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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
新たなる戦い?
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7-2 収支

 家の敷地内でログアウトすると、ダイブの時は必ず執務室で目覚める。街中なら自宅かその場所か選べるのに、ちょっとだけ不便。なんか、データ処理も問題らしいけど。そういや、室内ログアウトは建物入り口で再開か。例外は宿屋くらいだな。

 そこそこ重厚な執務机の上には、数枚の羊皮紙。書かれているのは……我が家の経理?


 収入が、俺が渡した金、商品販売、権利金、税金還付。それぞれ、100万G、2万G、46万G、15万G。

 販売は、売っていいコーナーにあった商品だろう。販売できてるってことは、宿舎兼販売所が活動し始めたのか……早くね?

 権利金は……なんかあったっけ?それなりに大きい金額だけど。セバンスに聞くか。

 税金還付は、こりゃでかいな。売値の時点で引かれている1割がそのまま戻ってくるってやつだけど、売った量が量だし。


 支出は、人件費、備品、消耗品、素材か。こっちは4千G、123万G、21万G、3万G。

 人件費は言わずもがな、セバンスなどへの支出。つき払いのはずだけど、この額からすると、足りなくならないように計上してるみたいだ。せっかくだから、しゅう払いに変えようか。

 備品はたぶん、部屋の机などだろう。結構な金額になってるけど、宿舎の借り賃も入っているのかな?メインがこっちの家具だったらあれだな。

 消耗品はわかりやすい。掃除道具とかだろう。素材もだ。考えるまでもない。

 それにしても、バランス悪!


 う~ん。これでもなんとなく全体像は把握できるけど……ちょっと見づらいというか、なんというか。

 置かれている資料はこれのみ。今後は1巡毎にまとめるのかな。

 そんなことを考えていると、落ち着いたノックの音がする。

 声をかけると、静かにセバンスが入ってきた。


「おかえりなさいませ、旦那様」

「資料を見させてもらってたんだ」

「いついらっしゃるかわかりませんので、報告事項は机に置かせていただきました。以前に頂戴しました資金の他にも収入がございましたので纏めさせていただきました。支出につきましても、それに伴い変動しております。

 内容に問題はありますか?」

「そうだなぁ。

 これだと、総額はわかるけど、ってところかな」

「内訳はございますが……」

「そうなんだけどね。できればもうちょっと細かくしてほしいかな」

「細かくですか……纏め方が変わるだけですので可能ですが、どのくらいでしょうか」


 財政状況を細かく見たいとは思わないけど、ある程度何にどう金をかけているのかは見ておきたい。

 どうするのが、良いかなっと。


「収入はこれで問題は、あっそうだ。権利金ってなんだっけ?」

「権利金は、生産ギルド設立までの間、旦那様が教えられた薬の利益。その一部をいただくことになっておりましたので、そちらです。ちなみに、商品販売につきましては、まだ店舗が完成しておりませんので、冒険者と生産、両ギルドへの販売でございます」

「じゃ、そろそろなくなるね。ゼロになったら項目から消すとして……繰越金と、その他収入を作ろうか。ちなみに、俺の渡した金はその他収入の範囲で」

「承知しました。

 それでは、支出は」

「うん。こっちは、人件費をメイド、執事、護衛、その他に分けて。料理人や庭師を雇ったりすればその他に入れる。

 備品はこっちの屋敷と向こうの宿舎を分ける。消耗品もね。どっちとも言えないのは、屋敷分に算入。

 素材は、みんなで作る用と俺用に分けよう。そうそう、販売も同じで」

「はあ。それはかまいませんが」

「追加で、貯金をしよう」


 お金は大事だよぉ。

 借金なんてする当てがないんだから、いざって備えは重要。特に、俺は何が切っ掛けで長期に接続しないかわからんし。


「ちょきん……予備金ですか?」

「良く考えれば、それを一つに纏めるのもちょっとな。

 しゅう毎に、残った金の100分の1を貯金、金貨3枚を事業基金、2枚を緊急基金としよう。貯金は金貨未満を切り上げで。繰越金の1割まではセバンスの権限で使えて、事後報告。

 今回なら……えーっとぉ」

「貯金が金貨1枚。繰越金が10枚です。

 ちなみに、内訳はこちらとなります」


 瞬く間に、違う羊皮紙へと内訳を書き直して俺へと渡す。うぉっとーとビビったが、ここはゲーム内。数値の振り分けは簡単なのか。

 おや?屋敷分はそこそこデカいけど、宿舎もなかなかいい金額だな。よしよし。福利厚生はちゃんとしないとね。他は、常識の範囲内か。

 こう見ると、人件費安!これくらいの時代の人件費って安いな。生活費が安いからか。


「事後報告で申し訳ございませんが、宿舎兼販売所は良い所がございまして、売っていただけるとのことですので、購入のための手付金を支払いました。そのため、この額です。支払額は十節じゅうねん借り上げた額と変わりませんので、得と判断しました」

「それは任せる。繰越金の半分は支払いに追加していいぞ。

 こう見ると……新生活って金がかかるな。それに比べて、販売収入の低いこと」

「これだけの家を、となると仕方ありません。しゅうの収入としてみれば、販売も決して低いわけでは」

「そうだよなぁ。他が高いからそう見えるけど、低くはないよな」


 人件費や素材費と対比すれば。ちなみに素材費の方が売り上げよりも大きいのは、包丁作りで消費した分の鉱石補充が大半だから。通常は原価で見れば、収入の1~2割が素材。同じく1~2割が場所代――共同作業所レンタルなど――で、道具やら何やらで利益は3~4割が普通。俺は道具も場所も要らないから8割利益。さらに、今後は5%分税金還付があるので桁違いの高利益率である。

 ちなみに、ここまでの数字やらは端数を丸めてる。計算めんどい。


「みんなが作って売った利益は、1割を生産者に、2割をボーナス積立、3割を設備積立、残りは……どうしようか」

「……そこは、旦那様の利益としていただければ。基本は、そもそもすべて旦那様の利益でございますが」

「……そうか。まあ、教育費と福利厚生に使えばいいか。

 将来的には、そっちの利益だけで、ここは無理にしても向こうの運営はできると良いんだけど」


 主に、俺の手数的に。

 そっちのお金についても考えるのメンドイ。独立独歩にしてもらえると本当に助かる。


「……どこまでできるかはわかりませんが、できる限り。

 それはそうと、今灯きょうはお出かけになりますか?」

「そうだなぁ……」


 この利益率なら、人件費や素材代は早晩メイド達の生産活動で賄えるようになる気がする。ボーナスと十分な福利厚生で意欲も高いし。

 そう考えると、俺がやるべきことは……自分のことで十分となる。体面に関わるような備品やら何やらは一通り購入した。欲を言えばきりがないけど、最低限は何とかなったのだ。臨時収入的な権利金は無くなるけど、高額な出費は残った宿舎買い取り金ぐらい。


「宿舎は残りいくら?」

「売値が100万G、十節じゅうねん分割では倍でした。支払いは50万Gを出しておりますので残りは150万Gでございます」

つき金貨1枚ちょっとか。早めになんとかすれば割り引いてくれるかな」

「販売を一灯いちにちでも早く軌道に乗せます」

「ま、今後高額な支出はない予定だから、繰越の半分はそっちに使って。

 今灯きょうは一通り売り物作ったら、生産ギルドに顔を出してみるよ。覚えたいこともたくさんあるし」

「承知しました。では、手の空いた者には、販売所の開店準備をさせましょう。掃除も引っ越しも済ませましたので、明灯あすには開店となります」

「それじゃ、いつもより多めに作るか。開店早々、売切れてたら困るだろ」


 そう言って、作業所へと足を向ける。ちょっと間をおいて、護衛が後ろを付いてくる。今日は責任者のヘンクのようだ。何かあった時のために、日中はちょっと離れて、夜は近くで護衛をするとのこと。祝福の冒険者は死んでも復活するから別に良いんだけど、彼の立場だとそうもいかないとか。

 まあ、死んだときのドロップを回収してくれるならありがたいかも。何があったかを見て、あとで教えてくれるならもっとありがたい。不意打ちなら俺にはわからんし。住人は死んだらお終い。だから、自分の命を優先してほしい。後はおまけである。

 そう言うと呆れた顔で「そうならないようにお守りします」と言われた。解せぬ。

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