108話目~生命《マナ》の力
88日の光の刻にINすると、ユージさんはいつも通り臼でごりごりと魔石を粉にしていました。
目覚めの刻だとまだいない事も考えられたので、光の刻にしたのです。
テントをたたみ、担当の人に話しかける。
「おはようございます。クリスタルがあると思う迷宮を発見したのですが」
「もうですか!?」
「はい。場所はここです」
受付のお兄さんからもらった地図で、場所をユージさんは教える。
「この地図、お借りしても宜しいですか?」
「はい。どうぞ」
「いやあ。本当に助かりました!」
「あの一つだけ。そこ凄い湯気が充満していて、そのまま入るのは無理かと思います」
「なるほど。何か対策を立て向かいます。ありがとうございました」
頭を下げられたので私達も下げた。
そして、トボトボと歩き出す。
「さてどうしようか? どうせだからこの奥に行ってみる?」
「うーん。私はチックに会いたいな」
「そうだね。会いに行こうか」
「うん」
私達はチックがいる森へワープしました。
着いて唖然としてしまう。
デーンと私と同じぐらいの大きさのブルーに白が混じった色の鳥が目の前に!!
これってチックでしょうか?
えーと、6日程でこの成長ですか!?
前は確か10日ほどで、普通の鳥の大人サイズに成長したんだよね?
え? チックってどれくらい大きくなる鳥なの?
ミミズってそんなに栄養があるものなのかな?
「どうした二人共惚けて」
「……え? あ……チックですよね?」
「そうだ。大きくなっただろう」
ユージさんも同じく驚いて惚けていたようです。
大きくなり過ぎじゃないかな? エサ足りなくなってない?
「凄いね……。想像以上だよ」
ユージさんが呟いた。
「あの、触っても大丈夫かな?」
「もちろんだ」
ヒムネさんは人の姿でチックを撫でてみせる。
私もそっと反対側からチックを撫でてみた。
触り心地はとてもいい。つやつやしていて、ずっと触っていたい。
『オトモダチ……』
うん? 今のチック?
「え? しゃべった!?」
「言葉まで覚えるなんて!」
「ワシが教えた。どうだ凄いだろう?」
私達は頷いた。本当に凄い。
『オトモダチ……』
「うん。お友達」
私は、そう返しながらまた撫でた。
『ほしい……』
「うん。ほしい。……うん? え? ほしいの!?」
『サミシイ……』
私とユージさんは、顔を見合わせる。
この呪われた森に来てくれる人などいないだろうから……。
「お友達かぁ。うーん。探してみるね」
ユージさんがそう言うと、嬉しそうに羽を広げました! 大きいです!
「ねえ、ところでヒムネさん。所々の木だけ凄く回復が早いんだけど……。どうしてかわかりますか?」
ユージさんが指差す方を見ると、枯れた木々の中に枯れていない木があります! 今まではなかったので、あの木だけこの数日間で戻った事になる!
「うーん。原因はわからないが、チックが止まり木にしている木だな。お気に入りの木が、数本あるのだ」
へえ。じゃ、チックに不思議な力があるのかな?
「ちょっと見て来ていいですか?」
「別にかまわんが」
ユージさんが言うと、頷いてヒムネさんが答えた。
私達は、普通の木に戻っている木の側に行く。
ユージさんは、屈んで土を触る。
「うーん。ここだけ土質がいいみたい」
「え? なんで? 魔力が少ないから?」
「うーん。さあ、どうだ……」
ドサ!
すぐわきに何かが落ちてきました。見上げると木の枝にチックが止まっています。
「ビックリした。チックのふんか……」
「うん……」
「そっか! それだ!」
「え? 何?」
「ふんだよ! 栄養があるから木が育ったんだ! つまり復活した! ちょっとミミズを見てみる!」
「え? 何でミミズ!?」
走り出したユージさんを追いかけて、ついミミズを見てしまいました!!
「きゃー!! 何これ!?」
ミミズは通常の大きさの何倍も大きいのです!
「やっぱり!」
「やっぱりって?」
「何かわかったのか?」
ユージさんは、頷いた。
「この生命の木のところの魔法陣は、生命を放出している。それで木は成長していくんだけど、この恩恵はチックとミミズにもあったんだ。チックは、そのミミズを食べて、微かに生命が宿るふんを木の脇にするからそこだけ育った!」
なるほど! それなら納得です!
生命の力って凄い! チックの育ち方が半端ないもんね!