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22.ステラリアの前世

 ルピナス王城を後にし、三人は宿に帰った。


 晩餐で薦められるままに結構な量のワインを飲んですでに気持ち良くなっていた。

今夜はステラリアと眠る日だ。ふたりでお風呂に入った。


「ステラリア。今日、君は十代だと思われていたね」

「えぇ、驚きました」

「僕は毎日、穴が開く程、君を見ているから気がつかなかったけど、やっぱり他人が見たら十代に見える程に若返っているんだね」

「まぁ!穴が開く程なんて!ふふっ。気がついていましたけど・・・」


「それに胸の張りも絵里香やお母さまと同じくらいだ。でも大きさはステラリアが一番大きいね」

「大きいのはお嫌いですか?」

「いや。嫌いな訳ないでしょう!ただ、職業病と言って大きな乳房を見るとつい、乳癌という病気が気になって触り方が触診みたいになっている時があるんだ」

「えぇ、それも気付いておりますよ!」


「ごめんね。でも、もしかしたら能力のせいで病気にならないのかも知れないね」

「えぇ、生理痛も無くなりましたし、お酒を飲んでも残りません。それにとても体調が良いのです」


「それならもう触診は必要ないね」

「え!嫌です!もっと触ってください!」

「ステラリアってお酒が入ると大胆になって可愛いね」

 ステラリアは真っ赤になってしまった。十代の可愛い少女の様だ。


 それからベッドに移って愛し合った。そうだ。これだけしても疲れないし、翌朝眠くなったりもしないのだよな・・・


 そしてステラリアが僕の上に乗り、何回目かの絶頂を迎えた瞬間、

「あ!あぁ・・・あ!」


 その時、ステラリアの瞳が大きく見開き、そしてつぶやいた。


「あ、あなた・・・誰?ここは?え?何してるの?わ、わたし・・・お母さん!あ!あぁ・・・」

 ステラリアは僕と繋がったまま、僕に突っ伏す様にして意識を失った。


「え?嘘でしょう?今の反応って、前世の記憶が流れ込んで来た時の感じだったよね?えーっ!今更?これは参ったぞ。どうしようか。そうだ、絵里香を呼ぼう」


 僕は絵里香に念話で話し掛けた。

『絵里香!絵里香!寝ているかな?ごめん!起きてくれる?』

『んんっ・・・あれ?月夜見さまですか?どうしました?』

 あぁ、これは寝ていたな・・・


『絵里香、ごめん!ステラリアが大変なんだ。すぐに来てくれるかな?』

『え!ステラリアさまが?はい。すぐ行きます!』


 絵里香が走ってやって来た。

「月夜見さま!どうされたのですか?」

「あのね、その・・・ステラリアとセックスしていたら、ステラリアが絶頂に達した途端に別人になって気を失ってしまったんだ・・・」

「え?ステラリアさまにも前世が?」

「どうも、そうみたいだ・・・どうしようか?起きた時にこのままというのもね」


「とりあえず、お風呂で身体だけでも洗いましょう。寝間着を着せて寝かせておけば、目覚めた時にステラリアさまでなくなっていたとしても取り乱すことはないでしょうから」

「そうだね。ではそうしよう」

「月夜見さま。あとは私がやっておきますから大丈夫です」


 そう言って絵里香はステラリアを念動力で浮かせてお風呂へ運んだ。

風呂から戻ると、ステラリアを絵里香が寝ていたベッドに寝かせて僕らはお茶を飲みながらステラリアが目覚めるのを待った。


 やはり、一時間程してからステラリアは目を覚ました。寝室からでてきたステラリアに絵里香がお茶を淹れると、ステラリアは一口飲んでから話し始めた。


「月夜見さま、絵里香。私も前世で日本人でした」

「ステラリアもか!」

「はい。私、神奈川で家族と暮らしていました。九歳の時に交通事故で死んだのです」

「九歳って、まだ小学生だね」


「えぇ、友達が道路に飛び出したのを見て、咄嗟とっさに何も考えずその子を突き飛ばして、自分がトラックにかれてしまったのです」

「え?ちょっと待って。九歳で死んで今は二十八歳ということは、通算で三十七歳。それって、僕と絵里香と同じ歳ってことだよね?え?何年生まれだったのかな?」


「はい。私は1977年7月生まれです。名前は早乙女桜さおとめさくらです」

「あぁ、やっぱり・・・この三人は同い年だ!」

「本当ですか!そんな偶然あるのですね!」

「いや、これは最早、偶然ではないでしょう?きっと何かあるんだよ」

「ちょっと怖いですね!」


「そうか・・・それで、桜ちゃん。九歳なら小学生だから仕事はしていなかったよね。何か好きなこととか夢中になっていたことってあるのかな?」

「あぁ、それならば剣道に打ち込んでいました。実は父が剣道の道場を経営していたのです」

「早乙女道場ってことか。名前からして強そうだね!」


「はい。父は剣道八段ですから」

「それは凄い!現代の剣士だったんだね。それで桜ちゃんは?」

「私はまだ小学生でしたから、段はもらえませんでした。でも中学生の二段の男の子に勝ったことはありますよ」


「凄い!その才能をこの世界で開花させたんだね。それにその友達を助ける正義感も変わっていないね」

「そう言われると、性格は変わっていない様に思います」

「あれ?と言うことは、日本のご両親は健在なのでは?」

「あ!えーと、私が九歳の時にお父さんは確か三十四歳だったので、今は六十二歳でしょうか。お母さんは六十歳ですね。生きているかも知れません」


「それならばご両親に手紙を書くかい?住所や電話番号だって分かるのでしょう?」

「そうですね。事故の時に助けた友達にも手紙を書きたいですね。お願いできるでしょうか?」

「勿論だよ。山本に頼んで桜ちゃんのご両親に連絡を取ってもらおう」

「あの、月夜見さま。先程から、桜ちゃんって・・・」


「あ!なんか凄く気に入ってしまって・・・だって、髪の色も桜色だしさ!とても合っているなって思ったんだ」

「そうですか?」

「あ!そうだ!結婚したら屋敷では日本の名前で呼び合うのはどうかな?桜に花音に舞依に幸ちゃんだ」


「それ、良いですね!あ!でもアルメリアさまはどうしましょう?」

「あ!そうか。天満月あまみつつきって呼びたくないなぁ・・・」

「アルメリアさまは何か別の呼び名を考えましょう!」

「うん。そうだね!」


「え?では月夜見さまは?」

「確か、まぁくんですよね!」

「え?あ、あぁ・・・そ、そうだね・・・ちょっと恥ずかしいかなぁ・・・」

「では、月夜見さまをどう呼ぶかは、舞依が見つかってから妻たちで会議を開いて決めましょう!」

「それが良いわね!」


 翌朝、宿を出発する前に三人で剣術の鍛練をしていた。

「この鍛練もきっと、ステラリアが日本の道場で朝稽古をしていた名残でやりたくなるのでしょうね」

「あ!そうでした。毎朝、お父さんにしごかれていたのです!」

「やっぱりね」


「あのさ。ルピナス王国ではちょっと嫌なこともあったし、気分転換をしたいんだ。もうネモフィラの丘の花が咲いている頃だと思うので、一度戻って皆で行かないか?」

「良いですね!シンシアも連れて行きましょう!」

「そうだね。それとステラリアの前世のことも皆に伝えないといけないし、ネモフィラ王国に戻って騎士姿のステラリアの写真を撮ってご両親へ送ろうよ」

「それは良いアイデアです!」


「絵里香。今ならアイデアって何だか分かるわ!」

「そうだ。僕ら三人は同じ歳だから、絵里香もステラリアを呼ぶ時に「さま」を付けるのはやめにしないかい?」

「えぇ、そうして欲しいわ。絵里香、呼んでみて?」

「え?急に言われてもすぐには慣れないですよ!ステラリア!ふふっ!」


「そう言えばさ、日本で一番最近まで暮らしたのは、シンシアってことかな?」

「そうですね。十一歳ですもの。でも月夜見さまと一年しか違わないですね」

「もしかして、ステラリアは携帯電話を知らないのかな?」

「携帯電話?ですか?」


「うん。電話機が手の平サイズになって、持ち歩ける様になったんだよ。まだできていなかったね」

「はい。私は知りませんね」

「私は携帯電話ができたのは知っていましたけど、まだ買ってはいませんでしたね。使ったことはないのです」


「それにしても何故、1977年生まれがこうして三人も揃っているのだろうね」

「それは本当に偶然かも知れませんよ。シンシアは違うのですから」

「そうか。でも能力と若返りについては、やはり前世持ちであることが条件の様だね」

「そうするとシンシアって、まだ成長過程ですよね。このまま成長が止まってしまうこともあるのでしょうか」

「その辺は観察して行く必要があるね」


「さぁ、ではネモフィラへ戻ろうか」

「はい!」


 僕たちは舞依探しを中断してネモフィラ王国へ戻った。


 戻るとすぐに皆で部屋に集まった。シルヴィーはお休みだったが来てもらった。

まずは珈琲を淹れて皆で飲みながら報告をした。


「実は、ステラリアは僕や絵里香、シンシアと同じ様に日本人の前世を持っていることが分かったんだ」

「何故、今頃になって分かったのですか?」

「それは僕らにも分からないのです」


 皆の前でステラリアとセックスして絶頂に達したらそうなった。なんてとてもではないが言えなかった。


「僕とステラリアと絵里香は日本で同じ年に生まれたのですよ」

「では、マイもそうなのですね」

「はい、そうです」


「では、シンシアだけは生まれ年が違うのですね」

「お母さまもですよ」

「私のことはよく分からないので・・・」


「それが分かって、これから何か変わるのですか?」

「いいえ、何も変わりません。ただ、ステラリアの前世の両親に手紙を送ろうと思っていますけど」

「まだ、存命なのですね」

「えぇ、恐らく」

「あとで、手紙と一緒に送る写真を撮ろうと思います」


「お母さま。話は変わるのですが、そろそろネモフィラの丘の花が咲くのではありませんか?」

「えぇ、もう咲いていますよ。先日、ニナたちと行って来たのですよ」

「そうか、お母さまは瞬間移動ができるのでしたね」


「えぇ、月夜見が居なくて退屈ですからね。ニナたちに乗馬も教えたのです」

「へぇ、皆、乗れる様になったの?」

「はい。三人とも乗れる様になりました。小白と湖まで一緒に行ったのです」


「おぉ、そうか!それは良いね!新しい屋敷に行ったら好きな時に乗ると良いよ」

「ありがとうございます!」


「それでシンシアや、レオ、エミリーも連れて、ネモフィラの丘に行きたいのです」

「まぁ、大人数になりそうね。フォルランと柚月ゆつきも呼ぶでしょう?」

「そうですね。そうすると十二人ですね」


 皆の予定をすり合わせたら、ネモフィラの丘に行くのは三日後となった。


 それまでの間にステラリアには両親と友達へ送る手紙を書いてもらい、騎士姿と婚約の時に贈ったドレスと宝石で着飾った姿の写真、それに僕と並んで撮った写真を山本へ送った。


 山本には絵里香の時と同様にステラリアの両親に説明をして、手紙と写真を渡して欲しい旨の手紙と、山本と高島女史の結婚祝いとして白金貨二枚を贈った。桜ちゃんの両親の反応については二週間後に報告の手紙を引き寄せることとした。


 ステラリアも前世持ちだった。これで元日本人は五人目だ。

お読みいただきまして、ありがとうございました!

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