ミルの大晦日
今日は大晦日、私達勇者にはあまり縁がないものである。
「そういえば今日は大晦日ですが、勇者様達はお出掛けにならないのですか」
私達が魔族を倒している旅に出ている時に、途中に街があったので、寄ってみるとそこの偉い人から泊めてくれる話が出たので、私達は宿に泊まっていた。
「そうなのですか俺達は魔族を倒すのが目的なので大晦日だって事を忘れてました」
ファオさんが偉い人と話しているとファオさんは嘘をついていた、この人は最近ずっと私に大晦日の事を話してきていたので忘れていたなんて嘘だ。
「さすが勇者様あなた方がいれば魔族なんて怖くないですよ」
「任せて下さい、魔族なんか俺達全員で滅ぼしてみせますから」
「ありがとうございます、それでは私はこれで失礼致します、今年最後の夜を楽しんで下さい」
そう言って偉い人が出ていくと、ファオさんが私に話しかけてきた。
「なあミル、本当に行かないのか、ここの祭りは楽しいって街の人に聞いたんだぞ」
「しつこいですよファオさん、私は今日は忙しくてやる事があるんです」
私が言うとファオさんの顔が少し変わった。
「悪かった、だけど俺達も一緒に旅をしている仲間だから、ここで絆を深めてもいいんじゃないかと思ったんだ」
「私の方こそ強く言い過ぎましたすみません」
私は謝るとファオさんが部屋から出ていってしまった、ファオさんが出ていくとルドさんが部屋に戻ってきた。
「今のはミルの言い過ぎだね」
「ルドさん今までどこに行ってたんですか」
「別にいいじゃないそんな事それより追いかけなくていいの?」
「すみません今日は本当に忙しいので」
私がルドさんに言うと、私は部屋から出ていき宿の厨房の方へと行く。
「すみません厨房を貸してもらって」
「いいですよ、それよりもそれは大切な人への贈り物ですか?」
「はい、うろ覚えなのですが私を助けてくれた人への恩返しで、毎年作っているんです」
厨房を貸してくれた人が聞いててきたので、私は答えた
「勇者様が恩返しなんて、その人は何者ですか」
「それは言えないですね」
私が作っていると時間を見るとあと少しで、今年も終わる。
「やっぱり今年も現れませんよね」
少しでもあの人に会いたいと思って、私は毎年これを作る事にした、だがそんな願いも叶わなかった。
「完成したけどこれは捨てるしかないよね」
厨房を貸してくれた人はもう家に帰り、あとは私だけが厨房に残って作った物を見つめていた。
「ミルそこでなにしてるんだ?」
するとファオさんが私に話しかけてきた。
「いいえなんでもないです」
私が作った物を隠すとファオさんが近づいてきた。
「それよりファオさん祭りに行ったんじゃないんですか」
ファオさんが部屋から出ていった時、私はてっきり祭りに行ったと思ったんだが。
「ミルが行かないから取り止めになったんだよ」
「そうだったんですか、すみません」
私は頭を下げて謝った。
「それはいいんだけど、なんだそれ」
「これは年越し蕎麦ですよ」
私は観念してみせた。
「まさか俺に作ってくれたのか?」
「いいえ違いますよ、だけど誰も食べないので、食べていいですよ」
「ありがとう、腹減って厨房を見に来たら、まさかミルの手作り蕎麦を食べれるなんてな」
私が渡すとその場でファオさんは食べ出した。
「食べたら、そこの洗い場に置いておいて下さい、後で片付けるので」
私はファオさんに言って厨房から外に出た。
「いつになったら会えるんだろう」
私が勇者になって魔族に会うことは多くあるが、あの人にはまだ会えていなかった、すると花火の音がした、どうやら今年が終わったみたいだ。
「大丈夫まだ時間は一杯ある、いつか会えるはず」
私は言って空を見上げた、そこには星空が綺麗に見えていた。
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