27.地球からの贈りもの
地球の友人、山本へ鞄を送ってから一週間が経った。
「よし、一週間前に送った時と同じ時間に引き寄せるぞ」
送った時の山本の部屋のイメージを頭に浮かべ、同じテーブルの上にある鞄が消えて、ここに現れる映像を強くイメージする。
「シュンッ!」
目の前に鞄が現れた。しかもなにかパンパンに膨れている。
「やった!成功だーっ!」
僕は思わず、大きな声を上げてしまった。
お母さんが近くを通り掛かったらしく、扉を開けて顔を出した。
「どうしたのですか?」
「あ。お母さま、成功したのです!」
「何が成功したのですか?」
「地球の友人からの荷物が届いたのです!」
「地球から?荷物?何かを頼んでいたのですか?」
「えぇ、男の子を授かるための薬の様なものです」
「まぁ!そんなものがあるのですか!ではお姉さま方は男の子を授かることができるのですね!」
「いえ、絶対ではないのです。確率が少し高くなるだけのものです」
とは言え、実は男の子を授かる確率は若干上がるのだけど、妊娠する確率自体は諸々の理由で下がってしまうのだけどね。
僕はドキドキしながら鞄を開いた。すると中にはギッシリとグリーンゼリーが詰まっていた。数えるとその数五十箱だ。一箱十本入りだから五百本も手に入った。
あれ?このゼリー。かなり高額な筈だけど、これって多くないか?確か一箱一万五千円位したと思ったのだが?それだと七十五万円だ。いくら大金貨でもそこまで大きくなかったと思うのだが・・・
「あ!グリーンゼリーだけではない。何か入っているぞ。うわ!芋煮のパックだ!」
「これは食べ物ですか?」
「そうです。地球での好物だったのですよ」
「お友達がくださったのですね」
「えぇ、そのようです・・・」
「手紙も入っています」
拝啓
碧井 正道様
碧井。ご無沙汰しています。本当に驚きました。
その日は非番で夕方に部屋で映画を観ていたら目の前のテーブルに突然、この鞄が現れたのです。この事実を自分の目で見ていなければ手紙に書かれていたことなど信じなかったかも知れません。
でも本当の様です。驚きました。それにしても君らしいな。四歳でもう医師の仕事を始めたのか。何にせよ元気でやっている様で安心しました。その世界とやらは何という惑星なのですか?
送ってもらった金貨は六十グラムもあって貴金属店で鑑定してもらったら、金の値段だけで約四十万円になるそうです。でも見たことのない金貨だし美術的価値もあるから、八十万円で売ってくれと言われました。
そう言われたら、こんな希少なものを売るのがもったいなくなってしまい僕がもらうことにしました。その価値に見合うようにグリーンゼリーは五十箱購入しました。
本当は日本酒でも入れてやろうかと思ったけど、四歳だって言うから酒ではなく芋煮にしておきました。
そちらには医療器具がないとのこと。超能力で病気や怪我も治せてしまうのでしょうか?そんな世界があるなんて驚きです。
でも、帝王切開しなければならない事態になっても大丈夫なのでしょうか?必要ならば手術器具も送るので、また鞄を送ってください。その時はもっと大きな鞄でね。
ところで、舞依さんもそちらに転生しているのでしょうか。きっとそうですよね。
そちらの世界でどうか幸せに暮らしてください。
必要なものがあったら、いつでも鞄を送ってください。
追伸。鞄が届いたのはこちらの2006年11月10日17時頃でした。
山本 拓也
敬具
手紙を読んでいて涙が零れ落ちた。そうだよね。誰だってそう考えて当たり前だ。
舞依も一緒にこの世界に転生しているって。そうだと良いのだけれど・・・
そうか、やはり死んだ瞬間にこの世界へ転生した様だ。日付が繋がっている。舞依と僕は地球の2002年の十二月に死んだのだから。
そして僕は来月四歳になる。何故か日時が地球とこちらで同じ。しかも時間も同じみたいだ。手紙に鞄が届いた日時を書いてくれていた。こちらの世界でも十一月十日の十七時頃に送ったのだ。そして今は十七日の十七時だ。
これで、地球の物を手に入れ易くなった。山本が手紙に書いてくれた帝王切開についてはその状況になっている人に出会っていないから思い至らなかった。
確かに胎盤の早期剥離が起こったり、分娩時に臍の緒が胎児の首に巻き付いて出て来られない。そんな事態が起こったら治癒能力で治せるとは思えない。
僕の家族だけでこれから立て続けに七人の子が生まれようとしているのだ。そういったリスクも考えておかないといけないだろう。
今まではどうしていたのだろうか?もし、その様なケースが皆、死産となっていたとするならば帝王切開は有効な手段となるな。今度、朧月伯母さんに聞いておこう。
「お母さま。この星の名前はなんというのでしょうか?」
「星の名前ですか?それは聞いたことがありません。国の名だけしか知りません」
「おや。そうなのですね」
僕は山本へ御礼の手紙を書いた。この星の名前も舞依が転生しているかどうかも分からないこと、暦や日時が地球と同じかも知れないこと、月が二つあること、人口や国の数、男女比、超能力や治癒能力のこと、言語が同じであること、そして日本の天照大神との関係がありそうなこと、それにオービタルリングと低軌道エレベーター、特殊な乗り物があること。
今、分かっていることを整理しながら手紙に書いた。そしてまた欲しいものができたら鞄と金貨を送ることを感謝と共に書いて送った。鞄の時と同じ様に。手紙の封筒が山本家の居間にあるテーブルに現れるイメージをする。
「シュンッ!」
封筒が消えた。よし、届いただろう。こちらからはこうして送れるけど、山本からは僕が鞄で引き寄せない限り連絡はできないのだな。
その日、晩餐のあとでこのことを皆に発表した。
「皆さん。また驚かせてしまうのですが・・・」
「またか!何を聞いても驚くのだから気にせず話しなさい」
「お父さま、ありがとうございます」
「実は、以前に私の前世の世界、これからは地球と言わせて頂きますが、地球から下着を引き寄せることができたので、それができると言うことはこちらから送ることもできるのではないかと考え、鞄に金貨と手紙を入れて僕の友人に送りました」
「手紙には欲しいものを記し、七日後に引き寄せるのでそれまでに品物を用意して鞄に入れてくれる様、頼んだのです。そして先程、鞄を引き寄せたところ、欲しかったものが入っている鞄を引き寄せることに成功したのです」
「この前、相談を受けた投資とはこのことだったのだな。そして成功したのか!」
「はい。これからは地球にあるもので欲しいものがあれば、友人を通して手に入れることができる様になったのです」
「それでお兄さま。今回は何を送って頂いたのですか?」
「はい。簡単な言い方をしますと、男の子が生まれ易くなる薬です」
「え!男の子が生まれる薬!そんなものがあるのですか!」
「では、私たちは男の子を授かることができるのですね!」
「あ。ちょっと待ってください。必ず。ではないのです。男の子が生まれる可能性を少しだけ高める薬です。ルチア母さまとメリナ母さまの時に指導したことはやって頂いた上で、これを使うと更に男の子が出来易くなると言うお話なのです」
「でも、可能性が高くなることは嬉しいですね」
「えぇ、ですからこれから計画を実行する際はこれを使います」
「ありがとうございます!」
「期待していますね!」
そしてマリー母さまの排卵日となった。
今回からは、より確実に男の子を狙うための一発勝負とする。グリーンゼリーを節約するためでもある。三晩続けて性交したらゼリーも三本使うことになるからだ。
まず、基礎体温表の記録から排卵日を予測する。排卵日と予想される二日前からお父さんに禁欲して頂く。排卵予定の一日前から、僕が卵管内を透視して排卵されたかを朝から二時間おきに確認する。そして卵管の中に卵子を確認したらゼリーを挿入して性交して頂く。
「マリー母さま、卵管に排卵を確認しましたのでこれからお父さまと性交して頂きます。その前にこのゼリーを性器の中に注入してください」
グリーンゼリーの注射器は丸く優しい形の作りになっていて注射器には見えない。シリンジの部分を女性器に挿入し、ポンプを奥まで押してゼリーを注入するのだ。
「え?それをどこに入れるのですか?」
「はい、ここをこう持って性器の中にここまで挿入し、ここを奥まで押すのです」
「そ、そんな!怖いです。月夜見さまにして頂けないですか?」
「え?僕がですか?それはできますけれど・・・僕に下半身を見られることに抵抗はないのですか?」
「だって、月夜見さまはお医者さまなのでしょう?」
「あ!そ、そうでした。分かりました。では、お父さまにも準備をして頂きますので、声掛けして来ます。マリー母さまはお風呂に入ってベッドで待っていてください」
「服はどうするのでしょう?」
「あぁ、下だけは脱いでいてください」
「は、はい。分かりました」
僕はお父さまの部屋へ行って説明する。
「お父さま、マリー母さまの排卵が確認できましたのでこれから性交して頂きます。お風呂に入っていつでもマリー母さまの部屋に来られる様、準備をお願いします。メリナ母さまの時から少し間が開いていますが手順は覚えていらっしゃいますか?」
「う、うむ。まずマリーを絶頂に導き、その後深い場所に射精する。すぐには抜かずに萎えるまで待つ。そしてマリーは動かず安静にする。だったか?」
「はい、完璧です。お父さま。ではマリー母さまの準備が整いましたら僕が呼びに来ます」
「うむ。頼むぞ」
お風呂の時間を考慮してからグリーンゼリーを持ってマリー母さまの部屋へ伺った。
「マリー母さま、準備はよろしいでしょうか?」
「はい。どうぞ・・・」
ベッドの横まで来るとマリー母さまはシーツを掛けて仰向けに横たわっていた。僕はクッションを持ってベッドに上がった。
「マリー母さま。これからゼリーを入れますね。足元をめくりますよ。まず腰の下にこのクッションを入れて腰を高くします。これは入れたゼリーがすぐに零れ落ちない様にするためです。ではこのまま膝を立てて少し足を開いてください」
「これで良いでしょうか」
「はい。では力を抜いていてください。少し冷たく感じますよ」
僕はゆっくりとゼリーの容器を挿入していった。十分に深く入ったことを確認し、ピストンを押してゼリーを注入した。マリー母さまは「うっ!」と声を漏らしたがすぐに終わった。
「はい。終わりましたよ。お父さまを呼んで来ますので、そのままの姿勢でいてください。お父さまがいらっしゃったらクッションは外してください。それで射精した後、どうするかは覚えていますか?」
「はい。足を閉じて数時間は安静にするのですね」
「はい。そうです。ここからは心を落ち着けてあまり考え事はしない様にしてくださいね」
「えぇ、分かりました。ありがとうございます」
「良いのです。では、お父さまを呼んで参ります」
「はい。お願いいたします」
その後、お父さんを呼び後のことは任せた。
次はシルヴィア母さまの番だ、事の流れは同じなのだがお父さまにひとつだけ注意事項を伝える。
「お父さま、事前の質問で伺ったのですが、シルヴィア母さまとジュリア母さまは、性交での絶頂感が分からない様です。ですから絶頂に導こうと頑張り過ぎると逆効果となりますので、そこは程々で構いません。いつも通りに愛して差し上げれば結構ですので」
「うむ。分かった。話だけを聞いていると何か人生の大先輩に説法されている様だな」
「これは医学知識ですよ」
「うん。分かっているよ。ありがとう」
そうして、一か月以内に五人のお母さま方の家族計画は無事遂行されていったのだった。
いよいよ、世界中の国々から要人に集まって頂く日が近付いた。
本は三千七百冊全て間に合った。下着は王侯貴族用については来て頂いた方の分だけは当日購入できる様に十分な数やサイズを用意してもらった。勿論、騎士用や平民用の見本もだ。
生理用品も生産国以外の国に見本を持ち帰って頂ける数を用意した。
ビデは神宮のトイレに全て設置済みで公衆トイレも完成しているので実際に使って試して頂ける。
当日の参加者は僕の家族は全員だ。お爺さんの奥さま方も全員揃うそうだ。
メリナ母さまとルチア母さまは少しお腹が目立って来たところだ。安定期には入っているので出席頂いても問題はない。
グロリオサ服飾店からは販売対応のできる店員は全員来て頂いて即売会に対応頂く。
ビデの方は設計図や部材の明細を記したものを持ち帰り頂くことにした。
準備は全て整った。あとは当日を迎えるだけだ。
お読みいただきまして、ありがとうございました!