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27.子供たちの紹介3

 リナリア王国を訪問した。ここは縫製工場の見学をした国だ。


 庭園に降りると、現国王オーガスティンと王妃ルシール、王子クレメンスと妻のベレニーチェ。その子供のレオンハルト九歳とアメリー六歳が待っていた。


 初めの挨拶からレオンハルトの熱い視線で焼かれそうになっている娘が居た。

詩織の娘、緋月ひづきだ。


 応接室に移ってから一人ずつ紹介していくのだが、他の子には全く興味を示さないどころか、見向きもしていない。ずっと緋月を見つめている。もう緋月はレオンハルトの方を見られなくなってしまった。


「来年、または再来年より、この子たちを各国の学校に就学させようと考えているのです」

「それでは、我が国にも就学して頂けるかも知れないのですね?」

「そうですね。どの国へ行くかは子供たちに選ばせる予定ですが」


 その時、レオンハルトが立ち上がった。真っ赤な顔をしている。

「お父さま、お爺さま!」

「な、何だ。レオンハルト。天照さまの御前であるぞ!」

「い、一大事なので御座います!」

「一大事?」


 そして、王と父親の間に入ってこそこそと話し始めた。当然、こちらには全て聞こえている。

『お父さま!どうしても、どうしても緋月さまに来て頂きたいのです!あれを、あれを差し上げても良いですよね?』


『これ、レオンハルト。早まるでない!あれは我が国の家宝なのだ。まだ嫁に来て頂けるどころか、この国へ就学して頂けるかも決まっていないのだぞ!』

『お爺さま。でも今しかないのです!またいつ来て頂けるか、この国を選んで頂けるのかも分からないのですから』


『レオンハルト、落ち着くのだ。まだ分からないのにあれを差し上げてしまって、断られたらどうするのだ?』

『お父さま。その時はその時です』

 王は自分のあごに手を当てて、しばらく考え込み、そして決断した。


『ま、まぁ、賭けにはなるが、お相手は神さまなのだ。それくらいの覚悟は必要か』

『父上!よろしいのですか?』

『レオンハルトとリナリアの未来が懸かっているのだからな。仕方あるまい』

 何か大事になっている様だな・・・


「パオロ!あれを持って参れ」

「殿下、あれとは、先日レオンハルトさまに引き継がれた・・・」

「そうだ。急ぐのだ」

「ははっ!」


 クレメンス殿が、初老の侍従に何かを持って来る様に命じた。

しばらくして、赤いベルベットに覆われ金の金具で豪華に装飾された箱を侍従が運んで来ると、レオンハルトの前にうやうやしく置いた。


 レオンハルトがその箱を開くと、それはまばゆい宝石が輝くティアラだった。

『あら!ティアラだわ!これって求婚ということね・・・緋月。どうしますか?』

『お母さま!急に言われても・・・』

『緋月、すぐに決めることはないよ』

『お父さま・・・』


『今のところ、レオンハルトは嫌ではないのかな?』

『それは・・・そうです』

『では、あと何回か会ってみて、この国に来るかどうか決めれば良いよ。結婚はまたその後のことだ』

『はい。お父さま』


「ちょっと、待ってください」

「天照さま」

「レオンハルト殿。それは誰に?」

「緋月さまです」

「レオンハルト殿は緋月の何を知っているのかな?」


「それは・・・これから・・・」

「そうですね。お互いにまだ知らないのですからね。それでは結婚を決めることはできないでしょう」

「で、でも・・・」

「緋月が就学先の国を決めるまでには、まだ時間があります。緋月を何度かここへ来させましょう。それでお互いを知れば良いでしょう」


「緋月。それで良いかな?」

「はい」

「そ、その様な機会を与えてくださるのですか!」

「それがお互いのために良いと思います。ですが、この一年で結婚を決めるという話ではありませんよ。結婚はもっと時間を掛けて決めるべきものです」

「はい。かしこまりました」

「レオンハルトのためにこの様な・・・本当にありがとうございます」


 どの国も天照家と縁を結ぼうと必死なのだな・・・




 その後、ペンタス、リコリス、プルメリア、リアトリス王国と挨拶に回ったが、子供たちの年齢にあうお相手が居らず、就学候補からは外れた。引き続き子供たちが就学する国を探しながら挨拶回りは続くのだった。




 ルピナス王国を訪問した。

ここは十四年前、舞依探しの旅で訪れ、殺人事件に出くわした国だ。それ以外ではワインとハーブの産地で有名だ。今ではイベリスへの薬草の輸出も始まっている。


 あの時の王とは世代が代わっている。現王のエドワード ルピナス、第一王妃キャメロンとその娘、第一王女アデライン、第二王女レイチェル、第二王妃のクローディアが出迎えてくれた。


 王宮騎士団の団長が、あの時とは代わっていた。確か、一緒に殺人現場へ行ったリイナが騎士団長になっている様だ。


「リイナ。お久しぶりですね」

「あ!わ、私を覚えておいでなのですか・・・」

「えぇ、私と桜、それに花音と一緒に殺人犯を捕らえましたね。ジャクリーンは引退されたのですね?」


「は、はい!天照さまもステラリアさま・・・いえ、桜さまも。全くお変わりないのですね!」

「えぇ、私たちはちょっと変わっているのですよ」

 リイナが赤い顔をして興奮している。


「さぁ、天照さま。中へどうぞ!」

 応接室に通され、王家の紹介を受け、いつもの通りにお父さんから天照家の継承の挨拶を、僕から子供たちの紹介と就学の件を説明した。


 一通りの説明を終えて、あることに気が付いた。第二王妃クローディアの子が居ないのだ。確か、第一王子のアンソニーと第三王女のアシュリーが居たはずなのだ。


 以前、電気製品の納入の時に会っているのだが・・・どうしたのだろう。先ほどの紹介では、第一王妃の二人の娘は既に婚約したとのこと。確か、アンソニーはリッキーと、アシュリーは蘭華と同い年だったと記憶している。今日もその二人が子供たちの標的になると事前に話していたのだが。


 そう言えば、今日は初めから王家の皆さんの表情が硬い、というか貼りつけた様な笑顔だった。これは何かあったのだな・・・


「あの、エドワード殿。アンソニーとアシュリーの姿が見えないのですが、何かあったのですか?」

「あ!・・・こ、これは・・・れ、連絡が行き届かず、申し訳ございません!」


 家族全員から笑顔が消えてしまった。誰も目線を合わせなくなり、娘たちは今にも泣きそうな顔になってしまった。


『琴葉。これは何かあったね』

『月夜見さま。城に入る時、国旗が半旗となっておりました』

『え!全然、見ていなかったよ!しまった!』


『お父さま!気付かれていましたか?』

『いや、不幸があったとの連絡は受けていない。それに笑顔で出迎えられたのだし、気付かなかったな』


「あの、実は・・・一か月前にアンソニーは亡くなったのでございます」

「え?アンソニーが・・・・病気だったのですか?」

「いいえ、乗馬中に落馬したのでございます。突然、馬が暴れて振り落とされ、頭から落ちてしまい・・・」

「それは・・・残念です・・・」


「それで、アシュリーは?」

「あの子は、アンソニーを慕っておりました故、まだ・・・」

「あぁ、そうだったのですね。そんなことになっているとは知らず、このような時期にご挨拶に来てしまい、申し訳ございません」


「そ、そんな!か、神さまに息子の死をお伝えするのは、と気を回してしまったのです」

「そんな遠慮は不要でしたのに。皆さまがに服されている中、手前の勝手で大勢で挨拶に伺ってしまい、申し訳ないことです。それでは今日はこれで失礼させて頂きます」

「も、申し訳ございません」


『月夜見、覚えておくと良い、人間界では王家の者が亡くなれば、各国に連絡するものなのだが、天照家には国王か王妃の死しか伝えないものなのだよ』

『あぁ、天照家との関係においては国王か王妃の死しか、影響はないからですね』

『うむ。そういうものなのだ』

『分かりました』


 僕らはそろそろと廊下を歩き、城の出口に向かって歩き出した。そして一階の玄関を回って庭園に出た時だった。

「お兄さまーっ!」

 聞きなれない叫び声が庭園に響き渡った。


 皆が一斉に声のした方へ振り返ると、城の中から走り出て叫んだ少女は、その声に振り返った翔琉かけるの胸に飛び込んだ。


「お兄さま!」

「え?」

 翔琉は勢いよく飛び着かれた反動を受け止めるべく、咄嗟にその少女を抱きとめた。


「あれは・・・アシュリー」

「月夜見さま。あの娘がアシュリーなのですね?」

「花音、確かそうだと思う」

「でも何故、翔琉に?」


「あ!確か、アンソニーも黒髪に黒い瞳だった!ほら、クローディア王妃と同じなんだよ。翔琉の身長は、一歳分くらい大きいから、背格好も同じなんじゃないかな?」

「では、翔琉をアンソニーと見間違えている・・・と?」

「アンソニーは亡くなっているのだからね。アシュリーの精神状態はかなり不安定なのではないかな?」


「アシュリー!なんてことを!そのお方は神さまなのですよ!」

「え?お母さま?」

 そう言われて、アシュリーは翔琉の顔を見た。


「あ!あ、あ・・・わ、わたし・・・」

 翔琉はアシュリーの両肩に手を置いて、支えながら言った。

「アシュリー、大丈夫かい?」

「あ、あ、あ、う、うえっ、うぇーん、う、う」

 泣き出してしまったアシュリーを翔琉は再び、優しく抱きしめた。


 周囲は少しずつ、ふたりから下がって輪になるように広がると、もう誰もふたりに声を掛けられなくなった。


 アシュリーの家族は皆涙を流していた。王宮騎士団の騎士も全員整列し、真っすぐに前を向いたまま涙を流し、誰一人としてその涙を拭う者は居なかった。


 数分後、アシュリーはゆっくりと顔を上げ、泣きはらした顔で翔琉に聞いた。


「あ、あなたさまは?」

「初めてお目に掛かります。私は天照 月夜見の息子、翔琉です」

「あ!わ、私!な、何てことを!」


 やっと事態を飲み込んだアシュリーは真っ赤な顔をして後ろに少し下がると、

「は、初めてお目に掛かります。わ、私はアシュリー ルピナスで御座います」

 少し、ふらつきながらも王女としての美しい所作で挨拶をした。


「初めてお会いしたというのに大変失礼をいたしました。申し訳ございません」

「良いのです。それよりもアシュリー。あなたは大丈夫なのですか?」

「わ、わたしは・・・」

 アスリーは表情が曇り、うつむいてしまった。


「アシュリー。もし私でよろしければ、私があなたのそばに居てお支えしましょうか?」

「え?翔琉さまが?私を・・・お支えくださるのですか?」

「はい。私であなたのお役に立つのならば・・・」


 アシュリーは少しだけ微笑むと、一歩、二歩と翔琉に歩み寄った。

翔琉が腕を広げると、ふたりは抱きしめあった。アシュリーの瞳からはまた涙がこぼれた。

「きゃーっ!」

 娘たちが思わず、小さく叫んだ。


「花音。どうしようか?」

「えぇ、思ってもいないことになりましたね・・・」

「お父さま、お母さま、翔琉はここに置いて帰りましょう」

「え?月音つきね。本当に?」

「アシュリーには翔琉が必要だわ。既にふたりの心はひとつになっているのですから」


「うーん。まぁ、翔琉は瞬間移動でいつでも行き来できるし、念話でいつでも連絡できるからそれもありか」

「そうですね」


 僕と花音は、エドワードとクローディアのところへ歩み寄った。

「エドワード殿、クローディア殿、翔琉は置いて帰ります。アシュリーの心はきっと翔琉が癒すことでしょう」

「そ、その様なこと、よろしいのでしょうか?」

「そちらがご迷惑でなければ、のお話しですが・・・」

「天照さまのご子息さまに癒しを頂くなんて・・・ありがたいことで御座います」


「でも、部屋は別にしてくださいね。あぁ、部屋は用意頂かなくても構いませんよ。翔琉はいつでも瞬間移動でここと月の都を行き来できますし、念話で私たちと会話できますから」

「それでは、一旦、客間をご用意いたします」

「ありがとうございます」


「翔琉。では私たちはこれで帰るからね。翔琉はアシュリーを元気にしてあげて」

「え?僕はここに残るのですか?着替えは?」

「なんだ、着替えの心配か。いつでも瞬間移動で自分の部屋と行き来できるだろう?」

「あ!そうでした」

「そうだ、アシュリーが元気になったら月の都へ連れておいで」

「分りました」


「では、皆さん、私たちはこれで失礼いたします」

「天照さま、皆さま。ありがとう存じます」


 神の家族を乗せた昇降機がゆっくりと船へ上がって行き、一瞬で船が居なくなる様を翔琉とアシュリーは抱きしめあったまま見送った。




 船が消えた後、ふたりは庭園の真ん中で、皆の注目を一身に集めていた。

「アシュリー、皆が見ていて恥ずかしいから、ちょっと離れたところへ行っても良いかな?」

「はい。どこへ行かれるのですか?」


 アシュリーを抱いた姿勢から念動力で少しアシュリーの下半身を持ち上げ、お姫さま抱っこするとそのまま浮かび上がり、ゆっくりと空へと昇って行った。

「きゃっ!」

 アシュリーは小さく声を上げ、翔琉の首に腕を回してしがみついた。


「アシュリー!」

 アシュリーのお母さんが心配そうな声を上げた。

「うわぁー!いいなぁー」

 二人の姉は手を胸の前に組んで乙女の様にうらやんでいる。


「皆さん、ご心配なく!少し空を散歩してきますね」

「は、はぁ・・・」

「娘をよろしくお願いいたします!」


 城の屋根よりも高いところまで上がって周りを見渡すと、ルピナスの花が一面に咲く野原を見つけた。


「アシュリー、あそこにきれいな花が沢山咲いているね。行ってみようか」

「はい。あ・・・少し怖くなくなってきました」

「うん。絶対に離さないからね。安心していていいよ」

「絶対に・・・離さない?・・・は、はい。ありがとうございます」

 アシュリーは翔琉の言葉に顔を赤く染めた。


 ルピナスの花が咲く野原に着くと、花のすぐ上をゆっくりと超低空飛行して行った。

ゆっくりと飛んでいるので、花の香りが鼻をくすぐる。風が髪や肌を刺激する。翔琉に抱きしめられて伝わってくる暖かい体温。それらが長く自室に閉じ籠っていたアシュリーの五感を呼び覚ました。


「素敵!こんな風にルピナスを見たのは初めてです!」

「そうでしょう。美しいものを見ると心が軽くなると思うんだ」

「私、この一か月はずっと自分の部屋に閉じ籠っていたのです」

「そう。辛いことがあったんだね・・・」


「お兄さまが、アンソニーお兄さまが亡くなってしまったのです・・・でもさっき、窓から外を見たら翔琉さまが・・・私、お兄さまが生き返ったのかと・・・」

「そうなんだね・・・僕はアシュリーのお兄さまに似ているのかな?」


「えぇ、髪も瞳も、その優しい言葉遣いも、お顔も・・・」

「アシュリーはお兄さまが大好きだったんだね?」

「はい。いつも私を守ってくれて、何でも教えてくれたのです」

「では、お兄さまが居なくなって、どうしたら良いか分からなくなっているのですね」

「そう・・・なのかも知れません」


「僕はアシュリーのお兄さまにはなれないけれど、傍に居て一緒に勉強したり、こうして楽しい思い出を共に作ったりすることはできますよ」

「翔琉さまが私と一緒に居てくださるのですか?」


「アシュリーが僕で良いと思うなら・・・ね」

「翔琉さま。お願いです。こうして私を離さないでください」

「分かりました」


 それから丘を見つけて降りると、倒木にハンカチを敷いてふたりで並んで座った。

空を見上げると二つの月が互いに回転しながら空に浮かんでいた。


「翔琉さま、あの月って、見ていると悲しくなってきませんか?」

「アシュリーは昔から月を見る度に悲しくなっていたの?」

「あ、そう言われると・・・昔はそんなことはなかったかと」

「そうだな・・・あの月ってああやってずっとふたつの月が互いに回転しているよね」

「えぇ、そうです」


「ずっとそれが続く・・・そう感じてしまうのではないかな?悲しい時に見たら、その悲しみが永遠に続いてしまう様な錯覚に陥るのではないだろうか?」

「あ!そうなのかも知れません。楽しい時には美しいと感じるだけなのでしょうか」

「うん。そうなのではないかな」


「一日も早く・・・あの月がさ・・・ただ美しい、そう思える様になるといいね」

「翔琉さま・・・」

 アシュリーはもう月を見ていない。翔琉の顔をただ、見つめていた。


「さぁ、皆さんが心配しているといけません。そろそろ城へ帰りましょうか」

「はい」


 ふたりは立ち上がり、アシュリーは黙って翔琉の首に腕を回してきた。翔琉は優しくアシュリーを抱きしめるとそのままふたりはキスをした。

そよ風が吹き、ルピナスの甘く優しい香りがふたりを包み込んだ。




 ルピナスの訪問が終わり、僕たち家族はフラガリア王国へやって来た。


 庭園に降りると、国王ゴーチェ フラガリア、第一王妃オティーリエ、第二王妃パウリーネ、その息子の王子ヘンドリックと妻レジーナ。その子供で長男ジルヴェスター七歳と長女フィリーネ六歳が出迎えてくれた。


「これは天照さま。この度の天照家のご継承、おめでとうございます」

「ありがとうございます」

「ささっ、中へどうぞ!」


「うわぁー!」

 サロンに入って、鉱山の景色を見た子供たちが歓声を上げている。


「ゴーチェ殿、その後、ステンレス・スチールの製造は如何ですか?」

「はい。今では鉄を上回る生産量となっております。全ては天照さまのご指導の賜物たまものでございます」


 お父さんより、改めて天照家の継承の挨拶をし、僕から子供たちの件を伝えた。

「既に世界中で話題となっておりますよ」

「子供たちのことがですか?」

「はい。勿論で御座います。どこの国が天照さまのご子息、ご息女さまをお迎えできるのかと」

「もう、そんなに噂が広まっていたのですね」


「はい。我が国にも是非、お願いできれば・・・と」

「お願いいたします!」

 その時、ジルヴェスターが大きな声を張り上げた。

「え?」


「お願いいたします。是非とも月葉つきはさまに、我が国へ就学頂けないでしょうか!」


『彼は本気ね。初めから月葉しか見ていないわ』

『月葉、どうなの?』

『そうですね。お母さま。可もなく不可もなく。といったところでしょうか』


『月葉は冷静だね』

『だって、会ってすぐになんて分からないですもの。ビリビリと感じるものでもあれば別ですけれど・・・』

『あぁ、水月とかアネモネみたいなやつね』


『でも嫌ではないのね。では、キープってことね』

『お母さま。キープ?ですか?』

『とりあえず、押さえておくってこと。断らずに考えておきますと返事だけするのよ』

『なるほど・・・ではそのキープというので』


『でも、彼って顔は良いわよね。プラチナシルバーの髪に赤い瞳って珍しいわ』

『えぇ、月乃。それはそうね』


「ジルヴェスター殿は月葉が気に入った。ということかな?」

「は、はい!月葉さまほどお美しいお方には出会ったことがございません!」

「では、ゴーチェ殿、ヘンドリック殿。考えておきますね」

「はい。よろしくお願いいたします」


 熱くなっているジルヴェスターの前にこれ以上居るのは危険と判断し、早々に退散した。


 さぁ、まだ子供たちの紹介は続く。また次の国だ。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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