4.体育祭
五月になった。今月は体育祭があるとのことだ。
ホームルームは八神先生の一声で始まった。
「皆、今日は体育祭の出場種目を決めて行くわよ。実行委員は前に出て来て」
「はい!では体育祭の出場種目を決めて行きます!まずはクラス対抗リレーのメンバーを先に決めないといけません。出場希望者は手を上げてください!」
「翼は出ないと駄目だよ」
「え?僕が?」
「そうだよ。この前の体育で百メートル走のタイムを計ったろ?翼は陸上部員よりタイムが良かったじゃないか!」
「あぁ、そう言えばそうだね。でも徹も速いよね?出るだろ?」
「それじゃぁ、翼が出るなら俺も出るよ」
「分かったよ」
「よし」
「はい!俺と翼が出るよ」
「キャー!」
「結城君が出るの?!楽しみ!」
「結城君が出るなら一緒に出たいけど、足を引っ張りたくはないわ」
「応援するね!」
しばらく女子のざわめきが続いた。
「はーい。では、榊君と結城君ですね。あと男子一人と女子三人です」
「じゃぁ、私も出るわ!」
「はい。神代さんですね」
「僕も出ます!」
「よ!陸上部!頼むぞ!」
「高田君ですね」
「新奈も速いのかな?」
「立候補したんだから速いんだろうな」
「あ、あの・・・新奈はクラスの女子で一番タイムが良かったわ」
「結衣、そうなんだね。それで、結衣は?」
「わ、私は・・・遅いので」
「運動は苦手かい?」
「は、はい」
結局、女子は陸上部と女子バレーボール部から一名ずつ立候補が出た。
今日は体育の時間に体育祭の練習として、四百メートルを全員走らされた。
まずは男子からだ。四人ずつ走り、僕と徹は別の班でそれぞれ一位だった。巧は三位だ。
「巧、三位か。科学者はやはり運動は苦手か?」
「運動好きな科学者なんて聞いたことがないね」
「ふふっ、そんなドヤ顔で言われても・・・でも、そうかもね」
続いて女子が走り始めた。
新奈はやっぱり速くて一位だった。結衣は残念ながら四位だ。何とか走っているという感じだった。ちょっと胸が邪魔そうだ。見てはいけないと思いながらもつい目が行ってしまう。
普段、男女が分かれて体育の授業をするのはこういう事なのだろうか・・・
女子もあと二組で終わるところで、ちょっと気になる子が居た。
同じクラスの新井さんだ。ごく普通の女の子なのだが、どうも体調が良くないのではないかと思われた。顔色が良くない。もしかして寝不足か貧血気味なのではないか。
スタートして半分くらい走ったところで、左右にふらつき始めた。
僕の目の前を通り過ぎる時、心の声を聞いた。
『あぁ・・・欠席するべきだった・・・ふらふらするわ・・・生理中なんだから無理することなかったのに・・・』
あ!生理中か!明らかな貧血状態だ。棄権すれば良いのに・・・無理をして倒れなければ良いけど・・・
そう思った矢先にプツンと意識が途絶え、前へつんのめって身体が前方へ飛んだ。
あ!まずい!僕は立ち上がって念動力を発動し、彼女が地面に倒れ込む寸前に一度、動きを止めて衝撃を和らげ、ソフトに地面に着地させた。
一瞬のことだから遠目に見たら分からないだろうし、近くからでも他の子も一緒に走っているから気がつかないだろう。
僕はすぐに駆け寄って、新井さんをお姫さま抱っこして立ち上がると、保健室へ向けて歩き出した。それを見ていた女子たちからやっかみの悲鳴が上がった。
「キャーッ!お姫さま抱っこよ!」
「新井さん、羨ましい!」
「私も倒れれば良かった!」
「あー私、なんだか調子悪くなってきたわ・・・倒れるかも!」
体育の先生が走り寄って来た。
「どうした?熱中症か?」
「いえ、高熱も出ていないですし、汗も少ないですから恐らく貧血です」
「そうか。それじゃ保健室まで頼めるか?」
「はい」
「みんな!続けるぞ!」
「はーい」
周りの声は気にせず、さっさと保健室へ向かった。新奈が後からついて来るのが視線の端に見えた。
「翼、大丈夫?」
「うん。多分、ただの貧血だと思うから」
「そう」
新奈が手の塞がっている僕の代わりに保健室の扉を開けてくれた。
「あら。あなたは有名人の結城君ね。もうひとりも有名人の神代さん」
まだ若い保険の先生は新井さんには目を向けず、僕の顔をしげしげと眺め、更に新奈の顔を何かを確かめる様に見た。
僕は先生のつぶやきの様な発言は無視して新井さんの症状を説明した。
「先生。新井さんが四百メートル走の途中で突然、気を失って倒れたのです。熱はない様ですし、大汗もかいていませんから熱中症ではなく、恐らく生理による貧血かと・・・」
「まぁ!何故、そこまで分かるの?」
「いや、まぁ、それは・・・」
その時、新奈が後ろから声を発した。
「先生、翼は全ての学問を習得済みなのです」
「全ての学問?え?医学も?」
「えぇ、医学も全て習得しています」
「う、嘘でしょう?ところで神代さん。あなたは?あなたも体調が悪いの?」
「私は付き添いでついて来ただけです」
「ふぅ・・・まぁ、いいわ。彼女は少し寝かせて気がついたら聞いてみるわね」
先生は新井さんの顔に着いた砂を拭き始めた。
「あら?この子は走っている途中に意識が飛んで倒れたのよね?」
「えぇ、そうですよ」
「それにしては、どこにも擦過傷・・・すり傷がないわ。おかしいわね」
「そ、そうなのですか・・・では、後はよろしくお願いします。失礼します」
「あ。え、えぇ、結城君、運んでくれてありがとう」
僕は説明できないのを誤魔化すため、そそくさと保健室から出た。
僕と新奈は保健室を後にしてグラウンドへ戻って行った。
「ねぇ、翼、本当はどうして新井さんが生理中だって分かったの?」
「いや、それは定かではないよ。熱中症の症状ではなかったから、寝不足か生理中だと推測したんだけど、寝不足だけならもう目を覚ましているかなと思ってね。ただの消去法だよ」
「そういうことなのね。医学まで習得済みだったなんて・・・本当に凄いのね」
「学問は記憶するだけだからね」
「そういうものなのかしら・・・」
新奈は何か腑に落ちない様子だった。まぁ、仕方がない。まさか心を読んでいたとは言えないからね。
トラックの中に戻ると結衣が新奈に近付いた。
「新井さん、大丈夫?」
「えぇ、貧血みたい。大丈夫そうよ」
「そう。良かったわ」
その後、僕が戻ったことを確認して、わざと転んだ女子が居た。それが見え見えだったので僕は反応しなかった。すると皆、僕がどうするかを見守っていることに気がついた。
「え?いや・・・何?」
「助けないのか?」
「徹、あれはわざと転んだんだよ。ケガもしていないし、気も失ってないよ」
「まぁ、そうだな。皆、助け起こしていたら女子全員が倒れ始めるだろうな」
「もう、下手なことはできないね・・・」
今後、学校内での医療行為には注意しないといけないな・・・
そして体育祭の日がやって来た。
お母さんと葉留は黒髪のカツラとカラーコンタクトをして、早苗お母さんの名前を使って見に来ると言っていた。
葉留の運動会や体育祭は既に何回か見に行っている様だが、僕は今回が初めてなので見ておきたいそうだ。
神星の兄弟たちにも学校の行事としてこんなものがあると伝えてあるので、三十二人の兄弟全員が僕や葉留の意識に入って体育祭を一緒に見ている筈だ。
まずは百メートル走だ。初めに出たのは徹だ。危なげなく、初めから一位を独走してそのままトップでゴールした。次は巧だが六人中四位だった。でもビリは逃れたと満足そうな顔をしていた。
そして僕の番だ。スタートラインに立った瞬間に大変な盛り上がりとなり、会場中の女子が黄色い声を上げた。観客席のお母さんと葉留が僕の人気に目を丸くして驚いているのが見えて笑えた。
「用意・・・パンッ!」
先生が鳴らしたスターターピストルの音に反応してスタートすると、徹の時と同様に他の男子生徒より飛び抜けて速く走り、一気にゴールへ到達した。その間、応援席と観客席から黄色い声が響き渡った。
徹の居る一位の列の後ろへ行くと徹が立ち上がりハイタッチした。
「パンッ!」
「キャーッ!」
それだけでまた黄色い歓声が響いた。もう一挙手一投足、全てを見守られている。女子の方は新奈が一位で結衣は六人中五位という微妙な着順だった。
僕が次に出る競技は借り物競争だ。全員参加の種目以外で一人二つは出なければならないのだが、リレー以外のもう一種目で迷っていたら徹に薦められたのだ。何だか分からないまま、それでいいやと安易に受けてしまった。
借り物競争はスタートしたら五十メートル地点に机があり、その上に置いてあるカラフルな箱の中に手を入れてメモを一枚引き抜く。それに書いてあるものを会場中の誰かから借りてきて、残り五十メートルを走ってゴールするのだ。
僕は一番目だった。スタート地点に立つと会場は、さっきの百メートル走とは違う異様な雰囲気に包まれた。
女子たちの目が血走っている。これはなんだろう?僕が自分のところへ何かを借りに来ると思っているのだろうか?皆、何かしらを手に持っているのだ。
うん?机のところに徹が居る。実行委員の人と何やら話して箱の中を覗き込んでいた。何をしているんだろう?
「用意・・・パンッ!」
スタートして僕は一番に箱に取り付き、手を入れてメモを一枚引き抜いた。メモを開くとそれには「好きな人をお姫さま抱っこしてゴールする」と書かれていた。
「嘘だろう?」
僕はひとり呟きながら徹を探すと目が合い、徹はウインクして右手の親指を立てて僕に突き出した。
「やられた!」
どうしよう・・・僕は考えながら、とりあえず自分のクラスの席へと向かった。観客の女子の視線が怖い。安易にその辺の女子と目を合わせられない。クラスの席に近付くと新奈と結衣が並んで立ち上がり僕に手を振っていた。
僕はそのまま二人に近付くと、どちらにしようと考えた。
先に頭に浮かんだのは結衣だ。そして顔を見て目が合った瞬間、結衣は不安そうな顔をした。
あ!結衣は目立ちたくないのだったな・・・
「新奈、来て!」
「え?うん!」
新奈がロープを飛び越えて僕の前に出ると、僕はひょいと新奈を抱き上げた。
新奈は僕の首に腕を回した。
「キャァーッ!」
観客席から悲鳴の様な叫び声が響き渡った。僕は新奈をお姫さま抱っこして、そのまま走り始めた。
「翼!何て書いてあったの?」
「好きな人をお姫さま抱っこしてゴールする。だって」
「え?私?」
そう言って新奈は真っ赤になり、僕の首に回した腕に力が入ったのを感じた。
あぁ、そりゃぁ、誤解されるよね・・・好きな人。だものな・・・まぁ、でも好きなのは確かだ。
そのまま一位でゴールした。ゴールして新奈を地面に降ろしたが新奈が首に回した手をすぐに離さなかったから、抱き合って見つめ合う様になってしまった。その姿を全ての生徒と保護者が見つめていて一瞬だけ静寂が訪れた・・・
「新奈!みんなが見ているよ・・・」
「あ!いけない!」
新奈が慌てて離れた。
「キャァーッ!」
少し遅れて、またも悲鳴が響き渡った。
その後の組を見ていても、物なら変わった色指定の帽子とか、カバン、中身を指定された水筒などで、人の場合は今日が誕生日の人とか探すのが大変になる指定が多かった。
でも、好きな人でしかもお姫さま抱っこなんて指定は僕のだけだ。これはおかしい・・・
競技が終わり注目の的になりながら新奈とクラスの席に戻るとすぐに徹を問い詰めた。
「徹!お前、何か仕組んだな?」
「いや、俺は何も・・・たださ、翼がはっきりしないから意思表示させてやろうと思ってさ」
「はっきりも何も、僕は決めていないんだよ」
「でも、神代さんを選んだじゃないか」
「それは、まぁ・・・好きな人って書いてあったから」
「そういうことなんだろ?」
新奈は真っ赤な顔をして僕のTシャツの裾を掴んでいる。
「新奈。その話はまた今度ね」
「う、うん・・・」
好きかどうか分からないなんて言ったら新奈を傷付けてしまう。好きなのは事実だ。でも愛かどうかは分からないのだから・・・
でも、そうすると先に頭に浮かんだ結衣はどうなのだろうか・・・結衣は自分の席に座り、こちらを見ない様にしているみたいだった。
次の種目は綱引きだ。クラス対抗で男女混合だ。女子が中心に並び、後方に男子が並ぶ。
「用意・・・パンッ!」
「おー!」
皆、雄たけびを上げながら渾身の力を込めて引き合う。僅か三十秒の勝負だ。
こちらの方が優勢だった。じわじわとこちらの陣地に綱を引き入れていた。
「ピィーッ!」
先生の笛の音でこちらの勝利が決まった瞬間、相手の後方の男子数人が体勢を崩して倒れると綱が一気にこちらへ引っ張られてしまった。
「うわぁー!」
その勢いで僕のクラスの前方に居た女子が将棋倒しに倒れた。
「あ!危ない!」
「ゴンッ!」
その中で結衣の前に居た子の後頭部がもろに結衣のおでこに直撃し、結衣は気を失ってそのまま後ろへ倒れた。
僕は一番背が高いので後ろからその様子をずっと見ていた。まずい!結衣が倒れた!
僕は瞬間移動を使いたいところをぐっと堪えて、全速力で結衣のもとへ駆け寄り、抱き上げた。
「キャァーッ!」
またしても黄色い悲鳴が響き渡る中を、僕は全速力で保健室へと走った。
その速さに会場は水を打ったように静まり返った。校舎に入り保健室へと速足で歩いていると結衣が目を覚ました。
「うーん。あ、あぁ・・・あ!翼君!」
「あ!結衣。気がついた?」
「な、な、な、何?ど、どうしたの?」
「あぁ、綱引きで向こうのチームが綱を離してしまったから、こちら側が総崩れしたんだ。結衣の前の子の後頭部が結衣のおでこにヒットして、結衣は気を失って倒れたんだよ」
「あ!おでこが痛いわ・・・」
「うん。今、保健室へ連れて行くからね」
「わ、私・・・翼君に・・・」
「あ!そうだった。咄嗟のことだったから抱き上げてしまったけど・・・結衣、大丈夫かい?」
「あ、う、うん。翼君なら大丈夫みたい・・・」
「ということは他の男に触れられるのは駄目なんだね?」
「あ!そ、それは・・・」
「ごめん。聞いて良いことじゃなかったね」
「あ、それは・・・」
結衣はそのまま口をつぐんでしまった。それならば仕方がない。心は読まないでおこう。
保健室に到着した。今日は体育祭で出入りが多いので保健室の扉は空いたままだった。
「あら?また結城君なのね。今度は違う子ね」
保健室の先生は僕の顔を見るなり、淡々とそう言った。
「えぇ、先生。綱引きで綱が緩んで数人が倒れたのです。九十九さんは前の子の後頭部がおでこに当たって、気を失って倒れたのです」
「でももう、意識は戻ったのね?」
「はい。ここへ来るまでの間に・・・今はおでこが痛いそうです」
そう言いながら結衣をベッドに寝かした。
「九十九さんね。どう?大丈夫かしら。眩暈はしない?」
「少し、クラクラします」
「では少し、横になっていた方が良いわね。おでこも冷やしましょう」
先生がおでこに貼るタイプの冷却シートを取りに行っている間に僕は結衣のおでこに手を当てて治癒の力を掛けた。
「あ・・・何だかすぅっとするわ・・・気持ちいい・・・」
「そう・・・いたいのいたいの飛んでいけ!ってやつだよ」
「うん。凄く効いてる感じ・・・」
「良かった」
先生が戻って来たので僕はベッドから離れた。それと同時に新奈が心配してやって来た。
「結衣、大丈夫?」
「うん。多分、大丈夫」
「九十九さんは少し休んでから戻らせるから、あなた達は競技に戻っていいわよ」
「はい。お願いします。結衣。じゃぁ、僕らは戻っているね。無理はしないで」
「翼君。ありがとう」
「いいんだ」
「結衣も翼にお姫さま抱っこしてもらったのね。私と同じね!」
「新奈・・・そうね」
結衣はうっすらと笑顔を作った。
そして、今日最後の種目のクラス対抗リレーだ。
初めに女子が三人走り、続けて男子が三人走るのだ。僕は徹の指示でアンカーになった。隣の組のアンカーの男子が威嚇して来る。
「結城・・・だっけか?外人なのか・・・どちらが速いか決着をつけようぜ」
「いいよ」
『ちくしょう!こいつのせいで俺が全く目立たなかった!体育祭はサッカー部の次期エースとして俺が目立つための最高の舞台だったのに・・・』
あぁ、モテたかったのか・・・申し訳ないことをしたな。でもわざと力を抜いて負けてあげるのもどうかと思うしな・・・
でも、始まってみたらうちのクラスは遅い方だった。始めの女子の二人で最下位になり、そこから新奈が二人抜いて六クラス中、四位まで挽回した。
男子にバトンが渡り、陸上部の高田君は速いのかと思ったら高跳びが好きらしく、走るのは得意ではなかった様だ。そして五位に沈んだ。
徹の闘志に火が点いている。スタート地点でピョンピョン飛び跳ねながら高田君に声を掛けている。
「高田ーっ!ラストー!」
そしてバトンが徹に渡り走り始めると、凄い勢いで前を行く四人を猛追し始めた。半分までに一人を抜き、残りでもう一人を抜いて三位で僕に迫って来た。
「へへんっ!これで一位は頂きだな!」
捨て台詞を吐いてサッカー部の自称次期エースは走って行った。
「翼!頼んだ!」
「おう!」
僕は徹からバトンを受け取ると前の二人を追った。半分までに一人を抜くと、会場の歓声が一段と高くなった。
更に先頭を行くサッカー部に迫って行く。サッカー部は何度もこちらを振り返って僕を気にしている。そんなことしていたらスピードが落ちるだろうに・・・
そして、残り二十メートルくらいのところでサッカー部に追いついた。
「ちくしょう!負けるか!」
サッカー部は叫んだ。いや、スピード落ちるって!その分、呼吸しろよ!
僕は最後の十メートルで一気にサッカー部を抜いてゴールテープを切った。
「キャァーッ!」
会場の歓声は最高潮に盛り上がり大騒ぎになった。
ゴールテープの向こうには徹と新奈、リレーメンバーが揃って待っていた。
「パンッ!」
次々とメンバー達とハイタッチして喜びを爆発させた。
「やったな。翼!期待通りだ!」
「あぁ、最高だ!」
「翼!素敵だったわ!」
「結城君!最高!」
「皆、頑張ったな!」
リレーの勝利に酔いしれながら、六人でクラスの皆のところへ戻っていた時、頭の中に声が響いた。
『翼、体育祭って凄いな!これはこちらの世界にも取り入れたいよ』
『リッキー兄さん!そうでしょう。これは盛り上がりますよね!そちらの世界には民衆の娯楽が少ないと聞いています。子供のうちならこういった行事は良いのではないでしょうか?』
『うん。凄く良いと思う。戦争ではなく、己の肉体の力だけで競い合うのだからね』
『これを参考に神星でも子供たちの娯楽と健康促進のために是非取り入れて行ってください』
『皆、見ていたよね?各国の学校でこの体育という授業と体育祭という行事を取り入れて行こう』
『えぇ、お兄さま。是非!』
『僕の国でもすぐに始めますよ!』
『翼。貴重な情報をありがとう!』
『翼、各競技の細かいルールはまた今度、教えてもらえるかしら?』
『蘭華姉さま。喜んで!』
兄弟たちは興奮していた。年代が同じだから共通して感じるものがあったのだな。
神星でも、学校で体育の授業と体育祭が取り入れられていくのだろう。
お読みいただきまして、ありがとうございました!