めては勉強会をしている。そして午後からは散歩に行かない時は妊娠を希望する巫女とセックスをして子を授けている。


 夜は、璃月、羽月、月花、月代、光月と順番に夜を過ごしている。羽月以外とは、キスをして抱き合って眠るだけだ。でも、それが僕にとっては休息になっている。


 羽月との夜は寝かせてもらえない。朝まで羽月と巫女とセックスし続けるし、日中はどこか一時間でも時間が空くと、羽月とセックスしているから一人の時間がないのだ。


 羽月と過ごした翌日は寝不足だ。夜になり、月花と寝台に入る頃には猛烈な眠気が襲ってきた。でも、月花を放置してさっさと眠る訳にもいかない。必死に眠気に耐えて月花を抱きしめて話をする。


 僕と寝台で話をするから月花たちが言葉を覚えたのも一番早い。

「翼さま、いつも眠そうですね?」

「え?そうかい?」

「疲れていらっしゃるのですね・・・こちらの生活はお辛いですか?」

「辛いということはないのです。でも・・・」


「先の世界に残してきた家族がいらっしゃるのでしょう?」

「そうですね・・・」

「お子さんも?」

「えぇ・・・」

「それはお辛いことですね・・・」

 そう言って月花は僕を抱きしめてくれた。


「でも、僕はこの世界にも自分の子や月花たちを残して・・・帰らねばならないのです」

「はい。覚悟はしています」

「申し訳ない気持ちでいっぱいです」

「翼さまは気にしないでください。それがお役目なのですから・・・」

「でも・・・」


「私たち姉妹は一生独り身で生きるか、弟たちの子を産まされるだけの存在だったのです。翼さまがここに来てから世界は変わりました。私たち姉妹は本当に翼さまに感謝しているのです」

「月花・・・そんな風に思ってもらえるなんて・・・嬉しいよ」


 あぁ・・・僕たちは千五百年後に夫婦になれるんだよ。って教えてあげたい・・・でも言えないな・・・


『翼!』

『はい?あ。天照さま?』

『千五百年後に再び出会い、夫婦になることを隠す必要はありませんよ』

『え?伝えても良いのですか?』

『えぇ、それで未来が変わることはないのですからね』

『あ。そうか・・・ただ、待って受け入れるだけだから知っていても問題はないのですね』


『ただし、羽月と光月には言わない方が良いでしょう』

『あ。そうですね。夫婦になる訳ではないのですからね・・・って、光月は後で現れて妻になったりしないのですね?』

『えぇ、なりませんね』

『分かりました。ありがとうございます』


 僕はホッとした。僕の妻は三人で良いのだな・・・では月花に伝えておこうかな・・・


「月花、人はね。死んでしまったら、また人に生まれ変わるんだよ」

「生まれ変わる?」

「そう。この身体は人のたましい、心のことかな?その器なんだよ」

「魂の器?この身体が・・・」


「うん。死んでしまったら身体は滅びて無くなるのだけど、魂は残って新しい命に生まれ変わるんだ」

「誰に生まれ変わるのですか?」

「そうだね・・・また今の家族や好きな人の近くに生まれ変わると思うよ」


「それなら・・・また翼さまに逢えるのですか?」

「うん。逢えるよ。まだまだ、遠い先の話なのだけど。僕と月花は再び出逢って結婚するんだ」

「え?先の世界に残してきているのは私なのですか?」

「実は・・・そうなんだ。だから僕は月花に僕との良い思い出を持っていてもらいたいんだ」


「あぁ・・・私は・・・私はまた、翼さまと先の世界で出逢えて、そして結婚し、子を作れるのですね?」

「うん。そうだよ」

「それならば・・・私は、今のこの幸せを胸に生きていけます!」

 月花はぽろぽろと涙をこぼした。

「ありがとう。月花。僕も嬉しいよ」


「翼さま。先の世界の私はどんな女性なのですか?」

「そうだな・・・積極的で行動的。人の気持ちを理解できる人で頭も良い。格好良くて素敵な女性だよ」

「まぁ!私、そんな女性に生まれ変われるのですか?」

「そう。僕の愛する女性だよ」


「今の私はどうですか?」

「根本のところは同じなのだと思う。自分の考えをしっかり持った、芯の強い女性だ」

「あぁ・・・翼さま・・・私、嬉しい・・・」

 僕は月花の胸に顔を埋め、月花に抱きしめられながら眠りについた。




 翌日は月代と夜を過ごす晩だ。夕食が終わり、窓から空を見上げたらきれいな満月が空に浮かんでいた。僕は月代の部屋へ行くと、外へ行って月を見ようと提案した。


 笑顔で賛成してくれた月代を掛布団でくるんで抱きしめると、砂浜へと瞬間移動した。

「シュンッ!」


「まぁ!ここは海ですか?」

「そうですよ。今夜は満月のお陰で明るく照らされているから、海が輝いて見えますね」

「えぇ、月もきれいだけど、海も月明かりに照らされて本当に美しいです」


 ふたりはしばらく黙って月を見上げていた。僕は月代の身体を冷やさない様に布団の上から抱きしめた。


 僕は月を見つめていたら抱きしめているのが月代ではなく、結衣であるかのような錯覚にとらわれた。


「月代、人はね。死んでしまったら、また人に生まれ変わるんだよ」

「生まれ変わるとはどういうことですか?」

「この身体は人のたましい、心とも言うかな?その器なんだよ」

「身体が魂の器・・・では死んでも心は死なないのですね?」

「そうだよ。永遠に生き続けるんだ」

 月明かりに照らされた月代の顔は、優しく柔和な笑顔へと変わった。


「人は死んでしまったら身体は滅びて無くなるのだけど、魂は残って新しい命に生まれ変わるんだ」

「生まれ変わってどこの誰になるのでしょう?」

「そうだね・・・また今の家族や好きな人の近くに生まれ変わると思うよ」

「それならまた翼さまを愛したいです」


 無邪気にそう言って微笑む月代を見ていたら胸が締め付けられた・・・

そして涙が一筋流れた・・・


「僕もだよ・・・月代を愛したい・・・」

「あ。翼さま・・・泣いていらっしゃるのですか?」

「い、いや・・・そうだね・・・涙が・・・」


 僕は疲れているのだろうか?結衣や蓮を残してここに来ていることに悲しみ、今度は月代や生まれてくる子を残して去ることに怯えているのだ。


 何も考えない様にして・・・お役目だと割り切って・・・夢中で走って来た。

だが半年が経過して寝不足と疲れからなのか、弱気になってしまったのだろうか?


「翼さま。悲しいのですか?」

「うん。君やお腹に居る子を残してここを去るなんて・・・」

「その様に私たちのことを想ってくださるのですね・・・嬉しい・・・嬉しいです」

「それでも、僕は居なくなってしまうんだよ?君は・・・この子は大丈夫なの?」

 僕は月代のお腹に手を当てて月代の顔を覗き込んだ。


「・・・はい。私たちは大丈夫。璃月も月花も、羽月と光月も居るもの。五人姉妹で翼さまの話をして過ごすわ」

「実はね・・・月代。先の世界に僕は家族を残して、ここに来ているんだよ」

「え?家族が?奥さまがいらっしゃるのですか?」

「うん。それはね。生まれ変わった月代なんだ」


「え!私?私は先の世界で生まれ変わり、また翼さまと出逢えるのですか?」

「うん。そして結婚して子供も居るよ。蓮っていう男の子だ」

「蓮!・・・れん・・・蓮!良い名前だわ!」

「そして、もうすぐ先の世界の君は、今のこの世界で生きた記憶を取り戻すんだ」


「え?では、今、こうして翼さまと過ごしていたことを思い出すのですか?」

「そうだよ。だから僕は月代を愛して、良い思い出を作ってあげたいと思っているんだ」

「あぁ・・・あなたさまは・・・なんて心の美しい・・・それ程までにあなたさまに愛されているなんて・・・」


 月代の瞳からはとめどなく涙が溢れていた。

僕もそんな月代を見ていて、涙が止まらなくなった。そしてふたりで涙を流しながら抱き合い。そしてキスをした。


「私は、翼さまを永遠に愛し続けるでしょう・・・」

「ありがとう。月代。僕も愛しているよ・・・」




 光月との夜を迎えた。光月はとても冷静な女性だ。姉妹の中でも一番頭が良いのではないかと思う。言葉も一番早く覚えたし、何よりセックスに溺れなかった。


「ねぇ、光月は本当に子を産みたいと思っていたの?」

「それはそうです。私、初めて翼さまに会った時、この人は絶対に私の家族だ。って思ったのです」


「僕が家族?」

「はい。だから、子を授かることも当然なのです」

「ふうん。それって直感ってやつなのかな・・・光月にはそういうものを感じる能力があるのかも知れないね」


 あれ?でも光月とは未来で結婚することはないって、天照さまは言っていたよな?

まぁ、いいか。

「光月。僕はずっとここに居られないのだけど、光月は大丈夫かな?」

「翼さまは、先の世界に家族を残して来ているのでしょう?それならば帰ってあげないと」

「光月は自分のことよりも僕の家族のことを考えてくれるの?」

「それは当然です。愛する人が寂しそうにしているのを放ってはおけませんから」


「僕は寂しそうにしているかい?」

「私には分かります。家族に逢いたくて、泣きたいのを我慢していることくらい」

「光月は何でもお見通しなんだね・・・」

「でも、あまり無理をして巫女たちとセックスしなくても、と思うのですが・・・」

「心配してくれていたんだね。ありがとう」


「私はいつでも翼さまを見守っていますから」

「何だか、お母さまみたいだな・・・」

「私が翼さまのお母さま?・・・それも良いかも知れませんね」

「でも、何だか安心するな・・・」


 あれ?ちょっと待てよ?光月みづき瑞希みずき・・・字は違うけど読みは似た様なものだよな・・・え?それって不味まずいよね。未来のお母さんと?いや、違うよ。そんなことはない!そう思いたい・・・


「そうか・・・ところで今、もう半年が過ぎたね。僕がここに居られるのもあと半年だ。光月は僕とどう過ごしたい?」

「そうですね・・・こうして一緒に眠ってお話しをするのも楽しいし、美しい景色のところへ連れて行ってもらえるのも楽しいわ。言葉ももっと覚えたいし、お料理も教えて欲しい」


「そうか。まだやれることは沢山あるね」

「それにこの子が生まれたら、名前を付けて欲しいです」

「名前か・・・勿論!構わないよ」

「ありがとうございます」

 光月は本当に素敵な女性だ・・・僕は光月を抱きしめ、手を握り合って眠った。




 璃月と眠る夜が来た。璃月にも未来の話をしようと思う。

「翼さま。ここのところ元気がございませんね?」

「え?そう見えるのですか?」

「先の世界へ帰りたいのでしょう?」

「それは・・・」


「ご家族を残して来られているのでしょう?お寂しいのですよね?」

「先の世界・・・未来に残してきているのは君なんだよ」

「私?」


「璃月。人はね、死んだら生まれ変わるんだ。身体は死んでも心は生き続ける。また新たな命に宿って生まれ変わるんだ」

「え?それでは私は初めて生まれた人間なのですか?前の人生を覚えていません!」

「うん。普通は生まれ変わる時に前の人生は忘れてしまうんだ」

「では、私にも前の人生があったのかも知れないのですね?」


「そうだよ。そして璃月はあと、何回か生まれ変わると僕と再び出逢って結婚するんだよ」

「では、その時代の私は今、急に翼さまが居なくなって悲嘆に暮れているのですか?」

「そうかも知れない。だから僕は心配なんだ。そして今度は璃月と家族を作り、僕はこの世界に君たちを置き去りにしてしまう・・・」


「そ、そんなこと・・・でも、私たちは大丈夫です。今、こんなに幸せで、愛を沢山頂いているのですから・・・そしてまた、先の世界で翼さまとお逢いできて結婚できるのでしょう?それなら我慢できます!」

「そう。我慢させてしまうんだ。それが辛いんだ・・・」

「あ!ごめんなさい。そんなつもりで言ったのでは・・・でも本当に大丈夫」


「璃月。君は本当に、本当に僕が居なくなっても大丈夫と言えるの?」

「そ、それは・・・それは・・・だって・・・」

 璃月は大粒の涙をぽろぽろとこぼした。


「うん。僕の奥さんである、生まれ変わった璃月はね、僕が居ないと駄目なんだ・・・」

「そうなのですか・・・でも、今の私は翼さまのために生きたいのです。翼さまにはご自分の世界に帰ってもらいたいのです。ここでの思い出と頂いた愛があれば、私は・・・私たちは姉妹で支え合って、翼さまの子たちと共に生きて行けます」

 璃月は涙をこぼしながら必死に笑顔を作って言った。


「分かった。ありがとう。璃月。君は先の世界で、今のこの時代に生きた記憶を思い出すそうなんだ。だから僕はこの時代の君に良い思い出を作って欲しいんだ」

「嬉しいです。それならば、この子が生まれたら、少しの間でも良いのです。沢山抱きしめてあげてください。その姿を私は目に焼き付けて、それを思い出に二人で生きて行きます」


「ありがとう。璃月。愛しているよ」

「翼さま。先の世界でも翼さまとの生活が待っているなんて・・・私には翼さまだけなのですね!こんなに嬉しいことはありません」


 そうか・・・だから望は僕のことばかり・・・なんだな・・・やはり望も璃月も同じ一人の人間なんだ。二人とも大事にしないとな・・・




 翌日、午後の散歩から帰って風呂に入っていたら、羽月が風呂へ瞬間移動して来た。

「シュンッ!」


「うわぁー!」

「ふふっ。お帰りなさい!巫女に翼さまが帰ってきたら知らせる様に言っておいたの」

「もう!驚いたじゃないか!裸で瞬間移動してくるなんて!」

「嬉しいでしょ?」


 羽月の長い長い髪が風呂に広がり、彼女は僕を包む様に抱きしめてきた。そこからは長い長いキスが始まる。頭がボーっとしてきて思考が混乱する。いつものことだ。


「羽月・・・何故、君は・・・」

「翼さまを私のとりこにするの・・・先の世界に戻っても私を忘れられなくするのよ」

「え?ちょっと・・・怖いんですけど・・・」

「ふふっ。でも、もう私が欲しくてたまらないでしょう?」

「う、うん」


 そう。羽月が欲しい。我慢できないのだ。羽月たち姉妹は璃月以外、一見して皆同じ姿に見える。でも羽月から漂う色香は他の姉妹とは明らかに違うのだ。


 皆が揃っている時や食事をしている時などは、他の姉妹と何も変わらない表情をしている。でも僕と二人きりになると全く違う雰囲気に変わるのだ。


 それが何からくるのか、どうしてなのか、他の姉妹とどう違うのか・・・それを説明することは難しい。これから夕食の時間まで、そして夕食が終わると朝まで二人は愛し合うことになるのだ。


 朝が来て、ようやく二人は身体を離す。羽月は瞬間移動で自室へと帰って行った。

僕は朝食までのわずかな時間、眠りに落ちた。


 こちらの時代に飛び、半年という区切りの時を迎え、僕はホームシックになったのだろう。気持ちが沈みがちになる日が多くなっていた。何か気晴らしというか、気分転換が必要なのではないだろうか?


 あと半年、このままの生活が続くなんて・・・耐えられないかも知れない・・・

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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