101話目~魚が運んで来たコケ
「え~! 壊しちゃったんですか!?」
カウンターのお兄さんが驚いて叫びました。
お兄さんが手にしているのは、私達が借りていたワープマーカーです。
ヒムネさんがいる森の魔力を吸い取った為、使えなくなりました。
ユージ―さんの魔力を入れようとしたけどダメで、ワープマーカーの所に移動しようとしても出来なくて、どうやらワープマーカーの中の魔力を抜かないとダメな様なのです。
「すみません」
「うーん。困ったなぁ。そんなに使う物ではないけど……」
「えっと……弁償ですか?」
「発明品を弁償なんて出来ないでしょう? ……許してあげる代わりにやってほしい事があります」
「え!? そんな独断で大丈夫?」
お兄さんの言葉に、ユージさんが驚いて返します。
「大丈夫。これ俺のだから」
「え!? ごめんなさい」
「ごめんなさい」
私も慌てて頭を下げた。
「だからお願いを聞いてくれたら許すって」
「か、寛大ですね」
「うーん。無料奉仕してもらう事になるけどね」
「え、一体何を?」
「やっと新たな街を作れる場所が発見されてね。でもまあ、そこに行けるのは、錬金術師だけだからさ。結局、今奥に行けるプレイヤーだけって事になるんだけど。その街を作るお手伝いをお願いしたい」
「わかりました」
「やったぁ! じゃ、君達も登録をしておくね。あ、これがそこの場所の地図ね! 宜しく!」
「はい。では……」
ユージさんが地図を受け取ると、私達はお兄さんに礼をして外にでました。
「ここ、ラキガさんが金を探していた場所の奥だね」
ユージさんが、地図を見ながら言いました。
「それにしても用意周到と言うか……」
「元々、僕達に依頼するつもりだったんじゃないかな? 出来る人限られているし。ごめんね。ただで請け負う事になっちゃって」
「別に大丈夫よ。お金に困ってないし。それに、ユージさんのせいでもないでしょう」
「ありがとう」
ユージさんは、嬉しそうにほほ笑んだ。
☆ ☆ ☆
ミチル迷宮の前を通過し、奥のごつごつした岩の場所の更に奥、ちょっとした草原。そこに人が見えます。
たぶん、材料だと思われる物も置いてあります。
「あそこだね」
「うん」
近づくとラキガさんとミケさんもいました。
やっぱりラキガさんのギルドも請け負ったようです。
「よう。お前らも請け負ったか! ここが出来ればここを起点に活動できるから便利になるよな!」
「そうですね」
「あぁ、もう。いつ見てもかわいい!」
ギュッとミケさんに抱きしめられました。
私は、女の子なのですが……。わかっているのかな? ついでに言うと見た目が子供なだけなんだけど。
「あ、あの人が指揮官だから。じゃ、な。ほら、ミケ行くぞ」
「またね、ソレイユちゃん」
「あ、はい……」
ミケさんが手を振るので、私も手を振った。
私達は、ラキガさんが教えてくれた指揮官に話しかける為に近づきます。たぶん、NPCだよね。
「こんにちは。街づくりに来た者ですが」
「あぁ。夢を信じての人ですね。宜しくお願いします。ここに建物を建てる条件として、緑色の物である事ってなっておりまして。それで、緑コケを集めてきてもらえないでしょうか?」
「わかりました」
ユージさんが頷くと、大きな袋を渡される。これにって事だよね? コケだから結構な量を探し出さないといけないかもです。
「じゃ、僕達はこっちに行こうか」
「うん」
ラキガさん達とは、反対側の島の内部の方向。
暫く進むと、小川を発見!
コケって、じめっとしたところにあるよね?
「緑コケを探して」
ユージさんは、ダウジングを使ってコケを探します。
ダウジングが大きく揺れる方に進んで行くと回転! ここら辺のようです。
見ると石に、コケの様な物がついています。
「これだね。……これ、袋にいっぱいはかなり大変だね」
「うん」
私もそう思います。
何か違う方法を模索しないといけませんね。
ふと小川を見ると魚が泳いでいます!
「あ、魚!」
「本当だね。って、この魚ちょっと凄い色してるね」
ユージさんに言われよーく見ると、緑っぽい。青っぽいとかならあるけど、緑って……。
と言うか、ほとんどの魚が緑!?
「この世界の魚って緑色なんだね」
「そうなんだね。何となく捕まえて食べる気にはなれないね」
ユージさんの言葉に私は頷いた。
魚は上流から来ていました。って! 突然ぽっと現れた!?
ううん。川の横に穴が! そこから出て来ている!
「ユージさん。この緑の魚、あの穴から出て来てるわ」
「うん? 本当だ。ちょっと待って」
ユージさんは、驚く事にひょいっと魚を捕まえた!
「わー。すごーい」
私は、拍手を送る。
「やっぱり。これ魚に何か付着して緑になってるよ。あ、そうだ。緑コケを探して」
魚を地面に置いて、ユージさんは言いました。その上にダウジングを掲げると、大きく揺れます。
「その緑ってコケ?」
「みたいだね」
ユージさんは、優しくコケを落とすと、魚を川に戻しました。
「もしかして、その先に緑になった原因があるのかもね」
「うん」
ユージさんは、川の中の穴を指さして言いました。
「確かめようか?」
「うん!」
私達は、頷き合います。
これで、もしかしたら大量のコケをゲットできるかもです!