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お二人様のモフみみ錬金術師  作者: すみ 小桜


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42話目~トンネルを掘ります!パート2

 私達は崖に作った穴に足場を組んでいました。ユージさんがデザインした三角の台を並べて置き四角にして、その上に小さな台を置く。一つの台は階段付きなので登りやすい。

 ここまで考えていたなんてユージさんって凄い!


 「どう? 怖くない?」


 「うん。平気。これもあるし」


 私はこれと言ってユージさんと私を繋ぐ命綱を掴んだ。登るのに使ったロープを私達は体にくくり付けている。もし万が一落下しても地面に叩きつけられる事はないです。壁に激突する可能性はあるけどね。


 さてと、掘りますか。

 ガリ……


 「う……」


 「大丈夫?」


 私は頷いた。掘って落下してきた土が思いっきり顔にかかりました!

 少し前の方を掘らないとダメですね。手を伸ばし体の前の天井を掘ると、足元に落下していって顔にはかからなかった。

 こうやって掘って行きましょう!

 落下した土は、ユージさんがかき集め袋の中に入れて行く。

 私は大きな台からは降りずにユージさんが移動させ反対側にくっつける。私は台の上を横に移動する。そうやって掘り進めて二時間後、端まで到着です。

 立ててあった棒で確認すると、棒の先より少し高く掘れています。


 「上手く行ったね」


 「うん」


 大満足です! って、まだまだこれから奥を掘らないとなんですけどね。


 「どうやって掘って行こうか? 一旦普通に端まで掘ってから天井を掘る? それとも天井も掘りつつ進む?」


 ユージさんに聞かれ私は考え込む。きっとどちらの方法をとっても作業に掛かる時間は変わらないでしょう。私的には早くユージさんにも向こう側の世界を見せてあげたい!


 「先に横に掘ってしまってから天井を掘るわ!」


 「じゃ、そうしよう!」


 私達は掘り進めていきます。

 横に掘るだけなのでドンドン掘れ、ユージさんが詰めていく袋もすぐにパンパンになって横に置かれていきました。

 そして陽が沈む頃ようやく反対側まで貫通です!


 「わぁ、きれい!」


 「ベストタイミングだね! ソレイユさんお疲れ様!」


 私達は、空も草原もオレンジに染める夕日を崖の穴から眺めていました。

 草原はオレンジと緑のグラデーションで、キラキラと海の様に輝いています。空は浮かんだ雲が綺麗に染まり、鮮やかな色どりを添えている。

 アクセントとして草原の奥に大きな木があるようで影を作っています!


 「神秘的。明るい時に見た時は、あの大きな木には気が付かなかったわ」


 「あれだけかなり大きいみたいだね。あ……完全に陽が沈むね」


 太陽がいなくなると周りには灯りがないので、一気に辺りは暗くなりました。この世界には星は存在するのですが月は存在しないようで、夜空の星が瞬くだけです。できればこのまま見ていたいです。


 「ねえ少し横になって星空堪能しない?」


 ユージさんも同じ考えだったらしくそう言って来ました。って、うんと返事をする前に横になって星空を堪能してるんですが……。


 私もユージさんの横で寝そべり綺麗に輝く星を眺める。

 リアルでは体験出来ない、まったりした優雅な時間。


 「君と旅に出てよかった。僕、夜はこの世界では寝ていたからね。こんな体験した事がなかったよ」


 「うん。私も……」


 ユージさんのセリフに照れながら一言そう答えました。

 ゲームでリフレッシュしようって考えたけど、ユージさんがいなかったら無理だったかも。大人数も楽しいけど疲れるし、二人がちょうどいいのかも。


 「二人で見たいモノ増えたね……」


 「うん。これからも増やしていきたいね」


 ユージさんはほほ笑んでそう答えました。

 その後私達は一時間ほど星空を鑑賞して、リアルの次の日までログアウトする事にしました。




 ☆   ☆   ☆




 ゲームで10日の朝、私はINしました。目の前には岩が見えます。

 そう言えば、星を眺めつつログアウトしたのだったと思っていたら、目の前にユージさんの顔が現れました!


 「キャー!」


 「きゃーって酷いなぁ」


 クスクスと笑いながらユージさんは言った。


 「ごめんなさい。びっくりして……」


 「突然現れるとビックリするよね。って、起き上がらないから心配したよ」


 少し今の状況をと考えていたから動かなかったものね。

 私は体を起こし、外の景色に目を移す。壮大な草原が広がっている。やっぱり昼間は昼間で凄い景色です。


 「この景色を初めて目にしたのって僕達が最初なのかな?」


 「少なくとも昨日の夕焼けは私達が最初だと思う」


 崖に登らないと見れない世界。そう考えると凄い特権です!


 「さてやっちゃいましょう!」


 「そうだね。スタミナ満タンだし。元気に行こう!」


 ユージさんが台を設置してくれて、残りの天井堀りを再開です。草原とは反対側に台が置いてあったので、草原に向けて天井を掘り進めます。

 休憩を入れつつ堀進め五時間程で天井は完了です! 後は下を掘って行くだけです!


 「落ちたら困るから端の手前を掘ってから端を掘ろうか」


 「うん」


 ユージさんの提案に私は頷いて、休憩後今度は地面掘りです。

 腰ぐらいまで掘った後、草原の方の端を掘り同じ高さにして反対側に掘り進めて行きます。五時間ぐらいで反対側まで掘れました。

 リアルではこんなに長く作業するのは大変ですが、ゲームは疲れないので飽きなければ続けられます。まあスタミナは減りますがまだ80%以上あります! 長い時間した割には減っていません。


 「どうしたの?」


 「え? あ、うん。こんなに長く作業したのにスタミナがまだ80%以上あるなぁって思って……」


 私が考え込んでいたのを見てユージさんが質問をしてきたのでそう答えると、ユージさんは頷きました。


 「君にあった作業なんだと思うよ。だからスタミナが減りづらい。僕からすれば、スタミナうんぬんより、この短時間でこれだけ掘れた事が凄いよ!」


 ユージさんに言われて私は周りを見渡した。

 私の背丈より高い3メートル幅のトンネルが掘らさっています。軍手でなければどれくらいの時間がかかる事かわかりません。

 そう思うと、おじいちゃんに感謝です!


 「この軍手のお蔭だね」


 私が軍手を見つめそう言うと、ユージさんも軍手を見つめ頷きました。


 「こんな凄いのを作れるソレイユさんのおじいちゃんに会ってみたいな」


 「私が錬金術師になれるぐらいになったらきっと出会えると思う。そうしたらおじいちゃんを紹介するね!」


 「楽しみに待っているよ」


 私は微笑みあって、また作業を再開です。

 今度は草原側に向かって堀進めて行くと、後少しで端っこという所で雨が降ってきました。虹の刻になったようです。

 スコールのような土砂降りの雨は、景色を白くぼやかしています。


 「ねえ、何かさ。水の音が聞こえない?」


 「水の音?」


 ユージさんの言葉に私は耳を澄ました。

 確かに水に降り注ぐ雨の音が聞こえます。それも結構近いです。


 「近くに湖って見えたっけ?」


 私が質問をするとユージさんは首を横に振りました。見てないって事です。私も見ていません。

 目の前の草原の中に隠れている池でもあるのでしょうか?


 「あー!!」


 突然ユージさんが叫んだので、ユージさんを振り向くと草原を指さしていました。草原に振り向くも何に驚いたのかよくわかりません。


 「どうしたの?」


 「この草原だと思っていたところって、沼みたいなところかも! 水の正体ここ!」


 どういう意味なんでしょう?


 「気を付けて草原を覗いてみて!」


 ユージさんに言われて、穴ギリギリまで行って草原を見てみると、驚く事に草は水草でした! この雨で水位が上がり波紋がはっきり見えます!

 そう言えば、夕日の時にキラキラと草原は輝いていました! あれは水が輝いていたんですね!


 「これ以上掘るのはよした方がいいかもね。ここから水がこっちに流れ出したら大変だよ。気づいてよかったぁ」


 私は驚きで頷く事しか出来ません。

 見ているとドンドン水位が上がってきます。私達は雨が止むまでずっと草原だと思っていた広大な沼を見つめていました。


 雨がやみ夕の刻になりました。水かさは草の高さまであり、私が掘っていた高さも草とほぼ同じ高さです。知らずに掘り進んでいれば、こちら側に水が渡ってきたのは明らかです!


 「これどれくらいの深さなんだろう」


 ユージさんはそう言うと、反対側に立ててあった棒を取りに行きました。元の長さに戻して持ってきて、草原いや沼に棒を突き立てました。


 「3メートルに」


 底は反対側の地面と同じようで、棒の高さは反対側に立てた時と同じ高さにあります。


 「トンネル上から掘って正解だったね。知らずに先ずはって、地面と同じ高さの所を掘っていたら水が流れ込んで大変な事になっていたね。取りあえずこの事を伝えに行こう」


 ユージさんの意見に賛成し頷き、帰る支度をする。支度と言っても使わなかった袋と軍手をリュックにしまう程度です。

 台はこのままここに置いておく事にします。って、持って帰っても仕方ないので。


 「「ワープ」」


 私達は名残惜しいけど、ギルドに戻ったのです。


 崖の向こう側が沼の様だと伝えるとトンネル堀りは中止になりました。それでも★一つ貰え、トンネル掘りは失敗に終わったけど、充実した時間でした!

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