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23.子供たちの将来

 我が家の大科学者の考えを聞いていこう。


「そうだ、翼。反重力装置ができたところで、次は何を造ろうと思っているのかな?」

「そうですね。オービタルリングと低軌道エレベーターです。まずはオービタルリングで使う発電モジュールでしょうか。低軌道エレベーターを支える柱の素材の研究もしたいですね」


「そうか。翼は凄いな!」

「頑張ってね。翼」

「はい!お父さま、お母さま」


 その夜、ベッドの中で瑞希と話した。

「瑞希、翼は凄いね・・・」

「えぇ、何でも造ってしまうのでしょうか」

「オービタルリングと低軌道エレベーターは地球には必要だよね」

「地球側の人間としてできることをしようと考えているのですね」


「翼は天照さまの様なことを考えているのだな」

「えぇ、私なんかとは人間の質というか種類が違う様な気がしてしまいますね」

「それは僕も同じだよ」


「あと、驚いたのは神星の十六人の子たちは、皆、翼と葉留と会話していたのですね。同じ様に知能も高いのでしょうか」

「そうかも知れないね。でも科学的なことに興味を持っている子は居ないと思っていたのだけどな。皆、穏やかで優しい子が多い気がするよ」


「それは前世が神だったことに起因するのでしょうか。前世の経験から無意識のうちに正義感とか公平性とか、慈愛というものが本能として備わっているのですね」

「そうだね。翼だって正義感や慈愛があるから人間や地球を守りたいという思いでああいうものを造っているのではいかな?」


「そうなのですね。科学者としての探求心とか研究欲だけではなくて、正義感や慈愛からくる善意の行動なのですね」

「きっとそうだよ。そう思いたいな・・・」




 それから一か月後、天照さまから翼が造った反重力装置が戻されてきた。

イノベーターの評価は「良」だそうだ。原理は合っているが、耐久性や電力消費での改善と人間が模倣もほうできない様にする工夫が必要との評価だ。


 その辺のアドバイスが記録されたデータも送られてきた。翼は瞳を輝かせて、改良に取り組むと意気込んでいた。


 そして翼の部屋は早苗さんの家の地下の倉庫へ移された。


 葉留の能力を調べることとなった。まずは念話だ。

『葉留、聞こえるかい?』

『はい。お父さま』

『瑞希にも聞こえているかな?』

『はい。聞こえています。葉留、念話ができたのね?』


「葉留、いつ頃からできる様になったのか覚えている?」

「うんと小さい時です。サロンで翼お兄ちゃんと一緒に居たら、お兄ちゃんとリッキーお兄ちゃん達が皆でお話ししているのが聞こえたのです」

「それで、その話に入って話す様になったのかい?」

「そうです」


「でも念話で話しているだけだと、誰が誰なのか分からなかったでしょう?」

「いいえ、話している相手の顔が頭に浮かぶからすぐに名前を覚えました」

「え?会ったことがない人の顔が浮かんだ?瑞希そんなことってある?」


「いえ、そもそも会ったことがない人といきなり念話をしたことがありません。念話をする時は前もってその人のことを頭に浮かべるので、その意味で顔は浮かんでいますけれど」

「それもそうだね」


「これって、葉留の個別の能力なのかな?」

「そうなのかも知れませんね」


「あの、お父さま。私、菜乃葉と七海とも念話で話せるのですけれど・・・」

「え?菜乃葉と七海?でも二人は普通の人間だよ?」

「でもできるのです。お父さまや翼お兄ちゃんと話す時よりはとても小さくしか聞こえないのですけれど」

「本当なの?凄いね・・・」

「月夜見さま。それって、実は私たちにもできる。ということはありませんか?」


「でも、普通の人間に念話を伝える能力は、わざわざ天照さまから授かったのだよ?しかもそれは、こちらからの一方通行で相手の言葉は対面で読心術を使って読んでいるのだしね」

「では、試しに菜乃葉に話しかけてみては如何ですか?」

「あぁ、そうか。その方が早いね。では・・・」


『菜乃葉。月夜見だよ。聞こえるかい?』

『・・・』

「お父さま。菜乃葉には聞こえていて返事はしていますよ」

「あ!そうか、僕は人間に念話を送れるのだった!でも菜乃葉の返事は聞こえなかったな」


「では、私がやってみましょうか?」

「そうだね、瑞希が試してみると良いね」

『菜乃葉、瑞希よ。私の声が聞こえるかしら?』

『・・・』

「お母さまの声は菜乃葉には聞こえていないみたいです」


「なんだ、やっぱり葉留の個別の能力の様だね」

「葉留、あなたにしかできないみたいだわ」

「葉留、菜乃葉に急に呼んでしまったこと、謝っておいてくれるかな?」

「はい」


「お父さま、お母さま、これは使わない方が良いのですか?」

「うーん。神星の家族や菜乃葉の家族には使っても良いよ。でも家族以外には使わない方が良いね」


「そうよ、葉留。普通の人間にはできないことなのですからね。あなたが神の子であることが知られたら、あなたは地球で暮らせなくなってしまうわ」

「はい。分かりました。使わない様にします」


 それから他の能力についても試してみたが、念動力と透視はできる様だ。

「葉留の能力は生まれた時と比べて、明らかに大きくなったね」

「後から力が使える様になることもあるのですね」

「うーん。これは推測だけど、リッキーたちと繋がっている内に脳が刺激を受けて、力を使える領域が広がってきているのではないかな?」

「では、まだ使える能力が増える可能性もあるのですね」

「仮説が正しければね」


「でもね、葉留。瞬間移動だけは勝手にやらない様にね」

「はい。お父さま」

「瑞希、たまに能力のチェックをしてくれるかな?」

「透視は医学的なことまで教えますか?」


「そうだね。それは折角使える能力なのだから、活かした方が良いと思うよ」

「では葉留、これから能力の使い方を訓練していきましょうね」

「はい。お母さま。楽しみです」


「月夜見さま。天照さまにこのことを報告して、葉留の能力を伸ばしても良いのか聞いた方がよろしいのでは?」

「あぁ、それならばエリーがそこに居て、今までの会話は聞いているからね。駄目なら「それは止めておけ」って、言われているよ」

「そういうものなのですか?」

「今まではね」


「あれ?ちょっと待てよ・・・後天的に能力開発できるならば、例えば月影姉さまとかアンナマリーもできる様になるのでは?」

「どういうことでしょう?」


「僕らの持つ能力って、地球で言うところの超能力で、人間の脳の使われていない領域を使っているということだったよね。だから使える様にしてやれば良いんだよ」

「それは、外部からどんな刺激を受けるとその様に脳の使える領域を広げられるのでしょうか?」

「それが分かれば苦労しないよね」

 その時、エリーが一歩前に出た。


「月夜見、全ての能力を持たせることはできないのです」

「あ、天照さま。では、葉留の様に一部なら拡張できるのでしょうか?」

「そうです。治癒の他では最大にできても透視、念話と軽い念動力です」

「あぁ、でもそれができれば、宮司が病気の治療やお産で対応できる範囲が広がって多くの人を救えますね」

「宮司だけに限定して使わせるならば、能力拡張の方法を教えましょう」

「はい。勿論、宮司だけで構いません」


「その方法は、月夜見と宮司で手を繋ぎます。それを八人の女神が手を繋いだ輪で囲みます。そして十人で念話をする様に心を通じるのです」

「では同時に能力拡張できるのはひとりずつなのですね?」

「そうです」


「それは、すぐに使える様になるのですか?」

「徐々に訓練していくのです。でも念話はすぐにできるでしょう」

「分りました。ありがとうございます」




 僕は神星に戻るとこのことを妻たちに話した。

「では、アンナマリーとクラウスもそれができる様になるのですね?」

「詩織。そういうことだね」

「アンナマリーもクラウスも宮司になったのだからね」


 アンナマリーはもう十九歳。結婚して二人の子のお母さんだ。


 良夜りょうや秋高しゅうこうのどちらと結婚するのだろうと思っていたら、大どんでん返しで、シオン伯母さんの息子で、クライン辺境伯領の跡継ぎとなった、ティリアと結婚したのだ。結局は王子さまブランドの勝利だった。


 クライン辺境伯領には、勿論、神宮は無かったのだが、フォルランと柚月ゆつき姉さまの政策でネモフィラ王国にできるだけ多くの神宮と学校を作ることとなり、クライン辺境伯領にも神宮ができたのだ。


 クラウスは、ルイーザ姉さまとロビン クリューガー公爵の娘、フィオナと結婚し、既に二人の子を儲けた。クリューガー公爵領にも神宮が作られ、クラウスは宮司となっている。


 良夜は、桜の異母兄弟の弟であるアルフレートの娘、クリスタ ノイマンと結婚し、やはり二人の子を儲けた。ノイマン侯爵領にも神宮が作られ、良夜は宮司となっている。


 秋高しゅうこうは、良夜の父、ロベリアの弟のアンドレア クラウゼ公爵家の長女マルティナと結婚し、クラウゼ公爵領に神宮を作り、宮司をしている。こちらも既に二人の子が居る。


 能力を拡張するのは、僕の姉十六人と、弟七人、アンナマリー、クラウス、良夜、それに伯母さん達だ。


「月夜見さま。柚月ゆつきさまのお子さま二人はどうされるのですか?」

「息子のファビアンは国王になるだろうからね。娘のミシェルは王女だし、宮司になると決まってからでも良いかなと思っているよ。宮司になっているお姉さまの子たちはお姉さまと相談して決めれば良いかな」

「どうやって回って行くのですか?」


「まずは、お父さまだよ」

玄兎げんとさま!」

「それは確かに!順序ではそうなりますね」


「お父さまでテストして、今後のことを相談してから各国を回ろうと思っているよ」

「はい」

 お爺さんに念話で、お父さんには鳥の電話で今から行くことを伝えてから皆でサロンへと飛んだ。


「シュンッ!」

「お爺さま、お父さま、お久しぶりです」

「やぁ、久しぶりだね。子供たちも大きくなったな」

「そうですね。上の子たちが八歳、下の子も七歳になりましたから」

「今日はどうしたのかな?」


「天照さまから教えて頂いたのですが、治癒の能力しかない者へ後天的に、念動力、透視と念話ができる能力を授けることができるのだそうです」

「何、それは本当か?」


「えぇ、それでまず初めにお父さまに試してみたいのです。よろしいでしょうか?」

「それは、念話や透視ができるならその方が良いからな」

「それではやってみましょう」


「どうすれば良いのかな?」

「まず、僕と手を繋ぎます。そして妻たちが円になって僕たちを囲みます」

 僕がお父さんの手を握って立つと、その周りに妻たちが集まり始め、手を繋いで輪を作った。


「皆で集中して、お父さまに念話で語り掛ける様に心を通じさせるのです」


「では、始めるよ!」

「はい!」

 すると妻たちのネックレスの一番大きな石が発光し、頭の中に皆の声が駆け抜けた。

『玄兎さま・・・』

『玄兎さま・・・』

『聞こえますか・・・』

 頭の中に妻たちの声がこだまする様に響いた。


「さて、これでできたのでしょうか?では、僕からお父さまに念話で話し掛けてみますね」

「うむ」


『お父さま、これは念話です。聞こえますか?』

『うん?この頭の中で聞こえるのが念話なのか?』

『おぉ!玄兎!念話ができる様になったのだな!』

『父上?』


『お爺さま!僕たちにも聞こえますよ!』

『この声はリッキーか!』


「どうやら、成功したみたいですね。ではこれからは以前より強く念動力が使えますし、ご希望とあらば人体の中身も見える様に透視の能力もお教えしますよ」

「い、いや、人体の中身は見えなくても良いかな。それは娘たちに教えてやってくれるか」

「そう、おっしゃると思いました」


「これからお姉さまや弟たち、それにその子供たちで宮司になっている者にはこれができる様にしていこうと思います」

「それは、多くの妊婦や赤子が助かることになるのだな」

「お爺さま、その通りです」

「ありがとう。月夜見。頼んだぞ」




 まずは人数も多い、ネモフィラ王国へ行った。千月ちづき伯母さん、月影姉さま、柚月姉さま、秋高しゅうこう、良夜、彩月あやつき、アンナマリー、クラウスの八人だ。


 彩月はまだ十四歳だが、アンナマリーと同じく、トレニア伯母さんの息子で、ウェーバー公爵家の養子となった王子さまのイーサンと婚約している。現在、ウェーバー領にも神宮を建設中で来年には宮司となるのだ。


 だが、フォルランと柚月姉さまの子、ファビアンとミシェルの将来はまだ決まっていない。まぁ、ファビアンは国王になるのだろうけれど。


 八人のところを次々と回って、能力を拡張していった。まずは王宮だ。

「これで、お兄さまといつでも念話でお話しできるのですね!」

「月影姉さま、そういうことです。柚月姉さま。子供たちの将来が決まったら連絡をくださいね」

「はい、お兄さま。ありがとうございます」


 それから人体の透視の方法と分娩時に胎児が出て来られない時の対処を、パソコンを見せながら教えていった。


 最後は一番遠い、クライン辺境伯領のアンナマリーのところだ。

「お父さま!瞬間移動もできたらいつでもお父さまに会いに行けるのに!残念です」

「アンナマリー、もうお母さんなのだからね。子供たちをしっかり育てるのですよ」

「はい。お父さま!」


「そうよ、私たちと念話ができるだけでも嬉しいことでしょう?」

「はい。お母さま。そうですね」


 次はちょっと贔屓ひいきして、アスチルベ王国だ。


 王城で結月ゆづき姉さま、レオンとレーアにも能力拡張を行った。レオンは次期国王だがレーアが王都の神宮を引き継ぐので、いつでも手伝える様にとのことだ。水月のところも全員、拡張した。


 一か月程掛けて世界を巡り、皆の能力が拡張された。特に妊婦の胎児が直接見て検診できるし肺炎の治癒率もスピードも上がった。神宮での診療は一気にレベルアップできたのだ。


 七大大国の宮司である伯母さん達はそろそろ引退も考えないといけない。十四人の姉さま達の上の娘たちがその後を引き継ぐことになっている。


 そこで新たに結婚し、子を儲けて、今度は姉さまたちの後を継いだり、神宮を増やしていくこととなるのだろう。




 そろそろ自分の子供たちの将来も考えなければならない。


 上の子たちに十歳から学校へ行かせるならば、あと二年もないのだ。子供たちに将来の希望を聞いてみた。


「皆、リッキーたち上の子は学校に行くならばあと二年だけど、希望はあるかな?」

「僕は学校に行きたいです」

「私も行きたいです。皆、学校に行きたいと話しています」


「それは各々、別の国へ行っても良いのかな?」

「別の国の方が良いです。僕たちは念話でいつでも話ができますから、情報交換をして比べながらその国のことを学んでいきたいです」


「行きたい国は決まっているのかな?」

「皆、どこでも良いのです」

「宮司になりたいとか、王子の妻になりたいとか、将来の希望はある?」

「下の子も含めて全員、各国の政治にたずさわりたいのです」

「全員?王とか王女になりたいのかい?」


「肩書にはこだわりません。私たち女性なら王妃になって、王に働き掛ければ良いのですから」

 月乃が当たり前の様に話す。でも八歳の発言には聞こえないけれど。


「でも全員が同じなの?それは何故なのかな?」

「今後は全ての国で文化の発展が進み、人口も大きく増えていきます。今までの様な王政では、地球の中世の時代の様に戦乱が起こるかも知れませんし、格差が大きくなってしまうかも知れないからです」


「それは君たちの仕事なのかな?」

「はい。お父さまひとりでは難しいと考えています」

「では、できるだけ王に近い立場に就きたいということかな?」

「妹たちなら王妃でも問題ないと思います。僕や弟たちは、なるべく高い身分の家に入るか、王の信頼を得て宰相さいしょうか大臣にはなりたいところです」


「そうか。それはリッキーひとりの考えではなくて、全員が同じ様に思っているということで良いのかな?」

「僕たちは、この星でお父さまがされてきた改革の話を幸子お母さまから聞き勉強しました。そして地球のことは翼と翼のお爺さまから学びました。それだけの知識を得られるのも、それを活かせるのも僕たち以外には居ないのですから」


「お父さま。それは、この神の家に生まれた私たちの使命でもあると思います」

蒼羽あおば静月しづき、そんな風に皆で考えてくれていたのだね。ありがとう」


「分かったよ。だけどね。私から各王に自分の子供たちを各国の王にしてくれとは言えない。それは分かるよね?」

「お父さま、勿論です」


「では、どうやって誰がどこの国へ行くかを決めようか」

「それではお願いがあるのですが」

「リッキーなんだい?」

「一度、全ての国と神宮へ僕らを全員連れて行って、各王と宮司に面会させて頂けないでしょうか?」


「あぁ、それなら問題ないね。各国に連絡して、僕の子供たちが学校に行く国を決めたいから、見学させてくれと申し出れば、どの国でも自分の国へ来て欲しいって言うと思うよ」

「はい。全ての国と神宮を見てから、それぞれが行きたい国を決めようと思います」

「分かったよ。では来年、九歳になったら皆で各国を巡って行こう」

「お父さま、ありがとうございます」


 なんだか僕の時とは大違いだな。何故、こんなにしっかりしているのだろうか?やはり全員、前世が神だったから人間としての出来というか魂の位が高いのだろう。最早、幸ちゃんでさえ口を挟まなくなっている。


 僕も国や世界全体の将来については漠然と考えていた。でもそれは、前世の医師としての知識で何ができるか。という視点で考えていただけで政治には関わりたくないと思っていたのだからね。


 あれ?リッキーって、天照家を継ぐ気はないってことかな?

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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