Day 6 土曜日
今日は特に学校に用はないので、近くのショッピングモールにマリと一緒にお買い物だ。理由はもちろん、ダンスパーティーに着ていく服を買うためだ。マリが、
「それにしても、良かったわねー、リゼ。念願のシュウくんと踊れて。そのイベントのためにこの学校に入ったんじゃないの?」
「まさかー、そんなことないよ。」
「でも、シュウくんと学校を同じにしたかったからこの高校にしたんでしょ。だってリゼの学力なら、こんな地方じゃなくて東京の難関有名私立の高校とか狙えたでしょ。」
確かに私たちの通っている高校は、県内ではトップレベルの進学校だ。ただ、東京の難関校と言われるところと比較すると、差があることは否めない。
「それはないとは言えないかも、まあ、高校は県内にしておきたかった、からかな。」
そんな会話をしつつ、ダンスパーティーに着て行くことができる、大人っぽい少しフォーマルな服をお互いに買った。
その後、フードコートでハンバーガーを食べて、今はやりの映画を見た。充実した休日を過ごした。
家に帰って、買ってきた服をハンガーにかける。うーん、楽しみ、早く明日にならないかな。そんなことを考えているうち、パパとママが、学校から帰ってきた。講堂をダンス会場にする準備は、保護者会が主催するため、親たちが学校で準備をしている。とはいっても実際に準備をしているのは業者さんで、親たちはもっぱら準備という名の懇親会をしているらしいが。
帰ってきたパパとママは、いつもと違って表情が険しい。何なんだ、いったい。そして、「リゼ、パパの書斎に来なさい。とても大事な話があるんだ。」
ととても深刻そうな口調で言った。パパがあんな口調で話すのは珍しい。一体どんな深刻なことを言われるんだろう。まさか、シュウくんとダンスをするのがそんなにまずかった?うーん、全く想像できない。
「今日、ダンスパーティーの準備で、瀬野川さんとお話をしたんだけど、リゼは瀬野川さん家の息子さん、えーと、修太君を知っているよね。」
「うん、今度のダンスパーティーでパートナーなんだ。なんかまずかった。」
気になったので、率直に聞いてみた。
「いや、まったくまずくはない。そう、2人でダンスを踊るのはもともと知っていたし、問題ない。で、話を戻すと、修太君が、あのセノユズホールディングスの御曹司だってことは知っていたかい。」
「いや、初めて聞いた。びっくり、セノユズって、あの上場してるすごーく大きい会社の?」
「ああ、そうだとも。」
と言って、パパはセノユズホールディングスのウェブサイトを書斎のパソコンで私に見せた。
「びっくり、で、それとこれとが、どう関係してくるの?」
「あー、悪い悪い。実は、今まで言ってこなかったんだけど、このセノユズって会社は、瀬野川さんと、リゼのいとこ叔父、つまりパパの従兄弟が共同責任者として運営していて、お互いにいくつかの事業を担当しているんだ。ほら、いるだろ、お金持ちだけど、独身のメガネをかけてる人。リゼもたまに正月とか会うだろ。」
「ああ、知ってる。」
まだ、パパの話は続く。いったい、どんな展開なんだ!?
「それで、俺の父さん、リゼのおじいちゃんの代の時、うちの事業のせいで倒産しかけたときに、瀬野川さんがなんとか立て直してくれた経緯があってね。それで、リゼと昇太君が生まれたころ、実は、なんていうかな……許婚にして、ゆくゆくは1つの家にしていこうみたいな話が持ち上がったんだよ。」
「い、いいなずけ!!!それでその時、なんて答えたの?」
「ごめん、今まで黙っていて。実はサインをしてあって、契約書もここにあるんだ。あの時、最終的にはきちんと本人たちに話をさせてからにしようってことでまとまったんだけど。最近またその話が再燃していて。あ、でもパパとしては、リゼが恋愛するのは自由だから、リゼの恋路を邪魔するつもりはないし、破棄してもいいって考えてたんだ。ただ、最近どうもリゼが修太君のことを好きなんじゃないか、ってママが言い出してさ。今回のダンスも一緒に踊るっていうし。それで、ちょっと修太君とゆっくり話したらどうなんだってことになって、明日のダンスの後、両方の家族とディナーってことになったんだけど、いいかい?」
「えーっ!うん、もちろんうれしいんだけど、なんかいろいろ話が早すぎてまとまらないというか、うちってそんなにお金持ちだった?」
「そっちかい。まあ、かしこまらなくていいから、さ。とりあえず、な、いいだろ。」
「う、うん。」
何となく断れず、そのままOKしてしまった。
なんだかすごいことになっちゃった。あー、どうしよう!
続く