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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
初めてのたたかい
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3-2 イベント開始

※2月6日誤字修正

『それでは、ただいまからアーク中央広場にて、祝福の冒険者歓迎式典を開催します』


 5細刻まえのアナウンスからギュウギュウ詰めが続く広場に、渋い声が響く。

 おお!すごい!花火が上がったり、ん?あれは飛竜か?演出がすごいな。

 鑑定祭にハマりすぎていて広場へ来るのが遅くなった俺は、広場の端っこから式典を楽しんでいた。

 花火は現実と同じく腹にくる振動があるだけじゃなくて、形や動きが非現実的だったりする。丸く広がった後に動き回るのはまだ理解できるけど、立体的なドラゴン、しかも一吼えした後にブレスを吐くってのは現実じゃああり得ない。けど、迫力は抜群だ!

 飛竜連隊の演舞は、航空飛行隊ほどの音はないけど、魔法やブレスが飛び交う度に歓声が上がる。いつかは俺も乗ってみたい。

 あ、あれはアーキン領主か。隣は冒険者ギルド長と、あっちはたぶん魔法ギルド長だな。

 式典が始まるのか、舞台の上に3名が登壇した。

 まずは領主のアーキン様から挨拶が始まった。


『始まりの街アークは、祝福の冒険者を歓迎する。

(~中略~)

 翌灯から1巡、城壁の通行料と露店の税を免除する。大いに冒険をしてほしい。

 皆に神の祝福を!』


 途中、話よりもステータス画面に気を取られていたが、最後の言葉が発せられると同時にメニューに表示されたので気がついた。

 だって、【詠唱短縮】【水魔術】【生産者の指】【魔力増加】が1上がって、【魔力操作】が3になってるんだもの。クエストクリアでレベルが上がっていたからボーナスポイントも2ポイントゲットした。今回上げたのは敏捷力と器用力。MPが40を超えていたので、精神力はお預け。たぶん、生産作業の速度が上昇するはずだ。

 MPの限り“鑑定”もしたし、翌灯以降が楽しみだ。

 レザーブーツに付いていた【ダッシュ】はまだ覚えていないけども、グリフによると技能が無いと行為にペナルティがつくって話だから、効果があるって確信している。そうじゃないと勢いで買ったのがとても悔やまれるので……。


 メニューを見ると、記念イベントは戦闘職とお金の大盤振る舞いの側面が強い。今回の期間中は素材も魔物のポップもそこにいる人数に併せてある程度調整されるらしい。

 本来なら生産職にも絶好のイベントなんだろうけど、道具がなければ意味ないし。あ、ここで生産ギルドの設立が大きな意味を持つのか。

 ……じゃあ、俺のクエストは予定調和なのか?ま、考えても仕方ないか。

 それにしても、素材採取が楽になるなら俺にも嬉しいな。

 インスタントダンジョンの入場料が半額で、今回のみの特別ダンジョンか。戦闘迷宮、罠迷宮、生産迷宮か。ダンジョンタイプも洞窟、地下、草原、森、特別でランダム。って草原と森もダンジョンですか。

 特別ダンジョン化と武器防具の消耗無しは神の祝福って扱いね。

 でも、次の夜明けからか。今灯はこれで終わりかな?


『今灯は、大いに楽しんでくれ』


 その言葉と当時に視界がまぶしい光に遮られる。光がおさまると、広場が一変していた。3倍ほどの広さになり、端にはいくつもの露店が建ち並ぶ。

 さっきまでギュウギュウだったのに、歩き回れるだけのスペースが十分に取れている。

 武器や防具もそれぞれの種類毎に露店が出ていて、早速に寄った人によると良心的な値段で追加効果付きの商品がならんでいるらしい。

 この街ではほとんど販売していない、高レベルでも効果が変わらない、普通の回復薬や魔力薬も売ってるみたいだ。初心者魔力薬なら買い占めるのにな。

 今回の露店では商品が並べられてないから“鑑定”できないのが寂しい。装備品を買いあさるだけの金もないし、一度戻るか。



「お帰りなさい。こっちも一段落です」

「ポポロ君は奥で食事中だ。水汲みも品出しも終わったし、休憩してからゆったり作業しようと思っている」


 イベント、特に特別露店がでたからそっちに人が流れたんだな。

 もう少ししたら翌灯以降のために買いに来る人でにぎわうんじゃないかな?レベル10未満の人は大量に買ってから行くだろうし。

 ……って、なんでトルークさんがここにいるんですか!衛兵でしょ。それもそこそこお偉いさん。


「ああ、ギーストお主を待っていたんだ」


 嫌な予感がしますよ。また何かあるんですか。

 今更逃げられないけど。


「おや、お帰りなさい」


 俺の緊張を解消するようなベストタイミングで、奥から声と供にポポロさんが出てきた。

 ……旅やつれって言うよりも、作業による疲労ですね。その顔は。

 せっかく声で和らげられた緊張が、違った形で復活。

 ああ、早く生産ギルドができないかな。そうすれば、この人達に、ここまで迷惑をかけなくて済むだろうに。


「皆さん広場の露店へ行っているんですね。こういった機会でもないと売ってない物も沢山あるでしょうから、見てるだけでも楽しいでしょうね。

 ま、翌灯からはいつも通り忙しくなると思いますが」

「「それでも、少し休憩しましょう。ここのところ働きづめですから」」


 ポム親子からユニゾンで言われた。

 俺が原因ですね。誠に申し訳ございません。


「まず先に、売上配分をしてしまいましょう」


 持ってきますと奥へと行ったポム店長はすぐに戻ってきた。


「端数は不要です」


 先に断っておく。


「そう?じゃあ、これ」


 机の上には、5つの袋。ジャラリと重い音がする。

 うん。


「1つに金貨10枚入っているわ。全部で50万G。

 ……これでもかなり低めに計算してるのよ。文句があるならもっと渡すけど」


 もっと減らしてもらおうと思っていた俺はむなしく口を開閉させた。ここ数灯で昨節の収入以上の利益が出てるってなによ。こんな金額怖くて持ちたくないって言われても、それは俺の台詞です。


「ここでのお主の売上げと二人が作った分のレシピ使用料で2袋。それに弟子3名の作成分3袋を儂が持ってきた」

「……その分を忘れてましたよ」


 ぐずぐずと手を伸ばさなかったら、追加でお金の詰まった袋が机の隅に置かれた。端数分をいれてあるらしい。

 端数も押しつけられる前に金貨の袋をインベントリにしまいますか。


「もしよろしければ、生産ギルドへ投資しませんか?」


 このお金をどうしよう。そうため息をついた俺に、ポポロさんが案を出してくれた。


「生産ギルドへですか?」


 資金は街が出すんじゃなかったっけ?


「ええ。全てを街であがなうのは大変ですから。

 分野毎に出資を募っていまして、それで設備を追加することになっています。

 もちろん、どの分野でも最低限の設備は用意しますが、物が良いに超したことはないですし

 うちも10万G出資しますし、簡易薬剤作成キットを提供しようかと」

「ああ、それは良いですね。お願いしましょうか」


 ポポロ氏のありがたいお誘いに30万Gを即渡した。

 え?22万Gはって?これから露店で追加効果付きの服とズボン、籠手にアクセサリーを買うつもりだから。それも、+2を狙って。


「錬金を修める者は私の他にもいらっしゃるのですか?」


 丁度良い機会なので、気になっていたことを確認してみると、二人は驚いた顔をしている。


「ギーストさんは薬剤が専門分野では?」

「いや、違いますよ。ここでお手伝いがてら教えていただきましたから」

「鑑定が専門かと思っていたわ」


 確かに、一時期製薬や鑑定ばかりしていましたが、錬金も沢山してたんです。……失敗ばかりですが。

 そういえば、錬金の作業するときは常に離れだった。そりゃわからないよな。


「錬金を仕事にしている方は聞いたことありませんね。かじったことがある人もどれだけいることか」


 残念。それなら、別にそこまで投資しなくても良いのか?

 いや、後進のプレーヤーのためにも、ある程度は必要か。


「10万Gもあればそれなりの作業台が入るぞ。お主の作業所に入れた高品質の作業台ほどではないがな。特殊な道具が必要ならいくらあっても足らんだろうが、指導できる者がいるかな?」


 うーん。俺もスキルで使ってるから、一から教えることはできそうもない。


「祝福の冒険者専用になってしまいますかね。それなら、初期の錬金に必要なのは場所と素材くらいですか。

 ……なら、30万Gのうち、20万を錬金に。残りを薬剤でお願いします」


 俺は自宅で作業するし、2台あれば当面は需要を満たせるだろう。不人気スキルだし、使う人がいなければ他の作業に使ってもらってもいい。所詮は作業台机だし。


「承知しました。ではそのように」


 余計な所持金も減らせたし、装備を買いに行きますか。


「ああ、それはそれとして、お手伝いのお礼をしたいのですが」


 立ち上がりかけた俺の動きが止まる。


「さっきのは」

「売上げの取り分ですよ。最初に賃金が出るってお話ししてますよね。

 レシピの報酬もありますし」


 ……くっ空気椅子はつらいな。

 まずは座って落ち着こう。うん。


「……レシピについては、領主様から立派な屋敷をいただきましたし、他にも色々とご配慮いただいてますから。使用料も先ほどいただきましたからそれで十分ですよ」

「でも、私も後で渡すって言ったもの」

「領主様からのご配慮は当店にもいただいています。向こう10節の免税とギルドの役員にもしていただきましたから」


 俺とポム親子の間で、金の詰まった袋が移動する。お互いに押しつけ合うってのが珍しいが、よくある風景だ。


「じゃあ、代わりに離れにある薬剤作成キットを貰ってくれる?

 家には立派な道具があっても、旅先じゃ使えないでしょ。あれなら持ち運びできるし。

 それと、生産ギルドができるまでは作った初心者回復薬は今まで同様引き取るわよ。いつでも持ってきて頂戴」


 確かに、そこまで重くないので持ち運べる。俺ならインベントリも使えるから使い勝手は良い。

 売るのも冒険者ギルドの買い取りより高いから助かるな。町への納品分は3弟子作成分でまかなえるから考えなくても良いし、俺にはメリットばかりだ。

 初めから、ここを落としどころに考えてたのかな。


「そうですね。それならありがたく頂戴します。屋敷はまだですが作業所には移せますし」


 丁度いいや、ここらで離れの生活から離れよう。……親父ギャグじゃないよ。


「ポポロさんも戻られたし、使わせていただいていた離れも片付けましたので、そろそろおいとまします。

 大変お世話になりました」

「こちらこそ」


 こんなことになるとは想像もしなかったけどってポム店長は笑う。その言葉に一同苦笑い。


「この後はどうするの?」

「生産ギルドが立ち上がるまではアークにいるつもりです。やりたいこともありますし。

 当面は宿屋を拠点に街中探索ですか。作業所にベッドが入るのを待ってそちらに生活拠点を移します」

「それならまだ離れを「ベッドなら入ったぞ。今灯はそれも伝えに来た」」


 ポム店長からのお誘いの言葉を、トルークさんに遮られた。

 遅い!遅いよ。

 トルークさんもタイミングが無かったので言いそびれていたらしい。

 それにしても丁度いいや。


「屋敷が完成するまでは衛兵を配置するから、今灯から使えるぞ」

「ありがたいですね。そうさせていただきます」


 それなら今回のイベントに気兼ねなく参加出来そうだ。

 ここのところずっと生産、それも集中して同じようなことばかりをしていたから、今回ばかりは戦闘での参加も考えてた。

 これで、心置きなく、気分転換、いやイベントに参加出来る。



 時には食事を食べにいらっしゃい。

 その言葉をありがたく頂戴しながら、薬剤作成キットを持ってトルークさんと一緒に作業所へ。

 一段落したら、今度こそ買い物に行きますか。

イベントは積極的に参加する人ばかりじゃないですよね。

でも、少しは参加したいとも思うわけで。

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