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32.幸子との結婚式

 ミラとの初夜を迎えた翌朝、朝食を頂きながら皆に発表した。


「皆、報告があるんだ。ミラは昨夜、前世の記憶を取り戻して能力を授かったよ。もう瞬間移動以外はほとんどできる様になったんだ。名前は詩織。ポエムの詩に織物の織るという字だ」

「詩織なのね。良い名前ね」


「そして、詩織の人生は紗良と同じ、日本で二十五年、こちらでも二十五年だ。保育園の保育士だったそうだ。死因は交通事故。暴走車から園児を守って亡くなったそうだ」

「まぁ!責任感が強いのね!あ!それより母性かしらね」


「そうだね、琴葉。詩織は幼い子の養育については、保育士としてもこの世界での母親としても十分な経験があるということだね」

「では子育てのことなら詩織に相談すれば良いのね。助かるわ!」

「えぇ、陽菜、何でも聞いてくださいね」


「それと結婚式なのだけど、幸ちゃんとの式が終わった一か月後にネモフィラ王城で挙げるからね。詩織のご両親には婚約の書簡を送ろう」

「ありがとうございます」


「式では、大広間の壇上に八人全ての妻にウエディングドレスを着て上がってもらうよ。結婚の宣言をするのは、紗良、陽菜と詩織だ。でも桜と花音もネモフィラ出身者として、ご家族のために紹介はするからね」


「舞衣と幸子は肩書の紹介はするよ。でも琴葉と陽菜は、特に紹介しないからね」

「はい。それで構いません」

「私もその方が良いです」

 琴葉と陽菜が安心した表情となった。


「アンナマリーとクラウスは、壇上の隅に立っていてくれるかな?」

「え?お城の大広間の壇上に上がるのですか?」

「そうだよ。アンナマリーの可愛さに、誰かに見初められてしまうかも知れないね!」

「え!そんな・・・どうしましょう!」

「アンナマリー。まだ早いですよ!」

 おませなアンナマリーを詩織は母親の顔でたしなめた。


「そうだ!アンナマリー、クラウス。この月の都の下にある神宮には学校もあるんだ。普通は十歳からだけど、ここでは平民しか居なくて、同じクラスで一年生から五年生だけなんだ。良かったら一年生から入っても構わないよ。行きたいかな?」

「え?私はまだ、九歳なのですが学校に行っても良いのですか?」

「うん。早い子は七歳から学んでいるんだよ」


「では僕も学校に行けるのですか?」

「あぁ、良いよ」

「是非、行きたいです!」

「僕も行きたいです!」

「よし、では二人ともすぐに入学の手配をしようね」

「ありがとうございます!」




 幸子との結婚式の日となった。僕たちはイベリス王城に集まった。

妻たちは各々、婚約の時のカラードレスやお気に入りのドレスで出席した。詩織の子は舞衣のお母さんと一緒にお留守番だ。


 幸ちゃんはウエディングドレスを着て花音にメイクをしてもらった。

まだ、十五歳になったばかりだが、見た目では十代後半の落ち着きと美しさがある。プロポーションも桜と同じくらい胸が大きいのにウエストは細くて完璧だ。


「幸ちゃん。今日は特別に美しいね」

「月夜見さまもです。意識を保つのが大変です」


「また沢山の失神者がでるのでしょうね・・・」

「花音。それはもう仕方がないよね。僕も気にならなくなったよ」

「えぇ、お気になさることは御座いませんよ」


 そこへ幸ちゃんの両親とエレーナ王妃、弟のアルベルトと春月しゅんげつが入って来た。

「まぁ!シンシア!何て美しいのでしょう!これが神の美しさなのね!」

「本当に!神々しいものがあるね。シンシアおめでとう!幸せになるのだよ」

「はい。お父さま、お母さま。お世話になりました。今までありがとうございました」


「お姉さま。おめでとうございます。国のために漢方薬工場を創ってくださり、ありがとうございました。しっかりと受け継いで参ります」

「えぇ、アルベルト。春月としっかりね」

「お姉さま。ありがとうございました。お兄さまとお幸せに!」


「春月。ありがとう。アルベルトはまだまだだけど、あなたが居るから安心だわ」

「はい。お任せください。たまにはお顔を見せてくださいね」

「えぇ、工場の様子は確認させて頂きたいわ。遊びに来ますね」

「いつでもお待ちしております」


「皆さま、式のご用意が整って御座います!」

 皆で大広間へ移動した。壇上には、既に桜たちが並び立っていた。


 宰相さいしょうが開式の挨拶をする。

「皆さま。これより、シンシア イベリスさま、天照家月夜見さまの結婚式を執り行います」


 イベリス王が結婚の宣言をする。

「皆の者、よく来てくれた。そして天照さま、月夜見さまの奥方さま。ようこそお越しくださいました。ここに我が娘、シンシアと月夜見さまの結婚を宣言させて頂きます」


「うぉーーっ!おめでとうございます!」

「シンシアさまーっ!おめでとうございます!」

「月夜見さまーっ!おめでとうございます!」


 イベリス王国はユーストマ王国を併合したので貴族の数が多い。幸ちゃんが気を利かせてくれて、これら大人数の貴族たちからの祝辞は辞退させて頂いた。その代わりに僕から挨拶をしてくれと頼まれた。


「皆さま。初めてお目に掛かる方も多いと思います。月夜見です」


「私とここに並び立つ妻はシンシア王女を含めて、全員が異世界からの転生者であり、千五百年前の太古の神の生まれ変わりでもあります」


「シンシア王女は、前世において薬師くすしとして漢方薬を作っていたのです。その異世界の知識と能力を用いて、この度この国で漢方薬の製薬工場を創業いたしました。これは、王子殿下であるアルベルト殿が私の姉である春月と結婚し、この国の基幹産業としていってくれることでしょう」


「この国はユーストマを併合し、大きくなりました。そして漢方薬製造という基幹産業も手に入れました。今後益々、発展されることでしょう」


「ですが、国と利益が大きくなれば良いというものでもありません。そこに暮らす人々が平等に幸せでなければ、またユーストマの様な末路を辿ることとなるでしょう」


「イベリス殿、アルベルト殿、宰相閣下。ユーストマと同じ過ちを犯さぬ様、互いに見張り、互いに意見をして、正しい道を進んでください」


「私は、シンシアと春月より、常に情報を頂いて見守って居りますよ」


「月夜見さま。ありがたいお言葉。肝に銘じ、感謝を申し上げます」

「この様な祝いの席で固いお話しをしてしまい、申し訳御座いません。これからはお酒と食事。それにダンスですね。皆さんでお楽しみ頂ければと思います」


「うぉーっ!月夜見さまーっ!」

「ありがとうございまーす!」


 大広間ではダンスの音楽の演奏が始まった。

「幸ちゃん。踊ろうか」

「はい。月夜見さま」


 大広間の中央で、ふたりは息の合ったダンスを披露した。

「月夜見さま。先ほどの挨拶。素敵でした。ありがとうございます」

「いや、結婚式でする挨拶ではなかったと反省しているよ」


「良いのです。ユーストマを併合して初めて、貴族が一同に会する場なのですから、あの様なお話の方が適切なのです」

「そうかい?それならば良かったのだけど。でも幸ちゃんはいつでも僕の味方だし、僕をおだてて持ち上げてくれるからな・・・」


「そんなこと・・・私はいつでも月夜見さまのことを考えているだけです」

「そこだよ。幸ちゃん。時には厳しく意見してくれて良いのだからね」

「え?でも月夜見さまがお間違いになることなど、ほとんどないのですから・・・」

「それは買いかぶり過ぎだよ。僕だって間違えるし、失敗もするさ」


「でもね。そんな幸ちゃんが僕は大好きだよ。いつもありがとう」

「そんな・・・私の方こそ、いつも気に掛けてくださって。愛を感じています。ありがとうございます。私は幸せ者です」

「幸ちゃんが幸せなら嬉しいよ」

「さぁ、そろそろ他の皆さんとも踊って差し上げてください」

「気を遣ってくれてありがとう」


 それから妻たちと順番に踊った。最後は詩織だ。詩織はまだ背が伸び切っていない。百六十八センチメートル位だ。でもハイヒールを履いているから、それ程の身長差にはなっていない。


「詩織。ダンスの勘は戻っているかい?」

「そうですね。この高いヒールがなければもう少し上手く踊れるのでしょうけれど」

「僕がフォローするから大丈夫だよ」

「はい。月夜見さまのリードが上手いので何とか踊れています」


「詩織。君は美しいね。観客も皆、君を見ているよ」

「いいえ、皆、月夜見さまを見ているのですよ!」

「ふふっ。でも僕は君だけを見ているよ」


「えぇ、私と踊る時くらいは、私だけを見て頂きたいですね!」

「やっぱり、妻が多いのは焼けるかい?」

「いいえ。私は最後。しかもバツイチですもの。偉そうなことは言えません!」

「そんな風に自分を卑下してはいけないよ。君は他の妻と比べて何も劣るところはないのだからね」


「まぁ!ありがとうございます!月夜見さまは本当にお優しいお方です」

「でもお城でこうして君とダンスを踊ることになるとは思わなかったな」

「えぇ、本当に。ダンスどころか妻になれるなんて・・・」


 最後に春月と踊った。

「お兄さま。全部お兄さまのお陰です。ありがとうございます!」

「春月。アルベルトとの結婚を決めたのですね」

「えぇ、彼は本当にしっかりしていて仕事もできるし、頭も良いのです。とても五歳年下とは思えないのです」


「そうですか。春月が気に入ったならばそれで良いのです。幸せになってくださいね」

「はい。お兄さまも。奥さまが八人にもなって色々と大変でしょうけど」

「いや、そんなことはないですよ。皆、愛する妻です。ひとりも欠かせないのです」

「お兄さま。素晴らしいわ!」


 そして、幸ちゃんとの結婚式は幸せに包まれて、あっという間に幕を閉じた。




 ネモフィラ王城での結婚式が近くなり、僕は詩織の実家に挨拶に行くこととなった。詩織は既に百七十五センチメートルまで背が伸び、十代後半の容姿となった。


 あまりにも可愛く、そして美しくなってしまい。僕は嬉しくて仕方がなかった。能力も完璧に使いこなす様になり、瞬間移動も任せられるようになった。


 今日は詩織の力で、小型船を実家のマイヤー家の玄関まで飛ばしてもらった。

「シュンッ!」


 約束の時間に出現すると、玄関には詩織の両親と姉妹や使用人が勢揃いしていた。

小型船から降りた詩織の姿を見て、一同が言葉を無くした。誰も声を発しない。


「皆さん、かなり驚かれている様ですね」

「あ!あ、月夜見さま。ようこそお越しくださいました!」

「さぁ、中へお入りくださいませ!」

 サロンに通され、家族に囲まれた。


「お爺さま、お婆さま。お久しぶりです」

「おぉ、アンナマリー、クラウス。久しいな。元気だったか?」

「はい。お爺さま、全てお父さまのお陰です」

「時に、お前たちの母はどうしたというのだ?」


「マイヤー殿。ミラは神になったのです。その姿は神の姿そのものですよ」

「か、神に?ミラが神になったのですか!」

「えぇ、ミラは私と同じ異世界からの転生者です。そして千五百年前の太古の時代の神でもありました。その時代にも私たちは夫婦だったのです」


「私と再会し、その時にミラの記憶が戻ったのです。そして神の能力に目覚め、その力によってこの姿へと変わったのです」

「では元々、ミラは月夜見さまの妻になる運命だったのですね?」

「ジョアンナ殿、そういうことだと思います」


「月夜見さま。ミラとの結婚式をネモフィラ王城で挙げるというのは本当なので御座いますか?」

「えぇ、他にもクルス子爵の次女ともうひとりの女性と三人一緒に式を行います」

「ネモフィラ王に認めて頂ける光栄まで頂けるとは、この上ない幸せに御座います」

「ミラはシュルツ家で酷い目に遭ったのですから、これからは幸せになって頂かないといけません」


「あぁ、シュルツ家は伯爵に降爵されたとか!」

「えぇ、私はミラが結婚する前に言っておきましたからね。ミラを泣かせる様なことがあれば許さないと」

「ありがとうございます。月夜見さまにその様に思って頂けるとは。ミラは幸せ者です」

「いいえ、ミラを妻にできる私が幸せ者なのです」


「ははーっ!ありがとうございます!」

「そんな、してください。遅れましたが、ミラを妻に迎えたいと思います。よろしいですかな?」

「はい!ありがとうございます!」


「ミラ!そのドレスと宝石はもしかして?」

「えぇ、ジークリンデお姉さま。月夜見さまから、この日のために贈って頂いたものです」

「何て素敵な宝石なのでしょう!ドレスも素晴らしいわ!」


「ジークリンデ伯母さま。私もお父さまにこのドレスと宝石を頂いたのです!」

「まぁ!アンナマリーも素敵よ!良かったわね。それにしても月夜見さまをお父さまとお呼びすることができるなんて・・・」


「そこよね。私もそこに反応してしまったわ。アンナマリー、月夜見さまをお父さまとお呼びするのはどの様な気持ちなの?」

「アンナ伯母さま。とっても幸せよ。言葉では表せないほどにお美しい神さまなのですから」

「アンナマリー、何をそこで恥ずかしいことを言っているんだい!」

「あ!ごめんなさい。お父さま!」


「アンナ殿。息子さんはその後如何ですか?お姉さまたちと誰の子を世継ぎにするかでもめたりはしていませんか?」

「はい。それは第一夫人の息子で良いのですから」

「それで良いのであれば良かった」


「あの、アルメリアさまはお元気でいらっしゃいますか?」

「えぇ、元気ですよ」

「ミラの結婚式の時にお会いできますでしょうか?」

「申し訳御座いません。結婚式に母は来られないのです。またの機会となりますね」

「そうですか。それは残念ですわ」


 しまった!ミラの姉のアンナはお母さんの友達だったのだ。すっかり忘れていたよ。結婚式の時にばれてしまうな。でもまぁ仕方がないか。


 そうして少しの不安を抱えながら最後の結婚式を迎えるのだった。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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