ポンニチ怪談 その2 禁ジラレタ遊ビ
見知らぬ街をさまよう連続少女殺人犯。一人で歩く少女を探しているうちにたどりついた公園で、遊んでいる少女をみかけ…
「ありがとうございましたー」
コンビニ店員の眠そうな声に見送られ、ノリユキは外にでた。日が落ちてだいぶたつというのに、空気がムッとして暑苦しい。
「少し早かったかな、もうちょっと時間をつぶしていれば」
ブツブツいいながら、住宅街を歩き回る。
「あんまり近所だとヤバいからな。かといってあんまり離れるのも不安だしな」
人気のない公園、駐車場、空き家、そういったものがないか探す。スマートフォンで検索してもいいのだが、履歴が残ると不味い。車も足が付く可能性がある。となると徒歩で現場にきて、その近くで処理したほうがいい。
「そもそも、捕まえられなきゃどうしようもないけどな」
くくっと低い声で笑う。猫や犬は難しくない、しかし人間の子供となると厄介だ。2回試みてノリユキはつくづく実感した。
一度目は一人で歩いていた小学2年ぐらいの女の子。服装からみて裕福な家庭ではない、後ろから抱え上げると穴のあいたスニーカーがスルッと脱げた。そっと拾って、目をつけていた空き家に連れ込む。暑いせいか両隣の窓は締め切っていた。もっとも、すぐに首をしめて大人しくさせた。夜中までたっぷりと楽しみ、丁寧に体をぬぐい、持ってきた洗剤や道具を使って自分の痕跡を消す。記念品はデジカメで撮った映像と、ちいさな下着。
二人目は暴れた、息の根をとめそこねたのだ。口を押えられ涙を浮かべながら抵抗されると余計興奮したが、見とがめられてはまずい。口にぼろ布を詰め込み改めて首を絞める。妙な高ぶりを覚えた。前と同じように処理し、つぶれたパチンコ屋の片隅に放置した。
失敗したら…みつかったら…。そうは思うが、あの異様な興奮が忘れられなかった。もう、やめられない、次を探さなければ。しかし、予定が狂った。
「みつかるのが早かったな、やっぱり埋めるべきだったかな」
この暑さで腐ったのか、死体の発見は意外に早かった。
「夜に抜け出してもわかんねーよーな親だし、連れ子なんだから別にいいだろ、って、あの父親、自分が手をつける気だったんで怒ったのか」
マスコミのカメラの前で涙を流しながら、早く帰れなかったことを娘に詫びる父親。残業で遅くなり、妻が夜勤で出掛ける時間に間に合わなかったことを後悔していると泣きながら話していた。
「そんなに金稼がなきゃいけないようなら、子供なんかつくるんじゃねーよ、バカ」
毒づきながら、夜の街をうろつく。
「猫とかなら親父がもみ消してくれたけど、人間じゃそうはいかねーな。下級庶民でも人権って厄介なもんがあるからな」
トーン
ふと、
音が聞こえた。
「なんだ、誰か…いるのか」
どこをどう歩いたのか、目の前には公園があった。周りを街路樹で囲まれ、古びた遊具がいくつかあった。街灯のいくつかは電球がきれているのか、うすぐらい。公園の真ん中の広場は幽かに明るい、そこに立っていたのは、
「女の子?ボール遊びか」
白いワンピースをきた女の子がボールをけっている。近づこうとすると、
「もう一人、いるのか」
一人の女の子はデニムのミニスカートだ。蹴られたボールをとりあげ、細い足のそばに置いて、こっちに蹴ってくる。
「ふ、二人か、どうする」
いっそ二人一緒に、いやそれは無理だ、でも、
下卑た考えをめぐらすノリユキのそばにボールが転がってきた。
「おにいちゃん、取って」
女の子の声に、ノリユキがボールに手を伸ばしてボールを取り上げようとしたが
「…、ひぃいいいいい」
まじまじと見た途端、ノリユキは悲鳴をあげた。
それはボールではなかった。
人の首、しかも
「お、俺、おれ、オレー」
短く刈った髪に苦悶に満ちた表情をうかべた、その顔はノリユキのまさにそれだった。
「ぎょええええ」
思わず顔を両手でおさえる。
「ま、まだ、ついてる」
いや、
頬から手が触れている感覚が、
消えた。
見える景色が、
変わった。
目の前にはスニーカーのつま先。
先に穴の開いた見覚えのあるスニーカー。
「そーれ」
頭に衝撃がはしる。回転しているのか視界が目まぐるしく変わる。
「うわわわ」
叫びながら落ちてゆくノリユキの首。
「もう一つー」
ワンピースの女の子の革靴の底がみえた途端、また宙にあがる。
「うげえええ」
地面に落ちた。左側に衝撃が走り、砂や石粒が顔や目に入る。
苦しそうにゴホゴホとむせぶノリユキの頭を女の子たちが見下ろしている。
「お兄ちゃん、楽しくないの?」
「変な遊びが好きなのにねえ」
楽しそうに笑いながら話す女の子たち。
「や、やめてくれ」
女の子たちに蹴られながら、ノリユキの首は悲鳴をあげた。
「やめてって」
「じゃ、違うのにしようか」
と、ワンピースの子が暗がりに指をさした。
首のないノリユキの体がよろめきながら歩いている。
「こういうのは、好き?」
女の子が手で何かをもって振り下ろす仕草をすると
グサアア、ドバッ
ノリユキの下半身、股間がざっくりと切り取られ、血が噴き出した。
「い、痛、いだああああ」
体と切り離されているというのにノリユキの頭は耐えがたい痛みを感じる。
手を広げて、のたうちまわりそうなほどの痛みだが、首だけなのでゴロゴロと転がるしかない。
「おもしろくない?お兄ちゃん」
「こういうこと、したいんでしょ」
「やめてっていったのに、したんだよね」
「なんにも聞かれずにやられたんだよ、私」
「私たちにしたのに、自分は嫌なんだ、ず、るーい」
「お兄ちゃんじゃない、オジサンだよ、変態オジサン」
「変態オジサン、犯罪者だー」
「懲らしめちゃえ」
「そうだよ、私たち、やっちゃっていいんだよ」
「だって」
女の子の顔が近づいてきた。
ノリユキが殺した女の子たちの顔が
「私たち殺されちゃったんだもん、コイツに」
女の子の口が耳まで裂けた。四つの目は漆黒の闇となってひろがっていく。
「た、助けてええ、ゆるしてえええ」
叫びながらノリユキの意識は遠のいていく。
「S町での連続少女殺人事件ですが、今新しい情報が入りました。容疑者とみられるのはヤマグチチ ノリユキ容疑者、父親は現役の官僚ヤマグチチ官房副長官補佐。一昨日、近くのN町の空きビルで発見されたヤマグチチ容疑者が携帯していたリュックを調べたところ、少女の下着類や犯行を撮影したデジタルカメラがみつかりました。ヤマグチチ容疑者は発見時、局部や腹を切られた状態でしたが、昨夜搬送先の病院で死亡。警察は自宅を家宅捜索中とのことです、次のニュース…」
今回、オルタナエンドは用意しておりませんが、ちょっと酷すぎだー、怖いなどのご意見がありましたら、感想欄にてお申し出ください。残酷さ薄めエンドを頭をひねって考えてみます。