最強剣士の産声
G・Bvsきょんと仲間たち。この勝負の行方は、一体どうなる?
「あ、あれはまさか・・・G・B?はやく、ギルドの連中を呼ばなければ」
こんにちはみなさん。
ぼくは、通称G・Bと呼ばれてます。
さっきまで僕は、とても怖い人たちに追われていました。
ぼくは、見つけられるたびにタコ殴りにされます。
「おはよう、Tレックス君」
「ああ、ひさしぶり。元気でやってたか?」
「まあね。いまも、逃げきってきたところ」
「そうか、近くまで奴らが来ているということか」
「うん、そうなるね。がんばってね」
「おう、まかせろ」
「それじゃ、僕行くね」
T・レックス君は、僕の友達だ。
見た目は怖いけど、とてもいい人だ。
「僕は、隠れるところを探そうかな」
この間の洞穴は、なかなか気持ちがよかったな。
でも、今はまだ行けないな。
見つかったばかりだし。
どこに、隠れようかな。
G・Bは、隠れるところを探しながら歩いた。
特定の隠れ家は、G・Bにはない。
「たしか、このあたりは、オーク君たちがいたところだよね」
G・Bの友達のオーク君は、先日全滅させられた。
「まだ、蘇ってないんだ。なら、何もないところに、人は来ないかな。この辺に、たしか隠れるにはもってこいの所があったと思うけど」
G・Bは、隠れるのに持って来いの、洞穴を見つけた。
「やっぱりあった。今日は、ここで一晩過ごそうかな」
洞穴を見つけたG・Bは、此処で一晩を明かすことに決めたらしい。
G・Bは、毎日ねぐらを変えている。
人に見つからないように、周囲の気配に気を付けながら。
しかし、いくら注意していても、見つけられることはある。
こんな具合に。
「よし。みんな揃ったな。相手は、超々レアの無敵モンスターと、呼ばれている相手だ。気を引き締めていくぞ」
「おう!!」
「突入!!」
G・Bの眠っている洞穴に、PCたち、プレイヤーキャラたちが、突入する。
自分たちのギルドが、無敵と呼ばれるモンスターを狩るために。
そして、どんなレアアイテムをドロップしてくれるのかと、期待に胸を膨らませながら。
「いたぞ!こいつが、ギガ・ベヒーモスか。如何にもって顔してやがるぜ」
「へりょんぱ達は、右側面を。ファントム達は左側面。俺たちが正面。いくぞ!」
こいつらは、このゲームの中で1、2を争うギルド、『きょんと仲間たち』だ。
だが、1、2を争うギルドであっても、G・Bには歯が立たなかった。
「ば、ばかな。うちのギルドは、百人以上だぞ。こんなのむりげーすぎる」
がくっ
そして、デスペナルティを受け、みんながみんな、LVを下げられる羽目になった。
「あ~あ、やっちゃった。なんで、僕に挑んだりするかなあ。こんな、気弱な僕なんかを狙っても、仕方がないと思うのになあ」
G・Bには、自分がいかに強いかという自覚が、全く無かった。
「まあいいや。寝床を変えて早く寝よ」
G・Bは、ギルド全滅の知らせが届いているだろう。
それを聞いた、別のギルドがまた来るかもしれないと思い、他のねぐらを探し、そこで眠ることにした。
「おい、聞いたか。あの五本の指に入る、きょんのギルドが全滅させられたらしいぞ」
「あのギルドが全滅?なに冗談言ってんのよ。どんな奴が、全滅させたって言うのよ。戦争もなかったのに」
このゲームでは、たまにギルド同士の戦争が行われることがある。
その戦争でもきょん率いるギルドは、高い勝率を誇っている。
もちろん、ギルドでのモンスター討伐ともなれば、100%の確率で討伐してみせる。
そんなギルドが、全滅したというのは、だれも信じられなかった。
「それがよ、知ってるだろ。G・Bのこと」
「まさか、G・Bにやられたの?」
「そのまさからしいぞ」
「ほんとにいたんだ、G・Bって。ただの、噂だと思ってた。でも、それなら納得かも」
それに聞き耳を立てている男がいた。
きょんである。
「くそっ。好き勝手噂しやがって」
きょんは、剣士としても名が知れているギルドマスターである。
「あの、くそベヒーモスめ。今度会ったら、たたきのめしてやる。もっと、すごい装備をしてな。首を洗って待っていやがれ」
そのころ、背筋に寒気を覚えたG・Bは眠りから覚めた。
「さぶっ。なんだったんだろう?すごい寒気がした・・・さむけ?」
ベヒーモスであるG・Bは、今まで寒気など感じたことはなかった。
「へっくしょん!」
もちろん、くしゃみもしたことがない。
なにがなんだかわからず、辺りを見回してみたが、何も変わらない。
気のせいか、洞窟の中が大きく見える程度である。
「どういうことだろ?」
うでぐみをG・Bはする。
そのとき、なんか違和感があるなと腕を見てみた。
「なんじゃこりゃ~!!」
そのうでは、人間の腕だった。
腕も足も体も顔の手触りも、人間のそれだった。
信じられないG・Bは、川まで走っていった。
そして、川をのぞき込んだ。
すると、川に移りこんだ顔は、まぎれもなく人間の顔をしていた。
「まさか、この体で人間と戦えっていうのか?うっ、さ、さぶい。とにかく洞窟に戻ろう」
裸のG・Bは、寒さに凍えながら洞窟へと向かった。
どうしたものかと考えながら、洞窟までG・Bは戻ってきた。
すると、さっきは気が動転して気づかなかったが、人間の服一式と真っ黒な剣が置いてあった。
「黒ずくめでダサいけど、これでも着ておこうかな。無いよりましだ」
そして、洞窟の周囲に誰もいないことを確認して、G・Bは外に出た。
歩いていると、向こうから人が歩いてきた。
「やばっ」
見つかるとやばいと思ったG・Bは、木の陰に隠れた。
そして、人間が通り過ぎると、G・Bは思った。
小さい体も隠れやすくていいと。
そして、またG・Bは歩き始めた。
「うが~っ」
今度は、ゴブリンの群れが襲い掛かってきた。
「まっ、待ってよ、ゴブリンさんたち」
ゴブリンの方も、びっくりした様子で、攻撃を止める。
ゴブリンとしても、人間の言葉が分かるのは、初めての出来事だった。
そりゃそうだ。
ゴブリンは、人間を襲えとインプットされてる。
だが、人間の言葉が分かるなんてことは、NPCであるゴブリンにはインプットされてない。
そのゴブリンたちが、人間の言葉が理解できる。
ゴブリンたちは、何が何だかわからなくなっていた。
頭を抱えているもの。
頭を抱えながら、転びまわるもの。
いろんな反応をしていた。
「ちょっと落ち着いてよ、ゴブリンさん」
その言葉を聞いたゴブリンたちは、ますます混乱する。
そして、混乱しすぎて疲れたゴブリンたちが、ようやくG・Bの言葉に耳を傾けた。
「おちついた?」
「す、すこしだけ」
少し様子の落ち着いたゴブリンたちにG・Bは、事の次第を話した。
「信じられない。おまえがG・Bだというのか」
「うん」
「あの、モンスター最強のG・Bだと・・・?」
「最強かどうかは知らないけど、ぼくはG・Bだよ」
それでも、やはりゴブリンたちは、納得がいかない。
ゴブリンたちは、無い頭で考えた。
そして、ある考えを思いついた。
「おまえがG・Bだというなら、証明して見せろ」
「どうやって?」
「ここで戦って勝ってみせろ。そしたら、認めてやる」
そう言うと、ゴブリンたちはG・Bに飛びかかった。
勝敗は明らかだった。
低レベルのプレイヤーに負けるレベルなのに、勝てるはずがなかった。
一人のゴブリンが口を開く。
「ふほふぃは。ほふぁふぇふぁ、ふぉんふふぁーふあふぃふょうら」
|(つよいな。おまえは、もんすたーさいきょうだ)
「何言ってるか分からないけど、分かってくれたみたいでよかった」
ゴブリンに勝っても何の証明にもならないが、ゴブリンたちはそれで納得したらしい。
ゴブリンたちは、G・Bを自分たちの巣まで連れてきた。
「まあ、これでも食え」
何の肉か分からないものを、ゴブリンは差し出した。
いつもなら、何のためらいもなく食べたであろうその肉に、少し抵抗をG・Bは覚えた。
が、腹が減っていたのでG・Bは食べた。
「これからどうする気だ。その体で、人間と戦うのか?」
「もともと戦いは好きじゃないし、小っちゃくてこの体は隠れるのにもいいし、山奥で一人で暮らそうかな」
「そうか、それもいいかもな。今日は、ここに泊まっていくか?」
「ううん、もうちょっと歩いてみる」
「そうか、では達者でな」
「うん、またね」
G・Bは、こうしてゴブリンたちの巣を後にした。
歩いているうちに、遠くに山が見えてきた。
「そうだ、あそこで今日は寝ようかな」
歩けど歩けど、山は近づいてこない。
「全然山に近づいてる気がしない。なんで?それに、なんだか、おなかが痛い。」
当たり前だ。
お腹の方は、なんの肉か分からんものを、人間の体で食すからだ。
山に近づけないのはベヒーモスの大きな体と、今の小さくなったG・Bは、歩幅から何から何まで違うのだから。
それに、人影が見えれば隠れながら歩いている。
それで、よけいに同じ距離を進むにしても、時間がかかっているのだよ。
G・B。
「まあいいや。今日はその辺の森の中で寝よう」
森の中でG・Bは、眠ることにした。
「ざ、ざむいよう」
ちかくに、火なんかない。
火の起こし方なんて、G・Bは知らない。
G・Bは、気が遠くなり、ついには気を失ってしまった。
自分は人間の体だと、何時になったら自覚するのやら。
しかし、それもここまでだ。
哀れベヒーモスのG・B。
安らかに眠れ。
となるはずだった。
「う、うん?」
「あっ、目が覚めました?」
G・Bは、見知らぬところで、寝かされていた。
そして、その横には見知らぬ少女がいた。
「あんなとこで何やってたんですか?寝落ちまでして」
「えっ?」
何を言っているのだ、この人間は。
自分も、一応人間の姿なのに、G・Bはそう思った。
「ここまで運ぶの大変だったんですよ」
その少女は、人間の姿のG・Bを助けたらしい。
元モンスターのG・Bを。
G・Bも、なんとなくそれは理解した。
そこで初めてG・Bは、自分が単なるNPCではなくなったことを感じた。
「助けてくれて、ありがとうございました」
「別にいいですよ。あの、まだ始めたばかりなんですか、このゲーム」
G・Bは、何と答えていいのか分からず、相手に合わせることにした。
「そうなんですよ~、もう、わからないことだらけで」
「だったら、私とフレ登録してくれませんか?私がなんでも教えて差し上げますので」
なんだかこの子、必死な気がする。
G・Bは、そう思った。
「いいっすよ」
「ほんとですか?」
「嘘は言わないっすよ」
それを聞いた少女は語り出す。
「わたし、一人でプレイするのが好きなんですけど、あまりに弱くてモンスターに出会うと、すぐにやられちゃうんです」
「そうなんだ~」
「だから、一度フレをつくってみたんですが、弱すぎて見捨てられちゃったんです」
「へ~ぇ」
G・Bは、何の思い入れもない様子でそれを聞いていた。
そんなに弱いんだこの子。見てみたい気もする。
なんてことを考えながら。
「だからと言って、ギルドに入る勇気もなくて・・・」
「ふ~ん」
「こんな私でも、ホントにいいんですか?」
「いいよ、でも一人が好きなんじゃないの?」
自分でも、この少女は一人が好きだと言っていた。
なのに、一度はフレを作ってみたという。
そして、今度は自分を誘っている。
なぜなのか、G・Bは気になって聞いてみた。
「一人は好きです」
「じゃ、なんで?」
「他の綺麗なエリアを見てみたいからです」
「だったら、一人で見に行けば」
「もう、さっきも言ったじゃないですか。モンスターにすぐにやられちゃうって」
「あっ、そっか。でも、なんで俺なの?」
「ええっと、教えてあげたらすぐに強くなりそうだし、いい人そうだし」
元モンスターですけど。
そう思いながら、G・Bは了解した。
「それじゃ、フレ登録をっと、あ、あれ、フレ登録できない?あ、あれ」
それを見ていたG・Bは、どうなったらフレ登録出来たことになるのか聞いてみた。
「そうなんだ。そうなったら、フレ登録ってやつができるんだ」
そうG・Bが聞いた瞬間、フレ登録ができた。
GBというハンドルネームで。
「GBさんですか。私は」
「ユウキでしょ。知ってるよ」
「えっ」
ユウキは、何で知っているのか、少し疑問に思った。
少しだけ。
まあいいよね。悪い人じゃなさそうだし。
おい、そこはもっと疑問に思うところだ。
不用心すぎるぞ、ユウキ。
「それじゃ、私はこれで落ちますね」
「え、あ、うん」
「明日私は、3時頃INしますね。それじゃ」
「それじゃ」
落ちる。
何が落ちるのかとGBが思っていると、ユウキはその場から消えた。
変な人だなと思いながらも、
「でも、可愛かったなあの子」
GBは気づかないが、プレイヤーキャラを可愛いと思ったのは、これが初めての事だった。
なんとなく、思い付きで書きました。
いずれ、続きを書くでしょう?
GBの正体を知ったら、ユウキはいったいどうするのでしょうか。運営に報告?だとしたら、GBがちょっぴりかわいそう。