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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
初めてのたたかい
28/236

3-5 外見課金ユーザー

累計555,555PV、100,000ユニーク達成!

評価者数も100名を超え、ブックマークも3,500名を超えました!

これだけ大勢の方に読んでいただけるのは、心底嬉しいです。

ありがとうございます。

 はい。ダメでした。

 相変わらずの人出。やけになって片っ端から“鑑定”しました。

 なんと、雑草と石ころは一目でわかるようになりました!

 ……うん。わかってる。何も言わないで。

 きちんと武器防具の類いも順次そうなってるから。

 ちゃくちゃくと鑑定人への道を進んでいるギーストです。いかがお過ごしですか?



 あいたっ!

 周りの鑑定ばかりに気を取られていたら、吹っ飛ばされた。

 慌てて横に転がって立ち上がる。

 あぶねぇ。転がらなければ、追撃で押さえ込まれていた。

 跳びかかりを避けられたウルフは、不機嫌にうなりながらこちらをにらみつける。

 初戦闘でウルフかよ。

 嘆いても仕方ない。こんな事態も想定していた。まずは、戦いの準備だ。

 右手に筋力の鉄短剣、左手には石。

 鉄短剣を構えたまま、牽制のために石を投げる。

 石を想像するだけで、インベントリから左手の中に石が出現する。それを避けながらどんどん投げていく。

 自分が体勢を崩したら意味が無いので、使うのは手首のみ。

 速度があまり出ないので、時にはばらまき、時には襲いかかってくる鼻先を狙いタイミングを崩す。


 息が上がる。

 短剣を握る手に余計な力が入り、石も思い通りには飛ばない。大地が柔らかくなった気分で、自分の膝が揺れていることが自覚できる。

 初心者向けの敵なのに、余裕をもって避けているのに、迫り来る牙と爪が、身体に傷をつけていく。

 20、30と投げても当たるのは1つ2つ。ダメージはわずかでも、自然回復のないウルフに、少しずつ積み重なっていく。

 落ち着け。

 回復の耳飾りでHPが自然回復する分、俺に有利だ。金にあかせて装備もそろえた。レベルは高くないが、ウルフ1匹に遅れを取るほどじゃない。


 避けながらの投石も慣れてきた。

 その油断が、掌の中で石を踊らせた。

 一瞬の撓みの後、ウルフが襲いかかってきた。

 遠くにいたウルフが、だんだんと大きくなっていく。


『ギャン』


 跳びかかってきた鼻先に、投げるタイミングがずれた石が運良く当たり、ウルフは空中で体勢を崩す。

 サイドステップで避けつつ短剣で切りつける。手応えは浅いが、ウルフは勢いのまま地面を転がる。

 いまだ!


『キャウン』


 ダメージに身体を揺らしながらもこちらに向き直ったウルフに、投げた銅短剣が刺さる。とって置きの攻撃だ。

 チャンス!

 鉄短剣を手に跳びかかった俺にウルフがかみつく。

 が、一瞬早く短剣が口内から脳を貫いた。

 生臭い息と生暖かい血が降りかかる。だんだんとウルフから生命力が抜けていくのが実感できる。

 ちくしょう!

 なんでこんなにリアルなんだよ。手応えとかダメージはゲーム的なのに、こんなとこだけリアルにするなよ。

 つやのない痩せた毛皮には汚れが目立つし、牙や爪の鋭さはちょっと危ない。

 うっくぅ。勢いのまま覆いかぶさって死んだウルフをどける。

 ……なんとか生き残った。


 刺さったままの銅短剣と血まみれの鉄短剣を抜き、剥ぎとりナイフをウルフに刺す。

 小さな光に包まれてウルフが消える。持ち物にウルフの牙が追加されてる。剥ぎ取りナイフでのボーナスは無しか。

 インベントリを活用しての投擲戦闘は消耗も激しいけど、なかなか有効だった。

 でも、これだけ苦労してやっとウルフの牙1個か。グリフ達はどんだけ先にいるんだか。



「なんだ勝ったのか」

「いくら良い装備でもあれじゃダメよね。みっともない」


 いつのまに集まったのか、見学者から駄目出しが出る。

 聞こえてますよー。

 言い返さないけどな。だって事実だし。傍から見たら、高い装備で弱いプレーヤーだろうし。

 ウルフが飛び出してきた茂みから離れ、安全地帯の街道で半分になったHPの回復を待ちながら鑑定して過ごす。(小)だと回復しすぎか。ここなら敵がでないからゆっくり回復させようか。

 獣とはいえ、命を奪った衝撃が抜けず、可能なら今すぐ眠りたいほどだ。……ゲームとはわかっちゃいるけどね。

 見渡すとここで休みながら回復しているのはソロばかり。

 やっぱソロは効率が悪いのかな?

 でも、突然組んでもなぁ。俺は全然経験ないし。

 回復の耳飾りのおかげか、思ったよりも早く回復しそうだ。

 ソロでちらほらとアークに向かって戻る人がいる。たいして怪我していない人も結構いるな。


「ちっ。もう一杯になっちまった」


 その声に顔を巡らせれば、熊もどきがぼやいていた。りっぱなひげ面だな。

 熊もどき改めひげ面が、見ていたこちらに気づく。


「おっ。あんたもソロかい?」

「ああ、HPが減ったんで休憩中さ。そっちもかい?」

「俺か?荷物が一杯になったんで帰るところさ」


 黙っていると怖いひげ面だけど、くしゃっとした笑顔は人なつっこい。


「強いなぁ」


 一人で狩りまくってるのか。

 ひげ面が肩をすくめる。


「売りに行くのが手間だけどな。でも、そうしなきゃ生きていけねぇ」


 金を稼がにゃ生きていけない。捨てるのはもったいないってことか。

 うーん。俺のインベントリには空きがあるなぁ。


「あー、良ければ買い取ろうか?」

「マジか!助かるぜ。

 コッコの羽が10、肉が10、ウサギの肉が5、毛皮が2、ウルフの牙が8だな。

 あー、200Gで良いぜ」


 ちゅうちゅうたこかいな、ちゅうちゅうたこかいな。基準値が166か。

 200?ギルド売りの6割じゃん。


「安くない?」

「おいおい。ここからギルドまでの時間を考えれば高いくらいだろ。普通はこっから交渉が始まるんだぜ。

 ギルド売りで166なのに200も取るんだぜ」


 あーこの人もいい人だな。今のところ、俺は会う人会う人に恵まれている。ま、大半はNPCだけど。


「俺はギルドよりも安く手に入るし、そっちは高く売れる。WinWinじゃないか」

「俺は経験値稼ぎを継続するのに手間賃も取らずでか?

 返せるものがありゃまだあれだが、他には何も持っちゃいねぇし。今すぐ狩ってもいいんだが、あんたも荷物いっぱいだろうし」


 頭をかきながらひげ面が言う。


「気にするなって。

 まだいくらでも持てるけど、そろそろ一度帰ろうと思ってたんだよ。敵の取りあいが面倒で」

「そうか、そう言ってくれると……って、まだ持てるのか!

 もしかして、袋持ちかい?」

「ああ、あるぞ。大量に」

「金持ちだなぁ」


 なんと、袋は大量買いのときについてくるサービスで、ギルドとかで店売りはしていないらしい。

 あれ?雑貨屋になかったっけ?ま、良いか。見間違いかもしれんし。

 鑑定すると、基準値は袋20で大袋50か。高くはないな。


「袋いるか?200Gなら8枚で」

「だから安すぎるって。200で3枚なら買うぞ」


 台詞を途中で遮られた。頑固だなぁ。


「そうじゃねぇ。相場を大きく崩すなってことだ。最近は流通が増えて落ち着いてきたが、初心者回復薬の効果が大きいヤツなんか、最初は転売がひどかったぜ」


 え?何それ。怖い。


「詳しくは知らんが、最初のころは露店で1個500Gじゃきかなかったらしいぞ。そんで店売りが150つうから、買占め騒ぎがおきて逮捕者もでたって噂だ。

 あんたも、安すぎる金額で売るのは考えもんだぞ」


 ……ご丁寧にどうも。

 あのときは作るので精いっぱいだったけど、需要についてまったく考えてなかったもんな。

 そうか。だから、トルークさんと衛兵隊が入り浸ってたのか。

 それにしても困ったぞ。俺はスタンドアローンばかりで、あまりMMOはやってこなかったからな。こういうゲームの常識を知らないんだよな。

 でも、調べて回るのもあまり……。月曜にでも須佐見に相談してみるか。


「じゃ、3枚でいいのか?」

「もっとあるのか?……じゃあ、手持ちと、うーん6枚くれるか?」


 交渉成立。素材と200Gを受け取って、袋を6枚渡す。

 袋を渡すと、ひげ面が満面の笑みを浮かべて、右手を差し出した。


「これで、やっと冒険者らしい冒険ができるようになるぜ。助かった。

 俺は、ドワーフ。ドワーフのジンだ」


 ……熊の獣人じゃないのね。大きなドワーフだこと。

実力に釣り合わない装備は不幸の元です。

プレーはしやすくなりますけど。

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