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お二人様のモフみみ錬金術師  作者: すみ 小桜


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70話目~実りの鳥

 私達は、魔石を手に入れて悠々と歩いてます。ハッキリ言って、もう魔石がないと焦る事がないでしょう!

 草原からまた森の中へ、そして暫くすると視界が開けました。

 なんと! 複数の建物があります! お家です!

 こんな森の中にあるなんて!

 というか、崖の壁の向こう側で小屋以外の建物は初めてです。


 「捕まえてくれ~!」


 突然声が聞こえ、よく見ると人です!

 こちら側に走ってきます。今回は、捕まえて欲しいと言っていますが何をでしょう?


 「ユージさん、何か見える?」


 私達は歩みを止め、走って来る人の前を凝視。


 「うーん。何か小さい白物体が見えるような……」


 ユージさんの言う通り、白い何かが近づいてきます。犬かな?


 「……コ・コ・コッ!」


 うん?


 「コケ・コ・コ・コッ!」


 え? あれって!!


 「ニワトリ!?」


 「みだいたね」


 私が叫ぶと、ユージさんも驚いたように言って頷きました。

 こんな所で、ニワトリと遭遇するなんて!

 ニワトリは私達に向かって来て大ジャンプです!

 ユージさんがナイスキャッチ!


 「大丈夫ですか?」


 「はい。大丈夫です」


 近づいて来た男の人にそう返し、ニワトリをユージさんが渡しました。

 男の人は、ニワトリを抱きかかえ、あちこち確認をしています。


 「うん。大丈夫だ。怪我はない様だ。よかった」


 うん? もしかしてニワトリの方の心配?

 私達は、顔を見合わせます。そして苦笑い。


 「もしかしてあなた達は、噂の錬金術師様!?」


 「うーん。その噂の人物かどうかはわからないけど、番人の加護をもらってます」


 「じゃ! 噂の錬金術師様だ! お願いだ! 逃げ出した実りの鳥を捕まえてくれ!」


 「え? 実りの鳥?」


 私が繰り返した言葉に、男の人は頷いた。

 どうやらここでは、ニワトリの事を実りの鳥って呼ぶみたい。玉子を産むからかな?


 「あの、何羽いたのですか?」


 「六羽だ! どうやら両方の魔法陣の効果が切れたみたいなんだ」


 「両方?」


 どういう事だろうと男の人に詳しく話を聞きました。

 ――実りの鳥(ニワトリ)は、飛べない様に両方の羽根に魔法陣が描かれていた! この世界では、ニワトリは飛べる鳥らしい。

 そして、その実りの鳥を飼っていた場所にも魔法陣が施してあった。大きさは、家一軒分ほど。

 飼っていた場所を見ると、草がいっぱい生えていた。このままだとこの草は枯れてしまうらしい。

 実りの鳥の羽根を見てみると、両方とも魔法陣が描かれていた! しかしもうほとんど消えかかっている。

 ユージさんが、両方の羽根の魔法陣の中心に魔力を流し込むと、魔法陣はくっきりと浮かび上がった。


 「流石錬金術師様!」


 「さて、ニワトリじゃなかった実りの鳥をどうやって捕まえるかだね。動く物だから追うのが大変だよね……」


 ユージさんの台詞に私は頷きました。

 ダウジングに探すにしても動き回られたら大変です。しかも五羽!


 「一つだけ呼び寄せる方法がありますが……」


 私達はどうしようかと思っていたらライマルさんがそう言いました。あ、お名前教えてもらいました。


 「それってどういう方法ですか?」


 「餌を置くです」


 右手人差し指を立てて、ライマルさんは得意そうにいいます。

 そんな事を出来るのなら先に言ってよ。捕まえてって私達に言わなくても解決じゃない!


 「ですが、実りの鳥の園の魔法陣が消えてしまった為、呼び寄せても逃げられてしまいます」


 そう言って、先ほどまでそこで飼っていた場所にライマルさんは振り返る。

 草しかなさそうだけど、魔法陣があればそこに実りの鳥を留めておく事が出来るらしい。


 私達は、草の所に描かれた魔法陣をよく見てみた。

 うっすらとあるので、魔力を注げば発動を開始するかもしれません!

 消えてしまわないうちにと、私達はオーブを作る事にします。


 「土を少し使っていいですか?」


 「はい。構いませんが……何を?」


 「あの魔法陣に魔力を注ぐ準備です」


 ライマルさんの質問に答えつつ、ユージさんは土をかき集め魔石の粉を混ぜます。

 私は、粘土にする魔法陣を描き、終わったら土を入れて、粘土の出来上がりです。

 そしてすぐに私は、窯の魔法陣描きへ取り掛かる。ユージさんもオーブを作る為に、粘土で魔石を包みます。


 その工程をライマルさんは、捕まえた実りの鳥を抱っこして静かに見守っています。まあ、実りの鳥は、ライマルさんの腕の中で騒いでますが。

 作り終えたオーブを持ち魔法陣の中心に移動して、ユージさんが杖を支え私がその杖の上にオーブを乗せた。

 そうるすと、オーブがみるみるうちに小さくなり消滅し、魔法陣がふわりと輝く。でもこれって、発動していないような気がします。


 「うーん。変だね」


 ユージさんも同じように思ったようです。

 魔法陣をよく見ると、魔法陣の円の縁に接する内側に、六つの小さな魔法陣があり、それは発動していないようです。これが原因かも。

 今まで描いて来た魔法陣は、中の魔法陣は一緒に発動していたのですが、今回のは違う様です。


 「ちょっと魔力を入れてみるよ」


 ユージさんがそう言って、中にある魔法陣の一つに魔力を注ぎました。ふわっと魔法陣が、光を帯びます。


 「普通に注ぐ事は出来るみたいだね。他のも入れるね」


 「あ、MP大丈夫?」


 私が聞くと、ユージさんは大丈夫と頷いた。

 そして残りの五つの魔法陣にも魔力を注ぎ、一応魔法陣自体はほのかに光を帯びたものの発動しません。


 「うーん。何か発動条件があるのかもね」


 魔法陣を見つつユージさんが言います。

 やっぱりそうなんだ。でも条件ってなんだろう?

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