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32.卒業と結婚

 地球に戻った僕たちは忙しかった。まず、三人との結婚式を計画した。


 結衣は大学に行かないので高校卒業と同時に結婚する予定だ。でも、新奈と望は大学に進学する。普通なら結婚は大学卒業後だ。だけど新奈と望とは形だけの結婚となる。それならば、いつ結婚式をしても良いのだということに気がついたのだ。


 それで高校卒業後に三人一緒に結婚式をしてしまおうということになったのだ。


 勿論、神前式でもキリスト教式でもない。無宗教の言うなれば人前式という形を取る。お父さんが僕たちの結婚を承認するということだ。それって神前式なのかも知れないけど。


 どこで結婚式を挙げるかを考えたのだが、結局、月の都で行うこととした。

出席者は僕の両親と祖父母、早苗お母さんの家族、新奈と望の両親、徹と巧と美樹先輩とその両親。更に結衣たちの前世の母親三人も呼ぶこととなった。


 出席者が総理大臣や有名企業の社長、そして天照さまだ。顔を見ただけで素性がバレてしまう人ばかりなので、ホテルや結婚式場ではできないと結論付けられたのだ。


 結婚式はお父さんの結婚を承認する宣言の後、招待客と共に飲食を共にして結婚を祝うという簡素なものだ。あとダンスくらいはするだろう。


 結婚式までは、三人の力の使い方の訓練をした。

力加減を自在に操れることを確認した上で、瞬間移動の訓練も開始した。そして三人共、結婚式までに瞬間移動もできる様になった。




 結婚式の直前には高校の卒業式がある。卒業生代表を頼まれそうになったが、上手く徹へ振った。やはり東大合格者で首相の息子。将来は国会議員を目指すのだから、ここから顔や名前を売って行かなければならないはずなのだ。


 すると徹から提案された。

「翼、卒業生代表の挨拶なのだけど、壇上には神代さんと巧、それに翼も上がって欲しいんだ」

「何か考えがあるんだね?」

「これからの政策や社会の仕組みの変化について触れておきたいんだ。その当事者として、神代さんと巧にも立ち会って欲しいんだ」

「神代重工や神宮寺建設の名を出すということだね?」


「そうさ。格差是正の件で経済界の特に富裕層には大変な不満が渦巻いているんだ。神代重工や一ノ瀬電機、天羽化学と神宮寺建設もやり玉にあがるかも知れないんだよ」

「皆に同意を求めるんだね?それで僕をどう紹介するつもりなんだい?」


「翼の素性には触れないよ。ただ、皆の人気者だから最後に一言欲しいかなと思ってさ」

「あぁ、皆の気持ちをまとめたいんだね?」

「そういうこと」

「分かったよ」




 そして、卒業式の朝が来た。僕は結衣とセバスの運転する車に乗って家を出た。

「結衣。とうとう卒業式だね。ふたりで学校へ行くのもこれが最後なんだね」

「最後だと思うと少し、寂しいわね。でも明日からはずっと、翼と一緒に居られるから私は嬉しいわ」

「僕は高校に入学するまで、ずっと一人で勉強と研究をしていたから、この三年間は本当に楽しかったよ。神星の兄弟たちにも良い影響を与えることができたみたいだしね」


「そうね。翼にとっては、良い高校生活だったのね」

「それはそうさ。結衣たちにも出会えたのだしね」

「私もよ。翼と出会っていなかったら、私は今頃どうなっていたのかしら・・・」

 結衣はうつむいて、吐き出す様につぶやいた。


「結衣。僕は君を離さないから・・・もうそんなこと考えないで」

「翼・・・ありがとう。私も離れないわ」

 ふたりは後部座席で肩を寄り添い合って手を繋いだ。


 いつもの様に駅前で新奈と待ち合わせし、三人で校門をくぐると徹と巧が待っていた。

「おはよう!とうとう今日で最後だな」

「おはよう。徹、巧。確かに学校は今日で最後だね」


「この制服姿も見納めだな」

「私と結衣の可愛い制服姿もこれが最後よ!」

「それは残念だね。後で写真を撮っておこうね」

「えぇ、沢山、写真を撮りましょうね」


 卒業式が始まった。僕の両親は出席できないので、早苗お母さんが来てくれていた。

両親と葉留は、早苗お母さんの意識に入ってこの式を見守っていることだろう。


 教頭先生による開式の挨拶、国歌斉唱の後、卒業証書が授与された。やはり、僕と新奈が卒業証書を受け取る時は会場中がざわつき盛り上がった。


 続いて校長先生や来賓の挨拶を終え、在校生から送る言葉を頂いた後、徹の卒業生代表の挨拶となった。壇上に四人で上がると、会場が少しざわついた。


「皆さん、卒業生代表の榊 徹です。今日は卒業生代表の挨拶ということではありますが、少し僕たちの将来の話を聞いて欲しいと思い、この三人にも上がってもらいました」


「既に皆も知っていると思うけど、僕は榊首相の息子です。そして、ここに居るのは神代重工の社長令嬢の神代さんと神宮寺建設社長の息子、巧です」


「政府からの発表で皆も知っていると思うけれど、僕らの親は今、世界で日本が主導しているプロジェクトを進めています。実は僕ら三人もその会議に出席しているのです」

 会場中がざわついた。だが生徒は皆、驚きながらも笑顔だった。


「何故、高校生の僕たちがこの会議に出席するのか?それは僕らの世代が地球を守っていかなければならないからです。そして今後、日本は勿論、世界全体で収入の格差を是正していきます。簡単に言うと裕福な人間も貧しい人間も居なくなるということです」


「裕福でなかった人は歓迎するでしょうけれど、裕福であった人は不満に思うことでしょう。でも首相だろうと、神代重工の社長だろうと皆、同じです。これからは皆、同じ収入となるのです。贅沢はできないでしょう」

「おぉー!」

「いいぞー!」

 この発言には大きな反応があった。


「でも、それは全て地球を守るためです。僕たちやその子供の世代で人類が滅亡することを防ぐためには、今、こうするしかないのです。どうかご理解を頂けます様、お願いします」


「いいぞ!榊!俺たちはお前の見方だ!存分にやってくれ!」

「いよっ!次期首相!頼んだぞ!」

「頼む!秘書にしてくれー!」

「榊くーん!カッコイイ!」


 生徒たちから声援が届き、拍手が起こった。先生たちも笑顔で見守り、拍手をくれた。

僕は徹と握手をしてから演説台に立った。


「皆、翼です。徹を応援してくれてありがとう!人間は長い歴史の中で、特に日本を含む先進国が欲望のままに富を求め続け、環境破壊から目を背けてきました。そのツケを僕らや僕らの子供たちが払わされるのは納得がいかないかも知れません」


「でも、僕らがそれをしなければ、人類は滅びるのです。それを放置はできませんよね?」


「どうか皆さん、僕らの未来を守るために、日本政府や神代重工、神宮寺建設が進めているプロジェクトにご理解とご協力をお願いします」


「わぁーっ!翼君、カッコイイ!」

「協力するわ!」

「金持ちなんて居なくなれば良いんだ!良いことだよ!」

「新奈も頑張ってーっ!」

「神宮寺君もよく見たらイイ男かも!」


 僕らは四人で頭を下げ、手を振りながら壇上から降り、席へ戻った。

最後に卒業生全員で歌を歌った。新奈も結衣も涙を流していた。その顔を見ながら高校生活の思い出を振り返っていたら、僕も感極まって涙が出そうになってしまった。


 卒業式が終わり教室へ戻ると、先生から最後の連絡事項が伝えられ三年間の高校生活が終わった。


 先生から解散が伝えられた後は、皆が集まってきて写真を撮った。僕と新奈、それに徹と巧は大人気で中々撮影会が終わらなかった。


 それが終わって教室を出た後も、下級生から一緒に写真を撮って欲しいとねだられ、応じていたら一時間以上掛かってしまった。


 そして、僕たち五人は揃って校門を出ると駅まで一緒に歩いた。

「あー、卒業してしまったね」

「翼、寂しいのね?」

「新奈、そうだね。この三年間は本当に楽しかったからね・・・」

「あぁ、そうだな・・・でもこれで終わりじゃない。僕ら八人の関係はこれからも続くのだからな」


「そうだね。皆、これからもよろしくね!」

「もちろん!それに来週は君たちの結婚式だな!」

「うん!よろしくね!」

 新奈が笑顔で答え、結衣もその隣で微笑んでいた。


「ところでさ、本当にダンスをするのかい?」

「あれ?巧。練習しなかったのか?」

「一応したさ。でも徹は葉留ちゃんから直接教わっているから良いけど、こっちは一ノ瀬さんから習った美樹が僕に教えているのだからね・・・大体、科学者は運動が苦手なんだからさ・・・」


「巧。上手く踊る必要はないんだ。美樹先輩と楽しく踊ればそれで良いんだよ」

「あぁ・・・まぁ、そうだな。分かったよ」

「それでは当日のことはまた連絡するからね。よろしく頼むよ」

「りょーかーい!それじゃあ、またな!」

「また来週!」




 結婚式当日、月の都への転移は、新奈と望は自分の両親を連れて飛び、徹と巧、美樹先輩とその家族は僕が転移させ、お母さんは早苗お母さんの家族を転移させた。


 皆、まずは月の都の庭園に集合することとした。

初めてここに来た新奈たちの両親や巧と美樹先輩は相当に感動していた。


「僕たちは今、あの月の都に来ているのか!」

 巧は大興奮できょろきょろと見回している。

「ここが月の都!中からは下界がこんなにも良く見えるのですね!」

 総理大臣である、徹の父親も興奮気味だ。


 僕と結衣たち三人は支度のため、先に城へと入った。その間、お母さんが皆を案内してくれることとなった。


「皆さま。私は翼の母、瑞希です。今日は翼の結婚式にお越し頂き、ありがとうございます」

「と、とんでも御座いません。神の御住まいにご招待頂けるとは、誠に光栄で御座います」

 榊総理大臣がかしこまって答えた。


「神代さま、一ノ瀬さま。この度は、私たちの都合により、日本で通常行われる結婚式を執り行うことができないことをお詫びいたします・・・申し訳ございません」

 お母さんは深く頭を下げて皆に詫びた。


「そ、そんな!頭をお上げください!私たちにその様なお気遣いを頂くなんて、勿体ない!」

「我々は、娘が天照さまのご子息に嫁げるだけで、この上ない幸せなので御座います。更にその結婚式を月の都で開いて頂けるなんて・・・本当にありがとう御座います」


「そうですか。それを聞いて安心いたしました。では、式の準備ができるまで、月の都をご案内差し上げましょう」

「シュンッ!」

「おぉ!」

 出席者全員をまずは、山の頂上へと転移させた。


「こちらから月の都の全景と下界が見渡せますよ」

「素晴らしい!なんて美しい!」

「景色も素晴らしいわ!見て!富士山や海も見渡せるのね」

「神はいつもこうして下界を見下ろしているのですね・・・」

 人それぞれに感慨深げに景色を堪能していた。


「では、庭園へ戻りましょうか」

「シュンッ!」

「うわ!一瞬で!」

「花が一杯!どれも美しいですね」

「あら?野菜もある様ね」


「えぇ、私の母が趣味で育てているものです」

「え?天照さまの奥方さまのご両親もこちらに住まわれていらっしゃるのですか?」

「はい。榊首相。後程、ご紹介差し上げますね」

「そうですか」

「では、まずはサロンでお茶にしましょうか」


 サロンに入ると、エリーとクララ、セバスがお客さまに紅茶を振る舞った。

「お客さま、紅茶をどうぞ」

「あ、ありがとうございます・・・」

 皆、クララの青い髪に釘付けになっている。


「あ、あ、あの従者たちは・・・」

「あぁ、彼らは皆、アンドロイドです。人間ではありません」

「さ、三人共ですか?人間ではない?」

「えぇ、そうです。ロボットですよ」


「そ、それ程までに科学技術が進んでいるのですか!」

 榊首相が驚愕の声を上げ、少し震えている。

「親父、この月の都が空に浮かんでいるんだ。今更、驚くことではないでしょう?」

「あ。そ、そうか・・・それもそうだな」

 榊首相はやっと理解が追いついた、という様な顔になった。そしてお母さんのお父さんが入ってきた。


「皆さん、ようこそお越しくださいました」

「あ!も、もしや・・・九条さんでいらっしゃいますか?」

「榊さん。ご無沙汰しております。ご活躍ですね」

「九条さん、ご達者で何よりです・・・しかし何故、九条さんがここに?」


「私の前世の父なのです」

「え?お母さまの前世の父?」

「はい。私は九条家に生まれ弁護士となりましたが、二十五歳の時に殺されたのです。その後、異世界に転生し、月夜見さまと出会い結婚しました」

「あ、そういえばその様なお話をお聞きしましたね・・・」


「翼が名乗っている結城という姓は、私の前世の妹夫婦の苗字なのです」

「なるほど・・・」

「人は生まれ変わる・・・のですね」

「えぇ、そうなのです」

 榊首相はきつねにつままれた様な表情をしていた。


「葉留さん。今日の衣装はお姫さまみたいね。美しいわ」

「お義母さま。ありがとうございます。こちらの世界では通常、この様な衣装を着ているのです」

「これが普段着!そ、そうなのね・・・宝石も素敵だわ!」


 皆が紅茶を飲みながら談笑していると、セバスが入り口の扉を開いて言った。

「皆さま、お待たせ致しました。これより会場へご案内致します」


 皆が、セバスの後をついて行く。廊下に飾られた調度品や絵画、壁や天井の装飾に目を奪われ、皆、きょろきょろと見渡しながらゆっくりと歩いて大広間へと入った。

「うわぁ!本当にお城なのね!素敵!」


 大広間には既に、琴葉お母さま、桜お母さまと幸子お母さまが席に着いていた。


 エリーとクララが来賓らいひん各々おのおのの席へ案内していった。

皆が席に着いたところでセバスが皆に告げる。


「これより、翼さまと九十九結衣さま、神代新奈さま、一ノ瀬望さまの結婚式を執り行います。まずは天照さまがお出でになられます」

「ざっ!」

 来賓が一斉にその場で起立した。


「シュンッ!」

 お父さんが琴葉お母さまの隣に出現すると、出席者を見渡した。

「皆さま。本日はようこそお越しくださいました。ご着席ください」

 お父さんは黒の燕尾服を着ていた。日本の結婚式での親の衣装を意識したのだろうか。顔は十代の若さなのに何故か落ち着いて見えた。


「それでは、新郎、新婦のご入場で御座います」

 セバスの声に合わせて、エリーとクララが扉をゆっくりと開いた。

そこには白い燕尾服を着た翼と純白のウエディングドレスを着た結衣が立っていた。


 来賓の拍手の中、結衣は翼の腕に手を掛けてゆっくりと正面のテーブルの前へ進んだ。

結衣を送り届けると、翼は瞬間移動で扉へ戻り、次に新奈を、最後に望をテーブル前へとエスコートした。


 三人のウエディングドレスは、神星での結婚式に出席する時に衣装を作った店で三人同じドレスをオーダーした。


 デザインはプリンセスラインのドレスで、スカートはアシンメトリーなラッフルフリルで大人っぽいイメージだ。ウエストに細めのリボンがあしらわれていて色が三人それぞれに違っている。結衣は金色、新奈はピンク、望はスカイブルーだ。翼は白の燕尾服。ベストはシルバーだ。


 四人がテーブルの前に立つと、お父さんがその前へと進んだ。

「皆さん、本日、翼と三人の娘たちが結婚します。私は翼と結衣、新奈、望との結婚をここに認めます」

 翼は右手を胸に当て、三人の娘たちはスカートをつまみ上げ、深々と頭を下げた。


「うわぁー!」

「翼、おめでとう!」

「結衣!おめでとう!新奈も望もおめでとう!」

「素敵よー!おめでとう!」

 来賓の祝福と拍手に包まれて、四人は顔を上げると満面の笑みをたたえた。


 セバスたちが来賓のグラスにシャンパンを注いでいった。未成年者にはペリエだ。

「内閣総理大臣榊さまに乾杯のご挨拶を頂きます」

「只今、ご紹介にあずかりました、内閣総理大臣、榊で御座います。僭越せんえつながらご挨拶をさせて頂きます」


「翼君、結衣さん、新奈さん、望さん。ご結婚おめでとう御座います。あなた達は、これから日本のみならず、世界のために貢献される世界でもっとも大切な夫婦であり家族となられるのです」


「ここに参列した私たちは、記念すべきこの日を生涯忘れることはないでしょう。そしてあなた達と共に世界を、地球を守っていくことを誓います」


「では、皆さん、お祝いの乾杯を致しましょう」

「ざっ!」

 来賓一同がグラスを手に起立した。


「乾杯!」

「かんぱい!」


「おめでとうございます!」

「おめでとう!」


「来賓の皆さま、これよりお料理が運ばれて参ります。ご歓談頂きながらごゆっくりとお過ごしください」

 セバスは司会を中断すると、エリーとクララと共に料理の配膳を始めた。

今日の料理は、アスチルベの月の都の屋敷で作られ、お母さま方が転送してくれているのだ。


「ねぇ、この前菜といい、サラダといい、素材の味が違うと思いませんか?」

「そうですね。野菜の味が濃いというか本来の味がしっかりしている気がするわ」

「はい。こちらは神星で獲れた野菜や素材を使用しております」

 セバスが美樹先輩とお母さんの会話に答えた。


「神さまが頂くお食事なのね!なんて贅沢なのでしょう!」

「お母さま。こんなこともう、二度と体験できないわね」

「美樹お姉さん、私の結婚式にも来てくださいね」

「え?葉留ちゃん。私も招待して頂けるの?」


「ここに居る人は皆、招待するつもりですよ。ね。徹さん!」

「そうだね。今、ここに居る人たちは家族の様なものだよね」

「え?本当に?巧。どうしよう?私たちの結婚式!」

「え?もう結婚式を決めるのですか?」


「お父さまとお母さまは出席者次第だけど、私と徹さんとお兄さまの夫婦は出席できると思いますよ」

「そうよね!ねぇ、巧。いつ結婚する?」

「そうですね。僕が大学を卒業したらいつでも構いません」

「えぇ、早い方が良いわ。巧が卒業したらすぐに式を挙げましょう!それなら四年後ね!」


「いいなぁ、私は大学を卒業するまで、あと六年もあるわ」

「僕としては、秘書になって二年くらいは修行みたいなものだから、そのくらいの時期で丁度良いのだけどね」


「それにしても、美樹。望ちゃんたち三人は、本当に美しいのね」

「えぇ、お母さま。あの三人は翼と付き合う様になってから、どんどん綺麗になっていったのよ」


 その美樹先輩の言葉を受ける様に、僕は皆に話し始めた。

「今日は皆さまにお知らせがございます」

「え?何かしら?」

「何だろうね・・・」


「実は結衣と新奈、それに望は、千五百年前のお父さまの娘だったことが分かったのです」

「え?どういうこと?」

「人間は死んでも果てしなく転生し続けるのです。そして三人には、神であった記憶がよみがえったことで、神の力も再び授かったのです。結衣、新奈、望は僕と同じ様に力を使える様になりました」

「え?瞬間移動もできるの?」


「シュンッ!」

「うわぁ!」

 新奈が徹の隣に瞬間移動して来た。ヴェールが風になびいて揺れ、ティアラが輝いた。

「できるわよ。この様にね」

「シュンッ!」

 そして自分の席へと転移した。


「凄い!え?それでは人の心も読める様になったの?」

「そうですね。でも安易に人の心を読んだりはしませんよ。他の力もそうです。むやみやたらと使ったりはしません」

「望ちゃん!今までと変わらないのよね?」

「えぇ、お母さま。何も変わらないわ。心配しないで」


「新奈もそうよね?」

「えぇ、お母さま。力が使える様になったからといって変わることはないわ」


「そう言えば、今日結婚して、今後の住まいはどうするんだい?」

「結衣、新奈、望は、ここ月の都で生活します。ただ、学校へ通学する時は月の都から各々おのおの実家へ瞬間移動し、そこから電車や車で通学することとなります」

「では、ここに部屋が用意されるのね」

「はい。既に三人の部屋は用意できています」


 月の都は僕の家としてリフォームされた。勿論、祖父母、両親と葉留の部屋はそのままだが、妻三人の部屋と子供部屋を六部屋作ったのだ。今のところ、三人と話して子供は男の子と女の子を一人ずつ作る予定だ。


 その後も僕と妻たちは皆のテーブルを回って歓談し、ダンスの時間となった。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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