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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
ひとりでできるもん
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4-8 怒涛の会話

 一通り、ログインから今までを語ると皆の反応が面白かった。

 取得スキルと街中散策、冒険者ギルドでのトラブルには苦笑いされた。

 βの時には頻発したイベントで、クリアしても苦労ばかりでメリットがなかったので必ず攻撃か魔法系のスキルを取る流れになったらしい。

 アークで生産らしい生産ができなかったのも原因だろうけど。

 スキルではない技術の存在は『廃神様』ジーン以外には驚かれた。

 彼はこっそりと【HP回復】(HPの自然回復量UP)を手に入れていたらしい。

 NPCの人間らしさも、俺の薬剤地獄も、アーク領主アーキン様との会談の衝撃に吹き飛ばされた。

 さすがに、工夫による新レシピや図書館でのレシピ取得については興味深そうだった。

 あ、家については自慢しました。自慢でもしなけりゃやってられません。

 そんなこんなで一通り説明が終わると、ジーンを除き頭を抱える面々。

 それにしてもジーンはあまり表情がかわらないな。冷静沈着なできる男っぽい。でも、どっかで見たことがあるんだよな。



「とんでもねぇっちゃあ、とんでもねぇ話だ。なんだその行動は」

「でも、理解できなくもないわね。楽しそうじゃない」

「このゲームを……と言うよりも、この世界を心底楽しんでますよね」

「初めて来た街を探索して、仲良くなって」

「そうして頼まれごとを解決して報酬を貰うのは正しく冒険である」

「薬を一つ作るにも自分の手で、か。それも生産系の人間としては正しい姿かねぇ」

「ここまで現実に近いんだから、創意工夫で新しい物ができてもおかしくはないわね」

「それで新レシピになったのであるから、それが全てである」

「手動の方が品質や効果が良ければ、アーツに対する考えが変わりますね」

「アーツは自動化するからMPを消費するってことか?

 それじゃアーツはただの便利機能だな」

「それだけってことはないと思うわ」

「その理屈でいくならば、武術アーツも手動で再現できるである」

「……マジか?

 そりゃオリジナルコンボも夢じゃねぇぞ」


……口を……


「夢が広がりますね。

 それにしてもスキルと技術ですか。検証班が忙しくなりそうですね」

「スキルはアーツを覚えるから使いやすい。技術は手探りで大変だけど工夫ができるのが事実ってことをまず確かめないとね」

「スキルにLv0はねぇから育てやすさも違いそうだな」

「それよりも習得条件を知ることが重要である」

「【短剣】などの話を聞く限りでは、関連した行為を繰り返すと覚えるみたいですね。ああ、レベルアップと同じですか。無取得から経験を積むとLv0と」

「祝福、つまりスキルはプレイヤーのみよね」

「そうみたいだな。つうと、技術を覚えるにはNPCの協力が不可欠と」

「いえ。ジーンは【HP回復】を取得してますからね。NPCの協力は“近道”って程度ではないでしょうか」

「それでも無下にはできないである」

「先に進めば上位スキルや独自技術を持つNPCもいるかもね」

「そう考えると、魔法文字も解読できる可能性が出てくるのである。オリジナル魔法も夢ではないのである」

「……それはさすがに飛躍しすぎじゃない?

 でも、【言語】とかを育てればありえるかもね」

「……な、なぜ我はスキルの空きがないのである!」

「相変わらずのクロはほっとくとして、AIの化け物っぷりには驚かされたわ。

 最低限の会話しかしてない今でも人間っぽいって言われてたのに」

「そこのトルークさんの実例があるからな。下手な人間よりも人間らしいだろ」

「ゲームだからですか、優しい人が多いですね。

 感情を持ち、各々個性もあるようですね」

「……懸念があるのである」

「おや、復活が早いですね。

 私も懸念してますよ。傍若無人な祝福の冒険者に愛想を尽かすNPC、いや住人が出てくる可能性ですね」

「……街のNPCが敵に回るってか?考えたくもねぇや」


……挟む……


「そうならないためにも、技術の存在と住人が『生きている』こと。これは広く伝えるべきでしょう」

「図書館にレシピがあることはどうするの?」

「さすがにギーストに悪いだろ。アドバンテージがほぼなくなるぞ」

「住人との交流が増えて、アークの街中を探索する人が増えれば、図書館の存在はすぐに知られると思うんですけどね」

「一から十まで公表する必要はないのである。図書館くらい自力でたどり着くべきである」

「私たちだけ教えてもらうのも悪い気がするのよね」

「その分、ギーストになんか返しゃいい。

 他の奴らは何もせずに生産ギルドの恩恵を受けるんだ。教えろって文句言う奴が間違ってんだよ」

「それもそうね。黙ってるとギーストが遊びづらくなるような情報に限って開示するのが正解かもね」

「その点でも、技術と住人が丁度いいのである。技術は訓練場で、住人からは仲良くなって生産ギルド設立の情報を聞いたことにすれば違和感もないである」

「家やオリジナルレシピの存在は秘匿すべきですね。ギーストさんも別にお店を出す構想があるようですし」

「回復薬や魔力薬が作れなくても、初心者(大)ならある程度代用できるから売れるわよね」

「そうである。初心者系はクールタイムがないからボス戦ではそちらの方が助かるである」

「このイベが終わったらハイウルフリーダーでしょ。それなりの数が欲しいわ。

 そうなると、さらにお世話になっちゃうわね。返せる物があるかしら」

「MMOが初めてとの話ですから、MMO独特のルールとかはどうですかね。群生地の採取は取り尽くさないとか、他のプレイヤーと戦闘中の敵に攻撃しないとか、MPKとか。スタンドアローンとは違ったルールがありますからね」

「スキルの使い方だって良いじゃねぇか。

 技術で覚えられるなら無駄にゃならんだろ」


……隙がない……


「講師役ってことね。あとは採取の護衛とか素材集めの手伝いはできそうよね」

「新しい素材の売却先とするのもありですね。商品開発を進めてもらえれば攻略するにも助かりますし」

「持ちつ持たれつである」

「PVPも実装されるかもしれねぇしな。協力関係ってのはありだな」

「こちらからお願いしたいくらいですよ。どう考えても生産系トッププレイヤーですから」

「ぶっちぎりどころか、一人だけ次元が違うである」

「だから、そうなるとこっちが得してばかりだと思うのよ」

「いちおは俺らも攻略組トッププレイヤーなんだけどな」

「……話を戻すである。我の住人についての懸念はシロとは別なのである。

 『生きている』なら、死が絶対なのである」

「……どういうこと?」

「あれだな。クエスト依頼者が死んで報酬無しとかだろ。あとは、クエスト消失とか」

「それは困るわよね」

「プレーヤーの犯罪行為に厳しい理由もこれでわかったである」

「……魔物によって村ごと滅びたりしかねませんね」

「災害や疫病もありえるである」

「微妙にリアル志向の運営だから不安よね。倒した敵の姿も微グロだし」

「R18じゃねぇから対策してるぞ。両断しても腹部破裂でも同じ微グロの死体グラだったし。

 戦闘中の身体破損も表示が削れるだけだし。マジにリアルならドロップアイテムがやばいことになるぞ」



「ギーストは悪くない。悪いのは考えが凝り固まってた俺たちだ」


 なんとか再起動したブレッドが言う。

 あー、さっきまでの話をまったく聞いてないな。俺も半分聞き流してたけど。

 ブレッドに向かって他の5人(ジーンは無言なので正確には4人)が一斉に口を開いた。


「急に何言ってるのよブレッド。そんな話してないじゃない」

「話をまとめますと、いろんな情報をいただいたので、ギーストさんに私たちの冒険譚を語り、MMOについて教えることになりました。

 隠し事はなしで」

「対外的には、技術とNPCが『生きている』ことを掲示板に上げるのである」

「あとは、ダチとして仲良くしてごうぜってとこだな。生産メインじゃ手が届かねぇとこも沢山あるだろうからな」

「現状ですと私たちが仲良くしていただくって表現が正しそうですが」

「我はこれでもトッププレイヤーである。魔法では誰にも負けない自負もあるのである。

 『魔術狂』の名にかけて、現状に甘んじるわけにはいかないのである」

「ま、そういうこった。

 てなわけで、ブレッド。おめぇはどうする?」


 彼はチーム『名無し』の一員ではない。

 そう問われたブレッドは、ちょっとだけ目線を動かす。


「二つ名持ちの冒険譚は興味深いけど、俺だと他のメンバーのことも入ってくるからな。ギーストには別のことで個別にお礼をさせてもらうよ」

「いや、別にいいよ。その気持ちだけで」


 や、やっと口を挟めた。つーか、MMO初心者のソロぼっちにチャット状態に割り込むのはハードルが高い。

 ……自分で言ってて胸が痛いや。

 俺としては、別にお礼をもらうようなことはしてないんだけど。


「少なくとも、情報が流れるまではメンバーにも言わないよ。

 それと、価値あるモノには相応の対価を。MMOの基本だって言ったろ?」


 遠慮すんな。

 そう言って、ブレッドは情報収集に出かけて行った。ジン達の話が聞こえないように配慮したのだろう。

 まだHP・MPの回復には時間がかかるらしいので、それまでの間、皆の冒険譚を楽しませてもらおう。

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