8.翼、子を授ける
僕は味噌と醤油作りに着手した。
毎日セックスばかりしている訳にもいかないからね・・・
五人の娘たちと共に調理場へ行き、調理担当の巫女たちに話をした。調理場の巫女たちも皆、若くて美しい娘ばかりだ。皆、僕を見つめて赤い顔をしている。
まずは醤油と味噌の材料と調理道具を揃えてもらった。璃月たちに通訳してもらい食材と桶や壺を並べていった。
僕は予め紙にレシピを書き、食材の名前と文字を指差して教えていった。
勿論それだけでなく、璃月がフォローする様に巫女たちに通訳してくれていた。
大豆を蒸して小麦は炒る。それらを砕いていき、種麴を加えて麹菌を繁殖させる。種麴は天照さまが用意してくれていた。
基本的な作り方を教え、菌の繁殖については経過を見ながら僕が指示していくことになった。味噌も仕込みをすると後は寝かせるだけだ。
『璃月、ここに居る巫女たちは初めて会ったのだけど、彼女たちは子を成さなくて良いのかな?』
『いいえ、必要です。いつかはお願いします』
『ここには、何人居るのですか?』
『百人は居ると思います』
『ここにも百人!』
あぁ、先は長いのだな・・・と遠い目になった時、調理場の窓の向こうに青空と山々が見えた。
『あれ?景色が見える。どうして?』
『こちら側には人里が無いからです』
『あの山の向こうに見えているのは海ですか?』
『そうですね』
『行ったことはありますか?』
『私たちはこの屋敷から出たことがないのです』
『え?庭くらいしか出ていないということですか?』
『そうなのです』
『それは・・・あんまりですね・・・』
『天照さま!天照さま!』
『翼・・・どうしたのです?』
『あ。伝わるのですね・・・直接お会いしないとお話しできないと思い込んでいました。いやあの、今、調理場に居るのですが、ここから見える人里が無い山々や海へ行くことは許されないのですか?』
『・・・そうですね・・・翼が連れて行くなら良いでしょう。ただし、人に見られない様に注意するのですよ』
『はい!ありがとうございます!』
『璃月。天照さまが、行っても良いって言ってくださったよ』
『え?下界へ行くのですか?・・・怖いです』
『僕が連れて行きます。僕が守るから大丈夫だよ』
『本当ですか?外へ行けるのですか?』
五人は期待と不安が入り混じって微妙な顔をしていた。
ただ、羽月だけは喜んで笑顔になっていた。この娘は本当に奔放な娘なのだな・・・そこが可愛いところだけど。
『では璃月から一人ずつ、僕と一緒に出掛けようか』
早速、午後から行ってみることになった。
僕が乗ってきた小型船で行くことにした。反重力装置を使う必要はない。僕の念動力で飛ばせば良いので電気は不要だ。それよりも高い山々の上を飛ぶから寒さ対策で船に乗るのだ。何せ、絹の薄い衣を身体に巻き付けているだけなのだから。
『さぁ、璃月。この船に乗って!』
『これは何なのですか?大丈夫なのでしょうか?』
『大丈夫。僕を信じて』
『はい。翼さまを信じます』
『では行って来るね。明日は羽月だよ』
『嬉しい!楽しみです!』
『璃月お姉さま、お気をつけて!』
『皆、行って来るわね!』
そして小型船は音もなく浮き上がると、靄の掛かっていない裏山の方角へと飛んで行った。
『うわぁ!高い!遠くまで見渡せます!美しい景色ですね!』
『璃月。初めて見た外の景色だものね。これから見るものは初めてのものばかりだね』
『はい。これも全て翼さまのお陰です!』
しばらくは山の尾根沿いに飛んで山々の景色を楽しんだ。人の居ない山は原生林そのものだった。季節は初夏だ。山の緑は青々と茂り日差しは強かった。
『あ!あれは何ですか!』
璃月の指差す方向を見ると熊の親子が居た。子熊は二頭だ。
『あぁ、あれは熊の親子だよ。熊は獰猛な動物だからね、山の中で出会ったら襲われてしまうよ』
『怖いのですね。あ!あれは?』
『あれは鹿だね。あれは大人しい動物だから出会っても大丈夫だよ』
時折、熊や鹿、猿や猪などの獣たちが見え、それを見る度に璃月は興奮していた。そしてその先にある海へ向かった。この辺りは人里が全く無かった。山から海へと降りていくと海は驚くほど透明できれいだった。
『これが海なのですね!広いのですね!』
『きれいな海だね。この時代の海はこんなに美しかったんだね・・・』
僕も感動した。何て美しい景色なのだろう。千五百年前は地球もこんなに美しかったのだ。船で海岸線を低く飛び景色を楽しんだ。
海岸に砂浜を見つけ、人が誰も居ないことを確認して着陸した。
『璃月、着いたよ。降りようか』
『はい。翼さま』
『うわぁー!きれい!この海はどこまで続いているのですか?』
『遠い他所の国だよ』
初夏だけあって海岸は暑かった。久しぶりに海に入ってみたくなった。
『暑いね、海に入ってみようか?』
『え?海に?あの中へ入るのですか?』
『璃月は空中浮遊ができるでしょう?』
『はい。できます』
『では、浮いてみて』
『はい。これで良いですか?』
『うん。そうだね。ではこのまま進んで水に浸かるよ。大きなお風呂だと思えば良いんだ』
『大きなお風呂・・・あぁ、そうですね。水に浸かるだけで良いのですね?』
『そうだよ。あ!その前に衣を脱いでおこうよ。帰る時に困るからね』
『え?外で裸になるのですか?』
『誰も見ていないよ。僕らだけなんだから』
『そうですね』
璃月は赤い顔をして裸になった。僕も衣を脱ぎ捨てて裸になり、二人で手を繋いで海へと入った。
『きゃっ!冷たい!』
『うん。まだ水は冷たかったね。おいで』
僕は璃月を抱きしめた。そしてゆっくりと海に浸かっていった。
『あ!冷たくて気持ち良いです!』
『うん、今日は暑いから丁度良いね。水を舐めてごらん』
『水を?』
璃月は海水の付いた指を舐めると顔を歪めた。
『うわ!しょっぱい!』
『海の水は全て塩水なんだよ』
『塩水?』
『この水を炊いて水分を飛ばして塩を作るんだよ』
『翼さまは何でもご存じなのですね』
『さぁ、泳いでみようか。僕が両手を掴んでいるから足で水を蹴ってごらん』
璃月が足を交互にばたつかせて水を蹴っている。璃月は楽しそうに笑顔になった。
『翼さま!楽しいです!』
『良かった。君たち姉妹はまだ若い。色々なものを見て感じて、経験することが必要だと思うよ』
『翼さまがいらっしゃらなかったら・・・こうして外に来ることもなく、弟たちと子を作っていたのかと思うと・・・』
『璃月。もう僕はここに居る。それで良いじゃないか』
『翼さま・・・本当に感謝しています』
『一年後に僕は居なくなってしまうとしても?』
『翼さまの子が居れば、あなたさまの思い出を胸に生きていけます・・・』
「璃月・・・愛しているよ」
「翼さま、愛しています」
海の中に浮かんだまま、ふたりは抱き合いキスをした。
そのまま砂浜の木陰に行き、セックスを始めた。璃月の身体を舐めると塩辛かった。
ふと思い付き、卵管を透視すると排卵していた。
『璃月、排卵しているね。卵ができているんだ。今からセックスすると子ができるかも知れないよ』
『本当ですか?こんなに美しいところで子を授かるなんて・・・嬉しいです』
『では、璃月は子ができても良いのですね?』
『はい。あなたさまの子をお授けください』
そして深く愛し合い璃月は何度も絶頂に達し、ふたりは快感に溺れた。
果てた後も離れず、抱き合って愛を確かめる様に互いを抱きしめた。
『これで、翼さまの子を授かるのですね・・・』
『まだ、決まった訳ではないけれど、できる可能性は高いかな』
日が傾くまで砂浜で抱き合ってキスをしていた。風が少し涼しくなってきたところで帰ることにした。
『夕陽が美しいね』
『はい。私は翼さまと一緒に見たこの美しい夕陽を、生涯忘れることはないでしょう』
夕陽が水平線に掛かる頃、僕らは船に乗り沈みゆく夕陽を眺めながらゆっくりと飛び、屋敷へと帰った。
璃月は僕の腕に絡まる様にしがみ付き、肩に頬を寄せて夕陽を眺めていた。
翌日は羽月の番だ。飛ぶコースは昨日と同じで動物たちを見つけながら山を越えて海を目指した。羽月は子供の様にはしゃいで喜んでいた。
海岸にでると僕にもたれ掛かり、うっとりとした瞳で景色を眺めていた。
『なんて美しいのでしょう・・・下界はこんなにも美しかったのですね』
『そうですね。この時代の自然は本当に美しい』
『翼さまが暮らす世界は美しくないのですか?』
『そうですね。人が少ない地域ならば、美しい場所も残っていますよ』
『人は景色を変えてしまうのですね・・・』
『はい。人は増え過ぎると自然を破壊してしまう様です』
『残念なことですね・・・』
『翼さま。ずっとここに残って私たちと暮らしませんか?』
『羽月・・・それは・・・』
『そうですね。できないですよね。先の世界に残してきた人が居るのでしょう?』
『・・・』
これは答えられないな・・・
『気にしないでください。あれ程にセックスが上手いのですもの。奥方さまがいらっしゃるのでしょう?良いのです。私たちのことは・・・』
羽月はわざとサバサバした言い方をして雰囲気が暗くならない様に気遣ってくれた様だ。
『私、海に入ってみたいです!』
『いいよ。浜に降りようか』
昨日と同じ砂浜へ降りた。
『砂が熱いのですね!』
『陽に焼かれて熱くなっているのです。歩かない方が良いですね。空中浮遊で海まで行きましょう。でもその前に衣を脱いでしまいましょうか』
『あ!そうですね。濡れてしまいますものね!』
羽月は恥ずかしがることもなく、さっさと衣を脱ぎ捨てた。僕も慌てて脱ぎ捨て、ふたりで手を繋いで海まで空中浮遊して行った。
『このまま海の中に降りて水に浸かりますよ』
『はい』
「どぼんっ!」
「羽月!」
『気持ち良い!』
羽月は海の中に飛び込んでしまい、海にぷかぷか浮くと、髪もびしょ濡れになりながら笑顔になった。
それを見て僕も笑顔になり羽月の隣へ飛び込んだ。
「ばしゃーん!」
「きゃーっ!」
水しぶきを浴びて羽月が叫んだ。
『気持ち良いね』
『はい!気持ち良いです!』
羽月は怖がることなく、身体を真直ぐに伸ばし水面に仰向けに浮かんだ。
僕もその隣に浮かび手を繋いだ。
『外の世界は素晴らしいわ!』
『そうだね。あの屋敷の中にずっと居るなんて良くないね』
『私、子ができたら、その子とここへ来て一緒に遊ぶわ』
『それは良いね。きっと良い子に育つよ』
『翼さまの子ですもの。良い子になるに決まっているわ』
『まだ、水が冷たいからあまり長く浸かっていない方が良いね。浜へ上がろうか』
『はい』
砂浜の木陰に行くと羽月が抱きついてきた。
『冷えてしまいました。温めてください』
『大丈夫?』
『早く温まる様にセックスしてください』
『喜んで!』
それからふたりは夢中でお互いの身体を求め合った。僕は無意識のうちに羽月に溺れてしまう。
そして、陽が傾くまで続けてしまった。もう何度果てたか分からない。
ふたりで砂浜に座り、肩を並べて話した。
『羽月は僕との時間が惜しくて、何度もセックスをしようとするの?』
『うーん。そうね・・・それもあるけど・・・単純にセックスが好きなの』
『では、僕が居なくなった後は?』
『巫女が居るわ』
『巫女で良いの?』
『では、翼さまがまた来てくれるのですか?弟とするのは嫌だわ』
『いや、それは・・・』
『意地悪な質問でしたね・・・良いのです。だからここに居る間は沢山してください』
「分かったよ・・・羽月、愛しているよ」
「私も・・・翼さまを愛しています」
そしてまたふたりは始めてしまった。そして陽が落ち、辺りが暗くなったので慌てて、瞬間移動で屋敷へと帰った。
次の日は月花と外出だ。
船に乗って山の尾根に沿って飛ぶと月花が言った。
『翼さま、山の中に降りてみたいのですが・・・』
『山の中?』
『草木の香りが好きなのです。木々に囲まれた場所に行ってみたかったのです』
『そういうことか。では良さそうな場所を探してみようか』
そう言って今まで行っていなかった方角へ進んでみた。
すると山の中に瀧が流れ落ちている場所を見つけた。瀧が降り注ぐ先は半円形の池の様になっており、その周囲は野原となり草花が咲いていた。
だが、その少し先は原生林に囲まれている。野生動物の水飲み場になっている可能性もあるから注意しないといけないが、まぁ、僕らには力があるから大丈夫だろう。
『あの瀧つぼの周りに降りてみようか』
『はい。素敵ですね』
野原に降りて船から出ると、滝のしぶきが細かい霧の様になり、風に乗って僕らの肌へ届いた。
『何て気持ちの良いところでしょう!』
『月花が気に入って良かった』
『外にはこんなに素晴らしいところがあるのですね!』
『うん。美しい場所ですね。でも野生動物が出て来るかも知れません。周囲に気をつけていてくださいね』
『はい。分かりました』
僕たちは野原に腰を下ろして、瀧のしぶきを浴びながらマイナスイオンを堪能していた。
すると月花が何かに気付いた。
『あ。何か来ます・・・動物ですね・・・』
『え?どこ?』
月花は気配に敏感な様だ。僕にはそんな気配は感じない。そして月花が指し示す方角を見ていると、木々の間から鹿の親子がでてきた。僕らは気配を消して念話で話す。
『あれは鹿の親子だね。草食動物で大人しいから怖くはないよ。でも臆病だからこちらが動いたら逃げてしまうと思うよ』
『はい。じっとして見ていますね』
親鹿は僕らを見つけると、しきりにこちらの動きを気にしていたが、動かないと分かると水辺に近付き親子で水を飲み始めた。
『美しい動物ですね。鹿というのですね』
『子が可愛いですね』
『かわいい?って何ですか?』
『小さくて愛らしいものを見た時に心が弾む感じがしませんか?その様な気持ちを可愛いと言うのです』
『可愛い・・・可愛い・・・良い響きの言葉ですね』
『月花も可愛いですよ』
『え?私が?可愛い?小さくて愛らしい・・・のですか?』
『はい。可愛くて愛らしい。そして愛しています』
『まぁ!嬉しい!』
月花は心でそう叫ぶと僕に抱きついてしまった。その動きに驚いた鹿の親子は木々の中へと逃げて行ってしまった。
『あ!驚かせてしまいました!』
『ふふっ、でももう、十分に水は飲んだ様だから大丈夫でしょう』
『それなら良かった・・・翼さま。愛しています』
そして、ふたりは抱き合ってキスをした。
でも、そこではそれ以上はしなかった。ここでセックスに夢中になっていて目の前に熊が立っていたらパニックになってしまうからね。
それから海へ移動し、海でひとしきり遊んでから砂浜でいちゃいちゃし始めた。
そして月花も排卵していることに気付いた。
『月花、卵ができていますね。子を授けましょうか?』
『こんなに素敵なところで授けて頂けるのですか?』
『ここが良いならすぐにしましょう』
『嬉しい。素敵な思い出になります』
深いキスをして月花を抱きしめた。
『可愛くて愛しい月花。僕の子を産んでくれるのだね?』
『はい。あなたさまのお子を授かれるなんて・・・これ程の幸せは他に御座いません』
それを聞いてから僕たちは深く繋がり、夕刻まで愛し合った。
月花は何度も絶頂に導かれ、嬉しさで涙を零した。ふたりで抱き合い夕陽を眺めた。
そして、沈む夕陽を見届けながら海岸線を飛び屋敷へと帰って行った。
月代との外出の朝を迎えた。朝食を済ませると食堂を出る時に月代の卵管をチェックした。すると月代は排卵していた。これは急がなくてはならない。
『月代、すぐに出発しましょう』
『え?昼食後ではないのですか?』
『えぇ、ちょっとそうしないと都合が悪いのです。すぐに出られますか?』
『私は構いません』
『では、すぐに出発しましょう』
船に乗り、まずは山の中を飛んだ。
『月代は山と海とどちらが好きですか?』
『それならば、山の奥に湖という、大きな池があると巫女に聞いたのです。その水の色が碧く美しいのだそうです。それを見てみたいです』
『ほう。湖ですか・・・では探してみましょう』
僕は船をかなりの高度まで上昇させ周囲を見渡してみた。
すると十キロメートル位先の山間に大きな湖を見つけた。多分、あれがそうだろう。
少し速度を上げて、あっという間に山々を飛び越え、湖の畔へとやって来た。
『あぁ、本当に美しい碧色ですね』
『何て素敵な色なのでしょう!』
湖の半周は原生林に囲まれているが、その反対側は小高い丘になっており、そちらは開けた草原になっていた。その草原側の湖畔へ船を降ろした。
『ここならば見晴らしが良いので安全ですね』
『安全?危険があるのですか?』
『あの湖の向こうの原生林には、野生動物が多く住んでいるのです。肉食獣がでてきたら危険です。でもこちら側は草原ですから草食動物くらいしか居ませんから安全です』
『では、ここに居ても良いのですね?』
『はい。心行くまで景色を楽しんでください』
『翼さまは、本当にお優しいのですね・・・』
『愛する月代のためですから』
『まぁ!・・・私のために?』
「えぇ、月代。あなたを愛しています」
「私もです。翼さまを愛しています」
『声に出して言うのって恥ずかしいです!』
『月代・・・』
僕は月代を抱きしめてキスをした。月代はそれに応え僕にしがみついてきた。
『月代、今、君には卵ができています。子を授かる準備ができているのです。どうしますか?』
『ここで・・・この場所で授かることができるのですか?』
『ここが良いのなら、すぐにしましょう』
『嬉しい。きっとこの美しい景色が心に焼き付くことでしょう』
そして柔らかい草原の中で、草花の甘い香りに包まれながらふたりは愛し合い結ばれた。午前中は湖畔で過ごし午後は海へ行った。そこでもふたりは愛し合った。昼食も食べずに愛し合い、夕陽を眺めながら海辺を飛び屋敷へと帰った。
『翼さま。私、今日のことを一生忘れません』
『良い思い出になったかな?』
『はい。素晴らしい体験ができました。忘れたくても忘れられないでしょう』
『良かった・・・』
月代は僕の腕にしがみつき、微笑みながらいつまでも僕の顔を見つめていた。
最後に光月と外出する。月代のことがあるので朝食後に確認したが、光月は排卵していなかった。
昼食後に船に乗り出発した。
『光月は山と海ではどちらが好きですか?』
『私は海に行ってみたいです』
『では、山沿いに飛んで動物でも眺めながら海へ向かいましょう』
途中、鹿や熊を見つけながら瀧も見て海へ向かった。砂浜へ降りると、船に乗ったまま光月は海を眺めて涙を浮かべ始めた。
『光月、どうしたの?』
『海が・・・あまりにも美しくて・・・それにこの世界も・・・みんな美しいです』
『感動したのですね?』
『はい。心が震える程に・・・何故、世界はこの様に美しいのでしょう?』
『そうですね。自然というものはかように美しいものなのです。これを人間が壊さない様にして行かなければならないのですが・・・』
『先の世界では、この美しさが失われてしまうのですか?』
『全てではありませんが、一部人間の身勝手な行いによって破壊されてしまいます』
『私はそれを止めるため、でも人間の営みも失くさぬ様に尽力しているつもりです』
『翼さまには、その様な崇高なお役目があるのですね・・・』
『お役目というより、僕の好きで勝手にやっていることです』
『でも、天照さまからもお役目を授けられていらっしゃるのですよね?』
『そうですね。お役目は頂いています』
『私は翼さまのお役に立てるのでしょうか?』
『はい。私の子を成して頂ければと思います』
『私でよろしければ・・・喜んで・・・』
その時、何気なく光月の卵管を透視すると排卵していた。
『光月、今あなたには卵ができています。僕の子を授けてもよろしいですか?』
『今、ここで?』
『ここではお嫌ですか?』
『いいえ、この様に美しいところで授かれるなんて夢の様です』
では、とばかりに光月を抱きしめてキスをしセックスした。光月は控えめながらも何度も絶頂に達し、身体を震わせながら僕を受け入れた。陽が傾くまで光月を抱きしめ、沈み行く夕陽を眺めてから屋敷へと帰った。
そうして、僕は羽月以外の四人の娘たちへ子を授けたのだった。
お読みいただきまして、ありがとうございました!