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21.世界各国への挨拶

 お母さんがうまやで癒され、ほのぼのとした時間を過ごすことができた。


「アルメリア。そろそろ良いかしら?月夜見さま。神宮へ参りましょう」

「えぇ、そうですね」

 やはり、王城と神宮は特別な通路で繋がっていた。通路を渡り神宮へ入ると、その先の屋敷の廊下には、既に宮司と巫女が勢揃いしていた。


「お兄さま!」

 宮司が廊下を走って来て僕に抱きついた。

「お兄さま!もう来てくれたのですね。それにお母さまも連れて!」

月影つきかげ姉さま。お元気でしたか?」


「えぇ、やっと研修が終わってこの神宮の正式な宮司と成れました」

「そうですか。お元気そうで良かった」

「それより、まずは応接室へどうぞ」


 月影姉さまの後について行った。でも既に勝手知ったる神宮の中。って感じだ。どこの神宮も同じ造りだから応接室の位置だって案内されなくても分かる。


「それで、どうしてこんなに急にいらっしゃったのですか?」

「あぁ、船を速く動かすことができる様になったので、一度、全ての国と神宮の場所を覚えておこうと思ったのです。一度来てその場所を覚えれば、次回は瞬間移動で来られますから」

「まぁ!流石はお兄さまですこと」


「この神宮での仕事は忙しいでしょうか?」

「まだ、慣れていないので忙しいのか自分が追い付いていないのかが良く分からないのです」

「そうでしょうね。でも、女性の性の知識をまとめた本ができて、この国の女性達に読んでもらえれば、生理で診療に来る女性が減らせると思います。少しは宮司の仕事も楽になると思いますよ」


「それは楽しみです。お兄さま。私達のためにありがとうございます」

「兄弟なのですから。当然です」

「月影姉さま、今日は挨拶だけでゆっくりできず、すみません。また来ますので」

「そうですか。残念です」


「どうしても寂しくなったら、船の通信で呼んでください。一瞬で飛んできますよ」

「本当ですか!嬉しい!」

「これ、月影。月夜見さまはこれからお忙しくなるのだから、そんなに気軽に呼んではご迷惑ですよ!」


「はい。お母さま。月に一度くらいにします」

「それは多いのでは?」

「ふふっ。冗談です!」

「またすぐに来ますよ。そうだ。瞬間移動で来る時はどの部屋に来れば良いでしょう?」

「では、こちらに」

 案内されたのは、月影姉さまの寝室だった。


「ここは寝室では?」

「はい。でも真夜中には来ないでしょう?」

「まぁ、それもそうですね。分かりました。ここを覚えておきます」

「はい!」

「では、今日はこれで帰りますね」


 神宮から王城へと戻り、王であるお爺さんや家族に見送られ昇降機で船へと上がった。

「では帰りましょうか。船長、飛びますよ」

「はい。お願い致します」

「シュンッ!」

 そして一瞬で月の都へと帰った。




 それからは、次々に各国を回って行った。明るい家族計画が待っているルチア母さまのユーフォルビア王国を先に訪問し、ジュリア母さまのエーデルワイス王国、シャーロット母さまのラナンキュラス王国、メリナ母さまのジギタリス王国と回り、お母さま達の母国訪問は完了した。


 次に国の大きさや人口の多さなどから順位を付けて順番に訪問して行った。隣接している国は一日で二国、三国とまとめて訪問し、全ての国と神宮を一か月掛からずに訪問を終了した。


 これで僕は全ての国と神宮に瞬間移動で飛ぶことができる様になった。


 その頃には、ルチア母さまの月経周期が分かって来た。大体二十九日か三十日だった。

基礎体温表から次の排卵日の予測を立てると、排卵日と予測した日の三日前からお父さまには性交を禁じて頂き、一日前から三晩続けて指導した方法にて性交をして頂いた。


 更にメリナ母さまの周期と排卵日も推測ができた。ルチア母さまの十日程後になるので、お父さまには続けて頑張って頂いた。あとは結果を待つばかりである。




 注文から二か月後。グロリオサ服飾店より、ブラジャーの試作品ができたとの連絡を受け、家族全員で船に乗ってカンパニュラ王国の王城へと出向いた。


 ほぼ全ての国で王城と神宮は隣り合っているのだが、この月の都のお膝下であるカンパニュラ王国だけは、月の都と神宮がセットで月光照國げっこうしょうこくと名乗っているため、神宮と王城は少しだけ離れているのだ。


 カンパニュラ王城の上空へ到着すると、船の昇降機で王城の中庭へと降りた。

すぐにサロンへと通され、お茶が出された。


「月夜見さま。ちょっと」

「オリヴィア母さま。何でしょう?」

「こちらへ」

 オリヴィア母さまに手を引かれ、ある部屋へと入った。


「この部屋は?」

「ここは私の部屋なのです。月夜見さまがこの城へ瞬間移動される時はこの部屋をお使いください」

「あぁ、そうでしたね。この城に来たのは初めてでした」

「えぇ、そうなのですよ」


 サロンに戻ると皆が集まっていた。

「お父さま。こちらが月夜見さまです」

「月夜見さま。私がこの国の王、フェルナンド カンパニュラで御座います。そしてこちらが第一王妃ラウラ スカーレット カンパニュラです。そしてヘレナはもうご存知ですね」

「はい。初めまして、月夜見です。本日はこの場を提供くださり感謝致します」


「月夜見さま。私はグロリオサ服飾店の主、アリアナ グロリオサで御座います。お会いできて光栄に存じます。また、此度はこの様な素晴らしい下着のご提案並びにご注文を頂きましたこと。感謝を申し上げます」

「いえ、こちらこそ。突然、無理を言いましたのにこころよくお引受け頂きありがとうございました」


「では皆さま、お待たせ致しましたが、月夜見さまからのご依頼の下着の試作品ができましたので、お披露目致します」

 ジェマが下着を並べたテーブルの端から商品を紹介していく。


「まずはこちらが見本を頂きましたものを再現したもので御座います」

「まぁ!」

「おぉ!」

「月夜見さま。ご覧ください」


「はい。うん。うん、おぉ、背中のホックも!刺繍もきれいにできていますね。大変良く再現されています。ほとんど同じにできたのですね。ご苦労を掛けました。ありがとうございます」

 驚いた。ここまで忠実に再現できるとは正直思っていなかったのだ。


「そしてこちらが騎士や畑仕事など、激しい動きをする方に適した下着で御座います。既にこの城の王宮騎士の皆さんに試着を頂き、ほぼ完成しております」

「では今、ナタリアとアリアムはその下着を着用しているのですか?」

「はい。着けております」

「如何ですか?」


「はい。以前は剣術の訓練中や警備中は布を胸に巻いていたのですが、この下着は布の様に息苦しくなく、動き易くて、ずれることもないので大変助かっております」

「それは良かった。お二人共、美しいですよ」

「ま、まぁ!美しいだなんて・・・」

 二人とも耳まで真っ赤になっている。


「そしてこちらは平民用として安価で購入できる様に仕上げたものです。基本的には見本のものと同じ作りになっていますので、機能や服の上から見る分には遜色御座いません」

「それは素晴らしいですね。ベラとミアも着けているのですね?」

「はい。左様で御座います」

「うん。二人も可愛いですよ」

「あ、ありがとうございます・・・」


「寸法を頂きました分につきましては、二着ずつ作成して御座います。本日、試着を頂き、着心地に問題がなければ、更に別のお色や模様などのご要望をお受け致します」

「では、お一人ずつ、お渡しして参ります。試着はあちらにお部屋をご用意して御座います」

 皆、笑顔で下着を受取り、試着室へと向かった。


「月夜見さま、こちらの見本をお返し致します。大変、役に立ちました。ありがとうございました」

「それは良かった」


 見本として預けていた舞依のブラジャーは、分解したのかどうかも分からない程、渡した時のままだった。少し、ほっとした。


 続けて生理用品の相談もしたかったが、皆、お母さま達の試着でそれどころではない。皆が戻るまでナタリアたちと話していようかな。


「ナタリア。その下着は剣術の訓練中でもズレたり邪魔に感じたりすることはありませんか?」

「はい、何度か試着を繰り返して確かめており、この完成品はとても着心地が良いのです」

「それは良かったですね。ところで、それは個人で購入するのですか?」

「いえ、王宮騎士団の支給品となりました」

「それは良かった!ヘレナさま。ご尽力を頂いた様ですね。感謝致します」


「月夜見さまに感謝を頂くなんて!こちらこそご教授を賜り感謝を致しております。そして騎士や城の使用人全て、週に一日は休みの日とし、他にも女性については、生理の初め二日間は休みと致しました」

「え?もう、休日制度を実現されたのですか?」

「はい。今月から始めております」


「生理の始まりは予測できないものですが、突然お休みになっても大丈夫なのですか?」

「はい。その分、人員を増やしましたので」

「それは素晴らしいことですね」


「フェルナンドさま。ラウラさま。突然、この様な休暇制度の提案にさぞや戸惑われたことと思います。何故、こんなにも早く、ご決断頂けたのでしょうか?」

「それは、ヘレナが月夜見さまの思いをあまりにも強く代弁し、訴えて来たからです。月夜見さまがお作りになった本も読ませて頂き、大変、感銘を受けたので御座います」

「ラウラさま。そうだったのですか。ありがとうございます」


「私は月夜見さまのおっしゃった「このままではこの世界は滅びる」という言葉を聞いて、初めて危機感を抱きました。カンパニュラ王国は七大国の中では一番人口が少ないので御座います。月夜見さまのお導きを頂きまして、人口を増やし、発展させなければならないのです」


「フェルナンドさま。その様に即断即決で改革を実行されていらっしゃるのですから、必ずや、この国は発展されることでしょう」

「月夜見さま。ありがとう御座います」


 そして、お母さま達やお姉さま達が試着を終え、下着を着けた上でドレスを着てサロンへと戻って来た。


 お母さま達は勿論、皆、美しいのだが、お姉さま達がとても大人っぽくなって少し驚いた。

「お姉さま達は、大人の女性になられましたね」

「嬉しいです。ありがとうございます」


 あ!いかん。その後ろで今回ぎりぎりの発育不足でブラジャーを作ってもらえなかった、月華げっか結月ゆづき紗月さつき姉さまが明らかに不満そうな顔をしている。

 余計なことを言ってしまったな。




「ジェマ、サンドラ。この前、話していた生理用品のことで相談があるのです。パトリシアに教えてもらったサボテンのジャレスが使えそうなのです。今日、見本を持って来ていますので見て頂けるでしょうか?」

「拝見致します」


「すみませんが、お皿と水を持って来て頂けますか?」

「はい。こちらに」

 すぐに侍女が用意してくれた。


「これは、日陰干しにしたジャレスの葉の中身です。これをお皿の上に置きます。続けて水を注ぎます。見ていてください」

「うわぁ、水をどんどん吸っていきます!」

結月ゆづき姉さま、それを持ち上げて、水が漏れ出て来るか見せてください」

 結月姉さまが恐る恐る指でつまんで持ち上げる。水は垂れて来ない。


「吸われた水が出て来ません!」

「はい。ですので、綿わたの代わりにこれを布でくるんであてがえば良いのではと」

「どんな布地が良いでしょうか?」

「そうですね。衛生的に良いのは、綿わたで紡いだ糸で編んだ布。だと思います」

「それですと、真っ白な布になります。血の色が目立つのではないでしょうか?」


「はい、その通りです。是非毎回、血の色を確認して欲しいので目立つ白地の方が良いのですよ」

「な、何故、血の色を確認しなければならないのでしょうか?」

「はい。前にご説明しましたが、生理で流れ出て来るのは血だけではなく、子宮の内膜も一緒に出るのです。その色がいつもと違う色やねばりがあった時には神宮に診察に来て欲しいのです。その様に異常を知ることができるのです。このことは本にも記してありますよ」


「では、綿の布地でくるむとして、どれ位の大きさや厚さにするのが良いかは、試作して実際に私達で使って試してみましょう」

「はい。そうして頂けますと大変、助かります」

「では、私の方で作ったジャレスを干したものも渡しておきますね」

「ありがとう御座います」


「では、今日はこれで戻りましょうか。追加の下着の注文の方もよろしくお願いします」

「かしこまりました。本日はありがとう御座いました」


「あ。私は一度、グロリオサ服飾店に行ってみたいのですが、このまま同行させて頂いても構いませんか?」

「では、月夜見が戻るまでここで待っていましょうか?」

「お母さま。私は瞬間移動で帰れますので、先に船でお戻りくださいませ」

「あぁ、そうでしたね。では先に戻っていますね」


 今後は直接、グロリオサ服飾店に行って試作品の状況確認をしたいのだ。一度行っておけば瞬間移動でいつでも行ける様になるからね。


 主のアリアナ、ジェマ達と共に六人乗りの小さな船で店へと向かった。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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