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21.余計なお世話

 琴葉に声を掛け、庭園を歩きながら村人たちに声を掛けて回った。


 アイヴァンが先生仲間と談笑していた。

「アイヴァン。学校の方はどうだい?もう慣れたかな?」

「はい。少しずつですが。でも本当に学校の先生になれるなんて思ってもみませんでした。全て月夜見さまのお陰です」

「そう。良かった。ところでアイヴァン。結婚は?」

「え?私が結婚なんて!もう三十歳ですし・・」


「あれ?三十歳?確かそれくらいの女性が・・・」

 そう言って周りを見渡すと・・・そうだ!

「サンドラ!ちょっとこっちに!」

「は、はい!月夜見さま」


 サンドラはアリアナや他の服飾店の店員たちと話していたが僕に呼ばれて小走りにやって来た。その後にアリアナたちがぞろぞろとくっ付いて来た。


「サンドラって何歳でしたっけ?」

「え?私は三十歳になりましたが・・・」

「独身ですよね?」


「えぇ、そうです。独身だったから結婚したジェマではなく私がここへ派遣されたので」

「サンドラ。このアイヴァンはどうですか?学校で歴史を教える先生なのです」

「え?」


 サンドラはアイヴァンの顔を見るなり真っ赤な顔になった。アイヴァンも突然のことに赤い顔をしている。


「二人とも三十歳で独身。この村で暮らすのですから、この後、二人でお話ししてみたら如何ですか?」

「まぁ!サンドラ!お似合いじゃないの!」

「ア、アリアナさま!そんな・・・」

「サンドラ、アイヴァン。三十歳なんてまだ若いのです。子だってこれから作れるのですよ」

「そ、そうなのですか・・・」


「ではジェマ、私たちは向こうに行っていましょう。サンドラ、しっかりね!」

 皆、二人から逃げる様に離れて行った。真っ赤な顔をした二人がそこに残された。


「月夜見さま。こうして見ると若い年齢層では男性が多いのですね」

「琴葉、そうだね。フロックスの誘拐事件でも奴隷から引き取った子も男性が結構居たからね」

「お見合いパーティーをしたら良いのではありませんか?」


「あぁ、それは良いね。でもどこで?」

「そうね、神宮の大広間で良いのでは?」

「そうだね。村人と月の都の使用人限定で独身者を集めてパーティーを開催しようか」

「あ。あそこに居るのは馬番の三人だね。声を掛けてみようか」


 エミリーとアミーも十五歳になった。そこへ新しく十六歳のスヴェンが入ったのだ。

「やぁ、みんな。三人はもう仲良くなった様だね」

「え!私、そんな・・・」

「あ!私もそんなこと・・・」


 エミリーとアミーは真っ赤な顔になった。あれ?スヴェンまで真っ赤だ。

「ん?スヴェン。真っ赤な顔をして。どうしたの?」

「あ、い、いえ、何でもありません」


『私、アミーを差し置いてスヴェンと付き合いたいなんて言えないわ』

『スヴェンと結婚したい!でもエミリーもきっとスヴェンのこと好きなはず。スヴェンはきっとエミリーを選ぶわ』

『あーどうしよう?エミリーもアミーも可愛いし。どちらかを選ぶことなんてできないよ』


『あぁ、そういうことか。琴葉、お節介を焼いても良いかな?』

『今更、そんなことを聞きますか?いつもしているではありませんか!』

『そうだったね』


「スヴェン。エミリーとアミー、二人とも好きなら二人とも嫁にすれば良いのだよ」

「え?月夜見さま?」

「エミリー、アミーもスヴェンが好きなのでしょう?お互いが良いなら三人で暮らせば良いのさ。決まったら言いなさい。世帯用の家を用意するからね」

「よろしいのですか?」

「勿論だよ」


「エミリー、アミー。良かったら僕と結婚してください!」

「スヴェン。良いの?」

「本当に?二人一緒で良いの?」

「二人が良いなら・・・僕は二人とも好きなんだ!どちらかなんて選べなくて」

「私は嬉しいわ。アミーは?」

「私もよ。エミリー」


「では決まりだね。あぁ、エミリー。ルーシー先生に話しておくんだよ。アミーはミモザたちにね」

「はい。ありがとうございます。月夜見さま!」


 先生と言えばブリギッテ王女は元気かな?あ、居た。フローラと一緒だな。

「ブリギッテ!」

「あ!月夜見さま。本日はおめでとう御座います」

「ありがとう。先生の仕事には慣れましたか?」

「まだ、慣れたとは言えませんが生徒に教えるのは楽しいです」


「そうですか。あ。シェイラ!ちょっと!」

 近くに居たシェイラがパートナーと子を連れていた。

「月夜見さま!本日はおめでとう御座います!」

「ありがとう!そちらはパートナーの方とあの時、お腹に居た子ですか?」


「えぇ、この子はベニート。九歳になりました。こちらが私のパートナーでアウロラです」

「初めまして、月夜見さま。アウロラと申します」


「シェイラ、アウロラ。こちらはユーフォルビア王国の王女でブリギッテとそのパートナーでフローラだ。学校の先生になってもらったんだよ」

「まぁ、王女殿下でいらっしゃいますか」

「もう、王女ではありません。月夜見さまに学校の先生として拾って頂いたのです」

「パートナーは女性なのですね」


「そうなんだ、ブリギッテもシェイラもパートナーが女性だからね。顔合わせしておきたいなと思っていたんだよ」

「あの・・・月夜見さま」

 振り向くとそこにはシルヴィーが居た。


「おや、シルヴィーどうしたんだい?」

「あの、私、ブリギッテさまの様に女性の方が好きみたいなのです」

「え?そうだったの?ではケイトがパートナーなの?」

「いいえ、ケイトは違います」


「そうなんだ。ではブリギッテ、シェイラ。シルヴィーとも仲良くしてあげてくれるかな?」

「はい。月夜見さま。ありがとうございます」


 ネモフィラの奴隷商から来たローラントが居た。彼は庭師になったのだ。その隣にプリムラが居る。プリムラはネモフィラ王城の庭園で勉強し、立派な庭師に成長した。この屋敷の庭園もプリムラが主導して設計してくれたのだ。


「プリムラ、ローラント。元気でやっているかい?」

「はい。月夜見さま。本日はおめでとう御座います」

「ありがとう。プリムラ。ローラントはどうだい?」


「えぇ、とても良くやってくれています」

「そう。ローラント。プリムラは庭師としてどうかな?」

「はい。知識が豊富で、美しい方です」

「美しい方・・・ほう。ローラントはプリムラが好きなのかい?」

「え!あ、は、はい!」


「はっきりしていて良いね」

「プリムラ。ローラントが好きだって。どうする?結婚するかい?」

「え?私なんて・・・」

「でもさ。庭師の二人が結婚して一緒に仕事をするのって素敵なことじゃないかな?」

「は、はい。それは・・・でも良いのでしょうか。私は捨て子なのですし」

「それならば僕は奴隷でした。月夜見さまに救って頂けなかったら未だに奴隷のままでした」


「プリムラ。ローラント。ここでは過去のことなんて関係ないし、身分もないのです。お互いに好きならば結婚して子を作って幸せに暮らしなさい。プリムラ、先程アミーも結婚することが決まったのですよ」

「え!アミーが?もしかしてスヴェンと?」

「あぁ、なんだ、知っていたのかい?」


「はい。アミーから聞いていました。エミリーも居るからって悩んでいて」

「スヴェンはエミリーとアミー、二人と結婚することにしたんだよ」

「まぁ!そうなのですね!」

「うん。だからプリムラも悩むことはありませんよ」

「はい!ありがとうございます」

「では、ローラント。後はしっかりね」

「はい!月夜見さま。ありがとうございます!」


「琴葉、何だかどんどん結婚できそうだね」

「えぇ、男性がこれだけ居れば、皆、結婚できるかも知れませんね」

「今、丁度皆が集まっているから話してしまおうかな」


 僕は屋敷の前に戻ると、皆に向かって声を掛けた。

「皆さん、ちょっと聞いてください」

 音楽が止み、皆が僕の前に集まって来た。


「皆さん、周りを見てください。私の屋敷の使用人と村には、若い男女が沢山居るのです。皆さんにはどんどん結婚して頂いて、子を作り、村を繁栄させて頂きたいと思っています」


「そこでなのですが、近々神宮でお見合いパーティーをしようと思っています。これは神宮の大広間で独身の男女に集まってもらい、お相手を見つけてもらうパーティーです」


「今、十四歳以上の独身で異性と結婚したい人は、前にでて来てもらえますか?あ、今、既にお相手が決まっている人は入らないでください」


 ざわざわしながら男女が前にでて来た。アイヴァンとサンドラは離れたところに二人で立っている。もう決まりなのかな?


 出揃ったところで数えてみると、男性が十五人、女性が二十二人だった。侍女のニナ、シエナは入っていないが新しい侍女のエーファとフィーネは入っている。


 シルヴィーはブリギッテやシェイラたちと一緒に居た。あ!そうだ。

「それと、もし女性の方で男性とではなく、女性同士で暮らしたいと思っている人が居ましたら、あちらのシェイラたちに声を掛けてください。色々と相談に乗ってくれますよ。シェイラ!良いかな?」

「はい!月夜見さま!」


「では、お見合いパーティー開催の日時は、屋敷の使用人棟と村役場の方に貼りだします。皆さん、まだ料理もお酒もありますから引き続き楽しんでください」


「月夜見さま。シルヴィーは嫁候補から外れたのですね?」

「花音。そうなんだよ。どうやらシルヴィーは女性の方が良いらしいよ」

「では、ニナとシエナがそうだとしても、もう一人は探さないといけないのですね」

「そうだね。まぁ、ニナとシエナだって分からないけれどね」


「それよりも、お見合いパーティーの参加者にレオが入っていませんでしたね」

「あ!そうだ、本人に理由を聞こうと思っていたんだよ!どこに居るかな?」

「人が多くて分かりませんね」

「桜に聞いてみよう」


『桜!聞こえる?』

『はい。月夜見さま。どうされましたか?』

『レオを探しているんだ。見なかったかい?』

『花音のお父さまと一緒に居ましたよ』

『ありがとう!』

『いいえ』


「花音、譲治殿と一緒に居るみたいだよ」

「あぁ、それならば厨房の方かも知れません」

 二人で屋敷の前から厨房の前へと歩いていった。すると大皿料理が並べられているテーブルの向こうに譲治殿とハンナ殿、それに武馬とエマと一緒に居た。


「レオ。ここに居たのか」

「月夜見さま、何か御座いましたか?」

「いや、お見合いパーティーの参加希望者の中にレオが居なかったからね。参加しないのかい?」

「私は、結婚はまだしなくて良いのです」


「月夜見さま。実は連日、役場に村の若い娘たちがレオ目当てに押しかけて来るのです」

「え?譲治殿、そうなのですか。レオ、どうするんだい?」

「僕はまだ、誰とも結婚はしないと言っているのですが・・・」

「何故、結婚したくないんだい?」

「まだ仕事を任されて始めたばかりです。まだまだやらなければならないことがあるのです。結婚なんてしている場合ではないのです」


「真面目だね。まだ結婚したくないのは分かったよ。では好きな娘とか、気になる娘も居ないのかい?」

「そ、それは・・・」

 ん?なんだ?好きな娘は居るのか?ちょっと心を読んじゃおうかな!


『ペネロペ先生が好きだけど、あんな年上の女性が好きなんて言えないよ・・・』

 え?ペネロペ?あぁ、ブリギッテがスカウトしてきた法律の先生だ。あれ?確か僕のファンだって言っていたよな・・・


「何だい?レオ。気になる女性は居る様だね」

「あ、いえ、僕なんて・・・まだ子供ですから・・・もっと仕事ができる様になってからで良いのです」


「ふーん。そんなことを言っていて誰かに取られてしまっても良いのかい?」

「え?取られる?」

「では、その女性に待っていてくれと言ってあるのかい?」

「いえ、そんなことは・・・」


「それなら相手はレオのことを知らないのだから、他の男性に求婚されたら結婚してしまうかも知れないじゃないか。男は複数の女性をもらうことは多いけど、女性が複数の男性と結婚した話は聞いたことがないからね。先に取られたら終わりだよ」

「そういうものなのですか・・・」

「後で後悔しない様にね」

 今度、ブリギッテにペネロペのことを聞いてみないとね。


 厨房の前には善次郎殿や月宮殿の厨房から派遣された使用人たちが集まって食事をし、酒を飲んで楽しんでいた。でもケイトが居ないことに気付いた。


「凛太郎、ケイトを知らないかい?」

「あぁ、ケイトならジーノと厨房に居ますよ」

「厨房に?二人だけ仕事をしているの?」

「仕事ではないと思いますよ」

「仕事ではない?」


「二人はお見合いパーティーの参加希望者の中に居ませんでしたよね」

「あぁ、そう言うことなのか!」

「えぇ、二人とも奴隷だった様で気が合ったみたいですよ」

「なるほど!」

「僕とトビアスはお見合いパーティーに参加しますよ!」

「うん。是非、お相手を見つけてね」


「月夜見さま。そんなに人の世話を焼いてばかりで!今日は誰の結婚式なのですか?」

「あ!琴葉、ごめん!」

「そろそろ、花嫁のところへ戻ってくださいな」

「はい。すぐに!」


 慌てて屋敷の前に戻った。桜、花音、舞依、幸ちゃんが待っていた。

「皆、放っておいてごめんね。これだけ皆が集まることもないと思って、つい、余計なことを・・・」

「それが月夜見さまなのですから仕方がありません」

「桜、ごめんね。ありがとう」


「人の幸せばかりお考えになるのですものね。でもそこが素敵なところです」

「花音、ありがとう」

「私はあなたのそんなところが大好きよ」

「舞依、嬉しいよ」


「この月の都と村に居る人たちは皆、月夜見さまの家族と同じなのですから、お世話を焼くのは自然なことです」

「幸ちゃん。ありがとう」

「そうね。私たちは皆、月夜見さまのことをよく理解していますよ」

「琴葉、ありがとう」


「でもさ。日本だったら一夫一婦制だから、結婚式だとふたりだけじゃない?こうして五人妻が居ると、ひとり一人とはイチャイチャできないね」

「それは今夜からひとりずつ順番で良いのですよ」

「そうか。そうだね」


「今日は皆で楽しむ日ですね。月夜見さま、スパークリングワインでも飲みませんか?」

「うん、そうだね。皆で乾杯しようか。あれ?ニナとシエナは?」


「恐らく、気を遣ってどこかに行っているのかも知れませんね」

「え?気を遣う?僕たちに?そうではなくて二人だけ寂しくなってしまっているということはないかな?」

「それはあるかも知れません」

「どこに行ったのだろう?」


「月夜見さま、鳥の電話の方法でニナの視界に入ればどこに居るか分かりますよ」

「あぁ、そうか!舞依。そうだね。やってみよう」

 僕は目を閉じて集中し、ニナの視界に入った。すると・・・


「うわ!」

「どうしたのですか?」

「居たよ。うまやだ。小白の目の前に居た。ニナの視界に入ったら目の前に小白の顔が見えてビックリしたんだ」


「厩に居たのですか。道理で姿が見えない訳ですね」

「ちょっと連れて来るよ。スパークリングワインを用意しておいてくれるかな?」

「はい。分りました。シルヴィーも呼んでおきます」


「シュンッ!」

「うわっ!」

「月夜見さま!」

「ニナ、シエナ。どうしたんだい。こんなところで」

「あ!い、いえ、その・・・」


「寂しくなってしまったのかい?」

「心配をお掛けしてしまって申し訳ございません」

「僕にとっては、ニナもシエナも家族だからね。一緒に祝ってくれるかな?」

「はい」


「ニナ。おいで」

 僕は腕を広げてニナを胸に迎え入れた。ぎゅっと抱きしめて頭を撫でた。

「いつも尽くしてくれてありがとう」

「いいえ、ありがとうございます」


「次はシエナ」

 続いてシエナを抱きしめて同じ様に頭を撫でた。

「シエナもいつもありがとう」

「はい。ありがとうございます」


「ニナ、シエナ。皆のところへ戻ろうか。ワインで乾杯しようと二人を待っているんだよ」

「あ!すみませんでした!」

「良いんだよ。さぁ、ニナ、こちらに」

 ニナとシエナを両脇に抱いて皆のところへ瞬間移動して戻った。

「シュンッ!」


「あぁ、ニナ、シエナ。戻ったのね。さぁ、皆で乾杯しましょう!」

「はい!」

「さぁ、いつもの皆で乾杯しようか!」


「カンパーイ!」

「おめでとう御座います!」

「皆、おめでとう!」

「これで、皆は婚約者でなくて妻になったのだね」

「でも呼び方は変わらないですよね?」


「そうだね。紹介する時に婚約者と言っていたのが妻と言う様になるだけだね」

「月夜見さまの呼び方はどうしますか?」

「それなのだけど、考えたけれど月夜見さまは、やはり月夜見さまが良いのではと」

「私もそうです。他の呼び方は考えられないのです」

「きっと皆、同じですね。やっぱり月夜見さまは、月夜見さまです」


「舞依はそれで良いの?」

「えぇ、その美しい長い髪でまぁくんは似合わないわ」

「そう。皆がそれで良いなら、そのままで良いね」

「では、桜、琴葉、舞依、花音、幸ちゃん。今日から末永くよろしくお願いします!」

「月夜見さま。よろしくお願いいたします!」


 そして、幸せなガーデンウエディングは幕を閉じ、僕は五人の妻と夫婦となった。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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