69話目~朝日が昇るまで
ビンが出来上がったので、後はビンに素材である杭を入れ作るだけですが……。
いつもなら寝て次の日にINですが、作っている物が魔石なので、何となく途中半端に出来ず、腰の鉱石に明かりを灯し、後バジーくんが持っていたランプで辺りを照らします。
このランプも発明品なので、魔力を注ぐと明かりが灯るんです!
「杭の形のままに魔石が出来上がるのなら大きすぎて厄介だね。入れる時に小さくしようか」
ユージさんがそう提案しました。
言われればそうです。杭がそのまま魔石に変化するなら柔らかい杭の時にバラバラにした方がいいですよね!
ユージさんとバジーくんは、杭をバラバラに。私は、魔石にする魔法陣を描きます。その上に、ビンを置くのです。
今回は発明品ではないらしく、条件は書かれていません。なので、必ず成功すると思われます。
ビンが入る大きさに魔法陣を描いて何とか出来上がりました。
棒の部分がある為に、大きく描かなくてはいけなくて、結構大変でした。魔石があれば、魔法陣の鏡で描いたのですが……。
ビンは私でも持てる程軽いのですが、大きすぎるのでユージさんが魔法陣の上に設置。そして、ビンの中に入れてもらい三角形を設置する事にしたのですが、その三角形がギリギリ入る大きさでした!
その事は全く考えていなかった私達は、何とか入って胸を撫で下ろしたのです。
三角形は、中心がずれない様に均等にずらしていきます。ちゃんと合うと、ぱあっと魔法陣がほのかに光を帯びました!
ビンの中なので薄暗かったから明るくなりました。
その後、粉々にした杭を入れた袋を受け取り、ビンに敷き詰めて行きます。ある程度敷き詰めて、ユージさんに中から出してもらいました。
「ご苦労様。後は、僕がするよ」
そう言って、袋をひっくり返し、バラバラの杭をビンに敷き詰めて、水が湧き出る水筒で、どぼどぼと水を入れて行きます。
途中でなくなるのではないかと心配しましたが、流石おじいちゃんが作っただけあって、ひたひらになるまで水を入れる事が出来ました!
「この水筒凄いね!」
バジーくんもそう驚いていました。
うん! 凄いんです!
最後に七色の種を入れて、用意は万全です!
蓋はただの円の板の様な形に作ったので、ただかぶせるだけなのです!
でもこの蓋の裏にもいつもの如く、魔法陣を描きます。
もうすでにヘロヘロになっている私。
疲れない仕様のはずなんだけど、色々と初めてがあって精神的に疲れていますが、もうひと踏ん張りです!
魔法陣を描き終わった蓋を手に、ユージさんに抱っこしてもらい、ビンに蓋をします。魔法陣は、下向きです。
すぐにビンから離れ見守っていると、なんと蓋がビンの上で高速回転しています!
「何あれ、すご……」
ユージさんが、驚いてそう零しました。
一分程すると、蓋がキラキラと七色に輝いたと思うと、サーッと消え去りました!
「え?」
思わず私は声を上げました。
ビンの下に描かれた魔法陣も消えたので、完成したと思うのですが……。
私達は、恐る恐るビンに近づきました。
「うわぁ。凄い! 魔石がビッシリ!」
ビンの中を覗き込んだユージさんがそう言って、ひょいと私を抱っこします。
「わぁ。全部、魔石になったんだぁ!!」
これだけあれば当分大丈夫でしょう!
「ところでこれ、どうやって持ち歩くんですか?」
バジーくんは、魔石が入った瓶を指差して質問してきました。
うん。最終的には、私のリュックに入れて持ち歩くんだけど、数が数だけに、どうやって入れようかな?
このまま入れるという手もあるけど、出来れば袋に小分けして入れておきたい。
「そうだね。小さい袋に入れたいけど、かなり大量に必要だよね」
ユージさんがそう言いました。
私と同じ意見でよかったです!
「ちょいと行って買って来るかな」
マーケットは24時間営業なので買えるのです。
ユージさんは、頷くと行ってくると言って、ワープして行ってしまいました。
驚く事にユージさんは、10分程で巾着程の袋を大量に持って戻ってきました!
「さあ、ここからは、本当の手作業だよ」
ビンを横にして、無言で私達は魔石を詰め込んで行きました。
気が付けば、朝日が昇ってきました。朝です!
そう言えば、日が昇る所を見るのは初めてかもしれない。
私達は、しばしこの風景を眺めていました。
その後200個程になった袋をユージさんと二人で、私のリュックに入れました。
「手伝ってくれてありがとう」
「凄く助かったわ」
私達がバジーくんにお礼を言うと、バジーくんは、少し照れています。
「楽しかったよ。これはちゃんと見守るからね!」
これとは、残った杭と空になったビンです。
まあ、朽ちた杭なんて誰も盗まないだろうし、このビンだけでは発動させる事も出来ないので、何かを入れる事しかできないし、誰も盗んで行かないとは思うけど、管理をバジーくんに頼む事にしました。
「うん。宜しくね」
ユージさんがそう言うと、うんと力強くバジーくんは頷きました。




