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23.ネモフィラの丘のひと時

 気分転換と幸ちゃんや桜ちゃんの紹介のため、ネモフィラ王国に戻ってきた。


 今日は皆でネモフィラの丘へ行く。この日は一日丘に居るつもりで昼食も用意した。

シンシアはイベリスとネモフィラで時差があるので前日に来てもらい客室に泊ってもらった。


 レオ以外の者は全て王城で船に乗り込み、レオの居る学校へ瞬間移動した。レオは玄関で待っていた。

「レオ。久しぶりだね。さぁ、乗って」

「は、はい」

「では、丘まで瞬間移動するよ」

「シュンッ!」


 人数が多いので、僕の力で強制的に船を地面に降ろした。

「さぁ、着いたよ。皆、降りてね。小白も降ろしてくれるかな?」

「小白はもう、走ってどこかへ行ってしまいましたよ!」

「あぁ、やっぱりね」


 ニナたちが絨毯をいつもの倍の広さに敷いてお茶の準備を進めた。

「まぁ!何て素敵な景色なのでしょう!」

「シンシア。ここは良いでしょう?毎年の様にここへ来て一日のんびり過ごすのですよ」

「素敵なピクニックですね!」


「あぁ!ピクニック!懐かしいです。両親と行きましたね・・・」

「ステラリア。思い出したのだね」

「はい。まだ小さかった頃、桜の咲く大きな公園へピクニックに行った思い出があります」


「私もです。皆さんとはかなり時代が違うかも知れませんが・・・」

「シンシア。そんなこと気にしないでね」

「はい。月夜見さま」


 ふと見ると、レオとエミリーが二人でぽつんと立っていた。

「レオ、エミリー。そこに座って」

「え?で、でも・・・ここにいらっしゃる方々は・・・」

「そうだね、フォルラン王子にシンシア王女、貴族も居るけれど、皆、僕の家族だからね。このネモフィラの丘に居る間は身分なんて気にしなくて良いのですよ」


「さぁ、座って。お茶を飲んでお菓子を食べましょう!」

「レオ。エミリー。私は月夜見さまの婚約者だけど平民なのよ」

「え?平民!絵里香さまが平民?それで月夜見さまと結婚されるのですか?」

「えぇ、そうよ。驚いた?」

「はい。驚きました!」


「ふふっ。これから先、月夜見さまと一緒に暮らしたら身分なんて関係ないことが分かって来ると思うわ。あなた達は今、できることを精一杯やっておくのよ」

「はい!分かりました」


「レオ。学校の勉強はどうだい?ついて行けているかな?」

「はい。大丈夫です。今年中に三年生まで終わらせます」

「え?そんなに?あまりこんを詰めない様にね。たまには息抜きしているかな?渡したお金は使っているかい?」

「あ!はい。この前、本を買わせて頂きました」


「本?何の本か聞いても良いかな?」

「はい。税と政治についての本です」

「え?税と政治?レオはそういうものに興味があるの?」

「はい。面白いです」

「そ、そうか・・・それは素晴らしいね」

「ありがとうございます」


「エミリーは馬番の仕事には慣れたかな?」

「はい。うまやの仕事だけではつまらないので、厩舎きゅうしゃのお手伝いもしています」

「月夜見。エミリーはアルも乗りこなしているのですよ。世話も任せているの」

「あぁ、アルの世話もしてくれているんだ。エミリーありがとう」

「はい。お任せください」


「月夜見。先日父上から平民への教育について聞いたよ」

「あぁ、そうなんだ。僕の作った本の知識を平民にも広めて欲しいんだ」

「うん。任せてくれ。柚月さまと一緒に神宮と学校、役場をひとつの施設にしたものを全ての領地に作ろうと思うんだ」


「それは素晴らしいね。僕の方でも、シンシアと一緒に漢方薬を大量に作って行くつもりなんだ。宮司が居なくても巫女を教育して薬の扱いを学ばせれば、ある程度の病気には対処できるはずだからね」


「それはありがたい!シンシア殿下。是非よろしくお願いします」

「はい。フォルラン殿下。ご期待に沿えます様、努力致します」

「まぁ!次の世代がすでに頼もしいことね。素晴らしいわ」


 僕はお母さんに念話で話し掛ける。

『お母さま。その後、ニナたちに変化はないですよね?』

『えぇ、気付く範囲では変わったことはないわ』

『お母さま自身は如何ですか?何か変化はありませんか?』

『最近、どこへ行っても若いとか若返ったと言われる様になったわ』


『そうでしょうね。ステラリアもルピナス王国で十代だと思われていましたから。お母さまも十代に見えますよ』

『そう?それならば月夜見の妻になってもおかしくはないわね?』

『あ、あぁ・・・それは・・・』


『それはそうと、マイのことですけど、ステラリアや絵里香、それにシンシアも、月夜見とキスをするまで前世の記憶はなかったのですよね?ではマイを見つけたとして、どうやってあなただと分からせるのですか?いきなりキスはできないでしょう?』

『あ!そう言えばそうですね。急に現れた男が訳の分からない前世の話をしだしたら、怪しい男だと思われ兼ねないですね』


『だから、ステラリアはどうやって前世の記憶を取り戻したのかを聞いたのですよ』

『そういうことですか。実はステラリアと性交をしていて、彼女が絶頂に達した瞬間に思い出した様なのです』

『まぁ!そんな方法で?それでは益々、マイには使えないではありませんか』

『そうですよね・・・どうしたら良いのでしょうか?』


『でも、月夜見を目の前にして好きにならない女性なんて居るのかしら?』

『それは分かりませんよ』

 お母さんと話していると段々、藪蛇やぶへびなことになってしまうな。

『お母さま。ちょっとシルヴィーと話してきますね』

『えぇ』


「シルヴィー、その後はどうだい?ニナとシエナとは上手くやっているかな?」

「あ!月夜見さま。ニナさまもシエナさまもとても良くしてくださるのです」

「何かつらいことや困っていることはないかな?」


「いいえ、毎日が楽しくて仕方がないのです。侍女の仕事はそれほど忙しくないですし、乗馬を教えてくださり、湖やこの丘へ遊びに来て、とてもお仕事とは思えません」


「その上、お休みも沢山頂けて異世界の服にシャンプーやコンディショナー、ドライヤー、化粧品に素晴らしい生理用品まであるのです」

「では、困っていることはないのですね?」

「はい。幸せ過ぎて困っているかも知れません」


「ふふっ。面白いことを言うね。ケイトに聞かせてやりた・・・あ!今日、ケイトを連れて来るのを忘れてしまった!」

「え?ケイトも?」

「今から連れて来るよ!」

「え?今からでございますか?」


「皆!ケイトを連れて来るのを忘れてしまったから連れて来るね」

「シュンッ!」

「あーっ、行ってしまわれた!」


 僕は月宮殿の中に瞬間移動して来た。

「あ!お兄さま!どうしたのですか?」

「あぁ、水月すいげつ姉さま。ケイトをちょっと連れ出したいのですよ」

「ケイト?あぁ、お兄さまが料理の修行をさせている娘ですね。厨房にいるのではありませんか?」

「そうだね。行って来るよ」


 厨房に行って見渡してみるがケイトは見当たらない。

「こんにちは。ケイトは居ますか?」

「月夜見さま。ケイトですか?奥に居ると思います。少々、お待ちください」

 厨房係の巫女が奥の方に居たケイトを連れて来てくれた。


「月夜見さま!どうされたのですか?」

「やぁ、ケイト。久しぶりだね」


 厨房係の巫女に声を掛ける。

「今日、ケイトを夕方まで連れ出しても良いですか?」

「月夜見さまのお申し付けでございますから、勿論構いません」

「では、夕方には戻りますので」


「ケイト。厨房の衣装以外の服って何か持っているかな?」

「はい。部屋着ならございますが」

「では、急いでそれに着替えて来てくれる?」

「かしこまりました」


 ケイトは自分の部屋へ走って行き、あっという間に着替えて再び現れた。月宮殿の使用人が着る質素な衣装だった。


「ケイト、今からネモフィラ王国のシルヴィーのところへ行くからね」

「本当ですか!」

「うん。今から瞬間移動するからね。ちょっと抱きつくけど良いかな?」

「え?そんな・・・私なんか・・・」

「良いからさ」

 ぶつぶつつぶやくケイトに構わず、ガッと抱きしめて瞬間移動した。


「シュンッ!」

「うわぁ!ここは?あ!何てきれいな景色なのでしょう!」

「ケイト!」

「あ!シルヴィーさま!」

「うわぁ!ケイト!元気だった?」

「はい。私は大丈夫です。シルヴィーさまは?」


「私もよ。ケイトはしっかり食べているのね。前よりふっくらして女の子らしくなったわ」

「十五歳らしく見えますか?」

「そうね。それにはもう少し食べた方が良さそうよ。でもちゃんと食べさせてもらえているのね?」

「はい。美味しいものばかりなのです。皆さん、優しくしてくださるし、お料理も楽しいのです」

「そう。それは良かったわ!」

 シルヴィーとケイトは手を取り合い、笑顔で喜び合った。


「シルヴィー、ケイト。そろそろお昼を食べようか」

「あ!はい。私が皆さまに配膳いたします」

「うん、頼むね。ケイトの分もね」

「はい。ありがとうございます」


 シルヴィーとケイトは久しぶりに再会し、とても楽しそうにピクニックを楽しんでいた。

お母さんは、ステラリアと絵里香と三人でこそこそと何か話している。良からぬことでなければ良いのだが。


「シンシア。あ!あれ?シンシア少し背が伸びたかな?」

「あ!お分かりになりましたか?最近どんどん背が伸びているのです」

「そんなに?」

「はい。靴や下着は二週間で合わなくなってしまうのです」

「そうだよね。前に会った時と比べて明らかに大きくなっているよね」


 初めて会った時は十一歳の少女だった。身長は百四十五センチメートル位だったと思う。でも今は百五十センチメートル以上ありそうだ。


「もしかして、ブラジャーも着ける様になったの?」

「はい。お母さまが使いなさいっておっしゃるので」

「ということは、子供になって行くことはないということか・・・」

「はい?子供になる?」


「あぁ、実はステラリアとお母さまが、若返っているんだよ。前世の記憶や神の能力と関係がありそうなんだ」

「それは私も驚きました。ステラリアさまもアルメリアさまも十代くらいにしか見えないので」


「うん。それで、どこまで若返ってしまうのか心配していたんだよ。でも絵里香はあまり変わらないし、シンシアは逆に成長しているならば、十代後半くらいの若さで落ち着くという仮説が立てられるからね」


「では、私はこのままどんどん成長して、十代後半くらいの容姿になっていく可能性があるのですね」

「うん。そうかも知れない。僕も成長は早かったんだ。ではたまにシンシアの身長とか成長の進み具合を念話で教えてくれるかな?」

「はい。分りました」

 僕は念話に切替えた。


『シンシア、これは念話だよ。ちょっと聞きたいのだけど、シンシアは僕と会う前から生理は来ていたかな?』

『はい。一年前から始まっていました』

『生理痛はどうかな?』

『それが前世の記憶が戻る前は生理痛が辛かったのですが、今は全く痛くならないのです』


『うん。前世のある人は皆、そうなっているんだ。病気にかからないし、体調もすごく良くなっているんだよ』

『はい。とても体調が良いのです』


『やはりそうなのだね。ではこれからのシンシアの成長は貴重なデータになるから、記録をしておいてね』

『かしこまりました』

『シンシア。口調が固いね。僕と話す時は敬語なんて使わなくて良いからね』

『それは・・・努力します』


 それから、皆で昼食を食べたりお茶を飲んだりして、夕方までゆったりとした時間を過ごした。そして帰る時間となった。


「シルヴィー。先にケイトを送って来るからね」

「ケイト。もっと沢山食べて美しい女性になってね!」

「はい。シルヴィーさま。ありがとうございます」

「ではケイト。行くよ」

「はい」

 僕はケイトを抱きしめて月宮殿へと飛んだ。


「シュンッ!」

「あ!お兄さま。ケイト。お帰りなさい」

「ただいま。ではケイト。料理をしっかり覚えてね。また遊びに連れて行くからね」

「はい!ありがとうございます」


「これから皆を送らないといけないので、これで失礼しますね」

「お兄さま。また来てくださいね!」

「はい。では!」

「シュンッ!」


「あ!もう、お戻りに。帰りの支度は整っています」

「うん。小白はどこかな?ちょっと念話で呼ぶからね」


『小白!小白!帰っておいで!』


 すると丘の向こうから小白が走って来た。

「月夜見さま。小白って狼なのですか?」

「シンシア。この世界に犬は居ないんだ。犬は元々、狼を改良したものだからね」

「そうなのですね」

「あれ?シンシア。小白と話してみたかい?」


「え?狼と会話ができるのですか?」

「あぁ、ごめんね。教えるのを忘れていたよ。念話で動物とも会話できるのですよ。では、城に戻ったらやってみましょう」

「はい」


「あれは何ですか?」

「ステラリア。どれだい?」

「小白の後ろから何か飛んで来ますよ」

「え?」


 ステラリアが指差す方向に目をやると、白くて大きな鳥が小白の後ろを追いかける様にしてこちらに向けて飛んで来る。


 な、なんだ!あれは?

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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