83話目~魔法陣の描き方
サリムさんは、悠々と魔法陣の中から出て来ました。私達は、その魔法陣を覗き込む。
「もしかして、これが装備品を更新する魔法陣?」
「あれ? 更新すらしたことないの? 始めたばかり?」
ユージさんの質問に驚いて、サリムさんは言いました。
「あ、いや。そういう装備を付けたのは初めてで……」
「そうなんだ。あ、そっか! 一攫千金当てたから良い装備買ったのか!」
サリムさんは、一人納得しています。
「では、軽く説明するかな。これには装備品を装備したまま入ってもらいます。座ってもらって約50分で更新終了です!」
「本当に一時間ぐらい掛かるんだ……」
サリムさんの説明に、感心したようにユージさんが言う。
「座らないともっとかかるけどね。寝れば15分で終わるけど……。この魔法陣の大きさだと大変だろう?」
そう言ってサリムさんは、魔法陣を指差しました。確かに膝を抱え寝てもギリギリぐらい。15分間ジッとしているのは辛そうです。
仕組みを知りたくて聞くと、サリムさんが教えてくれました。
この魔法陣は、装備をしている人のスタミナを使って更新するシステムらしいです。5%を奪い、本人の回復と一緒に装備も回復みたいなイメージだそうです。なので、寝て回復すると早い。
面白いシステムです!
ユージさんは、早速魔法陣の中に入り座ります。そうすると、発動したのか光がフワッと強くなりました。ユージさんが、光に包まれています。
私達は、魔法陣の近くに座りその様子を見てます。
「ねえ、君の装備品はいいの? 一緒にしていけば?」
「え?!」
親切で言ってくれていると思うのですが、私には必要ない事です。さて、どうやってごまかしらいいのでしょうか?
「あ、私は、そういう装備じゃないので……」
「そうなんだ。って、よく考えれば売ってないか。子供服だもんね」
そう言って、サリムさんは頷いて納得してくれました。
「で、君が本当は魔法陣を描けるんでしょ?」
私の顔を覗き込む様に、サリムさんがまた訪ねて来ました!
今までは描いているつもりでしたが、私のは描いていると言えるのでしょうか?
「えっと……。杖を使ってはないです」
「え? 違う方法? あ、そっか。じゃ普通の方法か」
「普通? とは?」
「それも知らないでしているの? 君達本当に不思議な人達だね……。普通は、魔法陣のスキルを取得する為に手書きで魔法陣を書いて、最後にさっきみたいに中央に魔力を注入するの」
「それが、普通なのね!」
私は、手をパチンと叩き、サリムさんのお話に納得です。発動させるのに、度々した事がある行為です。あれは、普通の行為だったのですね!
私は、魔石で描いていたので魔力を流し込みながら描いた事になっていた。そういう事なんだ!
「それはやった事あるみたいだね……」
「えっと……」
「そう。いつも手書き。僕達、見習いなんだ」
「ビックリした! 聞こえていたんだね」
ユージさんが、急に話し出したから驚きました。
「見習い? 何の?」
「え……っと」
「まあ、いいけど。中途半端だと結構大変みたいだよ」
「みたいだよって……」
サリムさんの言葉に、ユージさんがボソッと呟く。
「えーとね。魔法陣のスキルを取得するのには、魔法陣をいっぱい描く事らしいけど、使用……つまりさっき、俺がしたように模様を描くのには、複写というスキルが必要なんだ。そのスキルで複写した事がある魔法陣をさっきの様に描ける」
「え? そうなの? 複写ってどうやって取得するの?」
「ごめん。それは知らないんだ」
私が聞くと、さっき魔法陣を披露したと言うに、サリムさんは驚く回答をしました。
「うーん。俺は人と違う方法で取得したからさ。他に魔法陣を描ける人を探して聞いてみて。この島だと、発明家なら必ず取得しているはずだから」
「なるほど。確かにこの島に魔法使いなんていないもんね」
サリムさんの言葉に、ユージさんは納得したように言いました。魔法使い……必要のない職業なのね。
☆ ☆ ☆
あれから50分経ち、ユージさんの装備の更新が終わりました。
「ありがとう。助かったよ」
「いえいえ。借りたアイテムは、イベント終了後お返しします」
ユージさんと私が頭を下げると、サリムさんも頭を下げました。
うーん。やっぱりつなぎに杖は違和感がありますね。
私達はサリムさんに手を振ると、ワープで部屋に戻りました。
部屋に着くとユージさんは、うーんと伸びをしました。疲れないシステムだけど座っていなきゃいけないと思うと疲れるよね。
「あのサリムさんってきっと、ソレイユさんみたいなプレイヤーなのかもね」
「え? 私と一緒?」
「うん。特別な宿命みたいなシナリオがあるプレイヤーって事。君は、本とその装備を手にいれ、彼は、取得するのに凄く時間がかかるスキルを手にいれている」
ユージさんの言葉に私も納得です。
本当にいたんですね。
「でも、仲良くなれそうな人でよかった」
私がそう言うと、ユージさんもうんと頷きました。