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17.不思議な出会い

 僕は巧と美樹先輩にも僕の素性を話しておくことにした。


「巧、美樹先輩。僕と葉留は、結城と名乗っているけれど、それは地球で暮らすに当たって戸籍が必要だったからなんだ。その戸籍は言ってしまえばインチキなんだ」


「僕と葉留の父親は、天照さまなんだよ」


「え!天照さま?あの神さまの?」

「え?じゃぁ、翼は神さまだったのか!」

「神さまとは言っても、僕はお父さまの様に長い寿命を持っていないんだ。皆と同じくらいの寿命なんだよ」

「神さまの力は?」


「それならあるよ」

「シュンッ!」

 僕は新奈と結衣と一緒に庭のプールサイドへ瞬間移動した。


「うわぁ!三人が消えた!」

「あ!あそこ!プールサイドに立っているわ!」

「シュンッ!」


「おぉ!戻って来た!」

「それとか、こんなこともできるよ」


「うわぁーっ!身体が浮いてる!」

「キャー!凄い!」

 美樹先輩と巧を天井の高さまで浮かせて降ろした。


「神さま、翼さま!」

「凄いわ!本物の神さまだわ!」


「だから天才で、反重力装置もできたんだ!」

「反重力装置?」

「えぇ、反重力装置を地球上の全ての乗り物に使おうと思っているのです。新奈のお父さまの会社の神代重工を中心としたプロジェクトも始まっています」


「凄いわ!」

「乗り物だけを作るのか?」

「いいや、それらの運行システムや発電と給電に必要なオービタルリングと低軌道エレベーターにそれらの建設のための宇宙輸送船も建造するよ」


「それらが全て・・・もう始まっていると言うのか!」

「うん。六つのプロジェクトが始まっていて、首相、外務大臣と国土交通大臣との会合も進めているよ」

「翼がそれを?」

「うん。僕がプロマネだからね」


「望の会社もそのプロジェクトに加わるの?」

「そうですね。一ノ瀬電機にもお願いすると思います。でも天羽化学も何かできそうですね」

「え?うちの会社も入れてもらえるの?」

「美樹先輩は、将来、会社に関わるのですか?」


「私には弟が居るから、会社は弟が継ぐのではないかしら。でも私もさっき言ったプロジェクトを起こしたいの。大学で研究してその成果を会社に持ち込むつもりよ」

「それ乗った!」

 巧は思わず叫び、立ち上がった。


「巧、乗るのか?」

「それに乗らずに、何に乗るんだ?僕も東大に入って研究する予定だ。天羽化学がその研究成果を実現するのに一番適していると考えていたんだ」

「まぁ!そうなの?巧君も凄いのね!」

「巧君?」


 巧が真っ赤な顔をして、うつむいてしまった。やっぱり巧ってかわいいとこあるよな。


「是非、巧君に天羽化学に入社して欲しいわ!」

「ありがとうございます!頑張ります!」

「いや、巧。天羽先輩は人事担当者ではないと思うぞ」

「あら、私が口添えすればきっと大丈夫よ」


「やった!天羽先輩。よろしくお願いします!」

「巧君、私も美樹で良いわよ」

「え?美樹?そ、それは・・・」

 巧は耳まで真っ赤になってしまった。

「ふふっ、巧君って可愛いわね」


「科学者は初心うぶなんだな!」

「徹!科学者はな・・・そういうことには・・・慣れていないんだ・・・」

 段々と小さな声になっていった。


「あ!それで、翼君は・・・って、あ!私、翼君なんて呼んでいいのかしら?翼さま?」

「いや、翼で良いのです」

「そ、それじゃ、翼君で。それで新奈さんと結衣さんと結婚するってどういうことなのですか?」


「あぁ、それはですね。僕の戸籍はインチキなもので、神の子であることを隠して生きて行かなければなりません。ですから新奈の様な有名人とは、おおやけに交際や結婚はできないのです」


「結衣とは戸籍上も夫婦になれるかも知れませんが、新奈とは籍は入れられず、隠れて結婚生活を送ることとなりますし、逆に言えば籍を入れないなら何人でも結婚はできるのです」


「私はシングルマザーになって会社を継ぐのです」

「新奈さんはそれで良いの?」

「えぇ、私には翼が全てだから・・・形にはこだわらないわ。翼と一緒に生きて行ければそれだけでいいの。そして私と翼の子が、会社を継げば良いのだから」

「強いのね。それが愛の力なのね・・・」


「あら?それじゃぁ、望はどうするの?」

「私は翼に気持ちは伝えてあるわ。あとは翼が私を三人目に選んでくれるかどうかだけなの」

「では、新奈さんと同じで見かけ上のシングルマザーになるのね」

「なれると決まってはいないわ。なりたいけれどね」


「そう。望がそこまで考えて決めたことなら私は応援するわ」

「ありがとう。美樹」


「翼君。望はね、こんな縦ロールだけど、ご両親や会社の将来のことをとても真剣に考えているのよ。何でも自分で決めて後悔しない様にしたい人なの」


「だから容姿は少し軽いかも知れないけど、ダンス部だってそう。今しかできないことを楽しみながら全力で取り組んでいるのよ」

「ちょっと、美樹!こんな縦ロールって何よ!」


 望は美樹先輩に褒められて、赤い顔をしながら照れ隠しにプンスカ怒っている振りをしていた。望も可愛いな。


「美樹先輩。そうですね。望の良いところは分かっているつもりですよ」

「では、望も受け入れてもらえるのかしら?」

「そうですね・・・でももう少し、一緒の時間を過ごしてみないと、お互いに分からないのではないでしょうか・・・」


「美樹。ありがとう。今回、ここに翼や皆を招待したのはね。翼に私をもっと知ってもらう時間を作るためなの。これからなのよ」

「あ!そういうことなのね!まぁ!ごめんなさい!私、つい熱くなってしまったわ!恥ずかしい・・・翼君、ごめんなさい・・・」


 そこへ巧がドヤ顔で割り込んできた。

「大丈夫です!天羽先輩。先輩も一ノ瀬先輩と同じで何事も全力でぶつかる人なのですね・・・それは既に皆に伝わっていますよ」


「おい。巧。お前が言うなよ。それは翼が言うべきセリフだろ」

「ふふっ、巧君。かばってくれてありがとう。優しいのね」

「いいえ。天羽先輩の素敵な一面を皆に分かって欲しかっただけなのです」

 巧のドヤ顔に銀縁眼鏡のフレームがキラリと光った。


 あれ?この二人って、結構合うのかな・・・


「さて、この後どうする?」

「もうすぐお昼ご飯だから、その後プールへ出ましょうか。午後の海は暑過ぎると思うの。パラソルだけでは新奈さんが焼けてしまうわ」

「ありがとう。私の仕事のことを考えてくれて」

「当たり前よ」


 昼食後に水着に着替えてプールへ出た。

女子の水着は皆、ビキニだった。でも葉留、新奈、結衣は長袖のラッシュガードを着ていて、ビキニ姿は見られない。


 でも、葉留は着替えてから徹を部屋に呼んで見せていたみたいだが。

望はきっと僕に見せたかったのだろう。美樹先輩と二人、ビキニ姿で遊んでいる。


 巧は美樹先輩のビキニ姿を見て、真っ赤な顔になっている。美樹先輩は胸が大きいのだ。結衣と同じくらいなのではないだろうか?男なら皆、見てしまうのは仕方がないことだ。


 望もビキニだ。胸は新奈と結衣の中間、Dカップくらいだろうか。十分に大きく魅力的なプロポーションだ。顔も可愛いしプロポーションも良い。こうして改めて見るとかなりレベルが高いのだ。


 今のところ、望の好意を拒否する要素は全くない。それどころか魅力的な女性だ。


「翼、日焼け止めを塗ってくれない?」

「いいよ」


 プールサイドの奥の日陰になっているスペースにあるビーチベッドに新奈がビキニ姿になってうつ伏せに寝た。隣には結衣が横になった。僕は日焼け止めのクリームを手に取り、新奈の背中に塗った。すると、まだいくらも塗っていないのに新奈がソワソワし始めた。


「あ。やっぱり駄目。翼。いいわ。ごめんね」

「どうしたの?」

「心が読めるんでしょう?」


『翼に触れられると、我慢できなくなってしまうわ』

 あぁ、そうか。男だけじゃなく、そういうものなんだな。

『新奈ったら・・・そうなるに決まっているじゃない!』

 結衣も同意していた。


「新奈。私が塗るわね」

「うん。結衣、お願い。終わったら交代するから」

「えぇ、お願いするわ」


「ねぇ、ちょっと。新奈さんのモデル体型も素敵だけど、結衣さんって凄いプロポーションなのね」

 望が僕と新奈と結衣が一緒のところへやって来て言った。

「え?私?」


「グラビアアイドルみたいじゃない!」

「ほらね。結衣。だからTシャツが必要だって言ったでしょ?」

「ということは・・・翼はもう結衣さんと・・・」


「え?」

「そういうことでしょう?新奈さんもそうなのね。二人が前より落ち着いているのってそういうことだったのね」

「落ち着いている?そう見えるの?」

「えぇ、婚約したからかと思ったけど、そうじゃないでしょう?」


「え?望。どういうこと?」

「え?翼、ふたりとはもう、体験済みってことでしょう?」

「いや、それはまだですよ」

「え?まだなの?」

「だってまだ、高校一年生なのですからね」


「お兄さまって、固いのですよ」

「え?葉留ちゃん?」

「私もまだですけれどね」

「はぁ~なんだ!びっくりしたわ!」


「そんなに慌てることではないでしょう?」

「え、えぇ、それはそうね」


「望先輩。焦りますか?」

「新奈さん、そうね。でも焦っても仕方がないし、張り合うことでもないのね」

「えぇ、翼と結婚するって、そういうことだから」

「そうよね。ごめんなさい。変なことを言ってしまったわね」

「いいえ。それが普通の反応だと思います」


 プールサイドの反対側では、ビーチベッドを二つ並べて巧と美樹先輩が笑顔で話していた。


 こうなると、望はひとりだけ寂しさを感じてしまうかも知れないな。とは言え、情けを掛ける様なことでもないしな。


「望。ここにベッドを持ってきて一緒に話そうよ」

 僕は念動力でビーチベッドを浮かせてここまで運んだ。


「神さまの力って凄いのね。ねぇ、翼との子供って、やはり神の力を持って生まれて来るのかしら?」

「うん。能力の強弱はあるけれど、何かしらの能力は持って生まれて来ると思うよ」

「でも人前で使うことはできないのね」

「そうですね。正体を知っている人の前だけです」


「ピロピロリン!ピロピロリン!」

「あ!僕の端末が鳴っているのか・・・」

 僕の腕時計型の端末に電話の着信が入った。


「はい」

「鳳城さん。大竹です。お休みのところ申し訳ございません」

「いいえ、大丈夫ですよ」

「前回の試作品のAヒンジなのですが、強度の問題で再検査したいそうなのです。強度を増した際の許容限度を知りたいそうなのですが」

「工場は休みなのではなかったのですか?」

「えぇ、そのはずだったのですが、遅れを取り戻したいとのことで・・・」


「分りました。仕様書のその部分をもう少し詳しく解説したものをお送りします。十分待って頂けますか?」

「助かります。よろしくお願いいたします」


「翼、仕事なのね?」

「結衣。仕様書の一部の部品の解説書を作るだけだからすぐ終わるよ」

「シュンッ!」


「うわ!ノートパソコンが出現した!」

「そうやって、物を転移させることもできるんだな・・・」

 徹と巧がいたく感心して見つめていた。


 僕はプールサイドのテーブルに座り、パソコンを打ち始めた。

「カタカタカタカタ・・・」

「す、凄いタイプスピードね。目で追えないわ・・・」

「あのスピードで打ってタイプミスしないのかしら?」

「凄い能力なのね・・・」


 その時、結衣が自分のバッグからチョコレートを持ってきて僕の隣に座り、一粒僕の口の前に差し出した。僕はパクッとそれを口に入れ食べた。これは既に研究中の二人の習慣となっている。


「まぁ!いつもそうしているの?それは何?」

「これは高カカオチョコレートよ。これには高濃度のカカオポリフェノールが含まれているの。それが脳の血流量を増やしてくれるそうなの。それに糖分も脳の疲労回復に役立つわ」

「凄い!結衣さんはもう翼の奥さんなのね・・・」

「いつも一緒に研究室に居るから・・・」


「では、翼は甘いものが好きなのね?」

「えぇ、そうね。毎食後にデザートを食べているわ。朝はフルーツだけど」

「あ!そうだ!私ちょっと用事を思い出したわ。一時間くらい席を外すから、皆はプールで楽しんでいてね」


「望、私も手伝いましょうか?」

「いいのよ。美樹は巧君のお相手をしていて」

「分かったわ」


 メールで解説書を送って仕事は十分で終了した。僕はプールに入り、少し泳いだ。

一時間ほどで望もプールに戻って来た。

「用事は済んだ?」

「えぇ、済んだわ。翼も仕事は片付いたのね?」

「うん。済んだよ」


 今、プールには三つのフローティングマットを浮かべ、新奈と結衣、美樹先輩が乗って浮かんでいる。僕と巧がそれに取り付いて浮かびながら話していた。


「巧君。あなた神宮寺って、あの神宮寺建設と関係ある?」

「え?あ、あぁ。僕は神宮寺建設の社長の息子です」

「え?巧が?」

「おいおい、翼。知らなかったのか?俺は知っていたぞ」

 徹があきれた声でプールサイドから声を掛ける。


「まぁ!凄いわ!え?でも天羽化学に就職したいのよね?神宮寺建設は継がないの?」

「それはですね。家の方針で、大学を卒業したら別の職種の企業に一度就職し、修行してからでないと会社は継がせないと決まっているのです」


「え?そのために天羽化学に就職するってことなの?」

「いや、僕のやりたいことは、天羽化学で実現するのが相応ふさわしいと考えただけです。親に認めてもらうために天羽化学に行くのではありません」


「では、そのうちに天羽化学を辞めて、神宮寺建設を継ぐ日が来るのだね?」

「自分のやりたいことに目途が付いたらそうなるかもね」


「でも、天羽化学は美樹先輩の弟さんが継ぐから別に良いのか」

「なんだそれ?俺とどういう関係が?」

「いや、巧が美樹先輩と結婚したら、天羽化学と神宮寺建設はどうなるのかと思ってさ」

「えーっ!俺が美樹先輩と結婚!」


「あら?巧君。私では駄目かしら?」

「え!い、いや・・・それは・・・なんと言いましょうか・・・」

 巧は真っ赤になって、プールに沈んで行った。


初心うぶだなぁ・・・」

「科学者にはまだ早かったか・・・」


「ザバッ!」

 巧はプールの中で立ち上がり、水面から出ると顔の水を手でゴシゴシと拭い、真剣な表情で言った。

「み、美樹先輩は、お、俺で良いのですか?」

「えぇ、巧君は私の好みだわ。それにハイスペック男子よね」

「ハ、ハイスペック男子?」


「巧。運命は突然、目の前に現れると言っただろ?」

「そ、そうだな・・・今、目の前にいるこの美しい女神が僕の運命の人なのか?」

「それは自分で考えてくれ。巧がどう思うかだ」

「こんなに美しい女性なんだ・・・それに僕と同じ夢を持っていて一緒に研究ができる」

 美樹先輩はニコニコしながら巧のつぶやくような話を聞いている。


「つまり?」

「美樹先輩。好きです!」

 巧は直立不動のまま叫んだ。プールの中で、しかも皆の目の前なのが締まらないけど・・・


「まぁ!嬉しい!私も好きよ。巧君」

「おぉ!」

「おめでとう!美樹!」


「おめでとう!巧!」

「神宮寺君、おめでとう!」

 プールの中での告白は成功した。




 夕食はフレンチ料理のフルコースだった。

皆、普段から食べ慣れているのか、自然に、和やかに食事の時間は進んだ。


「巧には兄弟は居るのかい?」

「居ないよ。俺は一人っ子だ」

「俺もだ」

「あぁ、徹もなのか。新奈と望も一人っ子だね」


「社長って、凄く忙しいでしょう?もしかしたら生殖機能に問題が出易いとかってあるのかしら?」

「まぁ、それは忙しさの度合いにもよるよね。でも日本の大企業の社長なんて、相当に忙しいのではないかな?」

「そりゃそうさ。だからうちの親はぬくぬくと育った奴に仕事は任せられないと思っているのだろうからね」


「政治家もそうだよね?」

「そうだな。毎日分刻みでスケジュールは決まっているし、休みなんて無いも同然だ」

「徹さん。それなら議員になる前に子を作っておかないといけないわね?」

「葉留!もう?」


「結婚したらすぐに作りましょう!」

「そ、そうですね」

 葉留はそう言ってしれっとしていたが、徹の方が赤い顔をしている。


 食事が終わり、デザートが出てきた。

「このキーライムパイは本日、望お嬢さまがお作りになったものでございます」

「え?望が作ったの?あ!用事があるって抜けた時?」

「えぇ、そうよ。翼が甘いものが好きだって聞いたから」


「望、お菓子作りが趣味ですものね」

「へぇ、そうなんだ・・・それじゃぁ、いただきます!」

「そうぞ。お口に合うと良いのだけど・・・」


「ん!これ美味しい!結構甘いのにライムの酸味がさわやかだね!冷たくて夏にピッタリだ!これ好きだな」

「ホント?良かった!」

 望は幸せそうに微笑んだ。可愛いだけでなく、家庭的なところもあるんだな。


「望はお菓子作りが趣味なのですね?」

「えぇ。母が好きなので一緒に作っているうちに私の趣味にもなっていたの」

「望、翼君が甘いものが好きなら、これからお菓子を作って差し入れすれば良いのよ。研究の合間に食べてもらえる様にね」

「あぁ、それは嬉しいな・・・」

「それなら頑張っちゃおうかな!」


「あ。でも望はそろそろ受験勉強も始める頃でしょ?無理はしないでね」

「ありがとう。でも、お菓子作りは勉強の息抜きにもなるから大丈夫よ」

「望は大学はどうするか決まっているのですか?」

「東大の経済学部を目指しているの」


「それは、会社を継ぐため?」

「そうね。そのつもりよ」

「以前からそう考えていたのですか?」

「えぇ、それは決めていたわ。相手が誰になるか分からないのだから、自分で会社を継げる様にしておこうと考えたの」

「しっかりしているのですね」


「私だけでなく、ここに居る人は皆、同じではないかしら?同じ様な境遇よね?自分のことだけでなく、親や会社のことも見ているし、考えるのが当たり前でしょう?」

「そうですね。私もそうです」

「俺もそうですね」

「私もそうだわ」

「政治家も同じ様なものだよ」


「私だけなんか、もうちょっとふわっとしていたかも知れません」

「結衣はそうだろうね。技術者一家だから」


「そうか、ここに居るメンバーは同じ様な境遇で、こうして出会うことが運命だったのかも知れないね」

「きっとそうよ。でも、これだけの大企業の社長の息子や娘が同じ時期に同じ学校に通うことになるなんて、出来過ぎているわ」

「そうよね。しかもお互いに惹かれ合って結婚もするかも知れないのよ」


「更に神さまの息子と娘も居る」

「なんか、面白いね」

「そうね。不思議と気味悪くはないかも・・・」

「ねぇ、翼。これって神さまの導きっていうものではないの?」


「僕やお父さまが何か仕組んでいるって意味?」

「翼は何もしていないと思うわ・・・でも天照さまは・・・とても神秘的なお方よ」


「え?天照さまに会ったの?」

「あぁ、この中でお父さまに会っていないのは、望と美樹先輩と巧だけだね」

「え?徹も会ったのか?」

「うん、僕は天照さまから葉留との結婚を認めて頂いからね」


「えーっ!ホントに?」

「私と結衣も同じよ」

「そ、そうなのね・・・翼と結婚するってことは、天照さまに認めて頂かないといけないのね」

「そんなに大袈裟なものじゃないですよ」


「でもね。天照さまの美しさ、神々しさは大変なものよ。私、全身が震えて立っているのがやっとだった」

「そ、そんなに・・・なのね。確かに、私の両親も同じことを言っていたわ・・・」

「望、頑張ってね!」

「美樹・・・そんな気軽に言われても・・・」


「それで、天照さまが仕組んで僕たちが出会っているという可能性は?」

「巧。多分、というかそんなことはないと思うよ。偶然じゃないかな?」

「そうよね。例え仕組まれていたとしても、自分で考えて、心から相手を想えるのなら、それで良いと思うわ」

「その通りだよ。皆、自分できちんと考えて選んだのでしょう?」


「えぇ、そうだわ」

「そうだよ」

「美樹先輩。本当に俺で良いのですか?」

「勿論よ。巧君は大丈夫?」

「うん。もう決めました。美樹さんと結婚します」

「まぁ!男らしいのね!巧。よろしくお願いします!」


 何やら不思議な縁が重なり、皆、次々と結婚を決めて行く。本当に何か仕組まれていないのだろうな・・・でもお父さまがそんなことをする訳がない。それは確かだ。


 あ!始祖の天照さまが居たか・・・何かあるのだろうか・・・

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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