3-1 装備を買おう
更新再開します。
3章は毎日19時更新で。
起きて朝食をとっても後2時間はある。
早速ダイブしよう。
『本日10時(12刻時)から、始まりの街アークにて正式サービス開始記念イベントを行います。
参加希望者は10時(12刻時)までに、アーク中央広場にお集まりください』
現在は6刻時ちょっと前。あと、5刻は作業ができる。
いや、4刻にして広場に行くか。
まずはステータスから。
あ、なんとレベルが2に上昇!
たぶん、クエストをクリアしたからかな。
本灯の成果(大)123。ちなみに、ポポロ氏の商品は全て“鑑定”済み。全レシピ情報確定です。
さて、じゃあ行くとしますか。
「あ、ポム店長。ちょっと出かけてきます」
実はまだ離れに住んでます。作業所にベッドが入れば今灯にでも移るんだけどさ。いや、クエストは終了したんだから宿屋にでも移るべきか。
「人が多いみたいだから気をつけてね」
外にでるとかなりの人数が広場にいるのがわかる。まだ2刻あるのに。
まあ、人のことは言えないか。せっかく久々の外出(笑……えない)だから、コッコ焼きを食いに屋台でも行くか。
お、おっちゃんのところは長い列になってんな。並ぶとするか。
「久しぶりじゃねぇか。元気だったか?」
忙しい中でも俺に気づいたおっちゃんは、気さくに問いかけてくれた。
確かに久しぶりだ。ここんところは薬剤店の外にすら出てない。
「なんとかやっているよ。
トルークさんの紹介で手伝い仕事をしてたんだ。今灯は息抜き」
そう言えば、120刻って本当に過ぎたのかな?でも、【錬金】にかまけて手伝いしていない灯もあったし、 でもポポロさんも帰ってきたし。そもそもメニューのクエスト欄にクリアって出てたし。
「そうか。
おい、ギースト。なんだその格好は。いい加減に装備を整えろ。
それじゃあスリに狙われるぞ」
小声で付け加えてくれた。あ、俺今5万G弱も持ってる。やばい。スられるくらいなら装備を買うか。
「ありがとう。それじゃあ露店でも冷やかしてくるよ」
そもそも初期装備だし、最低限は用意しないと。
「じゃあ気をつけてな」
「おっちゃんも元気でね」
まずは目についた冒険者セットを買う。
露店主が必要と思う道具(カンテラ、火種、初心者回復薬(中)、初心者魔力薬(中)等)をまとめたセットだ。まだ冒険に出ていない俺にはちょうどいい。隣に置いてある旅料理セット(鍋やプライパン、携帯用まな板、包丁、鉄串、木皿)も買っておく。大袋に両方を一つの袋に入れても十分に余裕があるから薦められた剥ぎとりナイフも購入して他の店へ。
ちなみに、剥ぎとりナイフはモンスターの死体が消える前に使うと、ごく低確率でドロップアイテムが追加で手に入る。【解体】を覚えればかなり効率的に稼げるらしい。
ごく低確率なのに何故買ったのかって?俺も考えてることがあるんだよ。
数店舗まわって見ると、ダンジョンでのドロップ品を扱っている店があった。
あ、このハードレザーマントは良いな。器用力+1がついてる。価格は驚きの1万5千G。普通のハードレザーマントは3,500Gのはず。
ダンジョン宝箱からのレアドロップだが、認識阻害や人気の体力、精神力へのプラスじゃないからこの値段らしい。
……これで安いんだ。
プレーヤーがこのレベルの製品を作れるようになったら暴落するんだろうけど、当面は難しいとのこと。
他にないか聞くと、レザーブーツがあるらしい。こっちは【ダッシュ】プラス1。上質帽子【夜目】プラス1と古い帽子【言語】プラス2も売れ残っているとのこと。
なにそれ?どれもほしいんだけど。
「ねぇ、それをまとめて買うといくら?高くなければ買いたいんだけど」
ひげ面のおっさんが顎を撫でる。
「すでに不要品の処分だからな。ギルドや店に持ち込むよりも高けりゃ構わんぞ」
「あ、俺。この手の相場を知らないんだよ」
おっさんは呆れたように肩を竦める。
「おいおい。商売相手にぶっちゃけるなよ。足元を見られたらどうする」
「高けりゃ買えないだけだし」
「ふむ。そう言われりゃそうか。
よし、4点まとめて3万Gでどうだ?」
うーん。買えないわけじゃないけど、その金額だとそこまで欲しい追加効果じゃないよな。
魔力草とかも買いあさりたいし、装備にかけるのは2万5千Gまでにしよう。
交渉交渉。
「あちゃ~。残念。さっき買い物したからな。
装備に費やせるのは2万5千までだ」
「場所代と税金があるから、それじゃあ難しいな」
そんなこと言ってるから売れないんだと思うけど。
う~ん。じゃあ、上質帽子は諦めるか。【夜目】はまだ使わないだろうし。
「マントと古い帽子、靴で2万2千」
「よし売った」
防御力よりも、スキルにプラスが付くのがありがたい。
特に、言語のプラスは助かる。
「ちなみに、ギルドへ売るといくら?」
「ん?基準値通りだから、1万4千5百だな。売ってれば2万9千で買えるぞ。
売ってればだけどな」
7割よりちょっと高い程度か。ま、悪くない買い物だ。
こういうゲームじゃ、露店の最安値は7割だろうし。
早速装備すると外見が変わる。ま、実際はマントと帽子をかぶっただけ。
「いや~助かるよ。イベント前に処分したくってさ。
後少し待って売れなかったら全部ギルドに持ち込もうって話していたんだ」
ギルドは買い取ってくれるけど、追加効果付きは販売していない。現状では露店とダンジョンでしか手に入らない。
この露店は、パーティーメンバーと共同で開いているらしい。今はこの人が店番で、他のメンバーはイベント用に買い物をしているとのこと。
「素材系はすぐに処分するんだけど、武器防具は、なんかもったいない気がしてな」
「あ、武器もあるの?短剣を見せてもらえる?」
さっき見たのは防具だけ。武器もあるなら見たいな。
確か、ギルド長に短剣の素質があるって言われたし。
「ん?大したものは残ってないぞ。鉄短剣と青銅短剣は売れちまったな。
後は、銅と錆びたのと……あ、これが残ってたか」
そう言って取り出したのは鈍く光る短剣。
「“鑑定”していい?」
「なんだ【鑑定】持ちか。遠慮するな。誰でもしてる」
そうか。じゃあ、イベント開始まで“鑑定”祭りでもするか。
鑑定結果 錬金の鉄短剣 品質50 攻撃力+10 【錬金】+1
お。これは!
「他のもそうだけど、追加効果ありなのに売れないんだ?」
俺の台詞におっさんが何度も頷いた。
「そうか。あんちゃんは初心者か。
情報収集は冒険の基本だぞ。怠るなよ。
大概のスキル系のプラスは外れだぞ。そのスキルを持ってる奴しか欲しがらないからな。プラス1でも、基準値が3倍になるから宝物として考えるならまあ良い収入になるんだが」
どんな効果が付いていても、+1なら3倍、+2なら5倍と増えていく。基準値がギルドの買い取り価格、倍値が販売価格だ。
ただし、人気の効果は露店売りだと桁違いに値段が跳ね上がるとのこと。
どんな不人気でも基準値の6割。場所代がかかるから、そこより低ければギルド売りの方がマシ。
「鉄短剣は基準値1,000Gだが、【短剣】+1なら10万Gでも売れる。まだギルドじゃ扱ってないから追加効果無しでも3,000Gで買うヤツはいる。
が、【錬金】だと使い手がいないから3,900Gでも買う奴がいねぇ」
かといって、それ以上安くすると税1割と露店料を支払うと赤字だしなぁと苦笑い。
レアな追加効果品は、手間賃を考えると他に売る物があるとき以外は即ギルドに売られる羽目になるわけだ。
「ふーん。じゃあさ、俺が4,000Gで買うから余った他の短剣も付けてくれる?」
「そりゃかまわんが、もう一回言うぞ。鉄短剣の追加効果は【錬金】1だぞ。銅と錆びたヤツは2つずつあるけど、どちらも追加効果無しだ」
「それで良いよ」
「さっきから、あんちゃんは変な物ばかり買うなぁ。無理に追加効果のを買うよりも、まずは一式そろえた方が良いぞ」
そりゃそうだ。でも、ここ数灯の売上を考えると、最初っから高額な物をまとめ買いできそうだから、戦闘用は別に考えるよ。
何よりもこれは【錬金】だし。
「ほらよ。毎度あり。
修理はこまめにしろよ」
「ありがとう」
これで残金は20,169G。さて、“鑑定”祭だ!