念願の自分だけのマイルーム
「そういえばお部屋、まだだったね!」
ソファーで先程ゆづりちゃんが入れてくれた砂糖とミルクたっぷりコーヒーを飲んでいると唐突にゆづりちゃんが話しかけてきた。
「はひ!」
少しうとうとしてたのもあって、ビクッとしちゃった。
「大丈夫…?」
ゆづりちゃんがまた心配そうな表情で私をみてきた。
「あ、大丈夫!です!少し眠くなっただけなので」
「そっか、少しここでお昼寝する?」
こんな高そうなソファーでお昼寝は最高かもしれない、でも汚したらとんでもないことになりそうなので丁重にお断りした。
「あ、お部屋、で大丈夫です」
「あ、ごめんごめん、じゃあお部屋案内するね!」
いつのまにかゆづりちゃんら私の荷物を片手(!)で抱きかかえた状態になっていた。
絶対重いので急いで後についていった。
先程の長い廊下にある一室に案内された。
"Kuruni Room"と書かれたドアを開けると
ホテルのようなお部屋がゆづりゆづりちゃんの手によって用意されていた。
「すごい…」
思わず息を飲む装飾。
壁はよくお金持ちの家にある間接照明がついており、高い天井にはシャンデリア、そして…
「ちゃんと、鍵がある」
私が養子に入る時、希望欄(絶対に通る訳でない)に書いた、「鍵付き」のお部屋だった。
「ここが来未ちゃんのプライベートルームだよ!ちゃんと空調もあるし、お化粧台とか肌凄く弱い子でも大丈夫な化粧品も準備したから、好きに使ってね!」
「え、なんで肌弱い事…」
これは誰にも言ってないはずなのに
「前施設で会った時発疹?が少しあったから、弱いのかなって!弱くなくても全部天然由来の成分だから身体に負担かからないから揃えたんだー!」
「そそっか」
なんか、ちょっとこわい。
「あ、鍵、渡しておくね」
そう言いながらゆづりちゃんは私に鍵を渡した。
金色で高そう。
「荷物、みられたくないものもあると思うから私一旦出るね!なんかあったらさっきのリビングにいるから!」
そう言いながらゆづりちゃんは私のお部屋を後にした。
急にシーンとした室内。
「落ち着かない…」
いままでの生活とは全く違う。
いままでは6人が2段ベッド3つでぎゅうぎゅうの部屋に詰め込まれていた。
髪引っ張られたり、ハサミで切られたり、お腹殴られたりするのは無くなったのはいいけれど、話し相手が居ないのがこれほど心に来るとは思わなかった…。
ふと鏡をみると…
そこには顔に「寂しいです」とバッチリ描かれた表情の私が居た。
「だめだめ来未、新しいか、家族のゆづりさ…、ちゃんに迷惑かけちゃだめだからね!」
そう鏡にむかって話しかけ、できる限りの笑顔で、ニコニコっとした。