29.大人びた子供たち
花音が予知夢を見た。でも今回は三十歳の誕生日から数か月遅れていた。
それを花音から聞いたのはふたりで夜を過ごす時だった。
「月夜見さま。五年後の夢を見たのです」
「あ!忘れていたよ。あれ?今回は誕生日からかなり経っているのではないかな?」
「えぇ、遅かったですね・・・」
そう言う花音はあからさまに元気がない。
「あれ?何か悪い夢だったのかい?」
「あの・・・五年後、新しく十六人の子が生まれていました。でも・・・」
「でも?」
「恐らく、私の娘なのですが・・・私と同じ黒い髪と瞳をしていたのです」
「ふむ。でも翔琉は黒い髪と瞳じゃないか」
「翔琉は男の子です。女の子とは違いますから・・・」
「花音は今、不幸なのかい?」
「そんなこと!そんなことはありません!」
「それなら、その子だって同じだよ。心配しないで・・・」
「は、はい・・・そうですね」
子供たちの就学先となっていない国があと十四か国あるのだ。全ての国に兄弟全員を配置したいという、リッキーの求めに応じて、あと二人ずつ子を儲けることとなった。
それから数週間で妻たちは三人目の子を授かり始めた。やはりまた舞依からとなった。
そして一か月以内に八人全員が子を授かった。
その後、四か月で男女が判明した。皆、望み通りに舞依の子が男の子、他の妻は女の子を授かった。何故か今回も胎児の生育は早く、七か月で出産を迎えた。
生まれた子は、舞依の息子は奏良、桜の娘は萩乃、琴葉の娘は琴乃、花音の娘は柊花、幸子の娘は柊咲、紗良の娘は橙華、陽菜の娘は陽麻里、詩織の娘は詩音と名付けられた。
そして、今回は全ての子が、母親と同じ髪と瞳の色となった。これは一人目の時の逆のパターンで花音の予知夢の通りだった。そして、花音が黒い髪、黒い瞳の柊花を抱いて、少しだけ不安そうな顔になっていた。
「花音。柊花は可愛いね。髪や瞳は君に似たのだね」
「えぇ、予知夢の通りになってしまいました。月音は月夜見さまに似たのに・・・どうして・・・」
「花音。何を不安に思っているの?そもそも花音の黒い髪と瞳がきっかけで、君は僕の侍女になり、そして妻になったのだからね」
「はい。そうでした」
「花音が柊花を大切に思い、必要な子だと思ってあげるのでしょう?それに僕は花音と柊花のこの髪と瞳の色は大好きだよ。僕は柊花にそれを一杯、言ってあげるつもりだよ」
「そうですよね・・・そうでした。私がそんなことを言っていたら駄目ですね」
「そうだよ。花音しっかりしてね」
「はい!月夜見さま!」
そして八人全ての子の能力が、これまでの子たちと同じ様に強かった。前世の記憶はない様なのですぐに話はできないが念話はできる様だ。またしても全員が前世で神であったということなのだろう。
生まれて来る者が居れば、亡くなる者も居る。
暁月お爺さんの五人の妻は、ここ数年で相次いで亡くなり、先月最後のカルミアお婆さんが亡くなってしまった。八十五歳だった。
この世界で八十五歳まで生きることは珍しい。やはりストレスもなく、良い栄養状態で暮らして来たからなのだろう。僕は訃報を受け、すぐに向かおうとしたが、お爺さんからは誰も連れて来るなと言われ、ひとり月宮殿に向かった。
お爺さんの屋敷に入ると、応接室にお父さんとお母さま達が揃っていた。
その中央にカルミアお婆さんの遺体がシルクの布に包まれ、顔だけを出した状態で寝台に横たわっていた。
カルミアお婆さんは、ただ眠っているかの様にきれいで安らかなお顔をしていた。
「お爺さま。カルミアお婆さまのこと・・・残念です」
「よく来てくれたな・・・私の妻たちは皆、長生きできた。幸せな人生を全うできたと思うよ」
「えぇ、最後のお顔も大変安らかな表情をされていました」
「うん。それも月夜見のお陰だ。人間界、その中でも妻たちの母国に何も不安が残っていないのだからな」
「そんな・・・僕はまだまだです」
「そうか?でも、ありがとう。感謝しているよ」
天照家では葬式というものがない。遺体は真っ白なシルクの布に包まれ、そのまま墓地に埋葬されるのだ。参列者はお爺さんとお父さん、お母さま達、それに僕だけだ。他には誰も居ない。お婆さまの母国だけに連絡し、各国へ訃報を送ることはしないそうだ。
「お爺さま。何故、天照家ではお葬式がないのでしょうか?」
「葬式?それは何だ?」
「葬式は亡くなった方の家族や友人、知人が集まって、故人の死を悼む行事なのです。故人を荼毘に付した後に、お酒を飲み、食事をしながら故人の思い出話などをするのです」
「ふむ・・・それは故人のためではなく、残された家族のために行われる行事なのかな?」
「そうですね。故人との別れを惜しみ、自分たちの心の整理を付けるためのものでしょうか」
「それならば、天照家には必要はないのではないかな?」
「そうなのですか?それは何故でしょう」
「来世もまた天照家の神として生まれ代わるのだから悲しむ必要はないのだ」
「え?それはどういうことでしょう?」
「一度、神の一家となった者の魂は、生まれ変わるとまた、天照家に生まれ変わるのだと言い伝えられている」
「あぁ、そういうことですか。でも言い伝えなのですよね。確認できる訳ではないですものね」
「まぁ、それはそうだがな」
お婆さんを墓地に埋葬し、特に行事も無いまま自分の屋敷のサロンに戻ると、いつもの様に小白の上にフクロウが居たので何となく聞いてみた。
「天照さま。神の家族は転生しても、また天照家に生まれ変わるというのは本当なのですか?」
「人間の魂は、一度神の位まで上がると、もう落ちることがないのです。月夜見の子供を見れば分かるでしょう?まだ子供だというのにあらゆる知識をすぐに取り込み、大人の様な振舞いをする様になる」
「あぁ!なるほど・・・」
「そうだとしても、僕の子供のほとんどが強い力を持ち、前世で神だったのは不思議なことではありませんか?」
「・・・」
フクロウは何も答えず、外へ飛んで行ってしまった。
『なんだかなぁ・・・』
花音に能力が発現した時、女性でこれだけの力がある者は今までに居なかった、とお爺さんが言っていたのだ。それがここ百年位の話だとしてもだ、僕の娘は、葉留以外の十六人は皆、力が強いのだ。これは流石に突飛な話だ。絶対に何かあるな・・・
上の子供たちは十歳になり、自分で選んだ国へと旅立った。
リッキーだけは、カンパニュラ王国の月の都から学校に通い、休みの日にはこちらへ戻って来ている。
他の娘たちは就学先の国の王城に住んでいて、ほとんど戻って来ていない。リッキーは全ての兄弟と繋がっており、状況を把握している。
まぁ、母親もそれぞれの娘とはこまめに念話で会話して、状況を把握しているので心配は不要だ。娘たちには結婚を急ぎ過ぎない様にとだけ、釘を刺してある。
それよりも問題は下の息子たちだ。要注意な息子が三人居る。
まず、翔琉はアシュリーとべったりだ。去年、初めて会った日からずっと一緒に暮らしているのだ。
紹介のために初めてルピナス王国へ行ってから三か月後に、アシュリーを連れて月の都へ遊びに来たが、その時はもうアシュリーは終始笑顔で過ごしていて、翔琉とずっと手を繋いでいた。それだけアシュリーが兄の死から立ち直っているということではあるのだが。
ふたりは花音に「あなた達、一緒に寝ていたりしていないでしょうね?」と問い質されていた。ふたりとも真っ赤な顔になって否定していたが。
「私は翔琉の意識に入って、目の前のものを見ることもできるのですからね。いいですね?」と、更にきつく釘を刺されていた。
「あの、お父さま、お母さま。ご相談があるのですが・・・」
「相談?では、私の部屋へ」
翔琉とアシュリー、花音が僕の部屋に入った。シルヴィーがお茶を淹れて下がったのを合図に翔琉が話し始めた。
「お父さま、お母さま。アシュリーのお父さまから、アシュリーと結婚して、ルピナス王国の世継ぎとなって欲しいと言われたのです」
「それで・・・翔琉はどうしたいのかな?」
「僕はお受けしたいと思っています」
「ふむ・・・」
「あの・・・よろしいでしょうか?」
「アシュリー。どうぞ」
「図々しい申し出であると分かってはいるのです。神さまに国を継いで欲しいなど・・・」
「アシュリーのお母さまは、まだお若かったですよね?」
「はい。二十八歳です」
「それならば、これから世継ぎを授かることも可能だと思うのですが?」
「お母さまは、悪阻が酷いのだそうで、もう子は産みたくないとおっしゃっているのです」
「そんなに酷いのですか?」
「はい。兄の時も酷かったそうなのですが、私の時は更に酷くなり、私を生んだ直後は初乳も出なかったそうで、その後半年も床に臥せっていたそうです。私は乳母に育てられたので御座います」
「あぁ、なるほど・・・それでは無理もありませんね」
「アシュリー。君は三か月前と比べて元気そうですね。もう大丈夫なのですか?」
「はい。翔琉さまのお陰で御座います」
「お兄さまのことがあるから今は仕方がないのでしょうけれど、いつまでも翔琉に依存していてはいけませんよ」
「あ。は、はい・・・申し訳御座いません!」
「お父さま!アシュリーだって分かっているのです!」
「そうかい?それならば良いのですよ。でもね、今も一国の王女であり翔琉と結婚して王位を継ぐならば、王妃となるのです。今はそのために勉強し、王妃として王となる翔琉を支えられる様にならなければね」
「はい。肝に銘じて努力いたします」
「そうですか。では、翔琉をよろしくお願いしますね。アシュリー」
「天照さま。ありがとう存じます」
やっぱり、王女は王女だな。八歳でこれだけしっかりしているのだからな。
もうひとり、進んでいるのは蒼羽だ。ビオラ王国のアリーチェとクラリーチェの双子の姉妹とのお付き合いが始まっていた。
家族で挨拶に伺ったあとで、蒼羽がひとりでビオラ王国を訪問した。
「蒼羽さま、お待ちしておりました!」
「蒼羽さま、お待ちしておりました!」
出迎えたアリーチェとクラリーチェの声がシンクロする。
「アリーチェ、クラリーチェ。先日はありがとうございました」
「こちらこそ。ありがとうございました。本日は先日できなかったお話しができればと思います」
「そうですね」
今日は揃いの衣装なのだが色が違う。アリーチェは薄い青、クラリーチェはピンクがベースの衣装だ。サロンに通されて三人で話をした。
「失礼ですが、こちらの青い衣装の方がアリーチェで合っていますか?」
「え?どうしてお分かりになったのですか?」
前回、心を読んでいて、姉のアリーチェの方が意識的にお姉さんの役割を果たそうとするのか、考えも発言も一瞬早いのだ。先に瞳が開いて反応するから違いが分かるのだ。
「アリーチェはお姉さんだから、問い掛けに一瞬早く反応するのだと思います。それで分かったのです。あとクラリーチェは妹だからか、少しだけおっとりしているのかな?その雰囲気で分かります」
「まぁ!私たちの違いをあの一日で見分けられる様になったのですか!」
「今まで、私たちの違いが分かる方は居ませんでした。だから、もう違いはなくて良いのだと思って、あの時も同じ衣装を着ていたのです」
「違いはなくて良いなどということはありません。双子だから容姿は似ているとは思いますが、人格は別の人間なのですから、必ず違いはある筈です」
「その様に私たち双子を解ってくださるなんて・・・」
二人とも同時に両手を頬に当て真っ赤になった。そこはシンクロするのだな。
「でも、それならば・・・」
「うん?それならば?」
急に二人の表情が暗く深刻なものとなった。
「あ、あの、私とクラリーチェのどちらをお選びになるのでしょうか?」
「選ぶ?選ぶとは、もしかして結婚を考えておられるのでしょうか?」
「は、はい・・・皆さまは各国に就学すると同時に結婚のお相手をお探しになっている。と世界中で噂になっているので御座います」
「あぁ、伯母さまや伯父さまたちは、皆、そうなっていますものね」
「はい・・・」
二人とも俯いてしまった。もうこれは、はっきりさせないと駄目なのだろうな。
「アリーチェ、クラリーチェ。先ほど、僕がどちらを選ぶのかとお聞きになりましたね?」
「はい」
「それは、アリーチェとクラリーチェはお二人とも僕の妻になっても良いと思っているということでしょうか?」
「勿論で御座います!」
「クラリーチェ。君もかい?」
「はい。勿論です」
「それは、僕が神の息子だから拒否できないという意味ですか?」
「と、とんでもない!」
「と、とんでもない!」
二人は同時に席を飛びあがる様に立ち上がって叫んだ。今日一番の高シンクロ率だった。
「良かったらお気持ちを伺っても?」
「あ。そ、それは・・・あの、私は蒼羽さまに一目お会いした時から、お慕い申し上げております」
「わ!わたしも!初めにお会いした時から、蒼羽さまをお慕いしております」
そして二人は姉妹で見つめ合い、また俯いてしまった。
「アリーチェ。クラリーチェ。ありがとう。嬉しいです。僕もアリーチェとクラリーチェを同じ様に愛しいと思っています」
「ほ、本当で御座いますか!」
「ほ、本当で御座いますか!」
「アリーチェとクラリーチェを二人とも妻に迎えるのは図々しいお話しでしょうか?」
「そんなこと!本当によろしいのですか!」
「私たちはその方が嬉しいです!」
「では、僕たちはまだ八歳です。婚約にもまだ早過ぎると思います。ですから、二年後に僕がこの国へ就学するまでは、お互いに行き来しながら親交を深めるに留めておきましょう」
「はい。かしこまりました。では私たちは月の都へ連れて行って頂けるのですか?」
「えぇ、是非!」
「でも、あんなに遠い所へどうやって?」
「あぁ、それは僕が抱えて飛びますから」
「飛ぶ?」
「では、やってみましょうか?こちらへ来てください」
二人の間に入って、二人を抱き寄せた。
「きゃっ!」
小さく声を上げた二人は、僕に両側からしがみついた。
「では、飛びますよ」
「シュンッ!」
「うわぁ!ここは?あ!庭園へ飛んだのですね!」
「凄いわ!何も感じませんでした!」
「えぇ、これが瞬間移動です。ですから、月の都へも一瞬で飛べるのです。怖くはなかったでしょう?」
「はい。蒼羽さまに掴まっていれば安心です」
「ではまた、サロンへ戻りましょうか」
「シュンッ!」
「きゃーっ!」
サロンに居た侍女たちが、突然消えた僕たちに驚いて右往左往していたところへ、また急に現れたものだから叫び声を上げてしまったのだ。
「あぁ、皆さん、驚かせてしまって、すみません。ちょっと瞬間移動の練習をね」
「い、いえ、大丈夫です・・・申し訳ございません」
「では、アリーチェ、クラリーチェ。王に今後のことをお話ししておきましょうか」
「はい」
王に二人とのお付き合いについて報告し、婚約については学校に行く様になるまで発表はしないでおくこととなった。
その後、僕が何回かビオラ王国を訪問し、二人との仲を深めていってから、月の都へ連れて行った。お母さまには全て報告済みで了承も頂いている。
月の都へ遊びに連れて来る時はいつも、二人を両脇に抱きかかえ、二人もベッタリと抱き着いて飛んで来る。歩くときは、アリーチェとクラリーチェは僕の両側に立って手を繋いでいる。
お父さまからは「見ているこちらが恥ずかしくなってくるよ」と言われてしまった。
でも、お母さまはお父さまに「もう結婚するつもりなのでしょうから、私は構わないわ」と言って気にしていないそうだ。お母さまって、サバサバしているよな・・・
陽翔はグースベリー王国のアネモネに見初められ、少しずつお互いを知って行こうという話に落ち着いた。
だが、結局は少しずつでは収まらず、アネモネからは毎日の様に手紙が届き、会いに来て欲しい、こちらから行きたい。と矢の催促が続いた。
仕方がなく陽翔が二週に一度はグースベリーへ出向き、次はアネモネを招待する様になった。そうしているうちにどんどんアネモネのペースに飲み込まれて行き、気付けば翔琉や蒼羽と同じ様にベタベタの間柄となっていた。
陽菜は初めこそやきもちを焼く様な素振りを見せていたが、今は微笑ましく見守っている。
アネモネが月の都へ遊びに来ていた。
山へ景色を見に行ったり、陽菜の馬のアリスにふたりで乗って月の都を一周回ったりして、楽しんでいた。
その日は一泊することになっており、夕食を家族と共にした。この日のメニューは握り寿司と天ぷらだった。
初めて寿司や天ぷらを見る客人は、食べ方が分からず戸惑うものだ。でもアネモネは違った。
子供たちの寿司は山葵抜きになっている。でも一応、お皿の端にすりおろした山葵を添えてあるのだ。
アネモネはまず、小皿に醤油を注ぎ、山葵を箸で少し取ると鯛の握りの上に乗せ、小皿の醤油を少し付けて、そのまま口に運んだ。
「美味しいです!山葵の刺激が素晴らしいわ!」
あれ?初めてではないのかな?いや、ここで寿司を出したのは初めてだ。それにグースベリーには海が無い。そもそも新鮮な魚だって普段は食べてはいないと思うのだが・・・
もう家族全員がアネモネに注目している。すると今度は天ぷらに手を出した。天つゆの皿に慣れた手付きで大根おろしを箸でつまんで入れると、茄子の天ぷらを天つゆに浸して口へ運んだ。
「陽翔さま、この天ぷら、美味しいですわね!衣がサクッとしていて、大根の辛味が丁度良いですわ」
「え?アネモネ。寿司や天ぷらを食べたことがあるのかい?」
「え?・・・そう言えば・・・私・・・初めてですわ」
「えーっ!」
家族全員が声を上げた。
「アネモネ。寿司や天ぷらの食べ方を説明していないのに、当たり前の様に正しい食べ方を・・・というか・・・そう!普通に食べたよね!」
「しかも、山葵や大根おろしの薬味を美味しいって!アネモネって、まだ六歳よね?」
僕も陽菜も思わず矢継ぎ早にツッコミを入れてしまった。
「あ、あの・・・私にもよく分からないのです。このお料理を見た途端、勝手に箸が動いたと言いますか・・・」
「食べたことは無いのですよね?」
「はい。生まれて初めて見たお料理です・・・」
「いや、ちょっと待って!グースベリーに箸はあるのですか?」
「あ。無いです」
「え?初めて箸を見て、そんなにきれいな持ち方で箸を使えるなんて・・・」
「こ、これは・・・」
「えぇ・・・そうですね」
『アネモネには日本人であった前世があるのかも知れないね』
『では、私たちと同じ力があるのでしょうか?』
『陽菜、今は能力を感じないね。前世の記憶を取り戻したら能力が発現するのだろうね』
『お父さま、アネモネにも能力があるかも知れないのですか?』
『そうだね。ただ、前世の記憶を呼び覚ますことができれば、だと思うけれどね』
『どうすれば、記憶を取り戻せるのですか?』
『いや、それは分からないのだよ。人によって違うんだ』
『そうなのですか・・・』
『陽翔。でももう、アネモネと結婚するつもりなのだろう?』
『はい。それはもう決めています』
『では、急ぐ必要はないよ。前世の記憶を取り戻すことは、危険なことでもあるんだ。アネモネが成人してから色々と試してみれば良いと思うよ』
『分かりました。お父さま』
これは大変だな。でもこれでアネモネの妙に大人びた態度には納得できたけれどね。
お読みいただきまして、ありがとうございました!