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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
大変!何でも作成団
61/236

5-10 複数の一番弟子

 開いたドアの向こうには同じ顔が三つ並んでいた。

 筋骨隆々だけど背はそれほど高くなく、顔つきは穏やか。髪は後ろで縛っているのか、正面から見るとオールバックっぽい。なんとなく、モグラちっく。

 弟子を迎えに行ったのが4人だから、これじゃ数が足らないな。





 でもなんで同じ顔?


「初めましてっす。【鍛冶】のアロっす。こっちがサロ、そっちカロっす」

「初めましてッフ。【木工】のサロッフ。三つ子ッフ」

「初めましてッス。【石工】のカロッス。ノームッス」

「私らは三つ子っす。よろしくお願いするっす」


 そういう結論ですか。キャラ作りが面倒だったんかね。名前も適当だし。種族は妖人族のノーム。え?ドワーフは亜人族なのに、ノームは違うんだ。ま、理由を考えても仕方ないか。

 あれ?【裁縫】の弟子は兄弟じゃないか?

 一礼してから室内に入ってくる3弟子の奥から、声が聞こえた。


「初めまして。【裁縫】のシュラナ・サラーニナです。私たちがそれぞれの代表の1番弟子になります」

「こちらこそ、初めまして。よろしくお願いします。

 何もわからない初心者ですから、ご迷惑をかけますがよろしくお願いします」

「作る物は決まりましたか?

 聞きたいことがあれば、どんどん聞いてください」


 早速にシュラナ・サラーニナが話に入る。嬉しいことを言ってくれるけど、正直、頭に入ってこない。なぜなら、彼女は下半身が蛇のラミアだったから。こちらも妖人族の一種かな。

 素肌だから、じっと見たら失礼かもしれない。目線が下に行かないようにと気をつけてると、耳から聞こえていても内容まで覚えてられない。上半身も美人だし、ちょっとドキドキ。

 チルク・テル・ペラーナもアラクネだったし、アークの【裁縫】は妖人系が多いのかな。力仕事の【鍛冶】なんかは亜人系が多いらしいし、分野で違うのかね。


 閑話休題


 気を取り直して、俺の構想について意見を聞いてみた。

 ふむふむ。これなら、【薬剤】以外の分野は大丈夫そうだ。俺の考えた物であれば、大体の分野で協力される。頭の中で構想を膨らませていると、皆がてんでバラバラに話し始めた。初心者って言った俺のことを考えてくれたのか、話題は基本的なこと……なんだろうな、彼らにとっては。その中で有益そうな情報はメモして、使えそうな案をそれぞれ出して、と、ブレインストーミング。ま、要はネタ出しだ。

 インゴットにするには【鍛冶】よりも【石工】の方が不純物が少なく品質が上がるがインゴットの質としては【鍛冶】が上とか、形を掘ったりして模様をつけるのは素材に合った分野――木なら【木工】――が品質が良いが、細工の細かさでは【細工】に軍配が上がるとか、革に刺繍をするなら【皮革】が耐久性が良いが【裁縫】に品質ではかなわないとか。

 得られた情報は言われてみればそうかとも思うけど、俺は思いつかなかったものだった。この情報も生産ギルドで教えてもらえるように頼んでみよう。いずれわかるだろうけど、スタートダッシュに関わってくるだろ。

 でもそうなると、個人で良い物を作るなら、それぞれのスキルレベルを上げる必要があるんだな。それか、できるプレイヤーと取引か。

 素材の質も重要だけど、それよりも道具と技術が重要で、ある程度成長したら道具は新しくした方が良い物ができるのか。弘法も筆を選ぶ訳か。

 それにしても困ったな。このままじゃ本格的に【薬剤】の出番がないぞ。作るときに飲んで体力や魔力を回復したってのは、さすがに協力には入らないよな。

 何か……そうだ!こういうゲームにはよくある、特殊効果付きを作るときなら使うかもしれないぞ。筋力+1とかはあるんだから、魔剣なんて腐るほどあるだろ。例えば……ほら、麻痺する魔剣とか。麻痺草とか、麻痺薬とか使うんじゃないかな。


「えーっと。例えば、例えばなんだけど。

 魔力の籠もった糸とか、火属性の剣とか、魔術が使える宝石とかそんなのあります?後は、麻痺する剣とか」


 部屋の皆が顔を見合わせる。あ、こりゃ駄目だ。


「通常ではありえない物については、話には聞いたことがありますが」

「見たことはあるけどどうやって作るかはわからないッス。ちなみに、見たのは水中で腐らない木組み細工ッス」

「力強くなる物なんかはあるッフ。でも作り方は知らないッフ」

「ああ、動きが速くなったり、特定の作業がやりやすくなったりする物は、値段が高いけど売ってましたね。魔力の籠もった糸は遙かに高額と聞いていますが」

「王都か鉱山都市、噂に名高いガルゲラなら作れる人もいると思うッス。

 この辺りじゃ作り方どころか、作れるって職人も聞いたことないッス」

「昔、祝福の冒険者が作ってたって聞いたッフ」


 それぞれが知っていることをまとめても、たいしたことはわからなかった。追加効果付きも、魔剣扱いか。そりゃそうか。普通、装備しただけで素早くなる短剣なんて、魔剣だよな。

 うーん。王都も鉱山都市のガルゲラも聞いたこともないから、行けるようになるのは当分先。後は、プレイヤーなら、スキルレベルが上がれば作れそうだってことか。作り方は不明なんで、どっかでヒントでもないと、成功するにはレベル上げした上での総当たりになりそうだな。このゲーム、生産職に厳しいな。

 後は、ここの住人じゃあ、作るのは難しそうだ。でも、できれば【薬剤】を仲間はずれにはしたくない。

 何せ、俺がここにいる原因だから。今のところ一番思い入れがある。


「……親方から聞いたことがあるっす」


 一人、天井を見つめながら考え込んでいたアロ……だっけ?【鍛冶】の職人がポツポツと口を開く。


「……ウルフの牙を使って作るウルフキラーも昔見たことがあるっす。

 親方が作ってるところを見たことはないっすが、確か、あのときに色々言ってたっす」

「聞いたこともないッス。いつのことッスか?

 うちの大将がそんな面白そうな話を聞き逃すとは思えないッス」

「ほら、テツエンで活動している『森の狼』がこの街に来たときっす。手入れを怠ってたみたいで、親方の所へ修理依頼が来たっす。まだおいらには早いって見せてもらえなかったっすが、打ち直ししてたはずっす」


 だから、作り方を知ってるはずだと言う。それなら、本人に聞いてみよう。

 ボルボランがどこにいるか聞こうと思ったけど、アロはまだ何か思い出そうとしている。


「技術じゃなく、心根が足らないって言われたっす。思えば、あれが切っ掛けっすね、【鍛冶】に本腰入れたのは」


 なんか、思い出話が始まった。

 アルの思い出は聞き流して良いと思うけど、ちょっとだけ気になった。技術以外、つまり、スキルレベル以外にも必要な要素があるのか?

 まあ、まじめさが足らないから教えなかったってこともあるだろうけど、今になっても教えてもらっていないってのもちょっとな。一番弟子って事は、アークで2番ってことだろ?自分の技術を残すことも考えてるだろうから、忘れてるって線も薄そうだし。


「それなら直接聞いてみようか。そして、手伝ってもらおう。

 なんでも教えてくれるって言ってたし」


 それくらいの融通はきかせてくれるでしょ。

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