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お二人様のモフみみ錬金術師  作者: すみ 小桜


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102話目~薄暗い緑の世界

 確かめようという事になったけど、さてどうしましょう?

 一応、穴の所に行って上からのぞいてみるも見えません。


 「うーん」


 ユージさんは、考えながら振り返ります。

 そこは崖の様になっていて、ここが一番高く、段々緩やかに低くなっています。私達は、低い所からこの小川に下りました。


 「まさかと思うけど、この壁の向こう側に何かあったりして。地図で見てみようか」


 「あ! そう言う手もあったね!」


 もしこの崖が洞窟のようになっていたとして、表示されるかどうかわからないけど、やってみる価値はあるよね?


 「うーん。普通にこの崖の上が表示されているね」


 板の地図で確認してみるも、やっぱりわかりません。そもそも空洞でなければ、そのように表示されちゃんだし……。


 「もう、穴開けてみる?」


 「あ、その手があったね! 下に開けたら落とし穴になちゃうけど、別に横にあける分には文句は言われないよ。きっと」


  適当に言った事が、適用されちゃった。でも、ユージさんの言うとおり迷惑にならないとは思うけど。ただ……


 「水が溜まってるって事ないよね?」


 「……たぶん? 小さくあけようか」


 「そうだね」


 もしものために、小さな穴を掘る事になりました。

 軍手をはめて、いざほりほりです!

 何か久しぶりの様な気がします。


 小さく掘る事になったので、腕一本ぐらいの大きさ。だから片手で掘って行きます。右手で掘って……。

 腕がすっぽり入りぐらいにまで掘れました。貫通はしてません。


 「ねえ、僕も掘っていい?」


 「え?」


 「見て。最後にソレイユさんが掻き出した土。これ湿ってる」


 「水が溜まってるって事!? だったら開けたら凄い勢いで出て来るんじゃ!」


 「まあ、可能性はないくもないけど。でもここが空洞で、水が凄く溜まっているとするならば、それなりの高さから水が流れている事になるんだよね」


 うん? そういうもんなの?


 「僕的には、川がどこかで二手に分かれているだけじゃないかと……。なので、問題は魚が大変な事になるって事かな?」


 「そうなんだ……」


 よくわかんないけど、ユージさんの腕は私より長いです。なのでもう少し掘れます。

 私は、軍手を渡しました。


 「ありがとう」


 ユージさんは、軍手をはめて堀始めます。掻き出す土は、湿っている。


 「うん?」


 ユージさんは、手を抜いて穴を覗き込んだ。


 「やっぱり貫通している。しかも少し明るいから中が見えるよ」


 「え? 本当?」


 私も覗いてみると、キラキラ見える。


 「たぶん。壁が湿っているからキラキラ光って見えるんだと思う。掘ってみよう!」


 はいと、軍手が渡される。

 掘るのは私の仕事です!

 前にトンネルを掘ったスピードは、洞窟を抜ける為に掘った時より早かった。たぶん、トンネル師のスキルは、穴を掘るのが早くなるんだと思う。


 今度は両手で、堀進めます。15分ほどで掘り終わりました。久しぶりに楽しかったです。

 ユージさんも通れる大きさです。

 穴は、低い所に掘ったのですが、ユージさんは足から入りました。私は頭から。

 中に入る時、ユージさんが抱き上げてくれました。


 中は、縦長の空洞でした。見上げれば木の根も見えます。一か所ちょこっと穴が空いている様で、そこから光が差し込んでいてうっすらと明るいのです。

 穴の中は、じめっとしているらしく壁は濡れています。それが光に反射してきれいです。


 そして、穴の中に小さな滝が!

 川が流れて来ている方向の壁から私の背丈ほどの高さの滝があるのです。そこの下に水が溜まっています。

 ユージさんが立っている場所より低くなっているんだと思います。


 「なんか凄いね」


 「うん」


 ユージさんが私を下ろしました。


 「ユージさん! この地面、コケが生えています!


 「じゃ、この溜まった水の中にもコケが。魚が落ちて、あの川に繋がったトンネルがあるんだろうね」


 ユージさんが、池に近づきます。私もついて行く。

 って、10歩ほど歩いただけですけどね。


 「これって!?」


 「何? え?」


 凄い浅い池だった。地面にはコケがびっしり! その上を魚が滑る様に泳いでいる。


 「これ、壁にもコケが生えているよ」


 「え?」


 顔を上げるとユージさんは、壁を触っていた。さっき輝いていたのは、このコケが濡れて光っていたからなんだ。

 私達は、壁と地面のコケを袋に入れて行きました。


 「何とかなったね」


 「うん。でも大丈夫かな? コケをとっちゃって」


 「大丈夫どころか大助かりじゃ!」


 「きゃ! 何?」


 返事を返したのは、ユージさんじゃなかった!

 ここには、私達しかいないはずなのに!

 ユージさんにもちゃんと聞こえていたようで、辺りを見渡しています。


 「ここじゃ!」


 ちゃぽん。

 声は、池からでした。

 軽くジャンプして、緑色のカエルが池から出て来ました!


 「きゃ……」


 大声で叫びそうになった所を、ユージさんが咄嗟に塞ぎました!


 「ごめん。ここで大声は……」


 びっくりした! カエルにもユージさんにも。


 「待っていた。ここに訪れるであろう。錬金術師様を……」


 あ、また困りごとがあるんですね?


 「ワシは、この命の池の主。ヤドと申す」


 「僕は、ユージ。彼女はソレイユです。すみません。勝手に穴を掘って入ってしまって」


 「いや、助かった。どうか呪いを解いてほしい」


 ジッと見つめられ、そう言われました。

 やっぱり呪いなんですね。

 私達は頷いた。

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