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お二人様のモフみみ錬金術師  作者: すみ 小桜


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49話目~迷いの森の地図

 そっと目を開けると、森の中は少し明るかった。淡い光は上からの様で、顔を上げて驚きました!

 結界の内側だけ、枝の天井がありません。星空が瞬いていたのです!


 「わぁ、綺麗!」


 「まさかぽっかり穴が空くなんてね。そっか……今、夜なんだ」


 私達は時間の感覚がなくなっていました。ずっと真っ暗だったし。

 考えれば移動に36時間費やして、魔法陣を描いたりしたから、40時間以上は掛かっていたのね。


 「さて、戻ろうか」


 「うん」


 私達はテントにワープする。

 そしてテントを畳み、二人が待つ場所へ走りました。えぇ、四時間掛けて……。


 「おぉ、二人共ありがとう!」


 「さすが錬金術師様!」


 二人は私達の上を嬉しそうに旋回する。

 シェリルさんは、未だに私達を錬金術師だと思っているみたいだけどいいのかな?


 「嬉しいのはわかりますが、元の大きさに戻してもらってもいいですか?」


 「おぉ、すまなかった!」


 ユージさんが言うと、ハーキュリィさんは、キラキラと煌めく何かを私達に注ぎ、私達は無事に元の大きさに戻れました。


 「本当にありがとうございます! 魔石の花も元に戻るでしょう。そうすれば、仲間も呼び戻せます!」


 「仲間? 他にもいたんですか?」


 私が質問するとシェリルさんは頷き、森の奥を指差す。


 「ここの先に壁の様な丘があり、その先に逃がしました。魔石の力が弱まったので、この森にも光が降り注ぎ、精霊の花も咲く事でしょう」


 「精霊の花?」


 今度はユージさんが言うと二人は頷く。


 「精霊が生まれる花です。条件が整えば精霊は大地の恵みを受け、命を宿します」


 「本当? 凄いね! 封印したかいがあったよ!」


 何故かユージさんが大喜びです。


 「そうだ。その杖は君にやろう。私達には今はそれぐらいしかお礼をする事ができないが、いずれはきっと、ちゃんとお礼をしよう」


 「あ、杖は頂きますが、俺は地図を描く許可を下さればいいです」


 ハーキュリィさんが言うと、ユージさんはそう返しました。

 そうだった! その為に引き受けたんだったね!


 「条件があります。私達精霊の事は伏せ、結界には絶対に近づかせない事! です」


 シェリルさんが出した条件に、ユージさんは頷く。


 「わかりました。そのようにします」


 言いきっちゃって大丈夫なのかな? 精霊の事はいいとして、結界に近づけさせないって……。


 「ありがとう」


 二人は私達に頭を下げた。

 あぁ、恐縮です。私も下げ返す。


 「あ、そうだ。ここら辺の草刈ってもいいですか?」


 「あぁ。構わない」


 ユージさんの質問にハーキュリィさんが答えると、ユージさんはナイフで草を刈り、そこにテントを張りました。


 「時間もあれだし、ここで寝よう。また数日後でしょここに来るの」


 そうだった! 結界のやつで二日程経ったんでした!


 「うん。そうする」


 私が答えるとユージさんは頷く。


 「あの……一応誰も森の中に入れない様に、結界だけお願いします。迷いの魔法」


 「……わかりました。寝るのですか?」


 私達の行動に少し驚きを見せている。


 「はい。ケモミミ族は夜寝ないとダメなんです。おやすみなさい」


 「おやすみなさい」


 ユージさんに続き私も挨拶する。


 「あぁ、おやすみ」


 「おやすみ。ゆっくり休むといい」


 私達はテントに入り、二人してゴロンと横になる。


 「今回は本当にお疲れ様。本当によく頑張りました」


 ユージさんは、そう言って私の頭を撫でる。

 何故かいつもより恥ずかしい。


 「ユ、ユージさんもいっぱい走ってくれてありがとう」


 「うん。じゃログアウトしようか」


 「あ! そう言えば今日、金曜日だから遅くても大丈夫だったわ!」


 「そうだね。でも今日は寝て、昼間からしよう!」


 私は頷く。

 そうようね。夜更かしするよりはそっちの方がいいかも! って、いつも少し夜更かしになってるけどね。


 「じゃ、一日開けて19日の時間に。えっと、リアルだと……朝七時だっけ?」


 今は17日の闇の刻。すぐに寝れば四時間程寝れます。少ないけど今はこっちの世界が楽しいから、きっと目が覚めちゃうと思う。


 「大丈夫? ちょっとしか寝れないけど……」


 「うん。大丈夫です」


 「わかった。じゃそうしよう。おやすみ」


 「おやすみなさい」


 私達はテントの中でログアウトしました。




 ☆   ☆   ☆




 19日の朝INすると、テントの中にはユージさんはいません。

 そっとテントの外に出てみると、ユージさんを発見!


 「おはよう! 何か気づかない?」


 「おはようございます……うん?」


 ユージさんに聞かれ、私は辺りを見渡した。

 あ! 鉱石使ってないのに見える。

 フッと、顔を上げると、枝の隙間から光が差し込んでいたのです!


 「え? 太陽の光?」


 「えぇ。あなた方のお蔭で森も戻りつつあります」


 シェリルさんがそう言いました。

 そっか、元は太陽が注ぐ森だったのね!


 「さて地図作りしようか」


 ユージさんが奥を指差す。


 「うん。テントは畳まないの?」


 「ここから奥を作ってここにワープで戻って来て、今度は逆側を作る方が時間短縮になるでしょう?」


 「なるほど!」


 私は頷き、ユージさんと地図作製を始める。

 驚いた事に、板の地図には魔法陣の青い印があった。一時的な物じゃなかったみたい。


 「あぁ、そうそう。この森は僕達以外入れない様に結界張ってもらう事になったから」


 「え? そうなの?」


 「物理的にそうしないと、他の人を結果に近づけさせないのは無理だからね」


 そうだけど……どうやって地図を作ったかって説明するんでしょう?

 まあユージさんを信じて、地図製作をしますか。


 私達の地図製作は順調に進み、二つ分の地図は6時間程で出来上がりました。

 結界は、二つの地図の真ん中にまたがっていました。

 ……地図には毒沼と表示する事に。まあ、バレないとは思うけど。


 こうしてまたまた大変な目にあったけど、何とか出来上がったのでした。


 テントは反対側の地図を作る時もそのまま置いておき、最後にテントを畳んでご挨拶。


 「たまに会いに来るといい。待っている」


 ハーキュリィさんがそう言ってくれて、私達は頷く。


 「その時までに何かお礼を考えておきます」


 そしてシェリルさんにも、素直に頷く。


 「では楽しみにしています」


 「またね……」


 私が手を振ると、二人も手を振ってくれた。

 私達はワープする。

 見慣れた部屋が目の前に見える。


 「あぁ、帰って来たって感じがするね」


 「うん。不思議な体験をした感じ」


 ユージさんに頷き、私はそう言いました。




 ☆   ☆   ☆




 「えぇ! あそこ地図作ったの? これちゃんとした地図?」


 受付のお兄さんが驚き、受け取った地図を凝視する。


 「はい。迷っている内にちゃんと中に入れて書けました。でも一旦森の外に出ると、もう入れなくて……信じるかどうかは任せますけど、酷くないですか? 注意書きがあってもいいと思うのですが!」


 ユージさんがジッとお兄さんを見つめ言うと、ごめんと手を合わせる。


 「いやだって、そんな事書いたら誰も引き受けてくれないだろう?」


 「引き受けたとしても達成できないでしょっていう話をしてるんです!」


 「いや、君達は達成できたじゃないか!」


 「あ、ではその地図信じてくれるんですね!」


 「……はい」


 ユージさんは、私に向かってウィンクを飛ばしてきました。

 上手く丸め込んでくれたお蔭で、作成した地図は無駄にならずにすみ、★二つゲットです!

 これで★四つになりました! 黒板を買えます! 楽しみです。

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