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お二人様のモフみみ錬金術師  作者: すみ 小桜


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46話目~森の秘密

 森の中を板の地図を頼りに、奥に進んでいます。

 ぶ、不気味さを増してます!

 風に揺れて騒めく葉の音もまるで、『引き返せ~』と言っているかの様です。足に絡まる蔦は、掴まれたような錯覚に……。長く伸びた草が私にかすれば、トントンと叩かれているようで……。


 「ひゃ~!」


 こ、怖すぎる!!

 さっきまで大丈夫だったのに! 帰りたいよう!


 「大丈夫?」


 私の悲鳴にユージさんは振り向いた。


 「なんか、不気味じゃない?」


 ギュッとユージさんを掴む手に力を込める。


 「多分迷わす魔法の他に、不安を煽る魔法みたいなのも増えたのかもね。僕は暗いとこ平気だから大丈夫だけど……」


 そう言いつつユージさんは、フッと私を抱き上げた。


 「よしよし。怖くないからね」


 ギュッと私を抱きしめると、頭をよしよしと撫でる。まるであやす様に……。

 今回だけは許す! ……あぁ、安心する。

 私もギュッと、今回だけは抱き着いた。


 ユージさんは、このまま歩き出した。


 「歩きづらくない?」


 ユージさんは私を抱っこし、板の地図を持って歩いている。


 「うん? 平気。僕もこうしてると安心できるし」


 さっき二人で歩いていた時よりも、速いスピードで歩いている。私の歩みに合わせてくれていたのね。


 ユージさんは進んでは立ち止まり、向きを変えまた進みを繰り返して、奥に進んでいた。二時間程そうやって進んだ頃だった。


 「止まりなさい!」


 そう確かに声が聞こえました!!

 私はそっと暗闇の中、声の主を探すと杖を持ったご老人がいたのです! ですがそのご老人は、目線はユージさんと同じ位置なのですが、手のひらサイズの大きさで、背中には蝶のような七色の羽根。そう浮いていたのです! って杖いらないと思うんだけど……いや、そうじゃなくてこのご老人は何?

 チラッとユージさんを見ると、驚いているのか目をパチパチと、しばたたかせています。


 「なんて可愛いんだ!」


 ボソッとだけど確かにユージさんは呟きました! 聞いちゃいました! 相手はご老人なんだけど……。ユージさんは、やっぱりというか、小さいモノが好きなようです。


 「ここから先は行ってはならん。魔物が出るぞ!」


 私達はその言葉に顔を見合わせた。この島にはいない事になっている。


 「それってここには魔石があるって事ですか? それとも魔物を飼っているとかですか? 僕達はここの地図を作りたいだけなんですけど、許可頂けませんか?」


 大胆にユージさんは、交渉を始めました!


 「出来ないな。今言ったように魔物が出る」


 「あ、あのこの奥に魔物がいるんですか?」


 私の質問にご老人は首を横に振った。いないってことだよね?


 「奥には大きな魔石の塊がある。魔石は負の感情に触れると魔物に変化する。怒り、悲しみ、そして恐怖心でも魔物になる」


 それって私が行けば、魔物が出るって事ね。


 「悪いけど魔石があるなら何とかしないと! 僕達にはそうする義務があります。自分達で出来ないのなら連絡して応援を呼ばないと……」


 「ならん! ここにあるのは特別な魔石なのだ! 欲望も魔物になる要因になる! しかも大きな魔物が出現する! そうなればこの島のケモミミ族はおろか、他の種族も全滅するだろう」


 「え~~!!」


 『ねえ、これってイベントっぽいよね? 多分ここにたどり着ける程の者が行うイベント……。どうしようか? イベント進める? それとも放棄する?』


 突然ユージさんが、以心伝心で話しかけてきました。イベントだったのね!

 でも聞かれてもどうしていいのかわかりません。


 『放棄した場合どうなるの?』


 『多分だけど、イベント自体は始まっちゃってるから、事態を知らせて他の人に委ねるしかないね。まあまずはここに来れないと、どうにもならないと思うけどね』


 ここに来るって……私達しか出来なかったのでは?

 う~ん。ここまで私達が来てしまった事で始まっちゃのだから、責任を持ってやったほうがいいのかな?


 『じゃやってみましょう。私達がダメだったら他の人にお願いしましょう!』


 『そうこなくちゃ!』


 「その魔石を砕く手段が僕達にはあります! この恐怖心を煽る魔法を解いて頂けませんか?」


 ユージさんがそう願い出るも、ご老人は首を横に振ったのです! 協力しあう気はないみたい。


 「恐怖心を煽っているは魔石ですよ」


 ご老人の後ろから声が聞こえ、フッとこれまた背中に綺麗な羽根が生えた美人な方が現れました!


 「あれ? この人が偉い人じゃなかったの?」


 驚いてユージさんが、そう言う。

 うん。私もそう思っていました。


 「私達はケモミミ族ではありません。この森を守る森の精霊です。私の名は、シェリル。そして精霊は本来、ハーキュリィの様な姿にはなりません。彼は自身の命を削って、結界を守っているのです」


 え? 結界を守ってる? このご老人は、本来もしかしてお兄さん!?


 「結界って魔石から魔物が出ない様にですか?」


 ユージさんの問いに、ハーキュリィさん達は頷いた。


 「僕達は魔石を砕く方法を持っています。大きさはわかりま……」


 「その魔石が壊されては、私達も困るのです! 私達も魔石があって生きていけるのです」


 そう言ってシェリルさんは、語り始めました――。


 この森の奥には、六つの魔法陣の中心に大きな魔石が地中に埋まっていて、その魔石の上に魔石の花が咲いている。その花が精霊たちの命の源らしいのです。

 魔法陣は魔石の力を抑えるモノだったのですが、今は一つしか機能していない。魔石の力が強まり、魔石の花が枯れ始めました。

 魔石の花は、魔石がなくなると花も消滅する不思議な花。魔石がある土の上にいつの間にか咲く不思議な花だったのです!

 そしてハーキュリィさんが持っている杖で、一つの魔法陣を強化し何とか保っている状態でした――!


 魔石を砕かずにという事は、魔法陣を復活させるって事よね? 私がいつもしているような感じで魔法陣を描けば何とかなるのかな? でもどんな魔法陣かわからないから描きようがないかも?!

 どうしたらいいの!?


 「一つ質問宜しいですか? 何故、シェリルさんが描きに行かないのですか?」


 「私には描けないからです。勿論彼もです。魔法陣を描いたのは、錬金術師だと聞いています。魔法陣は効力がなくなっていはいますが、模様は残されています。魔法陣を描けるのならば、協力をお願いします」


 「いやしかしシェリル、負の感情を持った者です! 彼らが近づけば私の力では抑えられなくなる!」


 頭を下げるシェリルさんに無理だとハーキュリィさんは意見するも、大丈夫ですと一言呟くと驚く事を言ったのです。


 「そこは作戦があります。その杖を彼女に託しましょう。恐怖心を抑えてくれます。その間、私が結界を張ります! 二人は錬金術師のようですので、必ずや魔法陣を復活させてくれる事でしょう」


 え!? 錬金術師?! あ、私が服装一式魔具だからそう思ったとか!?

 違うんだけど……。


 『ねえ、魔法陣って描けそう?』


 『え? えっと……いつものようになら魔法陣は描けるけど。ただ発動ってどういう風になってるのかな? 六個揃ったら勝手になるのかな?』


 『それは聞いてみようか』


 「描けると思うけど、発動条件がわからないと……。ご存知ですか?」


 シェリルさんがこくんと頷く。


 「連動しているらしいので、描けば発動されるはずです。引き受けて下さるのですか?」


 「はい。喜んで!」


 「「ありがとう!」」


 ユージさんが引き受けると言うと、二人は嬉しそうに声を揃えました。


 「地図を見せて下さいませんか?」


 「はい……」


 ユージさんがシェリルさんに見せると、彼女はその上をクルクルと旋回しました。その後を追う様に、キラキラと何かが輝く。


 「これで魔法陣の場所が示される様になったはずです」


 私達は地図を覗き込んだ。今表示されている端に青く光る場所があった。そこがそうかも。


 「ではこれを。絶対に手放さない様に!」


 ハーキュリィさんから杖を手渡され、頷き受け取りました。


 「宜しくお願いします!」


 そう言いつつハーキュリィさんは、私達の上を旋回する。シェリルさんの様にキラキラと輝くと、それは私達に注がれ、驚く事に目の前の世界が変わりました!


 え? 一体どこに飛ばされたの私達!?

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