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6.舞依との初夜

 舞依と初めての夜を過ごすことになった。


「舞依、お風呂に入ってシャンプーとコンディショナーを使うと良いよ。ドライヤーもあるからね」

「本当?あ!だからまぁくん。良い香りがするのね。コンディショナーの香りなんだわ」

「そうだね。さぁ、入っておいで」

「ありがとう!」


 舞依がお風呂から出てドライヤーで髪を乾かし始めた音を聞きながら、僕はお風呂に入った。その内にドライヤーの音は止み部屋の灯りが落とされた。風呂を出てベッドへ行くと舞依はベッドに入ってこちらを見ていた。


「舞依、入るよ」

「お待ちしておりました。月夜見さま」

「ふふっ、何だい?改まって」


「これからどう呼べば良いのかしら?まぁくんはその美しい容姿には合わないと思うの」

「他の婚約者たちも舞依が見つかってから一緒に考えるって言っていたよ」

「そうね。それが良いわ。でも今夜だけはまぁくんって呼んでも良い?」

「あぁ、良いよ」


「まぁくん。抱いて・・・」

「もう、大丈夫なの?」

「生理は来ているわ。胸はまだ発育途中の様だけど・・・」

「すぐに大きくなるよ」

「まぁ!嬉しいわ!」


「舞依。また逢えて本当に嬉しいよ。それもこんなに美しく、可愛くなってしまって」

「まぁくんもよ。ちょっと美し過ぎるけど。でも好みだわ」

 僕たちは抱き合ってキスをした。それは濃厚で甘く、そして何故か懐かしさを覚えた。


 前世の記憶を辿たどりながら僕たちは愛し合った。

どんな風にしたかなんて具体的には覚えていない。でもお互いに分かり合っているかの様に求め合い、そして結ばれた。


「あぁ、舞依。この日がまた来るなんてね。本当に幸せだ。愛しているよ。舞依」

「あぁ、嬉しい。まぁくん。まぁくん。愛してる。まぁくん!」


 やはり舞依もだ。何度も何度も繰り返し絶頂に達してしまう。

「まぁくん、初めてだというのにどういうことかしら?」

「うん。何だか、皆、そうなるみたいだね」


「婚約者とは皆、こうなっているのね」

「あ。ごめんね」

「良いのよ。つらい前世の記憶があるあなたを支えてくれた女性も居るのでしょう?」

「うん。そうなんだ」


「でも、今は私のことだけを考えて!」

「うん。愛しているよ」

 そして終わりがないかの様に求め合った。


 朝、目覚めると美しい髪をした舞依が眠っていた。僕は我慢できずに頬や唇にキスをしていく。すると舞依はゆっくりと目を開き笑顔になった。

「あぁ、なんて愛おしい人なの・・・」

「舞依・・・心から愛しているよ」

「私もよ。愛しています・・・」

 そしてふたりは再び始めてしまう。




 朝の鍛練を終えて朝食をすませると、花音は舞依を自分の部屋に呼んで化粧品や生理用品を渡した。


「化粧品もあるのですね。でも私、高校生になって病気になったから、まともにお化粧なんてしたことがないのです」

「そうなのね。私も高校三年生の時に白血病が分かって二十歳で死んだの。でも高校三年生の時にコギャルデビューしてカフェでバイトをした時にメイクを教えてもらったのよ。舞依にも教えてあげるわ」


「ありがとう。でもコギャルデビューってことは、花音さんは東京の人だったの?」

「えぇ、そうよ。舞依と月夜見さまは前世では二十五歳で亡くなったのよね?私は五年早く死んで、こちらで五年早く生まれたの。舞依とは同い年だから「さん」は要らないわ。皆、名前だけで呼び合っているの」

「分かったわ」


「シュンッ!」

「ほら、これがコギャルの私よ。こっちが私の日本の家族なの」

「まぁ!可愛い!この写真は日本と手紙のやり取りで?」


「えぇ、始めは月夜見さまにお願いしていたけど、今では自分で両親と手紙のやり取りをしているわ」

「凄いのね!」

「簡単なのよ。だって自分の実家なのだからよく覚えているでしょう?要するにやりたいことを頭の中にはっきりとイメージすることが大切なの」

「イメージするのね?」


「えぇ、試しにこの化粧水が宙に浮かぶ様子をイメージしてみて」

「分かったわ。やってみる」

 すると化粧水の瓶がすぅーっと宙に浮かんだ。


「できたわね。では、同じ様に自分が浮かんでいると思ってみて。こんな風によ」

 そう言って花音はすすっと一メートル程、浮き上がって見せた。すると舞依も全く同じ様に浮かび上がり、花音の隣に並んで浮いた。


「凄いわ!すぐにできちゃった!それならば透視もできるのではないかしら?」

「透視?」

「えぇ、その壁を透視すれば廊下が見えるのよ。やってみて?」

「あ!見えるわ。ニナが歩いているわ」


 二人は宙に浮かんだまま廊下を歩くニナを見ていた。そしてゆっくりと着地すると、

「それならば身体の中も透視できるかしら?」

「身体の中?どうすれば良いの?」

「テレビや映画、保健の教科書なんかで見ているから人体の骨格や臓器、血管は想像がつくでしょう?あれをイメージして皮膚から入って皮下組織や脂肪、筋肉の次は臓器。って段々と中へ進んで行く様に見ていくのよ。私の子宮や卵管を診てもらえる?」


「やってみるわ。あ!皮膚・・・脂肪?・・・これが子宮!その奥に行ってこの細いのが卵管ね。思ったより鮮明に見えるのね」

「見えたのね!初めてで見えるなんて凄いわ。これで鏡越しに自分の子宮や卵管も見えるの。卵管に排卵する様子が見えれば、妊娠したい時に便利なの。赤ちゃんもはっきり見えるのよ」

「それは凄いわ。これで病気も治せるのね」


「全ての病気を治せる訳ではないの。今までに悲しい場面にも立ち会ったわ」

「そう。万能ではないのね」

「えぇ、でも月夜見さまは、この能力が前世であったならって何度も言っていたわ」

「まぁくんならばそう言うでしょうね」


「でも、舞依は凄いわ。あとは瞬間移動ね。毎日訓練を続ければ確実に能力は増して来るのよ。きっとすぐに瞬間移動もできる様になるわね」

「ありがとう!楽しみだわ」




 その後、皆でサロンに集まった。

「月夜見さま、舞依は凄いのですよ!もう念動力、空中浮遊、透視ができたのです」

「え?透視?身体の中も見えたのかい?」

「えぇ、花音の子宮や卵管も見えました」

「それは凄いね。ではこれから毎日訓練していこうね。瞬間移動はまだしないでおいてね」


「はい。分りました。あと、両親に手紙を送るのは私の成長が止まって自分で送れる様になってからにします」

「そうか。すぐに成長してしまったらご両親もまた驚いてしまうものね」

「えぇ、その理由が説明できませんから」


「さて、旅には何時いつから出ようか?」

「旅の衣装はいつでき上るのですか?」

「あぁ、それがあったね。明後日にはできると思うよ」

「では、その後からですね」


「月夜見さま、フェリックスさまと舞依の学校は大丈夫なのですか?」

「あ!流石、幸ちゃん。学校のことを忘れていたよ。フェリックス殿は?」

「私は三年間で卒業してしまいましたので大丈夫です」

「私はあと少しで卒業できるところでしたがどうしましょうか?もう行かなくても良いのですが」


「それなら、今後どこかで時間を作って卒業試験を受けてしまえば良いのでは?前世の記憶が戻っているからこの世界の学問は簡単でしょう?」

「えぇ、そうですね」


「月夜見さま、私はそろそろ国へ帰らないといけないのですが」

「そうだね。幸ちゃんは漢方薬工場の方を放ってはおけないよね。これからは僕が五日に一日は行くからね」

「はい。お願いいたします」


「では、これから舞依に皆のことを紹介してから解散しよう。フェリックス殿と水月姉さまは二人の時間を過ごしてください」

「え?二人の時間?」

 水月姉さまが真っ赤な顔になった。


「お姉さま。何をお考えか分かりませんが、その辺も含め、お二人でゆっくりしてください」

「あ、は、はい」

「さぁ、僕らは部屋へ行こうか。珈琲を淹れるよ」


 何故か小白がフクロウを頭に乗せたまま、当たり前の様な顔をして一緒に入って来た。なんだかなぁと思いながらも僕は皆に珈琲を淹れ、飲みながら話を始めた。


「ではこれから、舞依に皆を紹介していくね。まずは桜だな。桜のこの世界での名前はステラリア。ネモフィラ王国フランク ノイマン侯爵の娘で王宮騎士団の剣聖だよ」


「彼女は僕がネモフィラ王国に来てから護衛に付いてくれていたのだけど、ある時、彼女からお母さまの病気のことで相談を受けたんだ。お母さまは子宮筋腫しきゅうきんしゅだったのだけど僕が手術をして治したんだ。それでお父さまに感謝されて桜を生涯の侍従として捧げる。って言われてね」

「あの、それは父上がきっかけではありますが、私も望んだことですので・・・」


「うん。そうだったね。それから桜は懸命に僕に尽くしてくれて、前世から続く記憶に苦しむ僕を支えてくれたんだ。そして何時しか僕は桜を侍従ではなくひとりの女性として愛する様になっていったんだ」

 桜は真っ赤な顔をしてうつむいている。本当に控えめな女性だ。


「花音は、この世界での名前は絵里香 シュナイダー。アスチルベの先住民の末裔まつえい、譲治殿の娘だ。花音にはネモフィラの学校で出会ったのだけど、その日本人の顔に驚いてね。すぐにお家へ訪問してお父さまの譲治殿に先住民の話を聞いたんだ」


「その時丁度、僕の侍女が結婚で辞めることになってね。代わりに花音に侍女になってもらったんだ。花音は日本人顔で可愛くて、初めから惹かれていてね。恋に落ちるのも早かったね」


「それに花音は特別な能力を持っていて、五年毎にその五年後の未来の夢を見るんだ。弟が生まれ、ネモフィラのお爺さま、シュナイダー男爵に呼ばれて移住すること、僕の侍女になること、そして僕が十五歳になる時には、今建てている屋敷で、桜、花音、舞依、琴葉と結婚して一緒に暮らしていることも」

「え?私のことも?」


「そうだよ。それで舞依の顔がはっきりと分ったから捜索の旅に出たし、屋敷も建てることになったんだよ」

「では、私を見つけてもらえたのは花音のお陰なのね?」

「そうなるね」

「ありがとう!花音!」

「どういたしまして!お役に立てて嬉しいわ!」


「幸子はこの世界での名は、シンシア イベリス。イベリス王国の王女だ。舞依と同じで僕に結婚の申し込みが来て訪問したんだ。幸ちゃんはこの世界で知識がないのにも関わらず、漢方薬の葛根湯かっこんとうを作っていたんだ。これは間違いなく転生者だ。と思って記憶を目覚めさせたんだ」

「え?目覚めさせた?意図的にできるのですか?」


「舞依。君にしたのと同じだよ。キスしたんだ」

「まぁ!キスすると前世の記憶が戻るの?」

「誰でも戻る訳ではないし、キスではないことも。桜は違ったからね」

「違う?どうやったの?」


「いや、それは・・・その・・・セックス。したんだ」

「まぁ!人によって違うのね。戻らなかったのは?」

「あぁ、それはニナたちで試したら三人とも戻らなかったんだ」

「え?侍女に手を出したのですか?」

「あ!いや、キスだけだよ」

「キスだけで十分でしょう?」


「ニナたちは希望したのです。一生、月夜見さまにお仕えし、めかけになりたいと言っているのですよ」

 琴葉がフォローしてくれた。

「そうなのですか・・・妾・・・」


「それで・・・幸ちゃんはこれからイベリス王国で国を挙げて漢方薬の生産に取り組み、世界中の神宮へ輸出するんだ。彼女は知性溢れた女性で、ひたむきに努力をする姿を見て好きになったんだよ」


「それで最後は琴葉なんだけど・・・」

 琴葉も暗い顔になり、うつむいてしまった。舞依はその様子を目聡く察知した様だ。


「何か言いにくいのかしら?ところで琴葉さまって、月夜見さまに似ている様な気がするわ」

「あの、舞依。実は・・・琴葉は僕を生んだ人なんだ・・・」

「え?・・・ん?・・・」


「あの。私は月夜見さまの母親です」

「えーーーっ!母親?どういうこと?だって婚約者なのでしょう?」

 舞依は信じられないといった表情で両手を口に当てて動けなくなった。


「舞依。琴葉の前世は太古の時代の神さま、天満月あまみつつきさまで、僕はその夫だったらしいんだ。その後、琴葉に転生して日本で孤児となり、神社の巫女となった。そして不遇の事故に遭い、更にこの世界に転生したんだよ」


「僕の母は、ネモフィラ王国の王女として生まれたのだけど、親に無理やり結婚させられてね、それでも神のお告げによってお父さまとたった一度だけのセックスで僕を授かったんだ」


「僕は生まれた時から前世の記憶があって二十五歳の人格だったから、初めからお母さまを母親として見てはいなかったんだ。琴葉も同じ様に僕をひとりの男性として見ていてね、僕が前世の記憶で苦しんでいるのを生まれた時からずっとそばで支え、守ってくれていたんだ」


「そして今年になり、このフクロウが現れて琴葉の頭に触れた途端に過去の記憶の封印が解かれて、この様になったんだ。フクロウは僕と琴葉で子を授かることは運命だと言っているんだよ」


「舞依・・・こんな話、信じられないよね?」

「いいえ、私が月夜見さまを疑うことは絶対にありません。それに琴葉さまには、初めから何か神々しい何かを感じていました。この世界は天照さまが存在する前世では考えられないような世界なのですから・・・そういうこともあるのでしょう」

「では、舞依は私の存在を許してくれるのですか?」


「琴葉さま、許すも許さないもありません。月夜見さまを支えてくださった方なのですから」

「ありがとう。舞依・・・あと「さま」は不要ですから。皆、琴葉と呼んでいますので」

「分かりました。琴葉。これからよろしくお願いいたします」

「ありがとう。舞依」


「では、紹介はこれで全部かな」

「月夜見さま。小白は前世であなたが拾った柴犬の名前ですよね?」

「あぁ、小白はね、お母さまと初めて乗馬に出掛けた時、崖から落ちて骨折しているのを見つけたんだ。この子の親から頼まれて育てたんだよ」

「では、柴犬の小白の生まれ変わりではないのですね?」


『こはく まえも こはく』

『え?今、小白が話したのですか?』

『あれ?舞依にも小白の声が聞こえているの?』

『えぇ、聞こえているわ。やっぱり生まれ変わりなのね?』


『え?そうなの?小白、そんなこと言わなかったじゃないか!』

『いった ぼく こはく』

『え?それは・・・確かに』

『凄いわ!小白、私が分かるの?』


『まい しってる ある しってる』

『小白!私を覚えていてくれたのね!アルテミスのことも覚えているなんて!』

『え?ではこの前、馬になったアルに会って分かったのかい?』

『ある うま かわってた』


 なんてこった!小白は小白の生まれ変わりだったんだ!

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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