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5話目~え?婚約!?

 目の前には畑が広がっている。


 長閑だな……。いやぁ、和む。


 「そう言えば、なんで私がプレイヤーだってわかったんですか?」


 私には見分けがつかなかった。

 ケモミミがなければ、ゲームの中だと忘れそうなほどリアル。


 「あぁ、僕は経験値だけずっと見える様にしているんだ。初めて話すプレイヤーとの会話は、経験値100増えるんだよね。だから気が付いた」


 「え? そうなの? って、常時表示する事出来るんだ……」


 ユージさんは、うんと頷いた。


 そういう見分け方が出来るなら私も常時見える様にしておくかな。


 そう思ったら右下に数値が現れた!


 今の経験値は652。100増えたかわからないけどね。


 「ユージさんって何のケモミミ族なんですか?」


 「僕は、ライオンだよ」


 「え! ライオン!」


 強そうなケモミミさんが、隣村なんですね……。


 「ほら、尻尾見て」


 ユージさんは、自分の尻尾を掴み私に見せてくれた。

 尻尾は毛が短く、先っぽが黒くぽこっとなっている。確かに猫とは違う。


 触ってみたい! もふりたい!


 「あの、触ってもいいですか?」


 「え……。いいけど……」


 私はそっと尻尾に触れると、ユージさんはビクッと体を振るさせた。

 見ると少し顔が赤い。


 「く、くすぐったいかも……」


 触り心地は最高。長い毛もいいけど短いのもいいなぁ。

 そうだ、耳も触らせてもうらおう!


 「もう、いい?」


 「うん。後、耳も……」


 そう言いながらユージさんを見ると、さっきより顔が赤い。


 「なんかゾワゾワするから!」


 そう言って尻尾をパッと後ろに隠した。


 もしかしたらケモミミ族は、尻尾が弱いのかもしれない。私も自分で触った時くすぐったかったし……。

 しかしリアルと違って、尻尾が弱い百獣の王のライオンが、畑を耕すとは……本当に長閑だねぇ。


 「尻尾ってなんで触るとくすぐったいんだろうねぇ?」


 私が自分の尻尾を触りながら言うと、「だよね」とユージさんはジッと私の尻尾を見つめている。


 もしかして触りたい? 自分のと違ってもふもふだもんね。


 「触る?」


 「いいの?」


 私が頷くと、嬉しそうにユージさんはもふりはじめた!


 「やっぱり毛は長い方がいいなぁ……」


 くすぐったい! って、なんかゾワゾワする……。


 「おぉ、二人共打ち解けたようだな」


 「何を言ってます! うちの子は女の子です!」


 気が付けばお父さんたちが近くに居て、声を掛けられたと思ったら、抱きかかえられた!


 「「え~」」


 私が女の子だと聞いて、親子声を揃え驚いている。男の子だと思われていたらしい……。


 「ねえ、お父さん。尻尾触りあうのってご法度だったの?」


 「同性なら友情の証になるが、異性だと婚約の証だ!」


 「「え~」」


 今度は私とユージさんがハモった! ユージさんも知らなかったらしい。


 「ご、ごめんなさい! ソレイユ……さんが女の人だなんて知らなくて。後、そういうしきたりも知らなかったから……」


 ユージさんが慌てて言うと、私もそれに頷く。


 「まあまあ。バシリーさん。ソレイユちゃんはまだ十歳の子供だし、今回は不成立ですよ。ね?」


 「………」


 ダンダさんが言うも、お父さんは無言。

 かなりお怒りのご様子……。


 これ、どうしたらいいの?

 めんどくさい規則作っておかないでよ~。


 「わ、わかりました! 責任取ります! 彼女が200歳になったらお嫁さんにもらいます!」


 「な、何言ってるの?!」


 ゲームの中とはいえ、プ、プロポーズって! しかも200歳って! この世界って成人が200歳なの? あと190年もあるんだけど!!

 ……って、リアルに換算するとどれくらいなんだろう?


 と、突然ザーっと雨が降って来た!


 「冷たい!」


 私が叫ぶと、慌ててお父さんは屋根の下に避難した。そして、ユージさんの横に私を座らせた。


 「いいだろう! 娘をそれまでしっかりと他の者から守るように!」


 「はい!」


 お父さんの言葉に力強くユージさんは頷いた!


 いやいやいや、おかしいでしょう? ゲーム始めて数時間で婚約って!


 「ちょ、ちょっと待って! この流れおかしくない?」


 「大丈夫だよ。君が200歳になるのには、リアルで7、8年かかるから!」


 「え~!」


 ユージさんは、そう教えてくれた。私7年経たないと大人にならないらしい。


 「お色気ムンムン遠いんだけど!」


 一瞬シーンとなった後、大爆笑が起きる!


 やば、声に出た。

 しかしNPCって感情豊かだな。私達と変わらない……。


 「まったくお前は何を言いだすかと思えば……」


 ムッとしていたお父さんは、笑顔になっていた。


 まあ、場が和んだからいいか……。


 「ユージ君。すまなかった。ちょっと頭に血が上っていたようだ。やっと出来た子だったからな。婚約の件はなかった事で大丈夫だ。だが、これから仲良くお願いする」


 そういう設定だったんだ……。

 あぁ、ひとまず落ち着いたみたい。よかった~。


 「はい。仲良くさせて頂きます」


 ユージさんは、にっこりほほ笑んでお父さんにそう答えた――。

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