煽り運転
2021.05.09 少し修正。
青吏は、運悪くこうなった事への憤りと不安を抱え、車を走らせていた。
「クソッ! しつこい!」
バックミラーに映る光が、青吏の車を追い掛け回している。
もう、十五分も。
前を走っていた遅い車を、何時ものように追い越しただけなのに。
それで腹を立てたのか、こうして、大きな音を鳴らしながら青吏を追い掛けている。
止まれと命令する声が聞こえるが、従ったらどうなるかを思えば、止まると言う選択肢は無い。
何処まで走れば、諦めるのか。
県境を越えてみようと思い付き、其方へと車を走らせる。
暫くすると、前方に、道を塞ぐように横向きに止まった車両が目に入った。
一瞬、この車をぶつけて隙間を開けて逃げようかと思ったが、怪我が怖くて仕方なく車を止めた。
後ろも塞がれたのが、バックミラー越しに見えた。
車を降りた男達が近付いて来る。
「免許証出して。免許証」
◇
その日、何時ものように法定速度を超えて車を走らせていた青吏は、前方に法定速度を守って走っている車を目にして、仕方なくスピードを緩めた。
そして、遅いと解らせる為に車間距離を詰めたり、パッシングしたり、クラクションを鳴らしたりした。
直ぐに退かないので、苛々しながら何度も。
追い越し車線は無かったが、広い路側帯があったので、其処を通って追い越し、バックミラーを見た青吏は驚愕した。
ルーフから赤色灯が現れたからだ。
そう。青吏が追い越したのは、覆面パトカーだったのだ。
サイレンを鳴らし追い掛けて来る警察車両から、青吏は15分以上逃げ続けた。
最後には、応援に駆け付けたパトカーに行く手を阻まれ、捕まったと言う訳だった。
「俺が何をしたって言うんだよ……!」
何故、追い越した車が運悪く覆面パトカーだったのか。
何をした所為で運が悪くなったのか。
青吏には、解らなかった。