7-3 わかったこと
クロに色々と教わったおかげで、生産速度がわずかだけど上昇した。そのおかげで、生産効率がちょっとだけ上がったのはありがたい。初心者魔力薬と初心者回復薬を(微)から(大)まで各種生産。もちろん、鮮度の悪い魔力草は自分用、薬草はメイドの練習用にして、廃棄ロスが低くなるようにしている。
う~ん。“クリエイトウォータ”しか使わないからか、使用頻度の割には【水魔術】のレベルが低い。今度あれか。せっかく覚えた【短剣】などの訓練を兼ねて、戦闘訓練でもするか。良い庭があるし。動きながら“ウォータブレッド”を使うことで【ダッシュ】と【回避】も併せて鍛えよう。早く“ヒールウォータ”を覚えて、回復薬を作らないと、そろそろ【薬剤】のレベルアップも難しくなってきたし。外に出て戦う?ガチガチに装備固めてやっとウルフと同レベルの俺にできるわけないやん。
その他の薬も作りまくる。そういや、この間毒薬飲んだけど、耐性は付かなかった。悲しい。
2刻も作ると、急いで使わないといけない葉物はほぼ終わり。ついでに食べ物系についても作ってみたものの、こっちは処分に困りそう。セバンスにお願いしよう。……押し付けるとも言うが。
他の生産スキルなら別だが、【料理】については屋台や店でも持たなければレベルアップが難しいかも。何かないかな。こっちはあとでペルさんに聞くか、いや、プレイヤーのことだからクロに聞いた方が良いか。でもまだ生産系はそんなにいないって言うし……ま、それも後回しで。
あとは……【鍛冶】はまだまだだから誰かに教わりたいし、【皮革】もそうだ。そもそも、リアルでやったことがないからどうやったらなんてあまり想像できない。余分なの削って洗って干してを自分なりに何度かやっても【皮革】は覚えられなかったしな。
できそうなのは、【裁縫】と……【木工】か?木片になってれば簡単な工作くらいはできるだろう。【錬金】のレベル上げを兼ねて木片化するか。大量にある木材が場所を取ってたからちょうど良い。
庭の隅に積まれていた木材を大小さまざまな木片に“錬金”で変え、インベントリ経由で作業所へと積み上げる。置く場所が変わっただけだって?チッチッチッ。違うんだな、これが。
何度か“錬金”をしてわかったんだけど、対象スキルや技術を持っていなくても加工が、素晴らしいことに作業時間を短縮して加工ができる、万能感がある【錬金】のアーツ“錬金”。しかし、メリットがあれば、デメリットもあるわけだ。そうじゃなきゃ、バランスが崩れすぎる。
まあ、簡単に説明すると、“錬金”では1セットの素材につき、1つの物ができる。初心者回復薬でいえば、MP以外に、1枚の薬草と一定量の水、薬瓶と作業道具がそろっていると、ごく短時間で1つの瓶入り初心者回復薬が生成できる。それが“錬金”なのだ。
今の説明だけでデメリットが理解できた奴はすごいね。俺は何回も経験しないと気付けなかった。ついこの間まで、簡単な加工しかレシピがなかったし。これは言い訳か。
気付いた切っ掛けは、自分が“錬金”した毛皮とシュラナ・サラーニナやペトロが処理した毛皮の違い。俺の手元には一枚のぼろい革しか残らなかったが、彼女らは毛と皮を融通し合っていた。皮を革に加工しても、毛が残ったのだ。
それだけじゃない。サロは一本の木材から色々な物を作っていたが、俺だと木片が手に入るだけ。明らかに少なすぎる。
つまり、【錬金】は便利な反面、成果が限定されるってこった。スキルレベルを上げるには材料費がかさむので金も時間もかかる。初心者向きじゃないってのは本当だな。
閑話休題
つーことで、庭を埋め尽くすんじゃないかとか邪魔だなって木材の山が、あら不思議♪ちょっとした材木の山になりましたとさ。枝落としはまだしも、皮剥ぎなんてできないから良いんだけど……こんどサロに教わってみよう。こんなんだと、木材を大量購入しないとちょっとした物すら作れそうもないし。今後の収入を考えると、今までみたいに湯水のように使うわけにはいかんだろ。ま、正常に戻っただけなんだけどさ。
で、今は木片の山から丁度良さげな、大きさのそろった木片を集めて作業台を作ってる。ちなみに、使っている釘も“錬金”の成果だ。これは2つの鉄鉱石から作れる。アロが小ぶりのインゴットを10個の鉄鉱石から作っていたことを考えると、これも相当損してるな。
う~ん。早く、色々な技術を覚えたいな。もったいないって思っちゃう。
と、言うことで。技術として【木工】を習得するためにも、ここにある木片を使い切る勢いで、木箱を作ったり、棚を作ったり、釘打ちだけで何とかなる工作を繰り返す。ん~器用力もかなり上がってるから、削りだして箸とか作っても良いかも。
余った小さな木片(微)は……作った箱を使い潰すつもりで、燻製作りでもするか。箱をミニ燻製室みたくできないか試してみよう。そうすればスモークチップに使えるんじゃないかな。将来的には、自分で燻製小屋を建てるのも有りか。スキルレベルがガンガン上がるぞ。
いくつか箱や食材を駄目にした後、何とか食べれなくもない燻製ができた。
毛皮からは毛も皮も取りたいから後回し。生産ギルドがせっかくできたんだから、一度教わってから加工してみよう。一通りできるようになったら、シロから入手したハイウルフリーダーの毛皮の加工をするんだ。それが今の目標。
それはそうと、作業所で残っている素材は……見渡す限り、今使うともったいないやつばかりかな?気が付けば時間も3刻経ってるし。
材料の仕入れもあるし、せっかくできたんだから生産ギルドでも行こうか。
セバンスによると、昨灯の昼にささやかであるが、記念式典を広場でやったらしい。オープン初日は忙しいし、仕事の勝手がわからないから避けたようだ。
今朝オープンだから時間系列的には正しいな。
でもねぇ。住民にとっては待ちに待った組織だし、地域の情報網から即拡散したらしいから初灯に混むのはわかる。だから翌灯に回したんだよな。けど、祝福の冒険者、つまりプレイヤーが知るまでにはちょっと時間がかかる。そうなると、一部の学生や情報通で混んだんじゃないのか?
そう思って聞いてみたけど、そんなにでもなかったとのこと。平日昼間っからログインしてるような人はもっと最前線にいるんだろう。情報が行き渡って混むのは今日の夜から明日ってことか。
……まずい。早く行かなきゃ。これから週末にかけて、激混みだろ。