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駅伝で偶然見つけた美少女(声)

作者: 香居


 今年の全国都道府県対抗駅伝、ご覧になったでしょうか。私は女子の部は都合により見られませんでしたが、男子の部は途中から見ることができました。


 選手を始め、関係者の皆様、本当にお疲れさまでした。大会が無事に終わり、一視聴者ながら胸を撫で下ろしました。




 今回の大会で、私が一番衝撃を受けたことをお話しします。

 それは、中継所でのことでした。各都道府県の選手たちが、1秒でも早く(たすき)を渡そうと懸命に駆け込む中。


「りょーちゃーん!」


 ──ん?

 高い声です。しかも、すごく可愛い。敢えてカテゴリーを作るならば、〝正統派美少女(声)〟です。

 最初、応援の子の声かと思いました。

 しかし、カメラは真っ直ぐ選手たちを捉えており、声も正面から入って来たような気がします。


「りょーうちゃーん!」


 再び聞こえた声の主を探すと、なんと、ライン間際で両手を振り、ぴょんぴょんと跳ねている選手でした。




 彼の声を聞いていたら、声の専門家による話を思い出しました。その方曰く、「水分をしっかり摂り、体に害なもの(タバコなど)を入れなければ声は若返る」そうです。

 確かに声変わりすらしていないような張りのある声ですので、選手として水分をきちんと摂っているのでしょう。未成年としても、体に害のあるものは一切受けつけていないでしょうし。


 ここ最近でしょうか、全体的にマラソン選手に声の高めな方が多いと感じてはいました。彼らの声を聞くたび、


(熱中症とか怖いから、ちゃんと水分を摂っているんだろうねぇ。善きかな。善きかな)


 などと、近所のお年寄りのようなことを考えていました。




「こっちこっちー!」


 美少女(声)に、意識を戻されました。

 これだけ人がごった返す中で、しかも後ろ向きでこちら側にはっきり聞こえてくるとは、役者か何かだろうか……と思ってしまうくらい、よく通る声です。

 そして、本当に可愛らしい声です。この選手には申し訳ないのですが、声のトーンが〝待ち合わせ場所で彼氏を見つけた彼女〟にしか聞こえません。

 私が彼氏なら、出逢った瞬間に抱きしめてしまうレベルの可愛さです。

 声の主は、骨格からして間違いなく男の子なんですが。


 後ろ姿だけですが、ぴょんぴょん跳ねながら相手を呼ぶ姿まで可愛く見えてきました。

 ……恐ろしい子……!

 いや、本人は必死なんですよ。

 スムーズな襷渡しのために、居場所がわかるようにアピールが必要ですし、少しでもタイムを縮めたいわけですから。

 ただ、声があまりにも可愛いので、カップル的な感じに見えてしまうだけで。


「はーやーくー!」


 ……本当に、待ち合わせにしか聞こえなくなってしまいました。


 一度インプットされた印象はなかなか消えません。画面の中では、選手たちが真剣に戦っているというのに。


 スポーツマン精神に則り、正々堂々と勝負している彼らを、邪念の入った目で見ていることに居たたまれなくなった私は、該当の選手がカメラからフェードアウトするまで画面から目を反らしていました。気分的な問題ですが。

 通過するゼッケンの番号は実況でわかりますので、3人ほど通過するのを聞いてから、再びテレビに視線を戻しました。


 その後は、抜きつ抜かれつする選手たちを、普通に駅伝として見ることができました。

 次の区間への襷も無事に渡され、新たな美少女(声)の戦士──いえ、選手が現れることもなく、最終区の選手たちがゴールテープを切りました。




 今年も、手に汗握る場面が多かったです。

 住んでいる地域の選手たちが活躍するのは、もちろん嬉しいことですが、他県の選手たちが切磋琢磨しているのも、応援に熱が入りました。


 ……しかし、可愛かったなぁ、あの美少女(声)。来年も出ないかなぁ……と、ちょっと期待してしまう昼下がりのことでした。


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