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生産だって冒険だよね  作者: ネルシュ
13章素晴らしき世界
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エピローグ

「おっ。あれが次の街か。今度は何があるかな?」

「まずは、宿を決めるである。お勧めは闇夜のカラス亭であるな。食事が美味いである」

「同行助かったよ、クロ。また図書館にこもるのか?」

「ここの図書館の本はほぼ写したである。気になる本がいくつがあるのでそれは見るのであるが、今回の目的はまた別である。近くにクエストでしか行けないイベントダンジョンがあるのである。そこで残された手記を写本する予定である」

「クエストアイテムじゃないのかそれ。そんなの写せるのか?」

「そろそろ【言語】がカンストするである。これでできなければ、進化させるしかないのである」

「諦める……ってのはないわな」

「当然である!

 ギーストはどうするであるか?我は当分、ここにいるから別の街に行くのであれば同行はできかねるである」

「ここでオーク皮が大量に売り出されてるって聞いてな。そろそろ【皮革】を上げていこうと思ってさ」

「新しい薬草に目移りして生産ギルドに引きこもるに一票である」

「写本に夢中になってクエスト失敗するに一票」

「……耳が痛いである」

「……お互いにな」


 ゲーム内だけの付き合いではあっても、長く付き合っているとお互い突かれると痛い黒歴史が積みあがる。既に笑い話でしかないが、当時はきつかったなぁ。それもまた、良い思い出である。

 下手に器用さを上げたので現実よりも物を作るのが数十倍楽しく、生産という括りであれば色々と手を出したくなってしまうため、スキルでも技術でもなかなかカンストまでレベルが行っていない。少し集中して作業する必要がある。そのため最近では、素材の大量入手ができるなんて情報を集めては、旅の行き先を決めるなんて行き当たりばったりな冒険をしている。

 街中でふと見つけた露店。ふらりと入った店舗。そこで見つける、思いがけない技巧品。イマジネーションやモチベーションには最高なんだが、いつもあるもんじゃなし、天啓とばかりに買いあさったり、弟子入りしたり。まあ、体験型PRGらしく横道にばかり逸れる生活をしてきた。それが何よりも楽しく、このゲームをやって良かったと常々感じているわけだ。


「最近、『名無し』として活動してるのか?図書館に引きこもってる姿しか見てないけど」

「最近、アークに戻っているであるか?どこぞの街の生産ギルドを荒らしている噂しか聞かないであるが」

「……止めよう。不毛だ」

「そうであるな。

 『名無し』も人数が増え、我が活躍する必要性もなくなったである。時に懐かしい友と冒険をすることもあるが、常にいなくては忘れてしまうほどのキャラではないのであるよ」

「濃いからな。ソロ戦闘ならどの大会でも上位に食い込む奴らばかりだし、冒険者クランとしてもまともな方面で名前が売れてきたし。シロなんて宗教立ち上げたって聞いたけど」

「それは少し違うである。細々と続いていた宗教派閥の有力者になったのである」

「……それでもすごいけどね。なんて派閥?」

「旅人派。流浪しながら人々を癒すことを主とするのである」

「……つまり、『辻ヒール』が現地の人にも浸透したってこと?」

「そうである。たぶん、彼が我らの中で最も有名である」

「そうか?

 ジンは闘技場で勝ちすぎて『両断』よりも『王者』の二つ名が有名になったし、『廃神様』ジーンの活躍は耳に届かなくても『開拓者』の噂を聞かないことはないだろ?『魔術狂』の豪華魔術演武だって」

「……聞いたことないであるなぁ。おっ。そろそろ我が目的地である。ではさらばだ!」

「がーんばーれよー」


 顔を真っ赤にしてクロは逃げていった。調子に乗ってやった豪華魔術演武は、ここ最近では一番の黒歴史らしい。シロによると、以前のイベント夜戦よりも何倍も派手で、何倍も広範囲で、何倍も威力が高かったようだ。

 それにしても、名高き『名無し』のメンツは相変わらずの活躍ぶりだ。ソロでもチームでもそこかしこに派手な足跡を残している。今メインで活動しているのは『目抜き』のミラ。ジーンをはじめ、他の面々は糸の切れた凧状態。ま、どこに居ても目立ってるんだけどさ。

 ミル・クレープ達も活動の場を移した鉱山都市ガルゲラではっちゃけたらしく、『坑道の女神たち』なんて一部では呼ばれているとか。『幻獣旅団』なんか、押しも押されぬ技巧派トップ攻略チームとして、ギミック満載のダンジョン攻略で名を馳せている。

 酒場の噂話に知人の名前が出ると嬉しくなってついつい聞き入っちゃうんだよね。今度本人達に会う時には、色んな話が聞けるだろう。今から楽しみだ。

 友人達の冒険に比べれば、俺の活動範囲は狭い。珍しい素材や大量確保の話が出れば、近場の街なら足を運ぶこともあるが、基本は輸送待ち。時間を金で買えるなら、まずそちらを選ぶ。質が高い素材や高難易度の生産行為にはかなり時間がかかるんだ。同じ時間を使うなら、移動よりも作業に当てたい。

 でも、時々、本当に時々だけどこうやって外に出たくなる。ま、ほぼ素材の買い付けだけどね。


 だけど、俺にとっては、それでも十分に冒険であり、この世界を楽しんでいる。

 新しい作品を作ること。珍しい物を見ること。新たな素材に触れること。時々、違う街に行くこと。みんなみんな冒険なのだ。誰がなんて言おうと……。

明日、閑話、登場人物、あとがきを掲載して終了となります。

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