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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
探検ぼくのまち
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1-4 探検

 だいぶ話し込んでいたからか、太陽が頭上に姿を見せていた。

 南門への道はすっかり閑散としている。今までの話の流れから推測すると、最初はこっちからしか外に出れないみたいだけど、ログインした人はすでに外に行ったんだろうな。

 おかげでゆったりと見学できる。

 民家も並ぶが、ところどころ木の看板が掲げられたお店らしき建物も目に付く。

 剣と盾、薬瓶、ベッドにビール、ナイフとフォークが横に描かれてるから真ん中の丸は皿か?それくらいは推測が付くけど、三角とか五芒星はわからないな。

 一通り見たらどっかで聞いてみるか。どうせ今日は物見遊山って決めたんだし。


 それにしても、五感を実感できるってのが売りとはいえ、雰囲気を肌で感じられるってのはほんとすごいな。今後は医療系に進出するんじゃないかって噂も本当かもな。

 南門は中途半端に開かれていて、両側に衛兵が立っている。門を抜けようとする冒険者が来る度に簡単に話をしているから、そこそこ忙しそうだ。


「あ、すみません。ここから外に出るにはどういった手続きが必要ですか?

 初めてなもので勝手がわからなくて」


 ちょうど近くを巡回の衛兵が通ったので声をかけた。


「身分証があれば簡単に出入りが出来る。この街の住民なら住民証と1G、冒険者ならギルド証と10G、クエストなら免除だな。商人なら組合証と50Gだな。それぞれで必要な通行料が変わってくるぞ。

 身分証がなければ料金は100Gだし、手間もかかる。頻繁に通るなら考えた方が良い」

「ありがとうございます。ちなみに、どうやったら身分証が手に入るんでしょう。

 私は今日こちらに来たばかりでして、何もわからないんですよ」


 胡散臭そうにこちらを見ていた衛兵も、俺の言葉に納得してくれたようだ。実際胡散臭いよな服装は住民なのに誰でも知ってることを聞くなんて。しかも、身分証の手に入れ方だぜ。


「それは大変だな。お薦めは冒険者ギルドか魔法ギルドに登録して、ギルド証を手に入れることだな。

 祝福の冒険者なら、わずかばかりの費用と検査で登録できる。この街に家があるなら住民証の再発行は衛兵の詰め所だ。商人なら組合の事務所で発行してくれるだろうが、そもそも組合に入ってないと無理だからな」

「そうなんですか。助かりました。それでは、冒険者ギルドへ行ってみます。

 ありがとうございました」

「祝福があっても、街の外では気をつけると良い。いくらヒラリ草原とはいえ、時には獣に負ける者もいる。

 死の軛から解き放たれようとも痛みは変わらんし、少なからぬ物を失うという。

 慎重すぎるくらいで丁度良い」


 いやホント。この街の衛兵は誰もが親切だ。この人も色々と教えてくれた。

 受け答えはスムーズで違和感はないし、すごいAIを使ってるな。



 それにしても、いや~面白い。異世界を作りこんでいるな、これ。

 基本、看板は絵で表現されていて、絵の下に文字らしき物が書かれている。ドアなどにも書かれていることがあるけど、文字は店名みたいだけど読めない。会話ができるから問題ないけど、飯屋の注文とかどうしよう。

 それはともかく、剣と盾が武具店、ベッドが宿屋、酒が酒場でナイフとフォークが食事処、薬瓶が薬屋なのはわかった。ただの三角形は道具屋で×が問屋。俺に関係するのはそれくらいか。五芒星は怪しげなので覗いていない。

 アークは小さな街みたいで、どの店も1、2軒しかない。

 噴水広場に戻ると、角の大きな建物を眺める。冒険者ギルドは「ドラゴンと剣」の看板で、魔法ギルドが「巻物」-本数が多いほど規模が大きいらしい-で、「太陽」が教会、二本の槍で×を描くのがトルークさんの言っていた衛兵の詰め所のはず。

 えーっと、南西が冒険者ギルド、北西が教会、北東が衛兵の詰め所、南東が魔法ギルドだな。ちなみに魔法ギルドの巻物は二つ。本数が多いほど規模が大きい。


 最初に来たときには南のヒラリ草原へ続く道に人が多かったが、今は東がにぎわっている。

 あ、すげぇ良い匂い。急に腹が減ってきたぞ。

 そういえば、今何時だろう。そう思ったら、視界の隅でメニューが立ち上がった。


【英雄歴263年春3月6日12:12】


 もうお昼か。何か買って食べてみようか。

 ログインした時間は確認していないけど、始めてから既に数時間ってところか。実時間だともう夜かな。


【6月4日18:04】


 すぐに表示が変わった。これが現実時間か。思ったよりも時間が経ってないな。

 そういえば、時間を何倍かにしてるって話だったな。これって両方見えないのかな。


【英雄歴263年春3月6日12:13(6月4日18:04)】


 お、変わった。便利だな。

 それじゃあ何か食べるか。



 入り口付近に屋台がいくつか出ていた。

 屋台から漂う香ばしい匂いに誘われてしまう。


「おっちゃん。それはなんだい?」


 暇そうにしている串焼きのおっちゃんに声をかけた。

 ぱっと見は塩焼き鳥だけど。


「これか?見りゃわかるだろ、コッコ焼きだよ。1本2Gだ、どうだ買わないか?」

「へ~1本ちょうだい」


 2Gと念じたら、手のひらに小さなコインが2枚出てきた。考えると出せるってすごいよな。

 コインと交換で手に入れたコッコ焼きは、鳥モモに似ている。名前もそうだしな。

 口に入れると、ちょっとピリ辛な味がするが肉自体は淡泊。塩っ気が少し足りないけど、塩焼き鳥に七味派の俺にはどストライクだ。

 こりゃもうちょっと食べたいな。追加で8Gを渡す。


「もう4本」

「まいど。今から焼くからちょっと待ってな」


 追加注文分は焼き立てが楽しめそうだ。

 焼けるのをわくわくと待ちながら、おっちゃんと世間話に花が咲いた。


「へ~。この通りは昼間は露店が出てるんだ。さっき来たときは誰もいなかったけど」


 よく見ると、道の奥には何人もが何か敷いて座っている。よく見えないけど、売り物を並べてるのかな。


「おいおい。露店は9時から18時、屋台は20時までと決まってるんだ。何時に来たんだよ」

「あ~時間は見てないからわからないや。街中を見物してきたんだ」


 見物と言ったとたん、おっちゃんの目が笑う。


「なんだ、外から来たのかい?うれしいねぇ。

 そんなに早い時間じゃ他の店だってやってなかったろ。今廻れば看板も増えてるぞ。軽く声をかけて覗いてみると良い」

「ありがとう。露店を冷やかしたらそうしてみるよ」


 いや、良い買い物をした。

 旨い物を食って腹もちょっと膨れたし、情報も手に入ったし。

 それじゃあ、腹ごなしに露店を軽く見て回ろう。

 露店で食材を売っていたのはたぶん、地元の農家とか。

 露店が朝9時からってことは、朝食は家で食べるのが基本か。モーニングサービスはなさそうだ。

 朝の収穫を終えた野菜とかを持って近隣の農家が売りに来てるのかな。

 そう思って見て回ると、食料品は思いの外少ない。確かに現実味はあるけど、ゲーム的にそんなにあってもってことなんかな。

 代わりに、武器防具や小物類が多め。武器なんかは値段を見ると基本的には初心者には厳しい数値だ。露店でこれだと、店売りはもっとかな。

 でも、新人の鍛冶師や木工師の作品らしい細工物の類いも数は種類が少ないながらもある。

 防具らしい物は簡素なローブや皮鎧があるくらいか。

 魔物のドロップ品らしい物は売ってなかった。薬品類も少なく、日用品らしい物まで売られている。

 ぱっと見でプレーヤーとわかる人もいない。細工物や防具とかがプレーヤーかもな。

 まだまだ、じっくり見る必要はないかな。

 先に、南道のお店を見てみようか。


 廻ったお店は8軒。

 武器防具2。最初の店はプレートアーマーや大剣などの重量品を売ってる。親父は頑固タイプ。もう一軒は皮鎧とか短剣とか軽めの物が多い。店番はおばさん。ま、どっちでもある程度は扱ってるみたいだけど。

 食事処と酒場はパス。さっき食べたばかりだし。

 宿屋は目に付いたところに入ってみた。一泊二食付きで100G。素泊まりなら50G。この街では底値とのこと。もう一軒は見た目豪華だったので、敬遠した。それにしても昼飯代も考えれば1000Gでは10日も持たないな。

 薬屋は2軒。回復薬の類いを多く取り扱っている店は大衆指向。質は低いが安い初心者回復薬も販売していた。もう一軒は強化系や耐性系が多かった。毒消しとかは両方で売ってたけど質はこっちが高め。値段もね。

 つーか、そもそも回復薬とかは高い。最初のうちは、まともな冒険は無理じゃね?

 道具屋3軒。日用品メインの店に冒険道具、細工物とこちらも被りなし。きちんと、棲み分けられている。

 値札らしき物があるけど、やっぱり読めない。購入するにもいちいち値段を聞かないといけないのが面倒だな。

 スキルスロットが開放されたら「言語」を取ることも検討しないとな。面倒だし。

アイテム名やら考えるのが難しい。

いろいろ考える作家さんは尊敬します。

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