自己紹介
リビングのドアをくぐると、廊下の広さに釣り合う、とても広いリビングルームが現れた。
天井にはロウソクを模したオシャレな照明が付いていて、リビング中央のあたりにはふかふかしてそうな大きなソファーが置いてあった。
「ホテルみたい…」
「今日からココが来未ちゃんの家だよ!」
いつのまにか夢咲さんが後ろに居て、思わずビクッとなってしまった。
「立ってるのもアレだから座りなよー」
そう言いながら、ソファーの座面をぽんぽんと夢咲さんが叩いた。
「はい」
私は言われるがままソファーに腰掛けた、身体を包み込むような柔らかさでとても心地いい触り心地。
「じゃあ、自己紹介タイムー」
そう言いながら夢咲さんが私の隣に腰掛けた。
私の事は全て養護施設から話がされているはずだ。
「あれ、私の事は全部養護施設の人からきいてるんじゃないんですか?」
とそのまま夢咲さんにきいてみた。
すると
「知ってるけど、来未ちゃんの口から聞きたいんだよね、質問もあるし」
と言われた。
そう言われてしまってはちょっと恥ずかしいけど自己紹介、するしかない、これからお世話になるし。
「わかりました」
「私の名前は九頭竜来未と言います、15才です、好きな物は特にありません、趣味は読書です、よろしくお願いします」
「よろしくね来未ちゃん!」
そう言いながら、夢咲さんは立ち上がり
「次は私の番ね」
「私の名前は夢咲ゆづり、21才だよ!魔法使いやってますっ!好きな物は甘いもの、趣味は色々あっていいきれません!来未ちゃんの新しい家族です!よろしくお願いします!」
家族…私はこの言葉がとても嫌いだった…。
本当の家族は私を置いていなくなってしまったから。
「どうしたの….?」
余程こわい顔をしていたのか、夢咲さんが心配そうな表情で私の側に座り見つめてきた。
「あ、いえ、夢咲さんの手を煩わせるわけには…」
そう軽く答えた。
「ゆづりって呼んで!」
一瞬戸惑う。
「夢咲さん…」
「苗字じゃだめ!ゆづりってよんでっ!」
「ゆ、ゆづりちゃん…」
「よし!合格〜!」
まだ、この生活に慣れそうにない。