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31.子供たちの結婚

 月音の結婚式でベロニカと再会した。


『桜、僕のところに来てくれるかな』

『はい!』

「シュンッ!」


「うわぁ!」

「ベロニカ!」

「あ!ステラリアさま・・・あ!さ、桜さま・・・ですね」


「どっちでも良いのよ。ベロニカ。久しぶりですね」

「はい。桜さま。ちっとも変わらないのですね!」

「ふふっ、そうね」


「久しぶりだね。ベロニカも相変わらず可愛らしいね」

「まぁ!こんなおばさんをからかってはいけませんよ!」

「いや、ベロニカは心の可愛らしさが表情に出ているんだよ。歳は関係ないのさ」

 ベロニカは真っ赤な顔になった。


「天照さま、桜さま。また沢山のお子さまをお作りになったのですね」

「うん。ちょっと必要に迫られてね」

「でも、お子さまも皆、お美しいのですね」


「ありがとう。ベロニカ。あなたは今、お幸せなのですか?」

「はい。子も結婚し、世継ぎの孫も生まれました。幸せに過ごしております」

「そう、それは良かった」


「ベロニカ。お幸せにね」

 そう言って、ベロニカをハグした。

ベロニカを抱きしめていると横から一人の青年が駆け寄って来る気配を感じた。


「あ!お母さま!天照さまとお知り合いなのですか?」

「あら、エトムント!天照さま、息子のエトムントです」


「初めてお目に掛かります。フィリップ マシュー子爵の息子エトムントで御座います」

 エトムントの後を追って、フィリップとエトムントの妻もやって来た。

「天照です。よろしく。ベロニカ。フィリップ殿。立派な世継ぎですね」

「まぁ!ありがとうございます」

「あ、ありがとうございます」


「エトムント。お母さまは立派な騎士だったのですよ。私はベロニカから剣術を学んだのですから」

「お母さまが?本当ですか?」

「エトムント。天照さまは嘘など言いませんよ」


 桜が笑顔でたしなめると、怪訝けげんな顔をしていたエトムントは桜を見て真っ赤な顔になった。


「あ!も、申し訳御座いません!」

 もしかするとエトムントは普段、ベロニカをあなどっているのかも知れないな。


「良いのですよ。でも私の愛するお母さまを大切にしてくださいね」

「は、はい!天照さま!肝に銘じます!」

「ふふっ。頼みましたよ。ベロニカ。元気でね」

「はい。ありがとうございます」


 会場を見渡すと隅の方に詩織の前の旦那であるエミール シュルツとアンネリーゼ、それに息子のダニエルとその妻と思われる女性が息を潜める様に立っているのが見えた。

エミールは既に四十二歳。苦労しているのか白髪が目立つ様になっていた。


 何か気の毒なくらいの哀愁が漂っている。もとをただせば自業自得なのだが、少し可哀そうに思えてしまった。


『詩織。聞こえるかい?』

『はい。月夜見さま』

『エミールの家族が来ているのだけど、何か酷く哀愁が漂ってしまっているんだよ。声を掛けてあげようと思うのだけど、どうかな?』


『私は構いませんよ。それならば、アンナマリーとクラウスも呼びましょうか』

『そうだね。伯爵家としてしっかりしてもらわないといけないからね。それにダニエルには罪はないのだからね』

『では、二人に声を掛けてそちらへ行きます』


 僕は、ゆっくりとエミールのところへ歩み寄った。それに気付いたエミールたちは目が泳ぎ、うつむいてしまった。

「シュンッ!」

「ひっ!」


 詩織が四人の子とアンナマリーとクラウスを連れて目の前に瞬間移動して来たのだ。

周囲の貴族たちも顔ぶれを見てぎょっとし、ひそひそ話を始めた。


「シュルツ殿。ご無沙汰していますね」

「あ、天照さま・・・それに・・・」

「私は詩織です。娘の緋月ひづき詩音しおん、息子の伊織いおり疾風はやてです。さぁ、アンナマリー、クラウス。ご挨拶を」


「シュルツ伯、ごきげんよう。私はティリア クライン辺境伯の妻、アンナマリー クラインで御座います」

 アンナマリーはお父さまとは呼ばなかった。エミールがお父さんだった記憶がない訳ではないだろうに。未だに許せないのだろうな。


「シュルツ伯、初めまして。私はロビン クリューガー公爵の息子、クラウス クリューガーで御座います」

 クラウスは初めましてと言った。確かにエミールが父である記憶はないのかも知れないが、その事実については知っているはずなのにだ。


「こ、これは・・・エミール シュルツ伯爵で御座います。こちらは妻のアンネリーゼ。息子のダニエルとその妻、エルヴィーラです」

 エミールもアンネリーゼも顔面蒼白だ。何か更に可哀そうなことになってしまったな。


「シュルツ殿、妻や子供たちは皆、この様に幸せにしています。皆さんは如何ですか?」

「わ、私たちは・・・ミラに・・・いや、神さまに酷いことをした人間です。罰を受けて当然なのです」


「それは過去のことです。もう終わったことですよ。ダニエルやエルヴィーラ、その子供たちに罪はないのです」

「し、しかし・・・領地も減らされ、領民もそのことを知って移り住んだ者も居るのです。税収は減るばかりで・・・」


「それは大変でしたね。それで?あなたはそれを改善するために何をされたのですか?」

「え?しかし、それは私が悪いのですから、民の移住を止めることはできません」

「では、更に領民が減っていき、いつか下位貴族に落ちても良いと?」

「そ、それは・・・」


「それならば、ダニエルと一緒にそれを食い止めるための策を考えるのですよ」

 その時、クラウスが一歩前に出て、特に感情を表すこともなく静かに口を挟んだ。

「シュルツ伯爵領では農民以外の税は何割なのですか?」


 エミールはクラウスの顔を見て戸惑う様な表情をしながら答えた。

「そ、それは、三割です」

「三割?それは高いですね。隣接する領地の税率を調べて、それに合わせるか、それよりも安い税率に改めては如何ですか?そうすれば、出ていく民を止められますし、戻って来る民もでてくるかも知れません」

「だ、だが、それでは更に税収が減ってしまう」


「今の状況は税収が減り続けるのを指をくわえて見ているだけなのでは?まずは民の流出を食い止めるべきです。それに実際のところ、三割は取り過ぎです。クリューガー公爵領の税率は二割五分ですよ」

「え?公爵領で二割五分?」


 その時、アンナマリーが少し怒っている顔で口を挟んだ。

「クライン辺境伯領でも同じです。お父さまがネモフィラ王国に滞在中に、この国に多くの改革をもたらしたのです。それに目ざとく反応した高位貴族は税率を下げたのです。シュルツ伯爵領ではそういった周りの状況を把握されていないのですか?」


「そ、それは・・・恥ずかしながら・・・」

「それでは、まずは隣接する領地の税率と合わせるところから始めるべきでしょう。いきなり周囲の領地より下げてしまえば、軋轢あつれきを生みますので」

「なるほど・・・」


「良い案を頂いた様ですね。これからダニエル殿と一緒に領民の生活を守っていってくださいね」

「あ、天照さま・・・ありがとうございます」

 最後は家族全員に少し笑顔が見られた。結局は自分の子供に助けてもらった形となったな。まぁ、良かったのではないかな。


 しかし、アンナマリーは怒ったままだ。

「アンナマリー。ご機嫌斜めだね」

「だって・・・あの方って、自分では何も考えていないのですもの!」

「アンナマリー、あの人はああいう人なのよ」

「お母さま・・・そう・・・でしたね」


「お母さま。あの人が僕の実の父なのですか?」

「そうね。クラウス」

「お母さま。離婚して良かったですね」

「まぁ!クラウスったら・・・」

「あ!すみません」


「まぁまぁ、アンナマリー、クラウス。そのくらいにしてあげてくれるかな。彼はもう十分に罰を受けた様だからね」

「そうですね。弟のダニエルに罪はないですものね。でもあの歳で何も考えていないのは困りものですけれど・・・」

「アンナマリー、手厳しいな」


「お父さま。それは私だって、辺境伯領と神宮の両方を切り盛りしているのですから。そういう目で見ますよ」

「そうだね。アンナマリーは本当に良くやっているよ。自慢の娘だ」

「まぁ!お父さま。本当にそう思ってくださるのですか?」

「勿論だよ。心からそう思っているよ」

「嬉しい!お父さま!」

 そう言って、アンナマリーは抱きついてきた。まるで子供の時の様に。


「ちょっと!アンナマリー!あなたもう二十六歳なのですよ!こんなところで!」

「良いではないですか!私はお父さまを愛しているのですから」

 アンナマリーがきつく抱きついて離れない。


「詩織、良いじゃないか。今はアンナマリーの子が見ている訳ではないのだから」

「あら、お父さま。私は誰が見ていても平気よ」

「ふふっ、そうだったね」


「全く、お姉さまは変わらないな・・・」

 アンナマリーを抱き締めたまま、ぼそっとつぶやくクラウスに笑顔で振り返った。

「クラウスももう一人前だね」

「ありがとうございます。お父さま」


「お母さま。さっきのお方が、お母さまの前の?」

「緋月。そうなの」

「そうなのですか・・・アンナマリーお姉さま。ご苦労なさったのですね」

「緋月!そうなの!分かってくれるのね!」

「えぇ、大変でしたね・・・」

 アンナマリーが今度は緋月に抱きついた。


「緋月、レオンハルトは大丈夫そうかい?まだ熱は上がったままなのかな?」

「婚約して家宝のティアラを私が受けたことで大分落ち着いたのですよ」

「国のまつりごとの方は大丈夫なのかな?」

「お父さま。それは私がしっかり導きますから大丈夫です」

「それを聞いて安心したよ」

 皆、しっかりしているな・・・本当に安心だよ。


 やっと、新郎新婦の元へとやって来た。一緒に柚月ゆつき姉さまも居た。

「柚月姉さま、最近のフォルランはどうですか?」

「それは勿論、私が手綱たづなを握っていますからね。大丈夫ですよ。それにあと三年で王位を譲位されるそうなのです」

「あぁ、伯父さまが六十歳になるのですね。いよいよフォルランが王になるのですね」


「お兄さま。子をあれだけ作り、各国に配置しているのはお考えがあるのですよね?」

「僕の考えではありません。次代の天照家頭首であるリッキーの考えですよ」

「まぁ!凛月りつきさまが?あぁ、兄弟で協力して導こうとされているのですね」

「そうなのでしょう。私はそういった政治には向かない人間です。リッキーに任せますよ」

「頼もしいですね」

「えぇ、全くです」




 ネモフィラ王国での結婚式を皮切りに子供たちが次々に結婚していった。


 マグノリアでの結婚式も盛大だった。何せあの、ロミーと那月、二人のお姉さまの元へ僕の娘を嫁がせるのだから。


 結局、静月しづきは那月姉さまの息子のシュテファンを選んだ。


 ロミー姉さまの息子のリーンハルトは、製鉄工場の主でこの国の宰相を務める、レオナルド デュポア公爵の孫娘と結婚し、将来、シュテファンを支える宰相となる予定だ。

つまり、那月姉さまの息子シュテファンが次期国王となるので、静月は王妃となるのだ。


 他にもロミー姉さまの娘ベティーナが、鉱山主のギルベルト シュローダー公爵の長男と結婚し、那月姉さまの娘クリスティンがデュポア公爵の孫と結婚して鉱山のふもとに神宮を建てた。この辺のお膳立ては、全て二人のお姉さまが仕組んだものだ。


 幸ちゃんも静月のことは二人のお姉さまに任せておけば何も心配は要らないと安心していた。


 那月姉さまのお母さま、シャーロットお母さまとお父さんも呼んだ。大型船は月光照國の月の都に係留したままだ。僕の月の都は日中は海上へ降ろすし、お父さん達は瞬間移動できないから引き続き使って頂いているのだ。


 二人が大型船に乗ったとお父さんから念話をもらって、こちらの月の都へ引き寄せた。

子供たちは全員の結婚式に立ち会うと決めており、結婚したばかりの娘も伴侶を連れて月の都へ瞬間移動して来た。


 皆で大型船に乗り込むとすぐに瞬間移動せず、一時間程飛行した。

その間に船のサロンで近況を伝え合うのだ。そしてそれが国際会議の場になっていくのだ。


 今はまだ参加国は十五か国なのだが、下の子たちが伴侶を見つければ二十九か国全ての国の次期王や王妃、または高位貴族の者が揃うことだろう。


 そのために今日の目的地であるマグノリアのロミー姉さまの息子夫婦と静月とシュテファンにも一旦、船に乗ってもらっている。


 彼らの今日のテーマは、人口の増加と食料生産量の調整だ。マグノリアでは鉱山での採掘と製鉄が基幹産業で、農業は畜産を支えるものに偏っていた。食料を輸入に頼っているマグノリアの次期国王であるシュテファンはこの会議に欠かせないのだ。


 リッキーには考えがある様だ。

「皆、お父さまが性の知識の本を作られてから、二十七年が経過している。この間にこの世界の人口は増え、男女比も僕らの世代では、ほぼ一対一となった。これからは結婚も当たり前のこととなり、子が増え人口は増々増えることだろう」


「そうなれば、自ずと食料生産も増やさなければならない。しかし、各国で闇雲に生産をしたり、多く輸入すれば良いという訳ではないよね。それが何故か分かるかな?レオンハルト」

「申し訳御座いません。我が国は紡績産業が基幹事業で、その材料となる作物を育てることに集中していますので、食料生産については明るくないのです」


「そうでしょう。各国によってその基幹産業は様々です。レオンハルトが言った様にリナリアでは食料を輸入に頼っている。でも今、リナリアへ食料を輸出してくれている国の人口が増えて、輸出している分を国内消費に回さなければならなくなったら、リナリアはどうなるのですか?」

「あ!そうでした。私はまだそこまで考えておりませんでした」

「えぇ、そうですね」


「シュテファン。帰ったら王に現状を確認してください。マグノリアでも同じことが言えるのでは?」

「全くその通りです」


「ですから、食料生産の調整は計画的に行わなければならないのです。それにはまず、各国の人口を把握することが大切です。今後の人口増加を予測し、それに合わせて、どの国でどれだけの食料を必要とするのかを見積り、不足がない様に生産する必要があるのです」


「それと食料は輸入だけに頼るのではなく、自国で生産できるものは生産を拡大していかなければなりません。勿論、その国の風土によって限界はありますけれどね」

「では、まず何から始めれば良いのでしょう?」


「そうですね。自国の現在の人口とこれから増える人口を予測し、継続的に把握すること。現在の食料品の国内生産量と輸入量、消費量を調べて把握すること。その時に大切なことは食料を余らせるとか、流通に時間が掛かって腐らせるなどで廃棄している様なことがないかも確認しておく必要があります。そして自国でどんな作物が生産可能なのかも調べて自国生産に向けて動き出す必要もあるでしょう」


「特に食料品を廃棄している様なことがあれば、それは世界的な損失となります。また、米や麦の様に備蓄できるものもあるでしょうが、それを管理することも大切なことです。備蓄の状況も必ず把握していてください」

「かしこまりました。すぐに取り掛かります」


「今後は、今ここに居ない国の代表も呼んで定期的に会議を開きましょう」

「はい。是非、お願いいたします」


 リッキーが各国に兄弟を配置し、国際会議を開催するのは彼に目的があるからだ。


 地球で取り組みが始まったSDGs。持続可能な開発目標というものに着目したのだ。エネルギー関連はこの世界では問題ないので、主にこの星の環境を維持しながら、人口増加に合わせた農業政策を推し進めたい様だ。


 そして、それは各国で協調して進めなければ達成は不可能だからだ。それらの知識は翼からの入れ知恵でもある。翼は瑞希のお父さんから薦められる本や資料を次々にリッキーに送っているのだ。


 僕は暁月お爺さんから、この世界に男性が少ない原因を解き明かし、人口を増やして欲しいと頼まれ、それはどうやら達成できた様だ。


 そしてリッキーは、この星の環境を守りながら人口を増やし、安定的に人々が暮らしていける形を作ることが次代の天照家当主としての自分の役目だと考えたのだろう。


 人に与えられるのではなく、自分でそれを考え、見つけて実行するなんて・・・我が息子ながら素晴らしい人間だな・・・




 会議が終わると、結婚式の準備のために静月たちが先に城へと瞬間移動した。僕たちはマグノリア王城の直上に到着し、昇降機で庭園に降りた。


 結婚式はネモフィラ王国の時と同様に盛大だった。人数の多い僕たち家族とそのお相手の王子、王女たちを紹介し、マグノリア王による宣言で静月とシュテファンは結婚した。


 主役のふたりがダンスを踊り、続いて僕が静月と踊った。

「お父さま。今日はとても穏やかなお顔をされていますね」

「そうかい?静月や子供たち皆がしっかりしているのを見て、安心したのかな・・・」

「えぇ、私たちは大丈夫です」

「シュテファンのことを愛しているかい?」


「えぇ、念話もできるからいつでも通じ合えるのです。それにとても信頼のできる人です」

「それならば良かったよ」

「それよりも、二人のお義母さまのお父さまへの愛が大変です!」

「え?あ!そうか、何か言われたのかい?」


「今後、何かと理由を付けてお父さまをマグノリアへ来させて欲しいって」

「あぁ、なるほどね。分かったよ」

「お父さま。二人のお義母さまとは何もないのですよね?」

「え?それは・・・何もない・・・けど?」

「ふーん。そうなのですね・・・まぁ、良いのですけれど」


「静月、何か勿体付けた言い方をするね」

「だって、二人ともお茶をしていてもお父さまの話になると何かを思い出して遠くへ行ってしまわれるのですよ」

「ふ、ふーん。そうなの・・・」

 これはまずいな・・・


 静月とのダンスが終わると、ロミー姉さまと那月姉さまが待ち構えていた。

「さぁ、お兄さま。私たちとも踊ってくださるでしょう?」

「え?踊るのですか?」

「勿論です!」


 そう言って、半ば強制的にロミー姉さまに引っ張られてしまった。

「ロミー姉さま。静月が戸惑っていますよ」

「あら、何にです?」

「ロミー姉さまと那月姉さまの僕への愛が大変だって」

「あぁ、静月さまには分かってしまうのでしたね」


「母親として少し自重じちょうして頂かないと」

「それは無理ですよ。お兄さまはこうしていつまでもあの時のままの美しいお姿で・・・香りだって花の様に良い香りがするのですもの・・・お兄さまの記憶は私の身体の五感全てに刻まれているのですから・・・」


「な、何だか、オリヴィアお母さまみたいだな・・・」

「え?何かおっしゃいましたか?」

「いいえ、こちらの話です」

「想っているだけなのですから、それくらい許されるでしょう?」

「ま、まぁ、そうですね」


 次は那月姉さまの番だ。最早、何を言っても無駄だろう。

「お兄さま。これでまた家族の絆が強まったのですね」

「そうですね。お互いに静月とシュテファンの親となったのですからね」

「それはもう、夫婦の様なものでしょうか!」


「違いますよ。お姉さま。静月は心が読めるのですから、少し自重して頂かないと!」

「でも、愛しているものは止められないのです・・・」

「あぁ、分かりました。想っていてくださる分には問題ありませんから」


「えぇ、いつまでもお兄さまのことをお慕いしております!」

「ありがとう」

「兎に角!今後はもっと頻繁にマグノリアへ来てくださいね」

「分りましたよ」

「嬉しい!」

 そう言って、ダンスの終了と共に抱きついてきた。皆、見てるのに・・・


「これ!那月!あなた母親のくせに何をしているのですか!見ているこちらが恥ずかしいわ!」

「えーだって、お母さま。私はお兄さまを愛しているのですから・・・」

「もう!この子ったら・・・」

 シャーロットお母さまもあきれ顔だ・・・


 お姉さま方は相変わらず・・・いや、年齢と共にパワーアップしているな。


 そうして、子供たちも自立し、神星は理想的な世界へと向かって行った。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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