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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
大変!何でも作成団
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5-9 彼らは今

 何をするでもなく、二人は椅子に座っている。

 特に話をするでもなく、こちらを見るでもなく、ただ座っている。

 ……ああ、こっちの行動待ちか。うわっ。普通のゲームなら問題ないけど、リアルさの分、違和感がスゴいわ。

 そう考えた瞬間、小さくピコーンって音と、視界の隅にメールのマークが出た。フレンドメールだ。そちらに意識を向けると、メールが3件来ていた。

 一気に来てるって事は、もしかして、さっきまでのは強制イベント扱いだったんかな。3件同時になることなんて、そうないだろうし。

 見たいけど、何を作るか考えるのが先……なんだけど、何を作ってもネックになるのは【薬剤】【料理】【農業】かな。

 【鍛冶】【石工】【細工】【木工】はほとんどに関わる。金属も木も使わない生産はないし、小さな道具や石製品もそれは同じ。【裁縫】【皮革】も持ち手やカバーやらを作ればなんとかなる。こういうクエストならよくあるのは剣を打つんだろうけど、ありきたりだし、【薬剤】以下は使えない。

 うーん。ちょっとくらい考えても良い案なんてでないか。

 いいや。気分転換にメールを読もう。


 1件目は『両断』ジンから。

 おめでとうメッセージを送ったからか、律儀にお礼を言ってくれてる。後は、簡単にボス戦の様子と次の村セックの説明、それと、俺は会ってない『名無し』最後の一人、『戦乙女』ことリリーから大量の初心者回復薬とかの助力についてのお礼も書かれていた。でも、それはきちんとした商取引なんだから気にしなくて良いのに。

 セックで消耗品を購入して、装備を調えたら、またアークから次の町を目指すのか。まさに攻略最前線って感じだな。

 ジンは見た目豪快だから、ざっとしたメールかと思ってたけど、意外と丁寧な文章で簡潔にまとめてあった。まあ、豪快な性格はロールプレイかもな。


 2件目は『魔術狂』クローバーから。

 送った時間はちょっとずれてる。やっぱり、イベント中とかは受信しないようになってるんだな。戦闘中はどうなのかな。設定で変えられても良いと思うけど……って、そんなことより、内容はっと。

 簡単な挨拶とお礼の他は、長々と【言語】と技術に関する考察だった。内容は面白いんだけど、所々に唐突に俺へのお礼の言葉が入っているのはびっくりするな。え?もう【言語】レベルが二桁?

 ……まだ一日しか経ってないのに。確か、セックには図書館がないって言ってなかったけ?ほんと、どうやったんだ?

 長さの割には、内容はほぼそれだけ。なんとも『魔術狂』らしい気がする。


 3件目は『辻ヒール』シロから。

 丁寧なお礼から始まり、イベント中の思い出話が少し。うーん。そんなに料理が思い出深いか。そういえば、他のプレイヤーは最初は食事してなかったって話だし、空腹度が実装されてからも、宿に泊まるようになったり携帯食料を買い込んだりレベルで、売り物を食べるのは趣味扱いだったっけ。

 参加人数が3000程度で少ないからか、全体的に攻略に偏ったプレーが多い気がするな。これじゃあ、追加でプレイヤーが増えたら新発見がゴロゴロ出てくるんじゃないかな。βも攻略に比重が置かれてたみたいだし。そんなに急いで先に行かなくても、まったりと楽しめば良いのにな。

 セックは農業のメッカで、生産ギルドがある。アークよりも革製品の品質がかなり高め。反面、武器や鎧系はそれほどでもない。畜産系の食料素材があり、誰でも知ってる牛や豚から、このゲームオリジナルのポリンプなどという畜産動物などもいるとか。淡泊だけど焼いても柔らかく、下味の付け方でガラッと雰囲気が変わる食材だとか。反面、皮は固く、厚みもまちまち。見た目は長い毛に覆われた亀、ただし、甲羅無し。皮剥も難しいが、上手く使えると高品質の皮鎧になる。アークの革職人じゃ扱いきれない物を加工してるセックの職人はスゴいな。

 ボス戦で手に入れた素材は加工を俺にお願いするつもりらしいが……さすがに手に負えないレベルの素材だろう。せめて下処理だけでもセックでしてもらえるように連絡をしよう。そうすれば、長く持つから、その間に【皮革】のレベルを上げれば良い。

 『名無し』は今バラバラに楽しんでいるようだ。南ではなく、西や東に行けないかと考えるジン達と、魔術書を読むことを目標に読書へ邁進しているクローバーと、のんびりとレベルやらスキルやらを上げつつ、アークとセックを堪能するシロ。予定が合えば一緒に楽しむことにして、基本はソロ。それが『名無し』の方針とのこと。

 近々、それぞれ個別ではあっても、俺の家に遊びに来るって話で締めてある。


 ボスを討伐してから少ししか経ってないのに、こんだけ色々してるとは。そりゃ有名人にもなるわ。気分転換にはなったけど、よく考えなくてもただの現実逃避(?非現実逃避?)か。

 ん?

 俺は何もしてないのに、ペルさんがこっちを向いた。ドンさんもこちらを見ている。

「そろそろ、じいさんの弟子達が来るぞ。何を作るかは別としても、聞きたいことは聞いた方が良い。

 手伝わせるにせよ、教わるにせよ、早いほうが良いぞ」

 【料理】と【農業】か。……あ、あれならどうかな?そうなると、後は【薬剤】を使う余地があるかだけど。まずは、その弟子に聞いてみようか。

 そう思った瞬間、入り口のドアが開いた。

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