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第四十五話



音也に聞くなり調べてくるなりしなかった自分が悪かったんだけど、なんだろう、この……とにかく疲れた!

二層の探索……って思ってたけど、その前に一回休憩したいや。

せっかく一層の最初の町に戻ってきたんだし、神社にいってみようかな。

結局あの一回しか行ってないし、これから層を変えてどんどん上に向かっていくならなかなか来られなくなるかもしれないし。

……問題はどこから神社に行ったかってことなんだけど……。

マーカー、とか……つけておけばよかった……うう、ぜんっぜん覚えてないや。

まぁ、それは今更しょうがないし、とりあえず適当に歩いてみよう。

見つかったらラッキーだし、見つからなかったら今日は縁がなかったってことだ。

……ついでだしお団子屋さんも見つけられたら買っていこう。



そんな感じで気楽に歩き出したわけなんだけど、幸いものの数分で赤い鳥居を見つけた俺はお賽銭箱の前で手を合わせ終わったところだった。

時間が遅いからか、巫女さんはいないみたい。

あの人住み込みなのかな、それとも通いなのかな。

住み込みだとしたら、神社に女の人一人だけで夜を過ごすの、危なくないんだろうか。

神社に押し入って狼藉を働くような人がいるとは思いたくないけど、うーん。

なんて考えてもどうせ今日はいらっしゃらないんだし、今度会えたらさりげなく聞いてみよう。


「あれ、ハク、どこ行くの。」


ふと、頭に乗っていたハクが地面へと降り立った。

そのまま歩き出す後を追う。

ハクは言ってしまえばこの神社の子だから、どこか行きたいところがあるのかな。

肩の小夜に、ハクとの出会いを語りながら歩いていると、ハクはすぐに立ち止まった。

俺を振り返って、コン、と小さく鳴く。

見ればそこには簡素な木の椅子があって。


「わ、ありがと。」


どうせ長居するのがばれてる……。

けど、居てもいいよって言ってもらえてるみたいで嬉しいな。

神社って別に何をするわけじゃなくても空気って言うか、雰囲気って言うか、とにかくいるだけで落ち着くんだよね。

今は夜だし人もいないから静かでなおさら。

あぁでも、この神社は人に忘れられたって言ってたし、神様のことを思うなら人がたくさん来てくれた方がいいのか。

音也に頼んでインターネットでお知らせしてもらったら、皆神社に来てくれるようになるかな。

けど神社に来るのと神様を想うのとは別だしなぁ……うーん。

とりあえず、人もいないから迷惑にはならないだろうし、後でお庭で剣舞させてもらおう。

前回喜んでもらえたし、お庭だったら届かないかもしれないけど駄目じゃないと思う。

ログアウトするのは二層でしたいし、時間確認しておこう……と思ったところでふと、ログが目に入った。

一層と二層を行ったり来たりしてるのが残ってて……その前。


「単独……撃破報酬……?」


ぴ、とつついて詳しい内容を見る。

要は王様スライムを一人で倒した報酬、ってことらしい。

一人って言うかハクと小夜もいたんだけどそれはいいの?

まぁくれるって言うならもらっとくけど……。

アイテムは……これか。


「スライムアイ……。」


実体化させてみたそれは、濃い青色のビー玉みたいなアイテムで、手に一つ、あとストレージに二つ残ってる。

説明文は、えぇと……脳内で魔法の呪文を唱えて対象を見つめることで、魔法を発動させる……と。

……んん?

これ、いらなくない?

だって、俺はファイアって言ったんだって思い込めばファイア使えるじゃん。

見つめなきゃならない時間の分隙が多いだけじゃない?

……あとでナオに聞いてみよう、俺が考えてても答えわからないよ。

ついでに色々落ちてたみたいなアイテムを一つずつチェック。

一人で倒したことになってるから、アイテム全部俺に落ちるんだね。

ハクと小夜も一緒だったのに、なんか申し訳ないな……。

何かお返しできるもの……って言っても……ううううーん。

今度美味しいもの作ってみるからね……くらいしか、できないや……。

……たべてくれるのかな。

音也の話だと、俺のMPがご飯ってことだったけど。

出してみて食べられなさそうなら自分で食べればいいか。

どっちにしてもいまは食料……はあるけど設備と時間がないし、また今度だ。

そろそろ剣舞して、二層に上がってちょっと見物してログアウトしようかな。

明日もあるんだし寝ておかないと。


「ハク、小夜。少し離れててね。」


抜身の剣を持って舞うわけだから、万が一ぶつかったりして怪我なんかさせちゃったら大変だ。

素直にお庭の端っこでお座りしてくれてる二人にありがとうと手を振って、剣を抜く。

神様がいらっしゃる方向を向いて、一礼。

せめて少しでも、神様のお力になれていればいいんだけど。



「じゃあ、そろそろ行こうか。」


剣を納めて礼をした後。

ずっと大人しくお座りしてくれてた二人を抱えてそう言えば、ハクがぴょんと肩に上がってきた。

そのまま首を覆うように、出会った頃みたいに襟巻スタイルになる。

その状態で顔だけ持ち上げてペロリとほっぺたをなめてくれるけど、剣舞、気に入ってくれたのかな。

ハクも神様の使い……だとおもってる……から、気持ちよく感じてくれたんだったらいいんだけど。

小夜には付き合わせただけになっちゃったかもしれないけど、ご機嫌な声でにゃあって言ってくれたから、多分、大丈夫……かな。

鳥居をくぐる前にもう一度頭を下げて、俺は神社を後にした。

てくてくと歩いて、噴水のそばへ。

相変わらず人はいないみたい。

っていうか、俺最初はこんな鏡みたいなの見えなかったんだけど、これ他の人にも見えてるのかな。

見えてなかったら急に現れてきた人みたいでビックリしない?

……今は誰もいないけど。

急に人が消える瞬間、なんて見られないように、今のうちに二層に行ってしまおう。



降り立った二層の地面は、改めてみれば濃い茶色の木みたいだった。

とんとん、と何度か踵で地面を蹴りつけてみるけど、うーん、特に普通。

一層の地面も、最初の町は石畳だったから木造でも変じゃないか。

町の建物も二層は木造ばっかりだ。

一層は全体的に白い街だったけど、二層は茶色が多い感じ。

一層の大きな建物に比べて、二層は二階建てくらいのこじんまりした建物が多いかな。

お店……とかは歩きながら見ることにして。

マップを見ながら適当に動き出す。

一層の入り組んだ街並みに比べて、二層は道も広めで迷子にはなりにくそう。

全貌がどれくらいの大きさかはわからないけど、これなら割と簡単に地図完成させられるんじゃないかな。



……なんて、考えた俺が甘かったです。

幸運だったのは、街の一番外側をぐるりと巡る道に出られたことだった。

地図によると、街の出入り口は一層と同じく東西南北の四つ。

出てみようかと思ったけど、せっかくぐるっと巡れるだろうから、同じところに戻って来るはずだって後回しにしたんだよね。

円形の壁に取り囲まれているような街だから、そのまま一周してさ。

その予想はちゃんと当たってて、俺は初めに見つけた門……東側の門の前に戻ってきていた。

けど!


「時間切れ、かなぁ……。」


アラームこそまだ鳴ってないけど、もうそろそろログアウトして寝ないとだ。

急いで鏡みたいなものがあった場所まで引き返して、ログアウトボタンを表示させる。

結局ほとんど探索らしいこと何もできなかった……。

まぁいいか、四つの出入り口があるってわかっただけでも収穫かな。

ナオたちはもう知ってるかもしれないけど。


「ハク、小夜。俺、そろそろ戻るね。……また、お昼ごろに来るから。」


しゃがんでそう言えば、口々に声を出して返事してくれた。

ふふふふー、可愛いんだー。

ずっと見つめてなでなでしてたいけど、時間は有限なんだよね……。

残念だけど、ゲームを出ないとだね。

またね、と告げて、ログアウトボタンを押す。

ふんわりとした浮遊感に目を開けると、見慣れた天井が見えた。

起き上がって、体を伸ばしながらお風呂場に向かう。

簡単にシャワーを浴びて寝よう。



お湯を浴びると体はあったまるし、体が温まると眠いよね。

すやすやと寝息を立てている音也の隣の布団に潜り込んで目を閉じる。

目覚まし……は、もういいや。

明日音也が起こしてくれるはず……おやすみなさい……。






すみません。

来週から更新が滞る可能性がかなり高いです。

四月まで休みが日曜日だけなのです。

ごめんなさい。

書けたら、書きます。

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